日比野庵 新館

デザインを更新しました。

 
更に、昨日のつづきです。




民主への逆風が止まらない。毎日新聞の総選挙中盤情勢調査によると、自民党が圧勝した05年の郵政選挙で、小選挙区で勝ち、今回も同じ選挙区で立候補した民主党候補は41人のうち、優位に立っているのは僅か13選挙区であることが分かった。

郵政選挙での民主党の獲得議席数は次のとおり
小選挙区:52議席(得票率36.44%)
比例代表:61議席(得票率31.02%)
民主党は、05年衆院選を乗り切った41の小選挙区のうち、計21選挙区で劣勢で、 菅直人前首相や仙谷由人元官房長官でさえも例外ではないという。

特に、注目したいのは、北海道2区の三井辨雄厚生労働相や、北海道10区の小平忠正国家公安委員長などが苦戦していて、横路孝弘前衆院議長ですら接戦になっているという。

北海道といえば民主王国。これまで民主党は、2000年以降、郵政選挙を含めてずっと、衆院選第一党の座を守ってきた。

こちらに郵政選挙時の開票結果があるけれど、民主では1区の横路氏と9区の鳩山由紀夫氏、10区の小平氏は、郵政の逆風の中、対立候補に差をつけ、その他候補は接戦ながらも勝ち抜いて、小選挙区と比例代表の計20議席のうち、11議席をおさえている。

民主党北海道幹部によると、「今回は05年よりずっと厳しい。小選挙区は六つ取れれば合格だ。…当選確実と計算できる選挙区は三つしかない」という。それが今回は、北海道でさえも劣勢になっているということは、それだけ強烈な逆風だということは間違いない。

それでも民主党はジミンガ-を一向に止めようとしない。

12月9日、民主党は、安住選対本部事務総長(幹事長代行)名で「『逃げる』『ぶれる』安倍総裁発言は大問題」と名指しで攻撃する文書を全候補者に送付し、街頭演説などで徹底して訴えるように指示していたことが明らかになった。

この民主党の対応について、自民党は「自民党への批判票が『第3極』政党に流れているとみて、ネガティブキャンペーンで非自民票を取り込み挽回しようとしている」と見る向きが少なくないという。

こうしたネガティブ・キャンペーンは、本来は与党が行うべき態度ではないのだけれど、前回の政権交代選挙では、自民党もネガティブ・キャンペーンをやっていたから、あまり人の事はいえない。ただ、前回の自民のネガティブキャンペーンは民主の政策の危うさを訴えていたのに対して、民主のそれは、安倍総裁に対する個人攻撃の色合いが強く、品がない印象はある。

だけど、折角のネガティブキャンペーンとて、その内容が個人攻撃では、批判票が戻ってくることには繋がりにくいと思われる。

一般的にネガティブキャンペーンとは批判対象を明らかにし、かつ絞り込むために行うのであって、批判対象を明らかにしたはいいけれど、その批判の受け皿が自分のところにないと意味を成さない。



例えば、ネガティブキャンペーンが政策に対するものであって、自党の政策がそれに対抗するものにすることで、政策に対する批判という形が明らかになり、それが票となって戻ってくる。

だけど、ネガティブキャンペーンが個人攻撃ばかりだと、たとえそれが効果を発揮したとしても、投票行動は、その個人或いは、その個人が属する政党以外であればどこでもいいということになる。

つまり、安倍総裁に対して、個人攻撃をすることで予想される投票行動は、"非自民"ということになる。だけど、今回の場合、"非自民"が即"民主"になるとは限らない。それはもちろん、"非自民"としての受け皿である第3極政党が乱立しているから。

ただでさえ、既成政党に対する批判票の受け皿として存在し、実際に批判票が第3極に流れている現状で、個人攻撃をすることで、その批判票が戻ってくるという理屈は、筆者にはちょっと理解できない。

