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今日も簡単に…



1.OD05オムニバス

近頃、中国が日本株を投げ売りしていると一部で話題になっている。

12月5日、アメリカの華字ニュースサイト・多維新聞は「中国は日本株を投げ売り、日本に"騒ぐな"と警告か」と題した記事を掲載した。

記事では、レアアースの禁輸など公開の経済制裁は世界貿易機関ルールに違反し、第三国に批判の口実を与えることになるため、隠れた経済制裁として株式売却が使われたと指摘。今後、対立が深まれば中国の制裁はさらに強化され、アベノミクスで持ち直したかに見える日本経済は一気に不振に陥ると予測しているようだ。

そして、その"投げ売り"したのではと囁かれているのが、「OD05オムニバス」という中国政府系とみられるファンド。

「OD05オムニバス」が日本株投資に登場したのは2007年3月期。当時はわずか5社への投資だったのだけれど、瞬く間に投資を増やし、5年後の2012年3月期には、投資先は238社に達し、時価合計は3兆5000億円超となっていた。

だけど、その正体はベールに包まれている。登記上の本社はオーストラリアにあり、香港上海銀行東京支店が常任代理人を務めているのだけれど、常任代理人の広報担当者は「資金の出し手が誰であるかなどはコメントできない」としていて、詳細は分らない。市場関係者の間では、中国政府系ファンドではないかとの見方が定着しているそうだ。

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中国は輸出を進めるために元高を嫌う傾向があり、巨額のドル買い元売りの市場介入をしているのだけれど、当然、それによって、巨額の外貨を得ることになる。中国の外貨準備高は実に300兆円にも及び、それを国家外為管理局が米国債で運用している。

だけど、外貨を米国債だけで運用するのはリスクがあるとして、ここ数年は、アメリカ以外の国債や通貨、株式にも投資を進めている。株式や債券の運用を担当するのは、中国投資有限責任公司という中国政府系ファンド。2007年に、中国政府が膨大な外貨準備高を背景に、2000億ドルの資本金を100パーセント出資して設立。外国企業などを対象として、大規模な投資を行っている。今回話題となった「OD05オムニバス」は、この中国投資有限責任公司の別動隊ではないかと言われている。

ところが、2013年第2四半期I(7-9月)報告書では、大株主リストから「OD05オムニバス」の名前が次々と消えていることが分かった。9月末時点で、上位10株主の中から「OD05オムニバス」の名前がなくなった企業は、トヨタやホンダ、NTTドコモ>、パナソニック、新日鉄住金、JR東日本など多数あり、保有しているものでも、その比率はうんと減少している。

先の多維新聞の記事に従えば、隠れた経済制裁としての売却だ、ということになるのだろうけれど、「OD05オムニバス」は昔から、結構銘柄の入れ替えが好きなファンドのようで、2010年3月末では、保有91社のうち9割以上が日経平均構成銘柄だったのだけど、2012年3月末には6割強まで低下。新たに株主に登場した会社が48社あるのに対し、消えた会社も25社と、手を上げるのも早いけれど、逃げ足も速い。

また、現在、絶賛バブル崩壊中の中国では、債券市場が暴落し、10年債の金利が急上昇している。下の図は中国の10年国債の利回りのチャートなのだけれど、筆者には、2013年8月頃から、三角ペナントからの上放れをしたように見える。

こうした、債券市場の暴落を受けて、中国政府系ファンドは、自身の保有資産売却して買い支えているのではないとの観測もある。筆者には、隠れた経済制裁より、こちらの市場暴落に対する買い支えという理由の方が納得できる。

中国のバブル崩壊が外から見ている以上に深刻なのだとすれば、日本の安全保障を考えれば、そこにこそ突くべき隙がある。

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2.経済力という安全保障

地政学者の奥山真司氏は、こちらで、シカゴ大学の政治学者ミアシャイマーが環球時報のインタビューを受けた内容の要約を紹介しているのだけれど、その中でミアシャイマーがいくつか重要な指摘をしている。次に引用する。

(環球)あなたは「中国崩壊説」を信じていないんですか?

