今日はこの話題です…。
10月20日、橋下大阪市長と在特会の桜井誠会長との公開意見交換会が大阪市役所で行われた。
この意見交換会はニコニコ生放送で生中継されたのだけれど、政治活動家の瀬戸弘幸氏によると、会場には、かなりの報道関係者が詰めかけていたのだけれど、開始前、在特会の桜井会長は、マスコミを徹底批判していたそうだ。
そして16時過ぎに橋下市長が入室し、公開意見交換会が行われたのだけれど、もう最初からヒートアップ。互いに声を荒らげ「あんた」「お前」などと終始罵倒し合う展開となり、30分の予定が7分で終了。
意見交換会の様子は、もうネットに動画が上がっているから、そちらで確認していただければよいと思うけれど、意見交換でも討論でも何でもない。互いの主張は平行線どころか「ねじれの位置」。互いの意見が同一平面にすら乗ってない。全く議論がかみ合ってない。
ネットの意見をちらちら見ると、「橋下逃亡」だとか「橋下の言い分が具体性なさすぎな上に話逸らそうとしてて情けなかった」とか、「これじゃどっち側の人も納得することができない」とか「痛み分けに見えた」などなど、やや橋下市長が負けだという声が多いように感じた。また、橋下市長の横柄な態度についても、首を捻る発言もちらほら見受けられた。
筆者も、実のある討論を期待していただけど、意見交換会の動画をみて、肩透かしを食らったというか、ちょっとがっかりしたのが正直なところ。
だけど、今回の意見交換会だけをみれば、そう見えるかもしれないけれど、これは、もう一段遠くから眺めてみると、橋下市長は計算づくで、このような喧嘩腰の対応を取ったのではないかと見る。
橋下市長が非常に弁が立つことについては、多くの人が認めるところだと思うけれど、橋下市長は、弁護士時代、自分の「交渉テクニック」をいくつかの本にして纏めている。
こちらのまとめサイトに「橋下市長に学ぶ!交渉で必ず結果を出すための7つのルール 」として橋下流交渉テクニックが紹介されている。次に見出しだけ引用する。
1. 最初に大きく要求する個々の内容については、まとめサイトを見ていただければと思うけれど、橋下流交渉術の肝は、見せかけの「譲歩」を上手く演出することにある。
2. 交渉の決め手は「譲歩」だ
3. 譲歩は高く売れ
4. 『仮想の利益』をちらつかせる
5. 「たとえ話」で議論を誘導する
6. 不利な前言は上手に撤回しろ
7. 最後は爽やかにしめる
橋下氏の著書『図説・心理戦で絶対に負けない交渉術』から、それについて述べた部分を次に、一部引用する。
「交渉において相手を思い通りに動かし、説得していくには、はっきり言って三通りの方法しかない。"合法的に脅す"、"利益を与える"、"ひたすらお願いする"の三つだ。そのなかで、最も有効なのは"利益を与える"ことである。このように橋下氏は、交渉で最も有効なのは"利益を与える"ことであり、その"利益"であるところの"譲歩"とそれに伴う苦労は、徹底的に強調・演出し、相手に錯覚させろ、と述べている。
…この場合の利益には二通りある。一つは文字通り相手方の利益。もう一つは、実際には存在しないレトリックによる利益だ。不利益の回避によって感じさせる"実在しない利益"とも言える。
…相手方に利益を与えるということはこちらの譲歩を示すということだ。譲歩とそれに伴う苦労は、徹底的に強調し、演出すべきだ。譲歩とはよべない些細なことであっても、さも大きな譲歩であるように仕立て上げるのである。そうすることで、相手方の得る利益が大きいものであると錯覚させることができるからだ。これも交渉の技術である。
…大きな利益を得た、と相手方に感じさせるように、こちら側の苦労を強調するのである。その演出に、タフネゴシエーターは腕をふるっている。詐欺にならない程度に、ではあるが。」
橋下氏がいうように、相手が大きな利益を得たと上手く錯覚させる演出に、タフネゴシエーターが腕をふるっているのかどうかは分からない。だけど、少なくとも橋下氏は、その演出をすべきだと考えていることは間違いない。
この観点から、今回の意見交換会を見ると、橋下市長は、この「譲歩」。しかも"実在しない利益"を、在特会に与えるための下準備として今回の意見交換会を位置づけていたのではないか。
これは丁度、先に紹介した、7つの橋下流交渉テクニックの1番目、「最初に大きく要求する」に相当する。
つまり、「在特会なんて話し合う価値もない」、「桜井とは会うだけ無駄だ」という態度で応対し、"橋下市長と会談する"ということ自体を、高く吊り上げて吹っかけた、ということ。
