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今日は、久々に科学技術系のエントリーです。

もう1年半以上前になるのですけれども、「渡部昇一氏の『原発興国論!』」について」のエントリーで、白なまず様から是非記事にして欲しいとリクエストをいただいた次世代小型原子炉「4S」についてです。白なまず様、大変長らくお待たせしました。m(__)m



1.高速増殖炉

4S高速炉とは、Super-Safe、Small and Simpleの頭文字を取ったで、超安全な小型原子炉という意味。その本質は「もんじゅ」や「常陽」と同じ高速増殖炉なのだけれど、一番の違いは、燃料が増殖しないこと。だから、"増殖"の文字を抜いて、"高速炉"と呼ばれている。

なぜ4Sが"超安全"なのかを述べる前に、まず増殖炉について見てみたい。

高速増殖炉は、発電しながら燃料が増えるということからその名がつけられている。それだけ聞くと、一見、魔法のような原発のように思えたりもするのだけれど、その秘密は燃料そのものにある。

原発の燃料とは何かいえば、ウランというのが普通の答え。だけど、一口にウランといっても、細かくみれば同位体という微妙に違うウランが存在する。同位体とは、同じ原子番号を持つ元素の原子でも、原子核の中性子の数が異なるものをいう。

普通の原発で燃料に使うウランは、ウラン235と呼ばれる143個の中性子を持つウラン。だけど、このウラン235は自然界には極僅かしか存在しない。天然のウランに含まれるウラン235の割合は約0.7%しかなく、それ以外の約99.3%は、146個の中性子を持つウラン238で占められている。

原発では、反応性を高めるため、このウラン235の割合を3~5%くらいまで濃縮したものを燃料に使うのだけれど、それでも95%以上は燃やすことのできないウラン238。

だから、例えば、100円玉くらいの核燃料があったとしても、実際は爪の先くらいの、ほんの少しの部分だけしか使えないのが今の原発。

そこで、ウラン燃料の大部分を占めている、"燃えない"ウラン238をなんとか燃料として使えないかと考え出されたのが、高速増殖炉。これはウラン238を、核燃料として使用できるプルトニウム239に変換することで発電する。

そもそも、何故、ウラン238が核燃料にならないのかというと、ウラン238が安定な物質で中々核分裂しないから。

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2.核分裂反応

原発における核分裂は、元々壊れ易い状態の不安定な原子核にエネルギーを与えて、分裂を促すことで行なわれる。

通常、ウランのように重い元素は、その原子核の内部で、陽子なら陽子同士、中性子なら中性子同士が、それぞれペアになって固く結合することが知られている。このとき、原子核に含まれる陽子や中性子の数が偶数の場合、ペアを組む相手が全部揃っているから、核子同士が全部がっちりと結合して安定している。一方、陽子や中性子が奇数個になると、ペアを組めない余りが出る為に、その原子核は、偶数のそれと較べて不安定になる。

ウラン235の原子核は、陽子92個と中性子143個で出来ていて、奇数の中性子が不安定になっている。これに対して、ウラン238の原子核は、陽子92個と中性子146個で出来ていて、陽子も中性子も安定している。

ここで、ウラン235の"不安定な"中性子に、ペアとなる中性子1個をぶつけてやると、余っていた1個の中性子は、その中性子とペアを作って、それまで自分が持っていた、結合エネルギーの余剰分を原子核内に放出する。

このとき原子核は、放出されたエネルギーによって、全体が変形するくらいの大振幅で集団運動を始め、この運動が一定の値を超えると核が分裂する。これが核分裂反応。ウラン235は、一回の核分裂で、平均2~3個の中性子を放出するのだけれど、この放出された中性子が次のウラン235にぶつかって核分裂し、それが連鎖的にいつまでも続いているのが、いわゆる「臨界」と呼ばれる状態。原発で発電するときには、原子炉をこの「臨界状態」にまで持っていく必要がある。

ウランが分裂するために必要なエネルギーは6MeVであるのに対して、ウラン235が中性子を捕獲して新たにペアを組んだときに放出されるエネルギーは6.4MeVある。だから、ウラン235の原子核に中性子をぶつけてやることで、核分裂させることが可能となる。

一方、ウラン238が中性子を取り込む場合は、原子核内でペアを作る中性子がないために、放出するエネルギーは、ペアを作る場合より小さく4.8MeV程度に留まる。これでは、ウラン原子核が核分裂する6MeVには足りないから、通常はウラン238を核分裂させて発電することは出来ない。従って、ウラン238を燃料として発電するためには、一度、ウラン238をプルトニウム239に変えてやる必要がある。

