いろいろと尾を引いている靖国参拝ですけれども、今日のエントリーで一旦終りとさせていただきます。続きは正月明けにでもまた…。
1.靖国参拝に関する世論調査
安倍総理の靖国参拝に関する世論調査がちらほら出始めた。
12月28~29日共同通信社が実施した全国緊急電話世論調査では、靖国参拝に関して、外交関係に「配慮する必要がある」との回答が69.8%と、「配慮する必要はない」の25.3%を大きく上回り、安倍総理の参拝についても「よかった」との回答は43.2%だったのに対し、「よくなかった」は47.1%と、批判的な意見が多かったと報じている。
だけど、別の社の調査では、大きく異なる結果が出ていたりしている。
例えば、12月28日放送のTBS系情報番組「情報7days ニュースキャスター」で、視聴者を対象にした緊急世論調査が行われたのだけれど、そこでは、 安倍総理の参拝賛成が68%で反対の32%に大差をつけている。
これが、yahooによるネットアンケートとなると、30日現在で、妥当が77.4%、妥当でないが22.6%となっている。
ここまで結果が違うとなると、調査対象の母数や誤差率も合わせて公表しないと、正確な世論を掴み損ねる恐れがある。共同通信の世論調査については、母数も誤差率も設問内容も見つけられなかったので、なんとも判断しようがないのだけれど、TBSの世論調査については母数は3万を超えていて、yahooのネットアンケートでは38万票を超えている。
また、設問の仕方についても、留意する必要がある。例えば、共同通信の、外交関係に配慮する必要があるかどうか、といった設問にしても、ただ、ポンと配慮する必要があるかと聞くだけでは、その答えはかなりばらつくと予想される。まず、何をもって配慮とするのかの定義をして、誰に対しての配慮なのかといった条件設定をきちんとしないと、正確な答えは得られない。
誰に対してという点だけとってみても、中韓に対して配慮すべきか、とASEAN、EU、アメリカその他特亜以外の各国に対して配慮すべきかでは、昨今の国民感情を考えれば、その答えは大きく違ってくるものと思われる。
また、外交的な配慮といっても、色んな"配慮"がある。それは参拝の時期であったり、対象であったり、参拝の目的やコメントの中にも配慮がある。今回の安倍総理の靖国参拝にしても、英霊の慰霊と不戦の誓いのために参拝したとしているから、目的の段階から、すでに戦争賛美ではないという"配慮"をしているし、諸外国を含めて戦場で亡くなった全ての人々を慰霊する鎮霊社にも参拝しているから、国粋主義ではないのだ、という"配慮"もしている。
だから、共同通信の外交関係に配慮する必要があるか云々の設問の前に「安倍総理は、靖国本殿だけでなく、諸外国を含めて戦場で亡くなった全ての人々を慰霊する鎮霊社にも参拝していますが」という前置きをした上で、外交に配慮していると思いますか、という設問をしたら、その答えはまた違ってくるだろう。
そうした回答者に対して、予断を与えるような設問は世論調査には厳禁なのだけれど、そうした要素がなかったかどうかを精査することも、媒体によって大きく結果が異なる世論調査には必要になってくる。
経済評論家の渡邉哲也氏は11月30日と12月1日に行なわれた、秘密保護法に関する朝日新聞の世論調査を誘導尋問とし、悪質な世論調査の一例だと指摘している。
だから、世論が安倍総理の靖国参拝についてどう思っているかについては、はっきりとしたことは言えないのだけれど、マスコミは海外様が批判しているということばかり伝えているし、これからもそうするだろうから、時間が経つにつれて、国民の間にも不安が募ってくる恐れがある。ゆえに、安倍総理始め政府与党は、各国への説明と国民に対する素早いフォローが要ると思うし、そうして頂きたい。
少なくとも、昨日のエントリーでも触れたように、駐日アメリカ大使館のフェイスブックが炎上する事態になっているのだから、双方の認識にズレが生じている可能性は留意しておいたほうがいい。
2.倫理面で屈服しない日本
尤も、海外はみんながみんな、靖国参拝に批判的というわけでもないようだ。
アルゼンチンの政治評論家Adrian Salbuchi氏は安倍総理の靖国参拝について、肯定的な評価をしている。次に一部引用する。
JAPANESE WAR CRIMES: I'M SORRY? -- Adrian SalbuchiAdrian Salbuchi氏は、はっきりと靖国参拝は、日本が勝者による裁きに対して、倫理面で屈服していない姿を示すものだと称賛している。日本にとって、このAdrian Salbuchi氏の見解は有り難いものだとは思うけれど、残念ながら、この考え方は今の世界、とりわけ戦勝国でのメジャーな見方ではない。でなければ、国連の敵国条項なんか、とっくに削除されている筈。
日本の安倍首相の靖国神社参拝に、中国と韓国が激怒している。靖国神社は250万人の戦没者を祀る東京の神社だ。多くの人が怒っているのは、この19世紀創建の神社に祀られている人々の中に、 米国の占領軍によって「戦争犯罪人」という烙印を押された第二次大戦時のヒーローらが含まれて いるためだ。その中には、米国によって1948年に処刑された戦時指導者東條英機大将など、「戦争計画」に関わったとされる14人の「A級戦犯」も含まれている。