それに第3極といっても、政党乱立のために、その批判票すら分散してしまい、結果的に自民を利することに成りかねない。だから、民主党がネガティブキャンペーンを頑張ってやったとしても、期待するほどの効果はないのではないか。

となると、頼みの綱は、まだ投票行動を決めていない、3割にも達すると見られる無党派層の票。彼らの票を一気に取り込むことができれば、接戦区であれば逆転の目も出てくる。

だけど、その無党派層の風は民主党には吹いていない。

総選挙後半戦に突入」のエントリーで、東京新聞の世論調査では、比例区に限ってみれば、無党派層のうち民主を支持する人は1割にも満たないという結果が出ているといったけれど、今回の毎日新聞の世論調査でも同じ結果が出ている。

比例代表での無党派層に投票予定先を聞いたところ、自民15%、維新14%、民主9%、みんな7%となっていて、民主は、前回の総選挙での48%から大きく支持を減らしている。

これに対して、自民は15%と前回の14%と殆ど変化がなく、維新、みんな、未来の「第3極政党」が支持を伸ばしているから、無党派は自民に対する批判票というよりは、民主に対する批判票として第3極に流れているように思われる。

だから、民主党が本来叩くべきは「第3極政党」であって、戦う相手を間違えているのではとさえ思ってしまう。まぁ、目的が"非自民"に絞って、自民を勝たせ過ぎないようにするところにあるのであれば、それでいいのかもしれないけれど。

或いは、もしかしたら、衆院選後に民主党は第3極を吸収合併したいという腹積もりがあるのかもしれない。今回の第3極政党とて、その母体の多くは、民主党の離党組。だから、彼らを民主党に再吸収することができれば、政権交代時の民主党とはいわないまでも、少しは党勢を回復できるかもしれない。

今回の世論調査でも、維新、みんな、未来の支持を合わせると26%あるから、それに民主の9%を合わせると35%になる。だから、今の段階で殊更に第3極を敵に回すことはしないのではないか。

ただ、まぁ、これは考えられる可能性の一つというだけで、本当にそんなことができるのかというと相当に疑問が残る。第一、政策の擦り合わせで相当難航することは目に見えている。大半が民主離党組で締められる、日本未来の党でさえ、消費増税をどうするのかといった問題があるし、日本未来の党がどれだけ議席を獲得できるかも分からない。少なくとも、解散前の議席数は望めないだろう。

今のところ、それなりの議席獲得の可能性がある第3極政党は維新の会だろうけれど、石原代表となった維新の会は民主党よりも自民党との親和性が高いから、その吸収は更に難しくなる。

民主のネガティブキャンペーン選挙は、空振りとはいわないまでも、クリーンヒットまでは望めないだろう。

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コメント

 コメント一覧 (5)