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ウラン238は中性子を吸収すると、ウラン239になる。これがベータ崩壊を起こすと、ネプツニウム239になり、更にベータ崩壊すると、プルトニウム239になる。プルトニウム239は94個の陽子と145個の中性子を持つのだけれど、中性子が奇数で、これも不安定な元素。このプルトニウム239に、中性子がぶつかると一定の確率で核分裂が起こる。

尤も、ウラン238は、何時如何なる場合でも、全く核分裂しないという訳じゃない。例えば中性子が超高速で移動していて、高い運動エネルギーを持っていると、その運動エネルギーが核分裂に足りないエネルギーを補って核分裂させることがある。つまり、中性子が1.2MeV以上のエネルギーを持っている場合、それをウラン238にぶつけることで核分裂することがないわけじゃない。

だけど、ウランにせよ、プルトニウムにせよ、原子核に中性子をぶつけるなんて、原子のサイズからみれば、芥子粒のように小さな原子核に中性子をヒットさせることだから、そうそう簡単にできるものじゃない。

よしんば、中性子が上手く原子核にぶつかってくれたとしても、核分裂せずに、そのまま取り込まれることだってある。

つまり、核分裂反応が起こるかどうかは、原子核が中性子を取り込んでしまう度合いと、中性子がぶつかることで、核分裂してくれる度合いの相反する2つのパラメータの兼ね合いで決まる。

この原子核の"核分裂のし易さ"を「核分裂断面積(バーン:1barn=10^-28m^2)」といい、逆に"中性子の取り込み易さ"を「捕獲断面積(バーン:1barn=10^-28m^2)」と呼ぶ。また、捕獲断面積と核分裂断面積の和を吸収断面積といい、核分裂が起こる確率は、核分裂断面積を吸収断面積で割った値で表される。

だから、核分裂断面積が大きければ大きい程、また、捕獲断面積が小さければ小さい程、核分裂する確率は高くなる。

いずれにせよ、核分裂させる為には、原子核に中性子をぶつけないと始まらないのだけれど、原子核に中性子がヒットする確率には、中性子の速度が大きく左右する。

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3.熱中性子と高速中性子

通常、電荷を持たない中性子は、プラスに帯電している原子核に近づいても、電気的な反発力は働かない。ゆえに、中性子は、電気的な力で原子核に引き寄せられることはない。それでも引力は働くから、中性子が原子核の近くを通り過ぎるとき、原子核の引力に引かれて、中性子の進路は少し曲がる。

勿論、中性子のスピードが速くなればなるほど、進路は曲がりにくくなるのだけれど、逆にスピードが遅くなると、中性子は、原子核にぐっと引き寄せられて、衝突する確率が高くなる。

つまり、吸収断面積は、中性子のスピードが遅いほど大きくなる傾向がある。

原発が安定的に電力を生み出す為には、核分裂が連鎖反応的に安定して行なわれ、定常的に熱を発生させる必要がある。従って、核分裂で発生した中性子は、次々と別の原子核にぶつかってくれなくちゃいけない。だけど、核分裂で発生した中性子は光速の三十分の一という物凄いスピードを持っている。

畢竟、吸収断面積も極々小さくなって、次の原子核には中々ぶつかってくれない。このように光速の数%ものスピードを持つ中性子を「高速中性子」と呼ぶ。

そこで、原発では、中性子を少しでも原子核にぶつかりやすくするために、飛び出した高速中性子を減速させて、吸収断面積を大きくしてやることで、核分裂が持続的に行なわれるようにしている。このように減速して遅くなった中性子を「熱中性子」と呼ぶのだけれど、それでもそのスピードは秒速2.2キロメートルで、マッハ7くらいある。

では、中性子を減速させる為にはどうすればいいかというと、高速中性子を何かに衝突させて、中性子の持っている運動エネルギーの一部を、衝突した相手に受け渡してやればいい。相手に運動エネルギーを渡せば、その分だけ中性子は減速する。

このとき、ぶつかる相手の原子核がとても重い場合、中性子はぶつかった勢いそのままに跳ね返されてしまうだけで、相手側の重い原子核は殆ど動かない。つまり、運動エネルギーをほとんど相手に受け渡すことができずに、中性子は減速しない。ただ跳ね返されて、進行方向が変わるだけ。

