日比野庵 新館

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続いて、現在の評価と未来の指針について検討を進める。

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現在の評価は次の3つ

1.敗戦後、日本は復興した、協力してくれた世界各国に深く謝意を表明する。
2.アジア太平洋近隣諸国、米国、さらには欧州諸国と友好関係を築きあげたことを嬉しく思う。
8.疑うべくもないこの歴史の事実を謙虚に受け止め、痛切な反省の意を表し、心からのお詫びの気持ちを表明する。


1,2については特に問題ない、謝意をいくら述べたところで不利益を蒙ることはまずありえない。

8については、明確な謝罪。この是非および影響は後述する、未来の指針と関係してくる。


未来の指針は次の3つ。

4.日本と近隣アジア諸国との関係にかかわる歴史研究を支援し、各国との交流の飛躍的な拡大をはかる。
5.戦後処理問題についても、わが国とこれらの国々との信頼関係を一層強化するため、誠実に対応する。
10.被爆国の体験を踏まえ核兵器の廃絶を目指し、国際的な軍縮を積極的に推進していくことが、過去に対する償いとなる。


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これらの未来の指針は、8の謝罪と過去の反省を受けて、こうする、と宣言したもの。

4.の歴史研究については、原則、各国ごとの歴史観を一致させることは難しい。殆ど不可能に近い。研究は自由だけど、一方的に他国の歴史観を受け入れるのとは別の話。

米スタンフォード大学アジア太平洋研究センターは、日中韓と米国、台湾の高校歴史教科書比較研究プロジェクトを実施し、日本の教科書は戦争を賛美せず、最も抑制的だと指摘した報告書を提出している。

それによれば、日本の歴史教科書は「歴史の年代記」に過ぎず愛国心を煽るような記述はほとんどなく、「暗黙の教訓」をベースにして、軍国主義を批判し、現憲法下と歩調を合わせるように作成されている。と報告されている。同時に他の東アジア諸国の教科書では、歴史教育の基本的役割として民族の自尊心と国民のアィデンティティー(帰属意識)の増進を主張しているとも指摘している。

中国と台湾の教科書は、抗日戦争の勝利が、中国の権利と利益を無視した帝国主義勢力による1世紀の恥辱をすすいだと書いているし、韓国の教科書は、日本の植民地統治に対する朝鮮人の抵抗運動や文学における文化的発展にもっぱら焦点を当てていると報告している。

これはどういうことかと言うと、日本を悪者にすることで自国および自国政府の正当性を見出そうとする簡単かつ安易な方法を取っていることを示している。

だから、日本がこれらの国々と歴史研究を共同で行ったとしても彼らの歴史観を押し付けられる場にしかならない。これは、5の戦後処理にも影響を及ぼす。

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当時の村山首相は談話後の記者会見で、戦後処理について、法的には終わったもの、という認識を示していたけれど、それでいて誠実に対応するとしている。

単に誠実に対応すると言っているだけであれば、まだ良いのだけれど、「これらの国々との信頼関係を一層強化するため」と枕詞をつけているのが隙になっている。

「誠実に対応する」という表現は、日本の主観である程度コントロールできる事柄。相手が認めなかったとしても、誠実だ、誠実だというだけで何もしないという逃げ道がある。だけど、「信頼関係を強化するため」となると、信頼が強化されたかされていないかは、世論調査などで、ある程度客観的に示されてしまう。言い逃れする余地は少なくなる。いくら日本が信頼関係が強化された、と言っても向こうがそうだと認めなければ、エンドレスで誠実な対応を求められることになる。

最後に10についてだけど、「核兵器の廃絶を目指し、国際的な軍縮を推進する」と言っている部分が国防における足枷になる可能性がある。もし日本の核武装だとか、自衛隊の自衛軍へ昇格、法整備を検討しようとしても、この部分をどう解釈、または言い逃れるか問題になってくる。

