今日は、駄ネタです。
7月9日から10日にかけて、中国の人民日報系の一部ニュースサイトが「中国の第6世代戦闘機、殲28が世界を震撼させる! 場合によっては太陽系を救える」との見出しで、中国が開発中とされる新型戦闘機の殲28(J-28)の記事を掲載した。
第6世代戦闘機とは、現在の第5世代と呼ばれるステルス戦闘機の次の世代の戦闘機のことを指すのだけれど、何を持って第6世代とするのかの世界的に明確な定義はない。
日本が開発を進めている次世代戦闘機「心神」は第6世代と位置づけてられているのだけれど、第5世代の能力に加え、対ステルス性能、情報・知能化、外部センサー連携、瞬間撃破力といったIT性能を大幅強化したものと定義している。
一方、アメリカ空軍と海軍も、それぞれ次世代戦闘機の要求性能水準の作成を始めているのだけれど、エンジンについては、先行開発が進んでおり、エンジン開発を請け負っているメーカーの一つジェネラルエレクトリック(GE)の関係者は、「第6世代機を定義するのはエンジン含む推進系だ」と定義しているようだ。
アメリカ海軍は、空母から発艦する迎撃ミッションで、すぐ飛び出して数百カイリ先に高速で進出するというコンセプトから、現行機を上回るより航続距離に加え、高速飛行、高加速力、亜音速巡航時での高効率飛行などの性能を要求しているらしく、それを可能とするために、変動サイクルエンジンという技術の開発を進めている。
ジェットエンジンを搭載した飛行機では、機体が進むことによって生じる気流と、エンジンから放出される高圧の排ガスとの間に速度差できるのだけれど、この速度差が大きければ大きいほど、抵抗が増えて、燃費が悪くなる。
そこで、ジェットエンジンの空気取り入れ口にファンを設けて、気流と排ガスの間に、ファンによって作り出したバイパス気流を挟み込み、気流と排ガスの速度差による抵抗を軽減する技術が用いられるようになった。これを「ターボファンエンジン」と呼び、バイパス気流とジェット燃料の燃焼室に流れる空気の比を「バイパス比」という。
この「バイパス比」を高くすると、気流との排ガスとの間の速度差が小さくなり、燃費が向上するのだけれど、それが効果を発揮するのは、音速手前迄(M0.9)であり、機体が音速を超えると今度はバイパス流を作るためのファンが抵抗となってしまい、推進効率(燃費)が落ちてしまう。
戦闘機はその性格上、低速から超音速まで要求されるから、無暗に高バイパス比とはできず、結果、超音速戦闘機のエンジンは低バイパス比にするのが一般的となっている。
このバイパス比を機体の速度・高度に合わせて最適な値に可変できるようにするのが「変動サイクルエンジン」。変動サイクルエンジンは「適応型ファン」という新型ファンによってバイパス比を自由に変えることができるという。
燃費が良いというのは、航続距離が長くなるということでもあるから、「変動サイクルエンジン」を搭載することで、これまで以上に航続距離の長い戦闘機の開発が可能となる。
日本はIT性能を強化した機体を第6世代といい、アメリカはエンジン性能を高めたものを第6世代という。お互い自分の得意領域で性能アップさせたものを次の世代だと主張しているのは興味深い。
さて、ちょっと話が脱線したけれど、くだんの人民日報系サイトの殲28の記事は次元が違った。「中国は木星大気中に核兵器を配備する計画がある。…米国は月や火星に核弾道ミサイル基地を作る計画がある。…米国は最近になり、中国が土星大気中に核弾道ミサイルを配備するなら、絶対に座視しないと表明。…米国は太陽を滅ぼす爆弾を急ピッチで開発中」などとし、「米国が太陽を滅ぼすミサイルを発射しても、殲28は短時間で追いつき同ミサイルを撃破。太陽系全体を救うことになる」など、一体何のSFですか、と聞きたくなるようなファンタジーな内容。
既に記事は削除されたそうなのだけれど、多くのメディアがこれを転載したため、中国国内でも話題となった。この記事を転載した大手ポータルサイト「網易」には、「SFか? ハリウッド作品か?」、「どういう頭だ?」、「まず、自分を救うんだな。アーメン」、「頭が破壊されたら、治す薬はない。人民網のスカタン」といった、嘲笑コメントが殺到したようだ。
まぁ、木星に核兵器を配備するなんて、木星連合を作るわけでもあるまいし、出鱈目もいいところだと思うけれど、なぜこれが、人民日報系のサイトに出てしまったのかは少し気にはなる。まぁ、これも推理小説やなんかだと、荒唐無稽に見える記事を"暗号"の代わりとして使ったなんてオチがあるかもしれないけれど、それでもないだろう。