戦勝国が敗戦国に対して当然に獲得する権利は、領土要求に関するものだけではない。敗戦国の都市や土地、国民、資源、工場、特許権、軍事装備、そして国際法上の諸権利に対しても、完全かつ欲しいままに支配する権利を、戦勝国は獲得する …… 悲しむべきことだがこれが現実だ。
そして戦勝国は、戦争の端緒となった対立に関する歴史記述を書く(あるいは書き直す)「権利」をも獲得する。自国の見解・論理を「真実」とする権利を獲得し、敗戦国を「間違った国・邪悪な国・戦犯国・侵略国」だと非難するのである。「俺たちは善人、相手は悪者だ。」「私たちの息子らは英雄。向こうは殺されて当然の悪魔だ、2歳の幼児までも。」という考えは人類の歴史を同じほど古い。第二次大戦 後の70年間のプロパガンダが明瞭に示しているとおり、20世紀と21世紀も例外ではない。
だが日本は今なお屈しようとしない。これは賞賛すべきことだ。平身低頭して世界に再三再四赦しを請うているドイツの姿とは対照的だ。だがドイツ自身も良く了解しているとおり、たとえ何度謝罪しようと、 世界のメディア・出版・教育を支配する人々は決してドイツに赦しを与えることはあるまい。
歴史認識についてハラキリしたドイツとは違って日本は顔を伏せず、敢然として軍事的敗北の結果に耐え続けている。倫理面で屈服してはいないのだ。
《中略》
日本よ、良くぞ言ってくれた。もし我々が、戦勝国・敗戦国を問わず全ての国の戦争犯罪を真摯に罰しようとするなら、とんでもない規模の国際軍事裁判所が必要だろう。そしてその裁判所は、ダブルスタ ンダードと検閲から自由でなければならない。そう、ダブルスタンダートから、だ。
《後略》
「Japanese war crimes: I’m sorry? 」より抜粋引用
3.歴史認識を見直す時期を迎えた日本
このAdrian Salbuchi氏の見解が、世界のメジャーになるためには、彼らが自身の歴史認識を見直すか、その歴史認識に頼らなくても、国および国際秩序が保たれるほど平和になったときだろう。だけど今はそうじゃない。日本を"犯罪国"にしておかないと、自らを保てない国がいる。すぐ傍に。
その国は、毎年軍備拡張を行い、周辺国を圧迫し、大国としての自国を復興させることが夢なのだと、無法で自分勝手な振る舞いを始めた。
そんな無法者が、靖国参拝しただけの日本を叩きに叩くとは、あまりにもビビり過ぎというか、バランスを欠いている。そんなに日本が目覚めることが怖いのか。
ただ、現状のままだと、両者はどこかでぶつかることになる公算が高い。だけど、どうやら、政府はそれをも想定し始めたフシがある。ジャーナリストの高橋浩正氏によると、最近、中国に進出している日本企業の幹部に対して、総理周辺が、中国との冷戦状態は間違いなく長期化するとして、はっきりと中国からの撤収を促し始めたのだという。
単に冷戦だけであれば未だしも、実際に砲弾が飛び交う「熱戦」になってしまったら、在中邦人はその瞬間に人質になる。だから、そうなる前に戻ってくるようにということではないかと思うのだけれど、政府が企業に直に撤収するようにというなんて、そういう事態を想定でもしなければ、なかなか言えるものじゃない。
だけど、その時期はそう遠くないかもしれない。
もしも、かの国が、世界の警察官ではないと公言したオバマ政権のアメリカはアジアの紛争には介入しないと見切っているのなら、その時期は、3年内外になるし、かの国がアメリカをも凌ぐ軍事力を手にすることになれば、何の遠慮もなく周辺国を侵略にかかることだってあり得る。2020年にはそうなるという分析もある。そうなってからではもう遅い。
それを回避するためには、かの国の横暴を抑え込めるだけの現実的な力を持っておく必要がある。もちろん、それは軍事力だけとは限らない。経済力・外交力を含めた、あらゆる抑止手段を持っていなくちゃならない。
もしも、歴史認識が、それを獲得する障害になるのなら、それを除去する努力を行うことは当然。それも"自衛"のうち。
マッカーサーは、大東亜戦争について、日本は自衛のために戦ったと述べたとされているけれど、それが本当なのであれば、日本が「自衛」を志向する限り、再び、その認識と向き合うことにならざるを得ない。
その意味では、今の段階で、世界観、歴史認識においての戦いが始まることは、悪い事ではないようにも思える。その道は決して容易なものではないけれど、ここを突破できれば道は大きく拓ける。
コメント
コメント一覧 (2)
ttp://bylines.news.yahoo.co.jp/kimuramasato/20131230-00031149/
朝日のサイトのページはこちら↓
ttp://www.asahi.com/articles/ASF0TKY201312270200.html?ref=reca
こちらの世論調査は11月6日~12月20日、5500人を対象に実施したものらしいのでいつもの世論調査とは違うみたいなのですが
私が気になったのは前回と今回の内閣支持率です
前回の世論調査は
世論調査―質問と回答(12月14日、15日実施)
ttp://www.asahi.com/articles/ASF0TKY201312270200.html?ref=reca
◆安倍内閣を支持しますか。支持しませんか。
支持する28 支持しない51
今回のは(左の数字は20代、右は30代の数値)
◆安倍内閣を支持しますか。支持しませんか。
支持する53 55 支持しない33 33
前回と比べると20%以上支持率が変化したことになります
こういう調査をして一体何がしたいのかよくわからなくなります