それこそ、核武装した裏で、「日本はあくまでも平和国家であり、核兵器の廃絶を目指している。日本の核武装は平和を乱すものへの勇気ある説得なのだ」とかさらりと言うくらいのしたたかさが必要になる。

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本シリーズエントリー記事一覧
村山談話を解析する その1 「田母神論文と村山談話」
村山談話を解析する その2 「過去の反省」
村山談話を解析する その3 「独善的なナショナリズム」
村山談話を解析する その4 「日本という縦糸」
村山談話を解析する その5 「現在の評価と未来の指針」
村山談話を解析する その6 「日本の器」
村山談話を解析する 最終回 「究極の徳利」


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画像読売新聞 論点スペシャル

 先の大戦に対する各国の歴史認識問題が、アジアの国際関係に影を落とし続けている。米スタンフォード大学アジア太平洋研究センターは、日中韓と米国、台湾の高校歴史教科書比較研究プロジェクトを実施し、日本の教科書は戦争を賛美せず、最も抑制的だと指摘した。研究チームの主要メンバーである日本史学者ピーター・ドウス氏に研究成果を、元米紙東京特派員ダニエル・スナイダー氏に研先の趣旨を報告してもらった。論点スベシャルとして紹介する。

○ピーター・ドウス氏
 スタンフォード大名誉教授。専門は日本近代史。ハーバード大で歴史学博士。英国帝国史研究で進展した「非公式帝国」論などを導入、戦前日本の帝国史・植民地統治研究に責献した。早稲田大などで教えたこともある。

◆日米中韓台 歴史教科書比較 戦争賛美せず 愛国心あおらず 日本は最も抑制

・暗黙の教訓
 日本の高校歴史教科書は過去30年間、海外のマスコミで悪評を買ってきた。太平洋戦争の開戦に対する日本の責任や、日本軍が占領地にもたらした苦難に教科書が十分な注意を払っていないという批判があり、教科書の内容がますます愛国主義的になっていると主張する人々もいる。

 スタンフォード大学アジア太平洋研究センターの「分断された記憶と和解」研究は、こうした批判が間違っていることを明らかにした。日本の教科書は愛国主義的であるどころか、愛国心をあおることが最も少ないように思われる。戦争をたたえることがなく、軍隊の重襲性を強調せず、戦破での英雄的行為を語らない。物語的な叙述をほとんど省いた出来事の年代記となっている。

 日本の教科書が示しているのは、暗黙の教訓だ。それは、軍国主義の拡張は愚かなことであり、戦争は市民に甚大な犠牲を押しつけるものであると語る。日本の歴史教科書の戦争記述は、戦後日本が外交政策の手段として軍事力の保持を拒んでいることと完全に歩調を合わせている。
 日本の学習指導要領は、近隣諸国との友好的で協力的な関係の発展、アジアと世界の平和と安定の必要性を強調している。

・奇妙な結果
 対照的に、ほかの東アジア諸国の大半は自国史の教科指針で、歴史教育の基本的役割として民族の自尊心と国民のアィデンティティー(帰属意識)の増進を主張している。

 民族の自尊心を強調することは、時に奇妙な結果を生む。
例えば、韓国の教科書は、1937年に中国で勃発た戦争や真珠湾攻撃、広島と長崎ヘの原爆投下など他国の教科書が取り上げている戦時中の主要な出来事に言及していない。代わりに、日本の植民地統治に対する朝鮮人の抵抗運動や文学における文化的発展にもっぱら焦点を当てている。言い換えれば、解放に向けた民族闘争の継続が韓国の教科書の物語の筋である。

 自国中心の記述最も愛国主義的に戦争を描写しているのは、おそらく中国の教科書だ。英雄的な軍事作戦の記述に満ちているうえ、最終的に日本を敗北させたのは中国、とりわけ中国共産党だったと示唆している。太平洋での戦争や同盟国の果たした役割はほとんど言及されていない。原爆投下が戦争終結に果たした役割は強調されず、日本軍に対する毛沢東の総攻撃要求とソ連の対日参戦が決定的要因とされている。

