今日は、この話題です。
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10月10日、自民党二階派の議員らは、東京湾の塩害で劣化が進む品川の首都高速道路を視察した。視察後、二階氏は「直下型地震が起きたときのことを考えると、本当に恐ろしい。われわれには大きな宿題がある。…東京五輪があるから、余計に整備をやらなければいけない」と述べ、インフラ整備の重要性を指摘した。
首都高は、昭和34年の首都高速道路公団法の施行に伴って策定された基本計画(1号線から8号線の計約71km)に基づいて、昭和35年に東京オリンピック開催のために整備を急ぐ区間が決定され、昭和37年に京橋~芝浦間の4.5km区間が開通した。
そして、昭和39年の東京オリンピックまでに、4路線計約33kmが開通したのだけれど、奇しくも、56年ぶりとなる2020年の東京オリンピックに向けて、首都高の再整備がなされようとしている。
今や首都高は、総延長301.3km。1日辺り約100万台もの交通量があるのだけれど、実のその8割近くにあたる237kmは高架部分となっている。そのうち、90kmは建設後40年以上経過していて、残りも30年以上経過している。
次の図は、首都高の開通からの経過年数を表したもので、赤線が40年以上、茶線が30年以上経過した路線なのだけれど、都心環状線、羽田線、目黒線、横羽線等、首都のど真ん中を走る路線は軒並み40年以上経過している。
政府は平成24年3月に「首都高速道路構造物の大規模更新のあり方に関する調査研究委員会」を設立し、首都高の大規模更新について検討を進めてきた。今年1月に、この委員会から首都高の大規模修繕についての提言が出されているのだけれど、それによると、現在首都高の高架橋約240km、約12000径間のうち、補修を必要とする損傷が発見されたのは、その3割にあたる約3500径間。そのうち、疲労亀裂が発生した鋼桁は約2400径間、鋼床版は約500径間、RC床版及びPC・RC桁のひび割れは、約1300径間あると報告されている。
委員会は、その理由として、首都高は都内の普通の道路と比べて5倍も大型車が通行している過酷な状況であることに加え、活荷重量が8tから9.6tに変更される前の昭和48年以前の基準で設計されていることにあるとしている。
なんでも、昭和48年より前に作られた建造物は、昭和48年以降の建造物に比べ損傷度合いは2倍に及ぶそうで、委員会は、現在の償還計画には含まれていない、構造物の一部を作り替えたり、新たな損傷の発生を抑制する補強工事などの大規模修繕を実施することが必要だと提言している。
提言では、抽出検討した約75kmの区間に対して、大規模更新が必要な区間として、1号羽田線の4ヶ所、都心環状線2ヶ所、3号渋谷線、4号新宿線、6号向島線の各1ヶ所の計15km。大規模修繕が必要な区間として、都心環状線、1号羽田線、3号渋谷線、4号新宿線、6号向島線、7号小松川線の各1ヶ所の計28kmを挙げている。
提言で抽出検討した約75kmの区間は、累積交通量を10t車換算した指数(累積軸数)の多い路線かつ、昭和48年の設計基準より前に設計された路線を基準に選んでいるから、それらの殆どが建設後30年、40年経っていることを考えると、全区間が更新対象となっていてもおかしくない。それが約半分強の40kmくらいの区間で済んでいることのほうが驚き。
まぁ、実際の首都高の管理は、定期点検を行って、第三者被害の恐れなどがある緊急対応が必要な損傷(Aランク損傷)は発見次第即補修し、緊急対応までは必要ない損傷(Bランク損傷)は計画的に補修しているから、それで持っている部分も相当あると思われる。
けれども、緊急対応の必要がないBランク損傷は、計画的な補修が追い付かず、損傷数は年々増加傾向にある。やはり、そろそろ、大規模な更新および大規模修繕を行う時期にきていることは間違いない。
委員会はその為の概算費用として、大規模更新は約5500~6850億円、大規模修繕は約2250~2400億円の計約7900~9100億円。そして、10年後に見込まれる、今回の検討区間以外での、大規模修繕又は大規模更新が必要な区間を大規模修繕する費用として約3200億円と見積もっている。
額だけみると結構なものになるけれど、首都圏の大動脈として、30年40年使い続けていることを考えると、この程度の額で済むと考えるべきではないかと思う。むしろ、未だ首都高が壊れてないこと自身を行幸とすべきとさえ。
10月13日、中国の江西省の廬山で、観光客らがフェリーに乗り込むために桟橋への橋を渡っていたところ、先月完成したばかりの橋が真ん中から真っ二つに折れて崩落した事故があったけれど、一度に渡れる人が最大40人であるにも関わらず、事故発生時は約100人が渡っていたそうだ。
まぁ、設計人数の倍も一度に乗ってしまえば、それは壊れるだろうとは思うけれど、今の首都高だって、床版の設計荷重(軸重10トン)を超える過積載車両が年間35万軸も走っている。首都高は設計以上の過負荷状態にさらされている。
崩落事故が起こってからでは遅い。特に、建設後40年以上経過している路線は、首都のど真ん中を走る路線だから、ここが丸々通行不可になってしまうと、その経済損失は計り知れない。
無事なうちに、必要な改修なり、更新なりを小まめに行って、流通に大打撃を与えないようにするのは政治の役目。マスコミはともすれば、公共事業をばらまきだと批判するけれど、流通を支えるインフラが破壊されることの意味をどこまで認識しているのだろうか。
コメント
コメント一覧 (3)
http://www.mlit.go.jp/report/press/road01_hh_000267.html
まあ、従来の橋の耐用年数が50年ということに対し最近の技術は耐用年数100年と2倍になっているようです。各社ゼネコンや素材メーカーなどがすでに実用化していつでも使えるようです。政治のすったもんだとは裏腹にこの様な技術開発を着実にすすめて、その事を受けて国土交通省もお墨付きや、国土計画を再構築して準備してきたのでしょう。ここで、国民が国土強靭化を欲し、政治家に猛烈プッシュしてインフラの再構築にむけて動き出せば100年先まで安心の国土計画になるはずです。
【未来に残す橋作り~ 橋梁の長寿命化に向けた取り組み ~ 】
http://www.mlit.go.jp/chosahokoku/giken/program/kadai/pdf/ippan/ippan1-05.pdf
【日本の橋、高齢化時代へ 長寿命技術に成長の芽 】
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDD3005P_R00C13A5000000/
橋や高速道路、首都高、鉄道、バックアップルート用道路と同時に通信インフラも道路に組み込みITSの普及を促したり、従来インフラだけでも大変な規模になりますが、これに加えて地震対策、経済成長を見越した国土計画が必要なのでいくらでも国土強靭化の仕事はありますね。
首都高の計画自体が1950年代に策定されたものですから、日本社会の自動車普及と物流に占める割合の激増を想定できていません。また、自動車やそれに積載する貨物の重量増についても同じです。抜本的な見直しを行いたいところなのですが、今の首都圏の状況を考えると、もう1本環状高速道路を通すというのはかなり厳しい。今の首都高を整備してだましだまし使っていくしかないですね。