昨日のエントリーの続きです。
小泉元総理の「脱原発宣言」が永田町で話題になっている。
去る9月24日、都内で開かれたイベントで小泉元総理が、「日本の歩むべき道」という演題で講演したのだけれど、1時間の講演のうち、その殆どが脱原発論で、「日本は一刻も早く、原発ゼロ社会を目指すという方針を決めるべきだ。そして政治がそれを主導すべきだ」とまで発言している。
何でも、今、小泉元総理は、脱原発を主張している野党幹部や、シンクタンク研究員、原発や再生エネルギーの技術者、有識者、官僚OBらに声をかけて会い、「脱原発を軸にした政界再編」について話し合っていると噂されている。
先月中頃、ある野党幹部が、都内の宴席で、小泉元総理の隣席が空いたので挨拶に行くと、「おぉ~、あなたも脱原発だよな。原発を止めるタイミングは今しかないんだよ」と話しかけ、その場で、8月に脱原発のドイツと、原発推進のフィンランドを視察したことを挙げて、原発ゼロを主張したのだそうだ。
こうした小泉元総理の動きを受け、永田町では、小泉元総理を旗頭とした「新党構想」まで流れ出しているのだという。
昨日のエントリーで、安倍総理は、与野党の政策をパクってパッケージ化する「全方位型ポピュリズム」戦略を取っているのではないかといったけれど、その"全方位"には2つの「抜け穴」がある。それは、「親中韓」と「脱原発」。
「親中韓」は民主党や社民党、「脱原発」はみんなの党や生活の党が推す政策であるにも関わらず、安倍総理は、最初から、この2つは"全方位型ポピュリズム"の政策パッケージから除外している。
つまり、この2つの抜け穴は、安倍総理の"全方位型ポピュリズム"戦略への対立軸になる可能性があり、それは同時に、安倍総理の「野党殲滅戦略」から生き延びる道でもある。
ただ、抜け穴が2つあるといっても、「親中韓」路線は、昨今の醸成及び世論をみると、それほど支持を集めるものじゃない。今の状況が続くのであれば、むしろ、じり貧傾向になると思われる。だから、実際に抜け穴足りうるのは、「脱原発」だけ。
小泉元総理はここに目をつけた。流石、自民をぶっ壊すといって、本当に壊した人だけのことはある。死角など無いかにみえる安倍政権の急所を的確に突いている。
故に、このままでは先がないと危機感を持っている野党、又は、先がみえる人であればあるほど、この小泉元総理の「脱原発」に合流したがるのではないかと思う。事実、かつての仇敵であった筈の生活の党の小沢代表は、10月2日の会見で「冷静に日本を考える人であれば、たいてい行き着く結論だろう」と小泉元総理を評価している。
おそらく、今後、野党にとって、自民に駆逐される動きから唯一逃れる救命ボート的な役目を果たすのではないかと思う。
この小泉元総理の「脱原発」の動きについて、安倍内閣も気にしているようで、10月15日、甘利経済再生担当相は、BS11の番組収録で、小泉元総理がフィンランドの核廃棄物最終処分場を視察したことに触れ、「『こういう立派なものができればいいが日本では難しいのではないか。そうだとしたら政策を軌道修正すべきではないか』と良い意味で言えば純粋に、悪い意味で言うと短絡的に思ったのではないか」と批判している。
ということで、密かな小泉旋風が巻き起こるかもしれない動きをみせているのだけれど、仮に小泉「脱原発」新党が出来て、政界再編にまで辿りついたとしても、それだけで、政権が取れるとは限らない。国政は「脱原発」だけで出来ているわけじゃないから。
だから、小泉元総理の狙いは政界再編ではないのではないかと思う。週間実話は、小泉元総理は「2020年の東京五輪の開催時に、小泉進次郎氏を総理の座に就けることを狙っているのではないか」という記事を書いているけれど、こちらの読みの方が当たっているように思う。
先程述べたように、国政は「脱原発」だけで出来ているわけじゃないから、たとえ、それで野党が纏まったとしても、「政権担当能力」に欠ける新党に政権は任せない。それは民主党で懲りている。だけど、「脱原発」を主張する勢力が自民党内にあれば別。
