消費税増税を巡って、官邸と官僚との間で、激しい鍔迫り合いが繰り広げられている。



8月8日から10日にかけて、読売新聞は消費税増税について、全国世論調査を行なった。来年4月に予定されている8%への引き上げについて「引き上げは必要だが、時期や引き上げ幅は柔軟に考えるべきだ」と答えた人が56%、「今の5%から引き上げるべきでない」は25%、「予定通り引き上げるべきだ」は17%で、8割以上は、来年4月の引き上げを是としない結果となった。

これは、他の世論調査でも同じような結果となっていて、例えば、7月に行われた共同通信が自民党支持層を対象に行った世論調査でも「実施時期の先送り」が40.1%、「5%維持」が32.8%で7割が据え置き又は先送りを支持。「予定通り引き上げる」は25.4%に止まっている。

自民党以外の主な政党支持層を対象にした調査でも、5%維持を支持する意見が大半で、民主党支持層の43.6%、日本維新の会支持層の43.7%、公明党支持層の45.2%、みんなの党支持層の55.3%、共産党支持層の61.9%が増税反対。無党派層でも「5%維持」が43.7%、「先送り」が35.4%、「予定通り増税」が19%となっていて、全体でみても、7割から8割が「予定通りの増税」に反対してる。

そんな中、7月28日にフジテレビの「新報道2001」に出演した菅官房長官が「官僚の人たちは既成事実を作って、(来年4月からの消費税増税を)決めざるをえない仕組みを作っている。それを私が今ぶち壊している」と非常に興味深い発言をしている。

菅官房長官が指摘する"既成事実"とは具体的に何かについてはよく分からないけれど、閣僚の発言や、メディアを見ると、「消費税引き上げは国際公約だ論」、或いは、「増税を先送りすれば、財政規律の緩みと見做され、日本の信認が失われる論」が大きく報道されている。

先日モスクワで行われたG20財務相・中央銀行総裁会議の後、麻生財務相は「消費増税は国際公約に近い」と述べているし、茂木敏充経済産業相も2013年7月30日の閣議後の記者会見で「消費税3%引き上げは公約」とコメントしている。また、同じく7月30日の経済財政諮問会議終了後の会見で、「リーマンショックのようなよほどの外的要因がない限り、消費税を引き上げないとの選択肢はない」と述べている。



これだけ聞くと、もう増税は既定路線で揺るがないかのように見えるけれど、嘉悦大の高橋洋一教授によると、国際会議とはその場で新たな約束を各国間で行うのでなく、既に各国で決められている内容を披露する場というだけで、勝手に国際公約などできないのだという。

よしんば、麻生財務相のいうように、G20財務相・中央銀行総裁会議での発言は"国際公約"になるのであるならば、消費増税法案の付帯18条も同じく"国際公約"になるわけで、結局のところ、増税は景気を判断した上でのことになる。

また、「増税を先送りすれば、財政規律の緩みと見做され、日本の信認が失われる論」についても、財政規律の緩みというのが政府の歳入と歳出のバランスが崩れるということを指しているのであれば、アベノミクスによって、増やした歳出に見合う歳入を確保すればいいだけのことであって、消費増税はその為の一つの手段、ワンオブゼムに過ぎない。実際アベノミクスによって、平成24年度の年金運用で、11兆2222億円の黒字を叩き出している。だから、必ずしも来年4月に消費増税をしなければならない理由なんかない。

安倍総理もその辺りは承知しているようで、7月27日、マニラで内外記者会見を行った際、財政再建の道筋を示す「中期財政計画」について「消費税率引き上げを決め打ちするものではない」と、増税ありきではない考えを示し、「増税を先送りすれば、財政規律の緩みと見做され、日本の信認が失われる論」を牽制した。

実際、2014年度一般会計予算の概算要求でも、消費増税を前提としないで査定する「要望基礎額」と、消費増税決定で税収増が見込めるようになった時点で査定する「要望」の二つに分けて各省庁に要求させている。

そして、8月8日の閣議で、概算要求基準と、2020年度までの中期財政計画を"了承"したのだれど、消費増税については、増税による税収増を織り込まず、秋の増税判断を縛ることがないよう、中期財政計画の閣議決定も見送っている。この中期財政計画に消費増税を織り込んでしまうことが、菅官房長官のいう「官僚が作る既成事実」であるのなら、安倍-菅ラインは見事にそれをぶち壊したといえる。

もしも、消費増税を先送りしても、税収が伸びて、財政が健全化傾向を示してくれば、次には、景気回復さえすれば、そもそも消費増税なんて必要ではなかったのでは、という議論も出てくるものと思われる。それは、財務省の思惑を超え、アベノミクスの勝利の凱歌となるだろう。




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