だから、効率良く減速しようと思ったら、自分と同じ重さ以下の相手にぶつかるか、繰り返し何度もぶつかることで減速しなければならない。だけど、中性子はとても軽い粒子で、元素の中で最も軽い水素と同じくらいの重さしかない。だから、中性子を減速するのに使う元素は水素並みに軽い元素である必要がある。

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4.減速材の条件

中性子を減速させるための素材は「減速材」と呼ばれているのだけれど、減速材は軽い元素であれば何でもいいというわけじゃない。軽いこと以外にも、いくつか条件がある。

ひとつは、当たり前のことだけれど、中性子を吸収しにくい元素であることが挙げられる。いくらぶつかっても、減速させたい中性子自身が吸収されてしまっては元も子もない。

もうひとつは、密度が高いこと。密度が高いということは、同じ体積の中に沢山の元素が詰まっているということだから、密度が高ければ高いほど、衝突回数が増える。その分効率良く減速できる。

そして更に、素材自身が、原子炉内の強力な放射線や熱に耐えられて、融けたり、曲がったりしないことも重要な要素になる。これは原発の安全面を考えると絶対外せない条件だといえる。

次の表は、元素番号1の水素から8の酸素までの熱中性子の吸収断面積を表したものなのだけれど、元素が違うと吸収断面積も大きく違うし、更に、同位体でも吸収断面積が異なることが分かる。

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例えば、水素の吸収断面積は0.332で、炭素が0.0034であるのに対して、リチウムの吸収断面積は71、ホウ素は759と100倍、1000倍のスケールで違っている。だからリチウムやホウ素は減速材には使えない。ホウ素が中性子を外に漏らさない"中和剤"として使われるのは、その吸収断面積が大きいというのがその理由。

従って、原子炉の減速材には、中性子を吸収しにくい素材、すなわち吸収断面積が小さい元素を使わないと効率が悪くなる。だけど、いくら吸収断面積が小さいといっても、水素、ヘリウム、窒素、酸素といった、常温で気体になっている元素は、安全面を考えると減速材としては使いづらい。管に穴が空いていたり、何かの隙間から漏れたりなんかしたら洒落にならない。

ゆえに減速材には、通常、常温で固体か液体の素材が好まれる。

だけど、減速材に適した、軽くて且つ固体か液体という都合のよい元素なんて、そうあるわけじゃない。一応、それに適合する元素として、炭素やベリリウムといった素材があることはある。実際、黒鉛型原子炉と呼ばれる原子炉には、減速材として炭素が使われている。それに対してベリリウムは、吸収断面積が0.0095バーンと炭素並みに小さいのだけれど、こちらは値段が高いという欠点があり、実際にはあまり使われない。

では、一般の原子炉の減速材には何が使われているかというと、非常にシンプルに「水」が使われている。

水は水素と酸素が化合したもので、いうまでもなく常温で液体。うまいことに、水素と酸素という"軽い元素"は、水の形にしてやることで、減速材として扱いやすいものになる。吸収断面積(軽水)も0.66バーンと比較的小さい。さらに水は安価な上にどこにでもあるから、入手も容易。こういった理由から、水は減速材として最も一般的に使用されている。この水を減速材に使った原子炉がいわゆる「軽水炉」と呼ばれるもの。

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5.核分裂時に発生する中性子

さて、中性子をうまく減速させて、原子核にぶつかるようにさえしてやれば、すぐに核分裂反応してくれるかというと、現実は、そんなに甘くない。実際の核分裂反応は中性子がぶつかれば100%必ず起こるわけじゃなくて、中性子を吸収するだけで終わる、いわば"空打ちの中性子"が、一定の割合で存在する。

ウラン235が熱中性子によって核分裂する確率は84%で、プルトニウム239は73%。大体、2~3割程度は"空打ちの中性子"がある。

従って、空打ちの分まで考慮すると、1回の核分裂で放出される中性子は1個では足りなくて、1個より少し多くの中性子が放出されないと、核分裂の連鎖反応、すなわち「臨界状態」を維持できない。

原子核が中性子1個を吸収した際に平均的に新たに発生する中性子の数(=η)は、中性子のエネルギーによっても変化するのだけれど、大体ηが1.2以上あれば、臨界を維持できるとされている。

ウラン235の場合、ηの値は、熱中性子エネルギー領域(1eV以下)で2.09、高速中性子エネルギー領域(0.1MeV)で1.92。プルトニウム239では、熱中性子エネルギー領域で2.11、高速中性子エネルギー領域で2.49と、いずれも1.2以上ある。

