今日は、昨日のエントリーの補足になります。




1.サンデー毎日のデタラメ記事

10月2日、自民党の安倍総裁は、「サンデー毎日」12年10月14日号の「『津波は大丈夫』の消せない大罪」と題した記事を「まったくのデタラメ捏造記事」と抗議した。

くだんの記事は、日本共産党の吉井英勝衆院議員が、安倍氏の首相在任中の06年12月13日に提出した質問主意書を取り上げ、主意書で「地震や津波で送電設備が倒壊すると外部電源が得られなくなり、非常用のディーゼル発電機やバッテリーも動かなければ、原発の冷却機能が失われる恐れがある」として、津波に襲われた福島第1原発を「予言」するような指摘をしたにも関わらず、安倍内閣は「お尋ねの評価は行っておらず、原子炉の冷却ができない事態が生じないように安全確保に万全を期している」と政府答弁書で回答したと報じた。

これに対して安倍総裁は、自身の事務所のフェイスブックで、「吉井議員の質問主意書には『津波で外部電源が得られなくなる』との指摘はなく、さらにサンデー毎日が吉井議員の質問に回答として引用した政府答弁書の回答部分は別の質問に対する回答部分であって、まったくのデタラメ捏造記事という他ありません」と抗議している。

この抗議について、サンデー毎日の潟永秀一郎編集長は、「正しい報道であったと認識しております」とコメントしているようだ。

問題となった、質問主意書とそれに対する答弁書は、リンクを見ていただければと思うけれど、該当部分の概要は抜粋編集すると次のとおり。
○大規模地震時の原発のバックアップ電源について

Q1-1.原発からの高圧送電鉄塔が倒壊した場合でも、外部電源が得られるようにする複数のルートが用意されている原発はあるのか。高圧送電鉄塔が倒壊した事故が原発で発生した実例と原因を明らかにされたい。
A1-1.我が国の実用発電用原子炉に係る原子炉施設の外部電源系は、二回線以上の送電線により電力系統に接続された設計となっている。外部電源から電力の供給を受けられなくなった場合でも、非常用所内電源からの電力により、停止した原子炉の冷却が可能である。

Q1-2.落雷による高圧送電線事故の結果、原子炉緊急停止になった実例を示されたい。
A1-2.最近のものでは、平成15年2月19日に日本原子力発電株式会社敦賀発電所一号炉の原子炉が自動停止した事例がある。

Q1-3.自家発電機の事故で原子炉が停止するなど、バックアップ機能が働かない原発事故の事例があるか示されたい。
A1-3.そのような事例はない。

Q1-4.スウェーデンのフォルクスマルク原発1号の事故例を見ると、バックアップ電源が四系列あるなかで二系列で事故があったのではないか。バックアップ電源は一系列にディーゼル発電機とバッテリーが一組にして設けられているが、事故のあった二系列では、ディーゼル発電機とバッテリーの両方とも機能しなくなったのではないか。
A1-4.フォルクスマルク原発の事故は、保守作業中の誤操作と、バッテリー保護装置の誤設定によるものである。

Q1-5.日本の原発の約六割はバックアップ電源が二系列ではないのか。二系列で事故が発生すると、機器冷却系の電源が全く取れなくなるのではないか。
A1-5.日本の原発は、外部電源に接続される回線、非常用ディーゼル発電機及び蓄電池がそれぞれ複数設けられている。また、我が国の原子炉施設は、フォルスマルク発電所一号炉とは異なる設計となっているため、同様の事態が発生するとは考えられない。

Q1-6.大規模地震によって原発が停止した場合、崩壊熱除去のために機器冷却系が働かなくてはならない。津波の引き波で水位が下がるけれども一応冷却水が得られる水位は確保できたとしても、地震で送電鉄塔の倒壊や折損事故で外部電源が得られない状態が生まれ、内部電源もフォルクスマルク原発のようにディーゼル発電機もバッテリーも働かなくなった時、機器冷却系は働かないことになる。この場合、原子炉はどういうことになっていくか。原子力安全委員会では、こうした場合の安全性について、日本の総ての原発一つ一つについて検討を行ってきているか。また原子力・安全保安院では、こうした問題について、一つ一つの原発についてどういう調査を行ってきているか。調査内容を示されたい。
A1-6.地震、津波等の自然災害への対策を含めた原子炉の安全性については、経済産業省が審査し、その審査の妥当性について原子力安全委員会が確認している。御指摘のような事態が生じないように安全の確保に万全を期している。

