昨日のエントリーのつづきです。



1.2013年10-12月期GDP

2月17日、内閣府は昨年10-12月期の実質国内総生産(GDP)1次速報値を発表した。それによると、物価変動の影響を除いた実質GDPは前期比0.3%増(年率1.0%)で、4四半期連続のプラス。名目では前期比0.4%増(年率1.6%)で、5四半期連続
のプラスとなった。

項目別では全体の約6割を占める個人消費が0.5%増と前期から加速。その内訳は、耐久財が前期比で4.0%増と4四半期連続のプラスで、どうやら自動車などの増税前の駆け込み需要が効いているようで、全国軽自動車協会連合会によると、2013年度の軽自動車販売台数は211.3万台(前年比+6.7%)で過去最高を記録。12月単月でも前年同月比で36%増と大きく伸びている。また、公共投資も2.3%増となり、内需寄与度はプラス0.8ポイント。

それに対して、外需はというと、電子部品等の電子・通信機器や半導体製造装置等の特殊産業機械などの輸出が増加して、実質GDPは0.4%増と2四半期ぶりのプラスになったのだけれど、原油・天然ガス、石油製品等の輸入も増加して、実質GDPで3.5%増と4四半期連続のプラス。外需寄与度は、輸出が0.1%のプラス、輸入が0.6%のマイナスで、差し引き0.5%のマイナスで2四半期連続。

ということで、トータルの実質GDPは+0.3%(内需:0.8%+外需:-0.5%)にとどまった。

この値は事前の予想を大きく下回るもの。ブルームバーグは事前予想として前期比0.7%増(中央値)、年率換算で2.8%増(中央値)としていたのだけれど、結果は全エコノミストの最低予想をも下回ったとしている。

また、大和総研はこの1次速報値を受け、経済見通しを改訂。実質GDP予想を、2013年度が前年度比2.5%上昇から同2.3%上昇に下方修正し、2014年度は前回と同じ1.0%上昇としている。

産経新聞の田村秀男編集委員は、駆け込み需要で好調な住宅や自動車の売れ行きの大半は需要の先食いであるため、4月以降は反動減に転じるとした上で、来年度は増税、公的年金給付削減と公共投資の削減(15ヶ月ベース)で、総額10.4兆円の緊縮財政となり、GDPの2%分以上が消えると指摘している。

更に、消費税増税の影響などで消費者物価が、3%上昇すると見込まれることから、賃上げ率が3%以上にならないと、現役世代は消費水準をさらに落とすしかない、と述べているけれど、この3%という数字は、奇しくも昨日のエントリーで紹介した、増税後に節約したい金額に関するアンケート回答の平均値である1万円に相当する。

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2.適切な財政支出

田村氏は、4月の増税後の対策として、国土強靭化を行い、インフラ整備に充てよと述べているけれど、そういった公共投資、すなわち、どのような財政政策が景気にポジティブに働くのかという点について、丁度、明治大学経済学部の飯田泰之准教授と、京都大学大学院工学研究科の藤井聡教授との間で、誌上での議論が交わされている。

そのあらましについては、経済評論家の三橋貴明氏が自身のブログで取り上げているのだけれど、飯田准教授は「消費増税という目前に迫った問題に対処するには、供給能力に対してより多く需要が足りていない産業への財政支出、またはこれらの選択を個人に任せる給付金方式などが望ましいというものになるでしょう」と、財政支出は市場の声に従うべきだと主張している。

それに対して、藤井教授は、「防災・減災のための社会基盤を整備することには大きな意義があります。…日本全体の社会基盤、防災・減災インフラを整備するためには、それが重要であるからこそ景気対策を主眼にした集中的な支出ではなく、少なくとも10年、そして30年にわたる支出計画が必要である、そしてその方が結果的には景気への好影響も大きいのではないでしょうか」と、長期計画の策定と、それを示すことを前提としたインフラ整備が重要だと述べている。

三橋貴明氏は、この議論は価値観の問題であって、どちらが「正しい」とは、明言しないとしている。

これは、市場の声に価値の重きを置くか、それとも、長期計画を下敷きとしたインフラに価値を見出すかという議論になると思うけれど、原点に立ち戻ってみるならば、人は"必要"だと思うから、それに金を出すのであって、要りもしないものに大枚をはたく人はそんなに多くない。

必要だと思うものには需要が発生し、それに対する供給が行われる。これが景気を刺激する。だから、必要なもの、価値あるもの、或いは、これから価値を生み出していくものに投資をすることで、景気は良くなっていく。当然といえば当然。

従って、適切な財政支出は、如何に価値あるもの、或いは、如何に価値を生み出すものを見出し、掴みだせるかに掛かっているといっていい。

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3.価値あるものとは何か

では、価値あるもの、とは一体何なのか。

これについては、以前「商品価値について」というエントリーで考察したことがある。そこで筆者は、「商品価値には、効用が持続する客観的な時間と、それらを使用することで得られる主観的運用可能な時間という二層構造の時間価値が含まれており、その主観的時間に何がこめられているかと、そこから与えられたものを如何に使うかによって、その価値は大きく変わる」と結論づけた。

この観点で先の議論をみていくと、筆者には、需要が足りていない産業に投資するから景気がよくなるとか、インフラを整備したから景気がよくなるというよりは、むしろ、その投資あるいは、インフラを使った人が、また別の新たな価値を生み出すからこそ景気が良くなっていくのだと思う。(無論、需要があるところへの投資やインフラへの投資が景気に全く影響しないことは有り得ない。)

例えば、飯田准教授が主張するように、給付金方式にして、個人にいくらかの金を配ったとしても、貰った人が、その金を「穴を掘って埋める」ことだけにしか使わなかったとしたら、その経済効果は、せいぜいスコップ一本くらいしか生み出せない。いくら配っても景気に対する効果は多寡がしれている。

だけど、ある研究者が、給付金によって、どうにか食いつないで研究を続けることができて、例えば、iPS細胞とがSTAP細胞とかを生成できたとしたら、その経済効果は計り知れない。

これはまた、インフラでも同じこと。

例えば、電話もなく、郵便もない陸の孤島に数学者がいて、ある時、誰にも解けなかった問題についての証明ができたとする。だけど、それを学会で発表するには、直接学会にまで出向かなくちゃいけない。そこで彼は証明を書いた紙をトランク一杯につめて、何日もかけて学会が行われる街にまで赴き、その素晴らしい証明を発表しようとした。すると、一人の教授が残念そうな表情で、1日前に別の研究者が同じ証明を発表し、既に電子メールで世界中に発信されたと、その数学者に伝えた…。

発見そのものは陸の孤島の研究者が早かった筈なのに、メールや交通機関といったインフラがなかったばっかりに、その栄誉と権利を掴み損ねてしまう。こんなことだって無いとは限らない。経済効果もしかり。

だから、給付金にせよ、インフラにせよ、それだけでも、一時的な景気効果を生み出すにしても、真に大切なことは、それらの恩恵を受けた得た時間なり価値なりを、また別の価値に転換したり生み出したりできるかどうか。

インフラそのものは、その目的以外の価値を生まないし、給付金だって、それを使わなければ、無かったことと同じ。価値は価値を得た人こそが生み出していくもの。価値は人を介して価値あるものとして輝きを放つ。それが大切なこと。

日本がそれを手にしたとき、再び日は昇る。




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