今日は、この話題ですね。
12月12日午前9時49分ごろ、北朝鮮は予告していたミサイルを発射した。
ミサイルは9時58分に1段目ブースターとみられる落下物が朝鮮半島の西方約200kmの黄海に落下。9時59分には、衛星フェアリングとみられる2つ目の落下物が朝鮮半島の南西約300kmの東シナ海に落下した。そして10時1分頃には先島諸島上空を通過し、10時5分頃には2段目ブースターとみられる3つ目の落下物がフィリピンの東約300kmの太平洋上に落下した。
いずれの落下物も北朝鮮が落下を予告していた区域内で、日本の領土内への落下物は確認されておらず、日本政府も準備していた破壊措置を実施しなかった。
北朝鮮は、「運搬ロケット『ウンハ3号』によって人工衛星『クァンミョンソン3号』の打ち上げに成功した。衛星は予定された軌道に進入した」としているけれど、どうやら、軌道傾斜角97.4°、近地点491.87km、遠地点585.12kmの太陽同期軌道に投入したようだ。
太陽同期軌道とは、衛星と太陽の位置関係が常に同じになる、すなわち、衛星の軌道面にあたる太陽からの光の角度が同じになるように飛行する軌道のことで、衛星からみて、地球表面への太陽光の入射角が一定になるため、同一条件下での地球表面の観測が可能となり、地球観測衛星やスパイ衛星などの画像の撮影に適している。
通常の太陽同期地球観測衛星の軌道傾斜角は97~99°とされる。軌道傾斜角とは、飛ぶ軌道の面が地球の赤道面に対してどれだけ傾いているかを示す角度のことで、傾斜角0°であれば赤道軌道。傾斜角90°であれば地球の北極、南極上空を通過する極軌道になる。
北朝鮮は、今回の"人工衛星"は高度500kmの軌道に投入すると通知していたのだけれど、この場合、太陽同期軌道に入るための軌道傾斜角は97.4°になる。
したがって、北朝鮮が"人工衛星"を太陽同期軌道に投入するためには、最初からこの97.4°で打ち上げるか、別の傾斜角で打ち上げたあと、途中でミサイルを制御して角度を97.4°に修正する2つの方法がある。もちろん、技術的には、後者のほうがずっと難しい。
ここで、前者の投入方法、すなわち、北朝鮮からの発射の段階で97.4°の傾斜角で打ち上げた場合、飛翔経路に中国の沿岸部が入ってしまう。もしも、飛翔途中で事故か何かで、これらの地域に落下してしまったら大問題になる。特に、燃料に使っている猛毒のヒドラジンが残っていたりしたら、大惨事になってしまうことだって考えられる。
従って、北朝鮮としては、後者の方法を取る他なく、真南に真っ直ぐ打ち上げたあと、公海上で軌道を曲げる他なく、飛翔経路真下に他国が入らないようにとなると、3段目での軌道修正以外の方法は事実上、取れない。
ということで、北朝鮮の"人工衛星"投入は、必然的にそれなりの技術力を要求される。
今回、北朝鮮はそれをやってのけた。
北朝鮮のミサイル発射について、JAXAの「はやぶさ」プロジェクトにも携わった的川泰宣名誉教授は「落下物の情報や何らかの物体が軌道に達したという情報が正しければ、3段目までうまくいったことを考えると、非常に高いレベルまで達したと言える」とコメントしている。
決して侮れるものじゃない。
あと、もうひとつ気になることがある。それは、今回のミサイル発射に対して、2,3日前から、故障が見つかっただの、ミサイルの解体を始めただの、直ぐには発射しそうにないような報道がされた途端、不意を打つ形で発射されたこと。
これら一連の情報を含めて、このタイミングで発射したのが、全て金正恩の指示だったとするならば、金正恩は相手の裏をかいてくるタイプだとみたほうがいいように思う。
今回の発射も、いつもの固定発射台からではなくて車載式移動発射台から打上げられたというから、これも見方によっては裏をかいたともいえる。
実際、時事通信によると、北朝鮮のミサイル発射時、空自の航空幕僚長が沖縄の部隊の視察に向かうため、防衛省を離れていたことが判明している。もしも、これが日本を狙ったミサイルだったとしたら、完全に裏をかかれることになる。非常に危険。