評論家の石平氏は、先月26日、人民日報が「ミスせず、仕事せず。このような幹部に何の価値があるか」と題する論評を掲載し、「今、一部の幹部は仕事への情熱を失い、仕事ぶりが手ぬるくてやる気はまるっきりない。ミスさえ起こさなければよいと思って、進んで仕事しようとはしない。重要な仕事でも細小のことであるかのように取り扱い、急を要する仕事でも先延ばしにする。その結果、本来なら推進すべきプロジェクトは停止してしまい、完成すべき仕事は放棄されたままである」と共産党幹部の仕事の怠慢ぶりを暴露する記事を掲載したことを取り上げ、習近平指導部が、腐敗摘発運動を推進していることに対し、地方幹部が実質上の集団的ボイコットに走っているのではないかと指摘している。
もしかしたら、習近平指導部が、地方幹部に「ミスをするくらい積極的に仕事をしろ」と皮肉る意味で、こんな荒唐無稽な記事を書かせたというのは、下衆の勘繰りか。
ただ、今後、この記事を載せた人民日報の記者なり幹部なりが処分されるかどうかをみれば、そうだったのかどうかの目安にはなるかもしれない。
だけど、同じく一見、"荒唐無稽"であっても、日本が発信するとなると、世間の受け取り方が違うこともある。
7月9日、創通、サンライズ、バンダイは「ガンダム GLOBAL CHALLENGE」なるプロジェクトを発表した。このプロジェクトは、全高18mの実物大ガンダムを"動かす"ことを目的とするもので、「機動戦士ガンダム」40周年を迎える2019年に18mのガンダムを動かす事を最終目標に活動を行なっていく。
18mのガンダムを動かすことを目指す「リアルエンターテイメント部門」と、バーチャル空間でガンダムを動かすなど、様々な方向での可能性を模索する「バーチャルエンターテイメント」の2部門で、日本だけでなく、世界中からアイディアを求めて審査を行った上で、2016年末に基本プランを決定し、実際の作業に入っていくという。
ガンダムの生みの親である、アニメ監督の富野由悠季氏は、「ようやく絵空事で考えたものが形になる。公募という形でこれまで観客だったかもしれない人達も巻き込んで、新しいエンターテイメントのフィールドを構築できるかもしれないと思っています。せめて1/1を動かしてみたいということで、次のエンターテイメントの地平が見えるかもしれない。問題は俺はもう70歳で5年後はどうなっているかちょっとドキドキしているところもありますが、もし次のエンターテイメント、工学のあり方が見えれば素敵だと思っています」とコメントしている。
ネットでの海外の反応では、「『動く』ってのはどういうことかな?1/1ガンダムの彫像はもう動いてたんだし。『歩行する』ってことなのか?そうならスゴイことだ。」とか、「我々はあきらめたけど、日本はそうでなかった。これは日本が世界中に彼らの素晴らしさを知らしめる時に起きることなんだよ。」とか、中々、好意的な書き込みがあり、くだんの人民日報の記事とは明らかに反応が違ってる。
まぁ、"木星なんちゃら"と"実物大ガンダム"を動かすとでは、その荒唐無稽度というか、現実味に結構差があるから、こんな反応も当然なのかもしれないけれど、それでも、中国がいう"絵空事"と日本がいう"絵空事"とでは、世界が受け取る信頼度が違うのではないかと思う。それは、これまで日本が成し遂げてきた技術革新という実績と信頼がその裏打ちとなっていることは間違いない。
コメント
コメント一覧 (3)
また、ガンダムファンは世界中に居ますし、ロボットの研究者もガンダムを動かしてみたいと思う研究者も居るでしょうし、これがビジネスになるのであれば、資本主義の黎明期に熱狂的な憧れで巨大客船を建造して大西洋航路を作ったり、鉄道網を引いたり、未来世界へ投資するのが投資家のみならず民衆も同じ夢を共有していたと思いますが、これと同じ事を行うには宇宙開発くらいでしょうが、その入り口としてロボットがあり、ガンダムへと繋がっていて、つまり、夢を共有する人達が居るのが、実現可能性をリアルにしていると思います。
支那の記事の落ちとして、トンデモな記事を読みもせず、確認もせず、盲印で公開承認をしていたのですから、無能な責任者をチェックする仕掛けかもしれませんね。
ホンダジェットの高性能はいろんなところで指摘されていますね。戦闘機へのフィードバックもあるかもしれませんね。
>夢を共有する人達が居るのが、実現可能性をリアルにしていると思います。
これについては、これまでも何度か指摘したことがありますけれども、そのとおりだと思います。ドラえもんにしてもガンダムにしても、「イメージの共有化」はとても重要なポイントだと思いますね。
>トンデモな記事を読みもせず、確認もせず、盲印で公開承認をしていたのですから、無能な責任者をチェックする仕掛けかもしれませんね。
なるほど。こちらのほうが信憑性ありそうですね。「罠」を仕掛けたということですか。う~ん、あの国ならやりかねないですね。^^;)
中国人の実力は口で言ってることの十分の一。
日本人の実力は口で言ってることの十倍。