日比野庵 新館

デザインを更新しました。

 
今日は軽いネタです。




デジタルが発達した現代においては、アナログの代表格だといえるペンでさえも、進化を遂げているようだ。

慶應義塾大学の筧康明准教授のグループは、フリーハンドで円や直線を描くことができるテーブル型装置「dePENd」を開発しました。これは、磁石と機械を用いて紙とペンでの筆記をアシス卜するシステム。

ボールペンはその名の通り、ペン先(チップ)には、金属製の台座に金属又はセラミックスのボールを自由に回転できるようにして固定されているのだけれど、金属ボールを使ったボールペンは当然のことながら磁石にくっつく。筧准教授は、この性質に着目した。

仕組みは、机内部に磁石を仕込んでおき、磁石の位置をXYステージとコンピュータで制御するというとてもシンプルなもの。ボールペンのペン先は磁石に吸着し、筆記時のぺンの動きを制御する。この"磁石アシスト"機能によって、フリーハンドで正確な円や直線を描画したり、また、専用のデジタルペンを使うことで、描いたものを記録して、また別の場所に複製できたりもするそうだ。



開発チームは、ペンで描く途中に、正確な円を描きたいとか精度の求められるようなコンピュータグラフィックのような表現を切り替えて使用したり、遠隔地の先生の書き順とかを生徒が触覚によって描けるようにするなど、いろいろな応用先があると考えているようで、今後は、ペンだけでなく、はさみやコンパス等いろいろな文房具にデジタル技術を入れてアシストするといった、文房具全体の枠組みでプロジェクトを進めていくとしている。

こうしたユニークな装置は、開発者である筧准教授の考えが色濃く反映されている。筧准教授は、元々、コンピュータの世界があまり好きになれず、むしろ実世界の方に興味が向いていた。コンピュータは、単なる触媒としてなにかを増幅させる存在であって、知りたいとか、創りたいものは、実世界での感覚や関係性なのだそうだ。

ゆえに、筧准教授の研究室では、マウスとかキーボードといった「人とコンピュータを結ぶ」インターフェースではなくて、自分の体や、まわりの環境と新しい関係性を築くために、「コンピュータという"フィルター"を通す」形のインターフェースを研究しているという。

筧准教授が今取り組んでいる研究の一つに、「触感」というものがあり、触感をつくるというのはどういうことなのか、という観点から触感表現を研究している。おそらく、今回開発した「dePENd」もそうした「触感」をつくることについての一つの答えなのだろう。

画像


また、触感とは違うけれど、ペンによる表現形式の常識を覆すようなペンも開発されている。3次元の立体を「描く」ことができるペン、「3Doodler」がそれ。

アメリカのボストンに本社を置くトイメーカー「WobbleWorks」によって設計されたこのペンは、なんと、ペン先から出た途端に固まる特殊な樹脂の「インク」を使って、3次元の立体を「描く」ことができる。

詳しい構造は明らかになっていないけれど、3Dプリンターで使われるPLA樹脂やABS樹脂をペンの内部で加熱して溶かす構造になっている。樹脂を溶かすためにペン先温度が270℃にもなるため、最初の加熱に数分間かかるものの、一度溶けた樹脂は、3Doodlerから「インク」のように押し出された後、すぐにファンで冷やされて、繊細だけど耐久性のある構造となって固まる。

3Doodlerの外見が、太さが24mm、長さが180mmのずんぐりした形をしているのも、それだけの加熱システムと冷却ファンを内蔵しているためと思われる。ユニヴァーサル電源を使う仕様であるところをみると、電熱器か何かで加熱しているのかもしれない。

まぁ、イメージ的には、ペンというよりは、ハンダゴテといったほうがいいかもしれないけれど、それでも、重さは200g未満と見た目ほど重くはなく、ペンにはABS樹脂が1kg付いていて、最大で1240m分描くことができるという。

WobbleWorks社によると、3Doodlerを樹脂溶着工具として利用することで、既存の製品のカスタマイズや、修理にも使えると提案している。確かに、ABS樹脂をペンで好きなところに置けるとなると、ちょっとした穴埋めや接着に使えそうに思われる。

WobbleWorks社のピーター・ディルワース最高経営責任者は、「技術的な知識やソフトウェアやコンピューターが不要で、すぐに使える3Dプリンティング・デヴァイスを作りたいと考えた」と述べているけれど、デジタル的な技術をアナログで再現したという意味において、「dePENd」と同じく、アナログを技術でサポートした商品だといえるかもしれない。

人の手をサポートする「dePENd」ペンに、3次元の立体を描くことができる「3Doodler」ペン。何やら、ドラえもんの「コンピューターペンシル」や「空気クレヨン」を彷彿とさせる。面白いものが世の中にはある。




画像


コメント

 コメント一覧 (3)

    • 1. mohariza
    • 2013年05月18日 14:06
    • 現代社会では、コンピュータを駆使する人間が優秀とされ、創造性は二の次状態とも云えます。
      創造性を持っていても、社会で表現するためには、コンピュータを使いこなせなければ、表現出来ないようになり、
      建築設計業界および現場においても、手書きの図面は時代遅れとなり、且つ、図面のやりとりにおいても、CAD(:キャド)等のコンピュータ図面(データー)で無いと、共通のことば(:設計図等)になりません。
      現代建築業界では、3次元(:3D)CADの時代になり、パース等も絵心等が無くても、3D CADで立体図を手描きで描けない人間でも、コンピュータで図面化出来るようになっていて、私の会社でも取り入れ、今後、建築業界に浸透すると思います。
      本文にある「触感」と云う人間感覚に繋がるものを、コンピュータで自由に表現出来るようになると、本当に実力がある創造力と芸術性を持った人間が、
      真に人間化したものを表現でき、世の中で「共通のことば(:設計図等)」として、問うことが出来るようになる と思います。
    • 2. 白なまず
    • 2013年05月18日 14:51
    • エンジニアの悪い虫が、、、コンピュータペンシルをリメイクするなら、ボールペンや鉛筆ではなくて、イメージセンサー圧力センサー、加速度センサー、ジャイロセンサー、光スキャナーとインクジェットヘッドをペン先に作り(MEMSなどの技術で可能)本体にインクと、Bluetooth、マイコン、リチュウムイオンバッテリーを搭載して、インクの噴射をコントロールして、細かな印刷を行い、精密な印字や製図を可能にするペンにすると思います。計算処理はPCやクラウドで行い、イメージセンサーで文字を読み取り、計算結果を適当な位置に印字する。人は大体の位置にペン先を運びコマンドを選ぶと計算結果を印字したり、精密画を印字するような物です。
      記憶はペンではなく、PCやクラウド上に記憶する。使い方のイメージとしてはエアーブラシの様な感じでしょうか。プリンターメーカーやPILOTなどなら商品化できるでしょう。
    • 3. 白なまず
    • 2013年05月20日 10:22
    • 現実はコンピュータペンシルより「紙コンピュータ」の方が現実的なんでしょうね。
      【 ソニー、A4サイズの薄型軽量デジタルペーパー端末を開発 #DigInfo 】
      http://www.youtube.com/watch?v=DD7H8TIrwiQ
コメントフォーム
評価する
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット

トラックバック