Q1-7.停止した後の原発では崩壊熱を除去出来なかったら、核燃料棒は焼損(バーン・アウト)するのではないのか。その場合の原発事故がどのような規模の事故になるのかについて、どういう評価を行っているか。
A1-7.経済産業省としては、お尋ねの評価は行っておらず、原子炉の冷却ができない事態が生じないように安全の確保に万全を期しているところである。

Q1-8.原発事故時の緊急連絡網の故障という単純事故さえ二年間放置されていたというのが実情である。一つ一つは単純な事故や点検不十分などのミスであったとしても、原発の安全が保障されないという現実が存在しているのではないか。
A1-8.原子炉施設の安全を図る上で重要な設備については、法令に基づく審査、検査等を厳正に行っていると
ころであり、こうした取組を通じ、今後とも原子力の安全確保に万全を期してまいりたい。


平成18年12月13日「質問第二五六号」および平成18年12月22日「答弁第二五六号」より抜粋編集
問題となっているのは、おそらく、Q1-6及びQ1-7の部分になるかと思うけれど、この質問主意書中のQ1-1からQ1-8までの質問は「大規模地震時の原発のバックアップ電源について」に関するものであり、バックアップが効かなかったときの対処について問うている。




2.サンデー毎日の記事を解析する

ここで、くだんのサンデー毎日の記事の該当部分を引用して、上記質問および答弁のどれに対応するかを整理してみると次のとおりになるかと思う。
・吉井氏が安倍内閣に投げかけた質問は16項目。自信や津波で送電設備が倒壊すると外部電源が得られなくなり、非常用のディーゼル発電機やバッテリーも動かなければ、原発の冷却機能が失しなわれる恐れを指摘。(Q1-6に該当)

・核燃料棒が焼損した場合なのに想定される原発事故の詳細を説明するよう求めた。(Q1-7に該当)

・しかし、9日後の22日に閣議決定された答弁書は素っ気ない回答が並んだ。「お尋ねに評価を行っておらず、原子炉の冷却が出来ない事態が生じないように安全確保に万全を期している」津波に襲われた福島第一原発を"予言"するような指摘を、十分な調査をせずに「大丈夫」と受け流したのだ。 (A1-7に該当)
もし、サンデー毎日の記事の問題点があるとすれば、質問趣意書の紹介でQ1-6とQ1-7の二つの質問を掲載しているにもかかわらず、その答弁の答えにA1-7だけしか載せていないこと。

質問が2つあれば、答えも2つ載せなければいけないのに1つしか載せていない。

これでは、さも安倍政権時にQ1-6で質問している「地震や津波で電源を失った場合に、原発の冷却機能が失われること」について、その評価をしてなかったように誤解される恐れがある。

そして、質問主意書をもう少し正確に読んでいくと、電源を失った場合の想定は、「地震による高圧送電鉄塔が倒壊」又は「落雷による高圧送電線事故」で外部電源を喪失し、更に内部電源も効かなくなった場合であり、厳密に言えば、「津波による電源の喪失」は想定sれていない。

また、答弁書で行なっていない、と回答している「お尋ねの評価」とは、「原発事故時に炉心の崩壊熱を除去出来ず、核燃料棒が焼損した場合の事故の規模がどれくらいになるか」という評価であって、「原発の冷却機能が失われること」の評価じゃない。

つまり、Q1-6とQ1-7は完全に別の質問であって、その答えはそれぞれ別の物として記載しなくちゃけないということ。サンデー毎日はそれを区別していない。

では、「原発の冷却機能が失われる」評価があったのかといえば、冷却機能の損失は電源の喪失によって引き起こされるのだから、これは要するに「原発の電源を喪失するかどうか」という評価とほぼイコールになる。だけど、そんなのは質問主意書の最初のQ1-1でとっくに質問している。