    • 1. woods
    • 2012年12月12日 14:41
    • 日比野様、毎日大変貴重な情報を楽しく拝見させて頂いており、ありがとうございます。
      今日どうしても日比野様の見解をお聞きしたいと思いコメントさせて頂きました申し訳ありません。情報元は〇〇省からなんですが、中小企業金融円滑化法案で事業者の支払い延長の期限が来年3月末で終了するんですが、全国でこの制度を利用している企業数はウン十万社あり、このままいくと5万社以上が倒産するだろうとのこと。その為に経営改善を進めないと厳しいことになるだろうとの論調でした。
      もしこの通りになったら、今の情勢では政権が変わることは間違いないだろうけど、景気対策を打ったとしてもその効果が出る前にバタバタ企業倒産が進んでしまい、当然ながらマスコミや時期野党となる方々は与党の攻撃材料にするんではないかと思います。そうなると2007年の年金問題のように、来年7月の参院選挙で惨敗し、ねじれが一層厳しくなりそうな感じに思えます。これを回避するためには、さらなる延長か繋ぎ法案か何かで1~2年何とか支払いを延長し、その間、経済対策を行って景気回復させるということをしないといけないのではないでしょうか。国土強靭化などの財政出動は間違ってないと思うので、その路線で行って欲しいと思いますし、長期政権を希望しているのですが、その前に時限爆弾が破裂しないか非常に心配になります。その辺の危機感を野党第1党の方々はお持ちなんでしょうか?長文駄文になり申し訳ありませんが、どうしても言わずにはいれなくなってしまいました。m(__)m
    • 2. 洗足池
    • 2012年12月12日 15:35
    • 金融円滑法延長大反対!!!
      ゾンビ企業を税金で延命させてどうするのですか?
      石原都知事の新銀行は1000億近くの都税をドブに捨てているのですよ。
      役所が民間金融機関以上の与信審査能力を持っているわけがありません。
      利益を出せない失敗企業が倒産するのは資本主義社会の新陳代謝で正常
      なプロセスです。ゾンビを延命させてどういう展望が開けてくるのかWOODS氏
      に説明してもらいたい。
      もしかしたらWOODS氏は石原慎太郎の大ファンではありませんか?慎太郎は
      全くの経済音痴です。日本で韓流の人気が下火になった(数日前のブログ)
      のも李大統領の竹島訪問のせい。慎太郎の尖閣買収の試みも、日本企業に
      数千億円の損害をもたらした。東京のデパート、ホテル、電気店も中国人
      観光客が来なくなって、痛手を被っている。日本が実効支配する尖閣を騒ぎ立てて領土問題を世界に知らしめた慎太郎は大ばか者。中国の思う壺である。
      慎太郎は尖閣でなく竹島に上陸を試みるべきだった。こんな馬鹿と手を組んだ
      橋下も支持率が低迷し今頃後悔しているだろう。今回の選挙は本当に選択肢が
      ない。日本がどんどん沈んでいくのは誠に悲しい。
    • 3. woods
    • 2012年12月12日 18:38
    • 洗足池さん、言葉足らずで申し訳ありません。
      私自身は金融円滑化法の導入に大反対でしたし、企業の延命という意味では、速やかに退場していただくべき企業は沢山あってしょうがないかなと思います。それが資本主義ですから。
      ただ、ちょっと勘違いされておられるようですが、税金が導入されるのは最終的に倒産してしまった企業の貸付を銀行が保証協会等に代位弁済してもらい、それを保険によって補っていくときに税金が投入されていくシステムだったと思いますが。確か平成11~12年の時の貸し渋り対策資金で、2~3兆円が焦付き税金を投入してると理解してます。
      私が問題に思ったのは、そういうことではなく、選挙後のことで、今のままでいくと、かなりの確立で現在の野党第1党が勝つでしょうが、この円滑化法で延命出来てる内の5万社位が来年の4月以降にバタバタ倒産するような事態になったら、それをマスコミとか野党が、失政だとすさまじいバッシングをするのではないかということです。
      それから、私は石原さんはファンでも何でもないですよ。
      最後に資本主義なので退場して頂く企業は沢山あってもしょうがないと先述してますが、今のデフレの世の中、特に地方の中小企業は、本当に仕事がなく仕方なく支払い延長を申し込んでいるところも多いので、早く景気刺激策をして頂き、正常な世の中になって欲しいと思います。だからこそ、国土強靭化で、全国の経済がまわるような政策を考えているところに長く安定した政権を担って欲しいと思っているだけです。
      これで回答になりましたでしょうか?
    • 4. 日比野
    • 2012年12月12日 21:43
    • woodsさん、こんばんは。コメントありがとうございます。
      金融円滑化法案の停止に関しては、ちょっと調べてみますね。後日改めてエントリーの形でご返信させていただきますので、少しお時間ください。
    • 5. woods
    • 2012年12月14日 09:44
    • 日比野様、
      コメントで少しお返事を頂けるものと思っておりましたので、
      わざわざエントリーの形で返信頂けるとは、非常に恐縮です。
      ありがとうございます!
      日比野様の情報の的確さは参考になりますので、今後とも宜しく
      お願い致します。
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