(ミア)実際のところ、私もわかりません。ただしこれは私の勘ですが、中国は崩壊せずに経済もこのまま驚くべき発展をするのではと思ってます。そしてその結果、中国が軍事的に段々と強力になるんでしょう。なぜなら経済力と軍事力は密接な関係性を持っているからです。とくに強力な軍隊を持つためには、強力な経済が必要なわけですから。だから私は「未来は中国のものだ」と言っているわけです。中国の地政戦略的状況は、軍事的に強力になるにしたがって改善するでしょうね。その大きな理由は、経済的にさらに強力になるという点にあります。




(環球)ただ、ASEANとの「南シナ海行動規範」(COC)について考えてみてください。中国の専門家たちは、中国がこのような交渉を積極的にリードして新しいルール作りをするべきだと言っております。ただし今のところ、中国はこの地域で新しいルールづくりに参加しているだけです。次の十年間に中国はこの地域のルールづくりをリードするようになるということでしょうか?

(ミア)これについては2つのことを言わせてください。一つ目は、中国は今の時点で交渉を進めるべきではないということです。なぜなら中国はまだ交渉を有利にできるほど強力ではないからです。中国がすべきなのは20年から25年待つことであり、その時になってからはじめて交渉するということです。なぜならその時点でいまよりもはるかに強力になっていて、北京ははるかに良い結果を得ることができるはずだからです。したがって、私は中国が交渉を遅らせて、もっと強力になるまで現状維持を続けるべきだと考えます。そして二つ目は、中国はのちに強力になった時に、南シナ海で欲しいものを主張すればいい、ということです。





(環球)つまりあなたが言いたいのは、「この地域のプレイヤーたちは、アメリカか中国のどちらかにつく必要に迫られる」ということですか?

(ミア)全くその通りです。そしてそれは確実に起こるでしょうね。アジアには、経済的な理由から中国側につき、安全保障的な理由からアメリカにつきたいと考える国々は多いでしょう。ただしわれわれが考えなければならないのは、どちらの要素が勝つかということです。私の議論では、安全保障が経済的な理由を圧倒する、というものです。そしてこの主な理由は、どの国家にとっても存続(サバイバル)が主な目標であるべきだからです。
このように、ミアシャイマーは、中国は経済的発展と比例して軍事力も強力になっていくのだから、欲しいものはその時に主張すればよく、その為にはあと20年から25年は待つべきだ、と述べている。

このロジックは逆にみれば、経済発展しなければ、軍事力も強力にはならないということでもある。つまり、中国の経済発展を鈍らせることが、そのまま、日本の安全保障の強化にも繋がるということ。

その為の方法はいろいろと考えられるだろうけれど、一番単純かつ効果があるのは、日本が一段も二段も経済発展すること。そして、ASEAN諸国やインドなど、中国以外で中国を凌ぐほどの市場を生み出すように手を入れていくこと。中国に金が集まるのは、中国が大市場だとされているからで、それを超える市場があれば、そちらに金が流れていくことは自然のなりゆき。

12月2日、イギリスのキャメロン首相は、北京を訪れ李克強首相と会談したのだけれど、「チベットは中国の一部。独立を支持しない」 とのべ、経済協力を優先して中国の人権問題に踏み込まなかったと伝えられている。

イギリスは、中国からの投資を景気回復の起爆剤の一つとして期待しているという背景があり、図らずも「世の中金だ」を身を持って証明してしまった。もし、中国以外に、中国以上にイギリスへ投資する国があったなら、イギリスもこんな情けない外交をすることもなかっただろうと思われる。

一国平和主義も結構だけれど、その他国へのアプローチをしないという姿勢が却って危機を呼び込むことがあることも知らなくてはいけない。




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