今日はもうこの話題ですね。
2月5日、小野寺防衛相は、緊急記者会見を開き、1月30日に、東シナ海で中国海軍所属の江衛(ジャンウェイ)2級フリゲート艦が、およそ3km離れた海上自衛隊第7護衛隊「ゆうだち」に向けて火器管制レーダーを、数分間照射した事案があったと発表した。また、1月19日にも、同じく、中国海軍の江凱(ジャンカイ)1級フリゲート艦が、海自第6護衛隊「おおなみ」に搭載していたヘリコプターに向けてレーダーを照射した疑いがあることも明らかにした。
火器管制レーダーとは、文字通り、ミサイルなどを使う前に目標との距離、針路、速度、高度などを正確に把握して追尾し、発射・命中させるために使用される。いわゆる「ロックオン」。だから、これを相手艦に対して照射するということは、事実上の「攻撃予告」に等しい。
ゆえに、照射された側が対応行動として先に攻撃しても、国際法上問題とはされないのが普通。
小野寺防衛相は、「このような火器管制レーダー、いわゆる射撃用のレーダーを発出するということは大変異常なことであり、1歩間違えば大変危険な状況に陥る」と中国側を非難し、岸田外相は5日夜、「速やかに外交ルートを通じて中国側に抗議した」と述べた。
会見では、照射を受けた場所は「東シナ海」とだけしか発表しなかったのだけれど、その後の取材で、明らかになったところによると、どうやら、尖閣諸島の北西百数十キロの公海上だったようだ。また、19日の海自ヘリコプターへの照射があったとみられるのも同じ海域だという。
更に、政府関係者によると、同様の火器管制レーダーを照射したことが、野田政権が昨年9月に尖閣諸島を国有化する前にもあったと明らかにしている。
防衛省はこれら、尖閣周辺海域で複数回、自衛隊への中国軍のレーダー照射を把握していて、中には、今回の「数分間」より長く照射したケースもあったのだけれど、これまで「日中関係を悪化させる懸念がある」と公表を避けてきたという。
今回、安倍政権は、立て続けにレーダー照射をされたことから、事態を重く見て、公表に踏み切ったとしている。
だけど、いままで隠してきたこの事実を、今このタイミングで公表するには、何か狙いがあると思われる。
ここから先は、筆者の推測にしか過ぎないけれど、恐らくは、中国への牽制と、北朝鮮に対する圧力という狙いがあるのではないかと思う。
まず、中国への牽制についていえば、この火器管制レーダーを照射するなんてのは、準戦闘行為に当たる。日本は今回のことを中国に抗議したけれど、もしこのことを中国政府が知っていてやらせたとしたら、中国が明確に日本に対して攻撃する意図を持っているということになる。
2月6日、中国外務省の華春瑩副報道局長は、今回の件について「関連の報道で知った。具体的な状況は把握していない」と述べ、報道の前に外務省に対して関係部門から照射に関する報告がなかったのかと質問されても、「そう理解してもらっていい。報道を見てから関連の情報を知った」と答えている。
要するに、軍部の独走だ、ということにしているのだけれど、1月30日に照射して、2月5日に日本が公表するまで知らなかったということは、およそ1週間近くもの間、軍の動きを中国政府が把握してなかったことになる。これはすなわち、世界に対して、中国は自国の軍をコントロールできないのだ、という印象を植え付ける。
そして、その印象は周辺国に対して、いつ暴発してもおかしくないという懸念を抱かせ、防衛力強化の口実として使われることになる。
今回、中国は後者の道を選んだことで、結果として、安倍総理のセキュリティ・ダイヤモンド構想を後押しすることになると思う。
次に、北朝鮮に対する圧力についてだけれど、これは恐らく、アメリカの意思が働いていると見る。先日、北朝鮮は、国連安保理が採択した制裁強化の決議に関し、「アメリカを狙い、高い水準の核実験を実施する」と述べ、核実験を行うと宣言している。
なんとしても核実験を止めさせたいアメリカとしては、中国から北朝鮮に圧力を掛けさせたい。だけど、そう簡単にいうことを聞かないであろう中国に対するカードとして、今回の「ロックオン」の公表を使ったのではないか。
2月1日に国務長官に就任したケリー氏は、日本政府が今回の「ロックオン」公表をした2月5日に、中国の楊外相と、初めての電話会談をしている。筆者には、中国に、対策を練る時間を与えないように、日本政府と連携しての行動のように見える。
案の定、電話会談後、アメリカと中国は、北朝鮮が3回目の核実験に踏み切った場合には、追加的な措置を取ることで一致したと発表している。
だから、ある意味において、今回のロックオン報道は、日本とアメリカの利害が一致した結果による外交連携なのではないかと思う。
マスコミは、中国の火器管制レーダー照射について、「安倍総理が態度を軟化させないからだ」とか、「やはり軍部の暴走だ」とか動揺を隠せないでいるようだけれど、そういった単純なものではないかもしれない、という視点も持っていてもよいと思う。
コメント
コメント一覧 (4)
3年半で本当に何があったのだろうか
つまり, 照準レーダ照射を公表することにより,
融和的な米国政府を牽制したのかも知れない.
様々なニュースを見ていると, 安倍政権の
意識は見かけ以上に高いところにあるようだ.
これは保守主政権と自称するなら当然である.
戦前・中の米国FDR政権へのコミンテルン工作,
戦後のフランクフルト学派の漸化的社会主義革命
の広がりが, 東西冷戦, そして中共政府の覇権と
アジアの不安定化の原因なのであり, そして
この「ヤルタ体制」が, 安倍晋三がとなえる
戦後レジーム解体の主たる克服目標なのである.
オバマ大統領は米国の財政危機を利用した
だけのアジテータに過ぎない.
護衛艦に対してロックオンしたジャンウェイ�U級フリゲートは、映像で艦形を見れば判るように世界レベルというか先進諸国レベルでみたらやはり古めかしい設計です。建造年代が古いということは電子兵装もそれに見合ったレベルということになりますかね。そういう点でFCSレーダーでロックオンすることで、電子情報を日本側に丸裸にされることも計算に入れてこの艦を選択したかもしれません。
そうなると、単なる「現場の暴走」はありえません。上級司令部で事前に検討を重ねて計画された作戦行動です。ただ、外交部をはじめとする他の国家機関に事前に通知されていたかはわかりませんがね。
中国側は、日本の『軍隊』になんらかも行動をとって欲しかったのでしょうが、そんなにあっさり敵の思惑に乗ることこそ愚かです。