だから、ウラン235やプルトニウム239を核燃料にする場合は、中性子がどのエネルギー状態を取ったとしても、臨界に持っていくことが出来る。

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だけど、これが、ウラン238を核燃料にするとなると、もっと中性子が必要になる。ウラン235は一回中性子をぶつけるだけで一定の割合で核分裂してくれるけれど、ウラン238は一度中性子をぶつけて、プルトニウム239にしてやってから、もう一度中性子をぶつけることでやっと核分裂する。つまり、都合2回以上は、中性子をぶつけなくちゃいけない。

したがって、ウラン238を核燃料にする場合、必要な中性子の数は、ウラン238をプルトニウム239にするための1個と、プルトニウム239を核分裂させるための1個以上(空撃ちの中性子分を含む)が必要になる。つまり、臨界を維持するためには、ηは2.2以上(=1+1.2)の値が欲しい。

ところが、ηが2.2以上の値はプルトニウム239の高速中性子領域にしかなくて、熱中性子領域には存在しない。つまり、熱中性子ではどんなに頑張っても、ウラン238を核燃料にすることはできないわけで、ウラン238を燃料にするのなら、高速中性子を使うしか方法がない。これが高速炉が"高速"と呼ばれる所以。
※厳密にはウラン235でも1MeV以上の高速中性子領域ではη=2.2以上を取るけれど、ウラン燃料全体の数%しかないウラン235をプルトニウムの核分裂に使ってもすぐ尽きてしまう。

そして、更に臨界を維持しながら、プルトニウム239を消費する以上に生産できる状態にまで持っていくと、発電しながら燃料(239Pu)を増やしていけるようになる。これが「高速増殖炉」。

言うまでもなく、高速中性子をウラン原子核にぶつけるのは、熱中性子に比べて遥かに難しい。ウラン238の吸収断面積は、熱中性子では2.73バーンであるのに対して、高速中性子では0.35バーンしかない。二桁違う。

したがって、高速中性子をそのまま使っても、なかなか原子核にぶつかってくれず、燃焼効率は悪くなる。かといって減速させすぎて熱中性子にしてしまっては、エネルギーが足りなくて臨界を維持できなくなってしまう。匙加減が難しい。
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6.微妙なバランスで成り立つ冷却材

高速炉は、その仕組み上、冷却材には、臨界を維持するために極力中性子を減速させず、かつ発電時の熱交換の媒介となる素材を使う必要がある。

だけど、一般的な軽水炉などで冷却材兼減速材として使われる水や炭素と言った軽い元素は、衝突時に中性子の運動エネルギーを受け取りすぎて、必要以上に中性子を減速させてしまうから、高速炉の冷却材には使いにくい。従って、もう少し重い元素が必要になる。

更に、高速中性子を使う領域では、プルトニウム239の核分裂断面積は数バーンしかないから、少しでも反応し易くするために、燃料棒同士の距離を狭めたりしている。

このような構造から、高速炉は、炉心の大きさに対して、熱発生量が大きく、運転中は高温、高出力になる。必然的に、その熱除去にも工夫が必要で、高速炉の炉心は、熱除去面積を増やすために、燃料棒は物凄く細く、本数も多い。普通の軽水炉では、直径12ミリ程度の燃料棒が50~60本程度であるのに対して、高速増殖炉「もんじゅ」は、直径6.5ミリの燃料棒が169本ある。また、燃料棒同士の距離も、軽水炉で16ミリ程度のところが、「もんじゅ」では7.9ミリまで近接させている。

また、冷却材そのものも、臨界を維持するだけじゃなくて、熱伝導性の良いものであることが必須になる。そして、液体にし易く、かつ安価な素材であることが求められる。

そこで選ばれたのが金属液体ナトリウム。ナトリウムは常温では固体の金属だけれど、97.7℃で液体になる。97.7℃というのは原子炉にしてみれば十分低い温度で、比較的扱いやすい。それになんと行っても、ナトリウムは中性子の23倍重い元素だから、ナトリウムにぶつかっても、水素ほどには減速しない。

更に、ナトリウムは熱伝導性にも優れている。ナトリウムの熱伝導率は、18℃の固体のナトリウムが0.315カロリー/cm・sec・℃、500℃の液体のナトリウムで0.159カロリー/cm・sec・℃で、水の約100倍の熱伝導率を持っている。そして、ナトリウムは、熱を加えても水のように膨張しないから、圧力が増すこともなく、水蒸気爆発の心配がない。