また、ミサイルが上空を通過した沖縄の先島諸島でも、対応に追われた。
午前9時50分ごろにJアラートを受信して自動的に市内全域に防災無線で屋内退避を呼びかけた。その後、防災無線を通じて注意を呼びかけている。
ある小学校では、校内放送で屋外にいた児童らに校舎内に入るよう指示し、児童の人数と安全を確認するなどの対応を取っている。その小学校の教頭は「児童は驚いた様子だった。こんなことは今回限りにしてほしい」と憤ったそうだ。
だけど、本当に今回限りにするのであれば、先島諸島上空のミサイル通過は二度と許してはいけない。そのためには、まず、こっちに向けて撃たないように要請する方法が考えらるけれど、そんな要請など北朝鮮が聞く筈もない。今回の発射だって、国連安保理の反対を無視して発射している。
となると、あとは、北朝鮮がミサイルを発射した初期のブースト段階で迎撃・破壊するか、または、ミサイル発射台を先制攻撃して発射できなくするしか方法がない。
金正恩は相手の裏をかいてくるタイプだとするならば、今後、いついかなる場合に、こうした脅しをかけてくるか分からなくなったということも同時に意味してる。ただ、相手の裏をかくということは、それだけ、パニックというか、相手への心理的効果を狙う意図があると思われる。
「朝人69」のエントリーでも述べたけれど、例えば、柏崎や敦賀、松江といった、日本海側の原発のすぐ近くの沖合に、北朝鮮がノドンを撃ち込んできたら、ほぼ間違いなく日本は大パニックになるだろう。
北朝鮮が、"人工衛星"を軌道投入できるくらいの技術を見せた以上、日本も最早、準戦時体制に入っているとするくらいの認識が必要ではないかと思う。
コメント
コメント一覧 (3)
なんか、いまさら色々と叫んだり冷笑したりしてる方々がいますが西日本が北朝鮮の弾道ミサイルの射程にとっくの昔に入っているのは日比野殿の指摘の通り。問題は動対処するかでしょうが、今更経済制裁を強化しても効果があるとは思えません。日比野殿が指摘の通り、BMDの配備を強化してブースト段階で撃墜する確率を揚げることは可能ですが人工衛星の打ち上げか弾道ミサイル攻撃か判別するまえに撃墜することになります(それ故、安保理決議は一切のロケット実験を禁止したわけです)。今回、一応衛星の軌道投入に成功したことはブーストステージでの撃墜の政治的なハードルが上がることも覚悟せねばならないでしょう。
私が一番危惧しているのは、北朝鮮が今回の実績を逆手にとって「衛星打ち上げビジネスに参入する」なんて言い出すことです。核兵器についても同じことが言える訳ですが、政治的な理由で米露欧日に打ち上げを委託できない国家や集団に衛星軌道へのアクセスを提供する可能性が発生します。今後の打ち上げを阻止しないと現実になりかねません。
北朝鮮の核、ミサイル開発の進展の度に、米軍による当該施設に対する
攻撃が検討されてきたが、ソウルが北朝鮮軍の射程距離に入っていて
報復攻撃の被害が甚大である為、米軍の軍事行動は抑制的なものだった。
米国は韓国との安全保障条約を解消し基地を撤退すべきである。韓国は
既に北に対して充分な防衛力を持っていて米軍に頼る必要はない。現在の
米韓安全保障条約は米軍の北に対する軍事行動を縛るもので、北を利するもの
になっている。これを解消すれば米軍は自由に北の軍事施設を攻撃できる。
洋上からのクルーズミサイル攻撃で充分目的は達成できる。米軍の人的被害
も皆無であろう。北が韓国に報復する口実もなくなる。
このままでは北の核とミサイル開発は進展するばかりで日本にとっても大きな
脅威となる。日本は米軍の北に対する攻撃を強く要請すべきだ。
平和だ, 反原発だ, とやっていれば
何時か絶対絶命に追い込まるは明らか.
このまま行けば日本の原発が半島ヤクザの
脅威に晒されるのは時間の問題だろう.
日本は原発を捨てることができないのだから,
生存可能な放射能レベルと, 生活可能な
放射能レベルと, 望ましい放射能レベル
とを厳然と分け, 国家的な防衛体制に
入る必要がある. 半島ヤクザを潰さない限り
日本の生存はないと思うのが正しい.