もし、この後で、橋下市長が記者会見やぶら下がりなんかで、桜井氏との意見交換会の一幕について、「…いや僕も大人げなかった。ウンタラカンタラ…。在特会の人がね。また話してもいいと言って下さるのならね。僕は応じますよ。ナンタラカンタラ…」とでもいえば、それだけで周りは橋下市長が在特会に「譲歩」した、と勘違いする。
しかもそれは、橋下市長が何一つ譲ることのない"実在しない利益"。たったこれだけで、橋下市長は、在特会に対して「譲歩」を高く売ることが出来る。
だから、今回の意見交換会は、橋下流交渉テクニックの最初の1つにしか過ぎず、ただの"撒き餌"。
だから、もし、この後、橋下市長が「僕も大人げなかった。また話し合いましょう」なんて"みせかけの譲歩"を演出してきたとき、在特会の桜井氏がこの"撒き餌"に喰いついたまま「橋下は逃げた」とか、「橋下は臆病者だ」と叫び会談に応じない姿勢を見せたなら、その瞬間から今度は在特会が悪者になる。
一方、そうかといって、2度目の会談に応じたとしても、橋下市長が"実在しない利益"を使って、「見せかけの譲歩」を示した後だから、今度は在特会も少しは譲歩しろよ、という雰囲気になる可能性だって十分にある。
つまり、どっちに転んでも、橋下市長優勢の状況から始まることになる。橋下市長は、在特会に対して、なんとも凄い撒き餌というか、罠を張った。
そう考えていくと、在特会の桜井氏は、橋下市長の挑発に乗って、激昂した時点で、"橋下の罠"に、もう半分くらいは嵌ったと言えるのかもしれない。
だから、今回の意見交換会という"戦術"では、桜井氏が勝ったという見方も出来ると思うけれど、もう一段上の"戦略"からみると、既にもう橋下市長が優位に立っていると言える。
最後には、橋下市長が一枚上手だったという結論になりそうな予感がする。
コメント
コメント一覧 (9)
密室での交渉なら、日比野さんの指摘にも一理あります。が、橋下氏は弁護士ではなく行政の長として、相手を招いて公開討論を持ち掛けたのですから、これでは話になりません(まぁ、ドロンパの対応も大人げないと言えるかもしれませんが)。しかも、在特会の方は、既に出版によって手の内を明らかにした状態です。その主張に問題があるなら、著作を読んで問題点を洗い出し、論破すればいいだけです。
結局、討論すること自体が在特会の主張を認め、周知することに繋がってしまうという民団ないし旧民主党系の主張を受け入れ、討論自体を潰しにかかったと考えるの妥当ではないでしょうか。
橋下市長は、「大阪にくるな」と発言していましたので、話し合いの場所は、大阪以外になりますが、桜井会長の住む所まで会いに行くなら面白そうです。
回りが骨のない政治家ばかりだとこの様な
策略家が過大に評価される.
今回は、相手と同じ土俵に立つやり方、つまり在特会の運動の手法と同じ手法を使うべきじゃなかったと思います。
一夜明けた今日の橋下さんの発言を聞いても、なんだかなぁという感想しかありません。
週刊朝日との血脈論争で言論の自由と差別のギリギリのところを突いて世間に喚起した、
あのときのキレッキレの橋下さんはどこに行ってしまったのかと。
残念でした。
今回の件での教訓は、耳障りが良くて威勢のいいことを大声で叫ぶアジテーターに高い評価を与えて持ち上げてもロクな結果を生まないということではないでしょうか?
会談では激昂して全否定してみせた上で、翌日の会見で在特会の主張を部分的に認め、「譲歩」を高く売り付ける・・・。
今後「譲歩」の代償として何を在特会に求めるのかが見どころですね。
しかし、在特会側の宣伝次第では「譲歩」ではなく「敗北して相手の言い分を認めた」と受け取られる可能性も大きいと思います。
一市民団体相手に使うにはリスクが大きすぎる気はします。
いずれにしても、在特会は「相手が譲歩したからこちらも譲歩する」という駆け引きはあまり使わないように見えます。明確な目標を設定して邁進し、相手が道を空ければそれでよし、立ちはだかる者は政治家だろうがマスコミだろうが蹴散らして突き進んでいくのではないでしょうか。
まるで、朝鮮人が、直接の相手では無く、周囲の人に同情を買うようにアピールしているのと同じ体質。
橋下市長
・ヘイトスピーチはやめろ。
・在特会のデモは、京都で裁判沙汰になっており容認出来るものではない。
・訴えたい事があるなら、国会議員などの政治家に訴えろ。もしくは選挙に立候補すべき。
・韓国人、朝鮮人などと一括りに扱うべきではない。
桜井会長
・我々のデモは言論の自由で保障されている。
・政治家に訴えるため、今日は政治家の一人である橋下市長と議論しに来た。
・政治は嫌いなので、立候補するつもりはない。
・先にあちらが、日本人を一括りにして差別してきた。
といった所でしょうか。
お互い、揚げ足を取ったり、非難の応酬が始まったりと、期待していただけに残念に思いました。
あれでは議論ではなく、ただの口喧嘩です。