こうした理由から、高速炉にはナトリウムが冷却材として使われている。

だけど、ナトリウムを冷却材として使うには大事な注意点がある。それは、水と激しく反応してしまうこと。ナトリウムと水が反応すると、水素と水酸化ナトリウム、及び熱が生じる。
2Na + 2H2O → 2NaOH(水酸化ナトリウム) + H2(水素)+熱
反応量が多い場合は、反応熱によって、ナトリウムが空気中の酸素と反応して着火する。更には、発生した水素が空気中の酸素と混合して、着火したナトリウムを発火点として爆発することさえある。

特に、ナトリウム中に含まれる酸素や水素といった不純物の濃度が高くなると、機器や配管などの金属材料が腐食し易くなるため、厳重な純度管理が必要になる。

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7.逆転の発想で安全を実現する4S炉

先程、高速炉はその反応性を高めるために、燃料棒を数多くかつ密に配置すると述べたけれど、それでもやはり限界はある。それ以上の反応性を求めるとなると、炉心を大型化して、燃料棒をもっと沢山並べることになる。

だけど、炉心が大型になると、そこに使われる冷却材、すなわち冷却用ナトリウムも増やすことになるから、安全対策もそれ相応に大変になる。逆に、安全を重視して、炉心を小型化すれば、使用する冷却用ナトリウムは減らせるけれど、今度は反応性が悪くなってしまう。つまり、高速炉の反応性と冷却材の安全対策はトレードオフの関係にあり、その意味では、高速炉は、互いの妥協点を探りながら作られているともいえる。

この二律背反を解決しようとするのが4S炉。

4S炉は、反応性を良くするために、燃料を増やしたり、燃料棒を密に配置したりといった燃料側を細工するのではなくて、高速中性子を再利用することで反応性を上げる。

具体的にどうするかというと、炉心の回りを高速中性子を反射する板でぐるりと囲む。

この構造にすることで、高速中性子は、燃料棒のウラン238やプルトニウム239にぶつからずに通り抜けたとしても、反射板で反射して、また炉心に戻ってくる。これを何度も繰り返すことで衝突確率を上げてやろうというのが4S炉。中性子をトコトン使い回してやる。

緊急停止する場合には、回りの反射板をストンと引力に任せて落としてしまうだけ。反射板がなければ、中性子は炉心に戻らずに向こうに突き抜けるから、臨界を維持できなくなって、自然に止まる。

この方式だと、炉心を大型にしなくてもいいし、ナトリウム冷却材も少量で済む。安全対策もやりやすい。おおよそ「もんじゅ」で使うナトリウムの量がバケツ1杯なら、4S炉で使うナトリウムはコップ1杯くらいと言われている。正に逆転の発想から生まれた高速炉だと言える。

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4S炉の炉心の大きさは、高さ2メートルから4メートル、直径1メートル以下という小さなもので、その細長いロケット型の炉心の周りに、幅50センチくらいのリング状の中性子反射板が設けられる。反射板の材料には厚さ15cmのフェライト鋼(Mod. 9Cr-1Mo)を使用し、炉の寿命中は交換不要。

発電は、この反射板で囲まれた局所的な部分の燃料を燃やすことで行うのだけれど、反射板をゆっくり下から上にスライドさせていくことで、燃料はあたかもロウソクが燃えるように、発電し続ける。

発電は中性子反射板が末端に辿り着くまで続き、大体20年から30年かかる。反射板がゴールまでたどり着いたら、その時点で炉の寿命は終わる。燃料の入れ替えも一切必要ない。廃炉の場合は、ナトリウムを回収して、空冷で放置するだけ。炉心自体が小さいから、直ぐ隣に新しい4S炉を設置しても、廃炉した4S炉で使ったタービンやら制御系の部品などをそのまま使いまわすことだってできる。

現在、東芝で研究が進められている4S炉では、冷却材となる液体ナトリウムを循環させるポンプに、可動部分の存在しない電磁対流ポンプを採用し、より安全になっているそうだ。

4S炉1本の出力は最大5万Kw程度しかないものの10本まとめて発電すれば、50万kWで福島第一の1号炉並み。20本纏めて100万kWにすれば、国内の既存原発の出力と同等になる。

今の時点では、4S炉はまだ実証段階には至っていないけれど、正に4S(Super-Safe、Small and Simple)の名に相応しい技術と言える。4S炉が一日も早く実用化されることを期待している。




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