日比野庵 新館

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今日は、昨日とちょっと関連したエントリーです。今日、明日と前後編でエントリーします。



1.政府の立場に反する韓国司法

7月30日、釜山高裁は、朝鮮半島の日本統治時代に徴用された韓国人5人が、未払い賃金や損害賠償を求めた控訴審で、1人当たり8000万ウォン(約700万円)の支払いを三菱重工業に命じる判決を言い渡した。

これは、原告が1944年から広島市の旧三菱重工業の機械製作所や造船所で「強制労働」に就き、翌1945年、原爆で被爆したなどとして、2000年に釜山地裁に提訴した裁判で、1審、2審は原告側の請求を退けたものの、2012年5月、最高裁が、1965年の日韓請求権協定で元徴用工の個人請求権は消滅していないと判断、審理を釜山高裁に差し戻していた。

三菱重工業は上告する方針だそうだけれど、今回の判決は最高裁判断を踏襲したもので、上告しても棄却の可能性が高いとみられている。

この判決について、菅官房長官は30日午後の記者会見で、「日韓間の財産請求権の問題は日韓請求権協定で完全に最終的に解決済みだ。仮にこれと相いれない判決であれば、わが国として容認することはできない」とコメントしている。

日韓請求権協定とは、正式には「財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定」といい、1965年の日韓基本条約と同時に締結された付随協約のひとつ。日韓請求権協定の全文は次のとおり。
日韓請求権並びに経済協力協定(財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定)

 日本国及び大韓民国は、両国及びその国民の財産並びに両国及びその国民の間の請求権に関する問題を解決することを希望し、両国間の経済協力を増進することを希望して、次のとおり協定した。

第一条

1 日本国は、大韓民国に対し、

(a)現在において千八十億円(一◯八、◯◯◯、◯◯◯、◯◯◯円)に換算される三億合衆国ドル(三◯◯、◯◯◯、◯◯◯ドル)に等しい円の価値を有する日本国の生産物及び日本人の役務を、この協定の効力発生の日から十年の期間にわたつて無償で供与するものとする。各年における生産物及び役務の供与は、現在において百八億円(一◯、八◯◯、◯◯◯、◯◯◯円)に換算される三千万合衆国ドル(三◯、◯◯◯、◯◯◯ドル)に等しい円の額を限度とし、各年における供与がこの額に達しなかつたときは、その残額は、次年以降の供与額に加算されるものとする。ただし、各年の供与の限度額は、両締約国政府の合意により増額されることができる。

(b)現在において七百二十億円(七二、◯◯◯、◯◯◯、◯◯◯円)に換算される二億合衆国ドル(二◯◯、◯◯◯、◯◯◯ドル)に等しい円の額に達するまでの長期低利の貸付けで、大韓民国政府が要請し、かつ、3の規定に基づいて締結される取極に従つて決定される事業の実施に必要な日本国の生産物及び日本人の役務の大韓民国による調達に充てられるものをこの協定の効力発生の日から十年の期間にわたつて行なうものとする。この貸付けは、日本国の海外経済協力基金により行なわれるものとし、日本国政府は、同基金がこの貸付けを各年において均等に行ないうるために必要とする資金を確保することができるように、必要な措置を執るものとする。

 前記の供与及び貸付けは、大韓民国の経済の発展に役立つものでなければならない。

2 両締約国政府は、この条の規定の実施に関する事項について勧告を行なう権限を有する両政府間の協議機関として、両政府の代表者で構成される合同委員会を設置する。

3 両締約国政府は、この条の規定の実施のため、必要な取極を締結するものとする。

第二条

1 両締約国は、両締約国及びその国民(法人を含む。)の財産、権利及び利益並びに両締約国及びその国民の間の請求権に関する問題が、千九百五十一年九月八日にサン・フランシスコ市で署名された日本国との平和条約第四条(a)に規定されたものを含めて、完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認する。

