日比野庵 新館

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今日は、ごくごく簡単に…



防衛省が、ステルス性能を持った最新鋭戦闘機を探知するレーダーの研究開発に本格的に乗り出すとの報道がされている。なんでも、2014年度予算の概算要求に研究費37億円を盛り込んでおり、10年後の実用化を目指すという。

確かに、先日公表された、2014年度予算の概算要求(P.30)には、「ステルス機等を探知するためのレーダー及び射撃管制システムの研究(37億円)」という項目があり、おそらく、このことを指していると思われるのだけれど、2012年度や2013年度の概算要求には、それに類するものが入っていないから、"本格的に開発する"なんて表現になったのではないかと思う。

では、具体的にどんな技術なのかについては報道または概算要求だけでは分からないのだけれど、今年の7月から8月にかけて、これについての事前の事業評価が行われている。

それによると、事業の概要は「ステルス機、高速空対地誘導弾、極低高度で飛しょうする巡航ミサイル等の将来の経空脅威への対処を可能とするため、高精度標定技術等を有する地対空誘導弾の射撃管制レーダに関する研究」となっており、射撃管制技術に付随したレーダー技術の開発という扱いになっている。

また、代替手段との比較検討した結果として「諸外国の射撃管制レーダは、弾道ミサイル対処用のXバンドレーダ等に見られるように、大出力化及び空中線の大開口化によりレーダリソースの拡充がなされているが、莫大なコストや電力が必要であり、また重量も非常に重くなるため、機動性を有した地対空誘導弾システム用射撃管制レーダとしては不向きである」としている。

そして、今回の研究の有効性として「冷却の効率化による電力低減を図った空中線構造とし、これに伴う電力配分の効率化によって送信出力を増大するとともに、高精度標定技術及びレーダリソースの最適配分技術を取得することにより、ステルス機、高速空対地誘導弾、極低高度で飛しょうする巡航ミサイル等の将来の経空脅威への対処を可能とすることが期待できる」としている。

筆者はこれまで、ステルスをキャッチする技術については、いくつか書いたことがあるのだけれど、2011年7月のエントリー「F35とアンチステルス技術」の中で、MIMO技術について取り上げたことがある。MIMOとは複数の送受信アンテナで得た探知信号を合成する技術のことで、ステルスのようなレーダー波をそのまま反射せず、反らしたりするような物体についてもキャッチできるとされている。

また、比較的小出力のレーダーを複数同時使用する運用になることから、レーダー単体を大型化・高出力化させる必要がないという利点がある。

今回の新型レーダー開発の事業評価には、「電力配分の効率化によって送信出力を増大するとともに、高精度標定技術及びレーダリソースの最適配分技術を取得する」となっていることから、複数のレーダーを同期させる数を、状況に応じて増減させることで、レーダー出力と精度を調整するという風に読める。これは、MIMOの運用方式と極めて似通っていることから、今回概算要求して開発するレーダーは、MIMOを使った火器管制システムなのではないかと思われる。

事業評価によると、今回の火器管制システムは「平成26年度から平成29年度まで研究試作を実施し、平成29年度から平成31年度まで所内試験を実施する予定」とし、来年度から開発を始める理由として、「ステルス戦闘機については、ロシアは2015年までの装備化を目指しており、中国においても2020年までに配備される見通しである。このため、本事業で実施する射撃管制レーダの能力向上の検討は急務であり、研究開発に要する期間を考慮すると、一刻も早く本研究を実施する必要がある。」としている。

平成31年度といえば、6年後の2019年。そこから実戦配備だと、更に何年かはかかるだろうから、中国がステルス戦闘機の実戦配備するという2020年にはギリギリ間に合うか間に合わないかのタイミングになる。この事業の予算認証は勿論の事、計画に遅れることなく開発を進めていただきたい。




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