何回か続いた中国海洋戦略シリーズも、今日で最後です。
中国では、着々と開発をすすめる空母以上に、現実に世界に影響を与える存在が、急速に増強されている。それは「揚陸艦」。
揚陸艦とは、港や岸壁などといった、港湾設備がなくても、自力で揚陸する能力を持ち、人員や物資輸送が出来る軍艦のこと。具体的には、海岸に直接乗り上げたり、搭載したヘリコプターやホバークラフト、上陸用舟艇などで、歩兵及び装甲戦闘車両などを上陸させる。尤も、現在は、船が大型化していることと、肝心の揚陸艦自体が敵の砲火に晒されるのを防ぐ目的から、ヘリコプターや上陸用舟艇による揚陸が主流になっている。
揚陸艦が多数あるということは、陸軍などの戦力を大量に島々に投射できることを意味するから、海を隔てた他国を占領するだけの力を持っているということになる。そして、空母とセットで揚陸艦が攻めてくると、迎撃側の他国とて、揚陸艦を攻撃することは難しくなる。
中国は、2006年から「071ドック型揚陸艦」と呼ばれる、2万トン級の揚陸艦の建造を進めていて、8隻建造する計画であるという。1番艦である「崑崙山」は2006年12月に進水、2007年11月に就役しているのだけど、2010年11月に2番艦「井崗山」が就役、2011年2月に3番艦、2012年2月に4番艦が進水と続々建造されている。
071型揚陸艦は、アメリカ海軍の最新鋭ドック型輸送揚陸艦サン・アントニオに似た外見で、ステルス性を重視した艦容になっており、全長210m、全幅26.5mで揚陸艦としては細長い船体で、高速性に優れている。最高速力は23ノット、航続距離は18ノットで、6000海里とされ、船体規模から類推して戦闘車両15~20両、兵員400~800名程度を輸送することが出来ると見られている。
※海兵隊1068人が乗艦できるという情報もある。
船体中央部側面にはサイドランプが設置され、車輌の搭載や物資搬入が可能。また、車輌甲板の後部にあるウェルドックには、新開発の726型エアクッション揚陸艇を最大4隻搭載できる。
また、ヘリコプター格納庫にはZ-8輸送ヘリコプター2機を収納し、最大4機のヘリコプターを搭載する床面積が確保されている。更に、艦後部の発着甲板からは、2機のZ-8ヘリコプターの同時離発着艦が可能で、ヘリコプターの運用能力が重視された設計となっている。
そして、更に、この071型揚陸艦より航空機運用能力を向上させた排水量2万トンほどの081型ヘリコプター強襲揚陸艦(LHD)も建造段階にあるとも言われている。
今年の3月に、バンコクで開かれた、「軍事総合見本市2012」で、中国船舶工業公司が新型ヘリコプター搭載揚陸艦(LHD)の模型を出展し、軍事関係者は、これを、081型ヘリコプター強襲揚陸艦ではないかと推測している。
081型強襲揚陸艦の詳細は定かではないけれど、一部では、フランスのミストラル級強襲揚陸艦(全長199メートル、最大幅32メートル。満載排水量は21500トン。)と同サイズで搭載能力もほぼ同じではないかとされている。
出品された模型は設計やセンサは071型揚陸艦に近いものの、装備は730型近接防空機関砲2基と短距離艦対空ミサイル「FL-3000N」2基のほか、主砲となるAK-176を搭載しているという。
軍事専門家は、中国のこうした海軍力の増強は、中国国内の造船工業の繁栄が、新しい艦艇の性能向上の後押しをしていると指摘する。
日本は昔から世界に冠たる造船技術を誇っていたのだけれど、今や、その技術も海外流出の危機にある。
近年、三菱重工業は、円高による業績悪化から、その造船技術を相次いで、海外造船メーカーに外販している。昨年12月には、商船の生産・設計に関する技術について、インドの機械大手ラーセン・アンド・トゥブロに供与することで合意しているし、今年の3月12日には、中国・上海の太平洋造船グループと積載量8万2千トン級のばら積み船の共同開発し、三菱重工が燃費の良い新型船の設計図面を提供するという技術支援の契約を結んでいる。
更に、3月21日には、中国の船舶用甲板メーカーの江蘇政田重工向けに、2008年にデッキクレーンの製造権を供与したことに続いて、かじ取り機と甲板機械の製造・販売権を供与することで合意している。
貧すれば鈍する。企業は生き残りのために、売れるものは、形振り構わず売ってしまう。この辺りの技術流出については、国がきちんと目を配らないといけない。
国の繁栄と国防力は密接に連関している。日本も"下山の思想"だなんて下らないことを言っていないで、更なる繁栄と国力に見合った防衛力を持つべきときが来ている。
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コメント
コメント一覧 (1)
ラビア・カーデルさん 靖国参拝、東京都の尖閣基金に寄付有難う御座います。
【Free Uyghur】ウイグル支援、中国の覇権と闘うシンポジウム
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