 中国と台湾の教科書は、抗日戦争の勝利が、中国の権利と利益を無視した帝国主義勢力による1世紀の恥辱をすすいだと書く。中国の教科書はまた、戦後も米国を新たな敵として反帝国主義闘争が続いたと強調する。新中国は、東アジアの"進歩勢力"を追い出そうとする米国を阻んだ、朝鮮戦争の勝者として描かれる。

 奇妙なことだが、米国の教科書にも戦勝に酔ったような叙述がある。米国で最も広く使われている教科書「アメリカン・ページェント」は、米国が世界的大国ヘと成熟するうえで戦争が決定的な転換点になったと書いている。

 戦前、米国の人々は外の世界から逃避し、現実を直視しない孤立主義に閉じこもっていた。だが、真珠湾攻撃によって、国際的な無政府状態の中で安全な国はなく、孤立主義でいられる可能性はないことに気づいた。米国人は孤立主義や宥和政策の危険性を悟り、反民主主義陣営との戦いに責任をもって自らの力を使うベきだと結論付けた。

 米国の教科書は、中国ほど露骨に愛国主義的な言葉を使っていない。だが、中国の教科書が共産党の勝利を文持するのと同じように自国の冷戦政策を支持している。

 「アメリカン・ページェント」の戦争描写は、トルーマン大統領とアチソン国務長官からニクソン大統領とキッシンジャー国務長官まで、リペラルにも保守にも受け入れられるように書かれているのだ。そして、米国の大衆文化と非常に似ていることだが、第2次大戦を”いい戦争”とたたえている。

・平和教育の徹底
 日本の教科書の戦争記述が愛国的情熱に欠けるからといって、驚くべきではない。結局のところ、日本は戦争に負けたのだ。戦争を祝うような叙述の余地は限られている。日本国民の大多数にとり、戦争は戦った男たちにも銃後の家族にも悲しみを与えたものとして記憶されている。

 日本の教科書が戦争描写を抑制していることは、「平和教育」という考えが日本で真剣に受け止められていることの反映でもある。戦争が日本人に与えた教訓は、軍事力の行使は道義的に正しくはなく、賢明でもないということだった。戦争で、中国の恥辱の世紀と米国の孤立主義は終わったかもしれないが、国の誇りは軍事力によってしか保たれないという日本人の幻想も終わったのである。



○ダニエル・スナイダー氏
スタンフォード大アジア太平洋研究センター研究副主幹。クリスチャン・サイエンス・モニター紙の東京特派員、インド特派員、モスクワ支局長を歴任。専門は北東アジア地域研究、米国のアジア外交。

・各国、自国史の教育を優先
 3年間におよぶ「分断された記憶と和解」研究は、戦時中のアジアにおける歴史の記憶が、いかに形成されるかを理解するために行われた。歴史認識の問題は、この地域の国際関係を混乱させ続けている。和解が必要だと思っても、歴史の記憶が分断され、しばしば衝突するために、長い歴史論争が解決されないと、我々は考える。

 研究の第1段階は、日本、中国、韓国、台湾、米国の高校歴史教科書を読むことで、歴史の記憶を形成するうえで教育が果たす役割に焦点を当てた。各国・地域で最も広く使われている世界史と自国史を翻訳した後、今年初めにスタンフォード大学で歴史家と教科書執筆者を集めた国際会議を開き、その分析、比較を行った。

 各国・地域の教育制度は世界史より自国史に優先権を置いている。その結果、過去に対する見方は限定的なものとなっている。研究のウェブサイトは、
http://aparc.stanford.edu/research/divided_memories_and_reconciliation/

URL:http://plaza.rakuten.co.jp/kenkou200502/diary/200812160001/



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