今日はこの話題を簡単に…



7月8日、韓国・サムスン電子は2014年4~6月期の決算見通しで、営業利益が7兆2000億ウォンと、前年同期で24.45%減の大幅減益になると発表した。

売上高も10%減って、2005年以来9年ぶりの減収。証券市場はこの決算を「アーニングショック(衝撃的な業績)」と呼んでいるそうだ。

その最大の原因は、スマホ市場での急成長が止まったことなのだけれど、サムスン電子は大幅減益の理由として「為替による採算性の悪化」、「中国と欧州市場でライバル企業との競争激化」、「スマホ事業の不振が、"社内販売"事業に影響(サムスンはスマホ基幹部品であるシステムLSIやディスプレイといった基幹部品を内製している)」の3つを挙げている。

2013年11月、アメリカの市場調査会社IDC(International Data Corporation)が、スマホ市場に関する調査結果を発表しているけれど、それによると、2013年のスマホの世界の出荷台数は前年実績から39.3%増え、10億台を超える見通しで、今後は年平均18.4%の成長率で伸び、2017年には17億台に達すると予測している。

但し、スマホの普及度合いで見れば、多くの先進国で飽和状態に近づきつつあり、世界全体の需要は、低価格端末を中心に新興国市場押し上げると見ているようだ。

サムスンは、どちらかといえば高級スマホを得意としているのだけれど、買い替え需要が中心となる先進国では、サムスンとアップルの2強がシェア争いを繰り広げている。

今年3月にサムスンが発売した高機能スマホ「ギャラクシーS5」は、当初、高級感を出すために、本体カバーに金属素材を使う予定だったのだけれど、部材企業から必要な数を調達できず、従来と同じ樹脂製となった。



また、「ギャラクシーS5」には、手ぶれ補正機能をデジタルカメラ並みに高める部品を使う計画もあったのだけれど、これも部品が調達できず断念している。

報道では、この手ぶれ補正部品の調達が上手くいかなかった理由は「技術がほかの競合品の開発に流用される懸念がある」ことから、日本のメーカーが供給をしなかったからだと報じている。

確かに、この辺りの部品となると、日本は圧倒的に強い。報道では、手ぶれ補正部品の詳細については特に何も書いていないけれど、スマホ用の手ぶれ補正部品というところから推測すると、おそらく「光学式手ぶれ補正機能付アクチュエーター」ではないかと思われる。

「アクチュエーター」とは、一般には、対象物を移動したり調整したりする機構のことを指すのだけれど、「光学式手ぶれ補正機能付アクチュエーター」はその名のとおり、カメラ機構を移動・調整することで手ぶれを補正する。

例えば、手ぶれによってレンズの先端が下方向に動くと、被写体からの光はレンズの光軸からズレて、フィルムに映る像が下方向にブレてしまう。このとき、レンズから入ってくる光を、途中に設けた2枚目のレンズ(補正光学系)を下方向に平行移動して、光を屈折させ、フィルムに映る像には影響しないように制御(補正)する。これを行う部品が「光学式手ぶれ補正機能付アクチュエーター」。実際の撮影では縦方向と横方向にブレが発生しうるから、アクチュエーターもそれに合わせて、上下左右に平行移動する。

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スマホ用アクチュエーターの単価は1個、数百円程度らしいのだけれど、現在、スマホ用アクチュエーター市場は世界で約1000億円とみられ、その約6割のシェアは日本勢が握っている。

今後、アクチュエーター市場は伸びていくとみられ、東京に本社を置くミツミ電機は、今年3月に、手ぶれ補正用アクチュエーター(OIS)の出荷数量を3倍にすると発表している。勿論、これは、アップルやサムスンなどのスマホ大手の搭載をにらんだ動きなのだけれど、そこまで計画を立てていたにも関わらず、サムスンへのアクチュエーターの供給を止めたとするならば、どこからか、横槍が入った可能性も考えられる。ただ、現時点では、真相は分からない。

尤も、サムスンは、7~9月期については為替が落ち着きを見せ、スマホの過剰在庫が一段落すること、そして、半導体メモリー事業の見通しが明るいことなどを理由に、先行きは心配ないとしている。

それでも、去年のサムスンの営業利益36兆7900億ウォンの7割を稼いでいたスマホ事業が不振となると、その影響は計り知れない。当然、サムスングループ内部でもスマホ依存度が高すぎることに対して、警戒感が広がっている。

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筆者は、今年4月のエントリー「永遠のキャッチアップ企業『サムスン』」で、サムスンは徹底した「2番手戦略」でのしあがってきた企業であり、日本企業はそれに対抗するためには、キャッチアップさせないことが大事だと述べたけれど、日本メーカーによるサムスンへのアクチュエーター供給停止が事実であれば、これは正に、サムスンのスマホ事業のキャッチアップをさせなかった例と言っていいだろう。

永遠のキャッチアップ企業が"キャッチアップ"できなかったら、自らそのあり方を変えない限り、生き残ることは出来なくなる。まぁ、サムスンはまだまだ体力があるから、スマホを捨てて、次のキャッチアップ先を見つける、という手は残されている。

だけど、それがいつも見つかるという保証はない。サムスンはひとつの転機を迎えている。

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