もしも、2020年までに原発問題が収束していなかったり、更に別の問題が出ていたりしたら、世論も脱原発に傾くことだって十分考えられる。その時、「脱原発」を主張する人物が自民党内にいたら、自民は政権を維持するためにその人物を担ぐ可能性は非常に高い。
だけど、その「脱原発」が昨日今日とってつけたように、いきなり言い出すようでは、今一つ信用されないし周りもついてこない。だけど、何年も前からずっと言い続けて、それが持論だと自他共に認める人物であれば別。世間も「脱原発」の人だと認知しているから支持も集めやすい。
小泉元総理自身、「郵政民営化」をずっと言い続けて持論とし、それを周りも認めていた。それが総裁候補として押される理由の一つにもなった。
だから、それゆえに、今のタイミングで「脱原発」を言い出しているのではないか。ターゲットは7年後以降。これに呼応するかのように、10月7日、小泉進次郎議員は、名古屋市での講演で、原発政策に関して「自民党にとって議論するチャンスであり、党が変わるきっかけになる。…2020年夏季五輪の東京開催後も目指す道がある方が夢や希望を持てる。たとえ高いハードルがあっても」と脱原発に含みを持たせる発言をしている。
要するに、7年後を見据え、「脱原発」を持論とする議員への仕込みを始めたのではないか、と見る。
またこれは、同時に、今の安倍政権の原発推進路線が頓挫したときの保険にもなるから、中長期的には自民党自身にとっても悪い話ではないと思われる。
小泉元総理は、記者から、今すぐ原発ゼロは暴論ではないかと問われ、「逆だよ、逆。今ゼロという方針を打ち出さないと将来ゼロにするのは難しいんだよ。野党はみんな原発ゼロに賛成だ。総理が決断すりゃできる。あとは知恵者が知恵を出す。」と答えたそうだけれど、その裏には、今、脱原発の方針を打ち出すことで、進次郎議員を総理にするための布石があるのではないかと思う。
コメント
コメント一覧 (7)
>反欧州系の日本への影響力を削ぐ事で
欧州系の日本への影響力を削ぐ事で
軌道の間違いでした。
戦後レジームからの脱却は、安倍さんの心の奥で、めらめらと鬼火のように燃えているのは分かる人にはわかりますから。アメリカとしては放って置けないでしょうし。
石原ノブテルにして言うがままに操る方が楽でしょう。
オセロのように一瞬で圧倒的なひっくり返しが起こる小選挙区制において
選挙を戦う上では、分かりやすいテーマと看板役者が必要です。
進次郎氏の露出度とコメント・行動面での注意深さをみると
自民党の次世代の顔であり、いずれは総裁・総理になるのだろうな・・・
とはぼんやりと感じているのは
政治に関心があるなにかかわらず共通の見解だと思います。
それが意図的な党としての演出ならば、
現代ポピュリズムに対する政権責任政党としてのある意味責任ある行動だと思います。
有権者に対する次世代の「看板」のお披露目ですよね。いわば。
これは、かつて「人材のプール」の機能を果たしていた自民党の新しい形かもしれません。
対して野党は、党首以外の顔がみえない。
そういった余裕もないのでしょうが、これは大きな差だと思います。
【イラン制裁の一部緩和で合意-核開発プログラムの縮小が条件 】
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MWSFLM6S972901.html
11月24日(ブルームバーグ):イランと米英独仏ロ中の6カ国は24日、イランの核開発プログラムに制限を設けることと引き換えに、同国に対する経済制裁を一部緩和することで合意した。約10年におよぶ外交の行き詰まり状態の打開へ前進した。
【米ゴールドマンがウラン取引部門の売却を模索-関係者 】
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MWSC1R6KLVSD01.html
11月22日(ブルームバーグ):米ゴールドマン・サックス・グループ がウラン取引部門を売りに出したことが、事情に詳しい関係者1人の話で分かった。ウラン価格が下落している上、銀行の商品関連業務に規制当局が監視を強めていることが背景にある。