その回答は、外部電源を失っても、内部電源で冷却可能であるというものなのだけれど、更に、Q1-6で、その内部電源も駄目になったらどうするのかと問われ、それについては、「経済産業省が審査し、原子力安全委員会が確認することで、冷却できない事態が生じないように万全を期している」としているから、サンデー毎日のいう、冷却機能が失われることについての対策および評価をしていないという指摘は当たらないと思われる。

従って、サンデー毎日の記事の書き方は、正確性を欠いていると言わざるを得ず、少なくとも、誤解を生む危険があると言える。だから、安倍総裁の抗議は妥当だと思う。

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3.情報格差によってネット優位を確立せよ

まぁ、ちょっと前置きが長くなり過ぎたけれど、筆者が注目したいのは、安倍総裁はマスコミに対する抗議を、記者会見やマスコミへの文書およびFAXなどではなく、ネット上のSNSであるフェイスブックを使ったという点。

これは、情報の発信元、すなわち一次ソースが、マスコミではなく、ネットになったということを意味してる。「ネットコンテンツがマスコミを凌駕する」のエントリーでも指摘しているけれど、この構図は2年前の尖閣沖衝突事件で、衝突時の映像が政府でもなく、マスコミでもなく、Youtubeにアップされたのとよく似ている。

当時、マスコミはYoutubeに上がった衝突動画を後追いして流していたけれど、情報の発信元がネットであり、そこにしか情報がないということになれば、マスコミもネットから情報を拾うしかない。これはマスコミよりもネット情報が優位に立つことを示してる。

安倍総裁の控えめ戦略」のエントリーで、安倍総裁は、マスコミに潰されないように、しばらくは控えめな発言をしていくのではないかといったけれど、マスコミに対して控えめに発言する一方、フェイスブックや自民党の「CafeSta」のようなネット上のライブチャンネルでは、本音というか、普段マスコミに話さないようなコメントをするとしたらどうなるか。

当然、情報価値は、マスコミよりもネットの方が上になるし、マスコミとてネットから情報を取ってくるしかない。マスコミがその情報を報道するときには、フェイスブックでとか、「CafeSta」でとか、ネットが情報ソースであることを明かす他ない。これまで、「どこどこの講演で」とか、「いついつの記者会見で」といった前置きが全部「ネットの何々」になる。たとえ部分的であるにせよ、マスコミはネットの優位性を認めざるを得なくなる。

このように、安倍総裁はフェイスブックや「CafeSta」ではよく本音を話す、ということが世間に浸透していくと、興味のある人は、ニュースを見るよりも、自分で安倍総裁のフェイスブックなんかをチェックするようになる。一次ソースを直接見れる直通路が出来上がる。

予め、一次ソースを見たり、読んだりしていれば、例えば、今回のサンデー毎日のように、誤解を誘導しかねない記事を目にしたとしても、おかしいぞと気づく可能性が高まるし、また、本人の反論や、他の人のコメントを目にしたりすることで、より多角的な視点で見れたりすることだって十分ある。

その結果、マスコミの"報道する自由"或いは"報道しない自由"といった、一種の情報操作に対する耐性を身につけていくようになるだろう。これは地味なようで大きなこと。

また、SNSなんかだったら、ぶら下がりや記者会見と違って、即座に答えなくていい。一拍置いて、考えてから発言できるから、失言のリスクもずっと低くなる。

一体誰が入れ知恵したか知らないけれど、もし、これを意識してやっているとしたら、相当の手練れだと思う。

ただ、だからといって、ネットでなんでもかんでも言いたい放題言ってしまうと、やっぱりバッシングされてしまうから、やり過ぎは自重すべきだけれど、マスコミには慎重に発言して、ネットで、少し踏み込んだ発言をする。表のマスコミとネットとで情報格差をつける。

もしかしたら、これがマスコミによるバッシングを回避しながら、国民に本音を伝える手段の一つになるかもしれないと感じている。


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