2 この条の規定は、次のもの(この協定の署名の日までにそれぞれの締約国が執つた特別の措置の対象となつたものを除く。)に影響を及ぼすものではない。

(a)一方の締約国の国民で千九百四十七年八月十五日からこの協定の署名の日までの間に他方の締約国に居住したことがあるものの財産、権利及び利益

(b)一方の締約国及びその国民の財産、権利及び利益であつて千九百四十五年八月十五日以後における通常の接触の過程において取得され又は他方の締約国の管轄の下にはいつたもの

3 2の規定に従うことを条件として、一方の締約国及びその国民の財産、権利及び利益であつてこの協定の署名の日に他方の締約国の管轄の下にあるものに対する措置並びに一方の締約国及びその国民の他方の締約国及びその国民に対するすべての請求権であつて同日以前に生じた事由に基づくものに関しては、いかなる主張もすることができないものとする。

第三条

1 この協定の解釈及び実施に関する両締約国の紛争は、まず、外交上の経路を通じて解決するものとする。

2 1の規定により解決することができなかつた紛争は、いずれか一方の締約国の政府が他方の締約国の政府から紛争の仲裁を要請する公文を受領した日から三十日の期間内に各締約国政府が任命する各一人の仲裁委員と、こうして選定された二人の仲裁委員が当該期間の後の三十日の期間内に合意する第三の仲裁委員又は当該期間内にその二人の仲裁委員が合意する第三国の政府が指名する第三の仲裁委員との三人の仲裁委員からなる仲裁委員会に決定のため付託するものとする。ただし、第三の仲裁委員は、両締約国のうちいずれかの国民であつてはならない。

3 いずれか一方の締約国の政府が当該期間内に仲裁委員を任命しなかつたとき、又は第三の仲裁委員若しくは第三国について当該期間内に合意されなかつたときは、仲裁委員会は、両締約国政府のそれぞれが三十日の期間内に選定する国の政府が指名する各一人の仲裁委員とそれらの政府が協議により決定する第三国の政府が指名する第三の仲裁委員をもつて構成されるものとする。

4 両締約国政府は、この条の規定に基づく仲裁委員会の決定に服するものとする。

第四条

 この協定は、批准されなければならない。批准書は、できる限りすみやかにソウルで交換されるものとする。この協定は、批准書の交換の日に効力を生ずる。

 以上の証拠として、下名は、各自の政府からこのために正当な委任を受け、この協定に署名した。

 千九百六十五年六月二十二日に東京で、ひとしく正文である日本語及び韓国語により本書二通を作成した。

日本国のために

椎名悦三郎

高杉晋一

大韓民国のために

李東元

金東祚
この協定の第一条により、日本は韓国政府に対して、3億ドルの賠償を行い、第二条第1項で、「日韓間の両国間及び国民間の請求権に関する問題は完全かつ最終的に解決されていること」が確認されている。

したがって、日本と韓国との間の賠償問題について、日本政府は日韓請求権協定で解決済みとの立場を取っていて、韓国政府も基本的に日本と同様の立場を取っている。

過去には、元朝鮮女子勤労挺身隊の韓国人女性らが、三菱重工業を相手取り、未払い賃金や慰謝料の支払いを求める訴訟を日本で起こしたことがあるのだけれど、こちらの訴訟では、名古屋高裁が2007年、被告側には「強制連行と強制労働、賃金未払い」を行った不法行為責任があると認めた上で、日韓請求権協定で請求権が消滅したとして請求を棄却、最高裁も08年に同様の判断を出している。

また、2009年8月には、韓国の徴用被害者達が、韓国政府の慰労金政策に問題があるとして訴訟を起こしたのだけれど、当時、韓国の外交通商部は、「日帝動員被害者(不払い賃金)供託金は、請求権協定を通じて日本から受けとった無償の3億ドルに含まれているとしなくてはならないため、日本政府に請求権を行使しにくい」と述べている。

つまり、日本も韓国も賠償問題は請求権協定で解決しているというスタンスを取っているわけで、その意味で、今回の判決は、先の最高裁の判断も含めて、日本政府の立場とも、韓国政府の立場とも違う判断を下したことになる。

明日につづきます




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コメント

 コメント一覧 (1)

    • 1. プチ農
    • 2013年07月31日 20:38
    • 時効ですよね。
      日本から韓国に請求できる話のほうがはるかに多いのに・・
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