今日は、この話題です。



6月28日、総務省は5月の消費者物価指数を発表した。

それによると、総合指数(CPI)は2010年を100として99.8で、前月比0.1%の上昇。前年同月比は0.3%の下落。生鮮食品を除く総合指数(コアCPI)は100.0で、前月比0.2%の上昇、前年同月と同水準。そして、 食料及びエネルギーを除く総合指数(コアコアCPI)は98.5で、前月比0.1%の上昇、前年同月比0.4%の下落となった。

一部のエコノミストからは、コアCPIが前年比0%とマイナスを脱したことから、デフレ脱却の局面が近づいているとの声が上がっているそうだ。だけど、2010年から2013年までの毎月のコアCPIは、大体4月か5月にピークをつけて、夏から秋には横這いとなり、冬からマイナスとなって、年明けごろにマイナスのピークをつけるという傾向がある。

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上図は、各CPIの動きをグラフ化したものだけれど、2010年から2013年まで毎年大体同じ動きをしていることが分かる。5月は、コアCPIが前年度比0%でマイナスを脱したなんていうのも、今年5月になって初めてというわけじゃない。

去年の3月から5月のコアCPIは00を超えて、僅かにプラスになっている。だから、5月までの段階では、コアCPIはまだまだ例年どおりの動きであり、デフレ脱却の局面が近づいているなんていうのは、ちと気が早い。

今回、総務省は前年同月比の変動に寄与した項目として次を挙げている。
生鮮食品を除く総合の前年同月比の下落幅は0.4ポイント縮小(4月-0.4% → 5月 0.0%)
・電気代,ガソリンなどのエネルギーにより総合の下落幅が0.20ポイント縮小
・生鮮食品を除く食料により総合の下落幅が0.04ポイント縮小
・教養娯楽用耐久財により総合の下落幅が0.08ポイント縮小
・外国パック旅行により総合の下落幅が0.02ポイント縮小
・宿泊料により総合の下落幅が0.04ポイント拡大
とまぁ、電気代、食料品の値上げと、娯楽や旅行に少しお金を使うようになったのが要因としている。だけど、その中でも電気代指数の上昇が例年と比較して大きく動いていることは注目に値する。これは、おそらく、この5月からの電気代値上げが大きく指数に影響したのだろうと思われる。

したがって、食品とエネルギー指数を除外したコアコアCPIでみると、変動幅は若干縮小しているものの、依然マイナス。だから、コアCPIが改善したように見える裏には、電気代値上げという要素が隠されている。

今年の2月3日のエントリー「CPIの罠とデフレ脱却への道」で、筆者は「原発の殆どが停止して、エネルギー価格が上がりつつある昨今の状況で、エネルギー価格を含めたコアCPIを使われてしまうと、エネルギー価格に引っ張られて、コアCPIが上昇する懸念がある。」と述べたことがあるけれど、今回のコアCPIの上昇は、まさにこれに該当する。

だけど、筆者がもっと注目したいのは、コアコアCPIの年毎の指数の絶対値。

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コアコアCPIの年度毎の変動のグラフを見ると、CPI、コアCPIは、どの年もその指数と動きは大体同じで、グラフの線が重なっている。これは、CPI、コアCPIの値そのものは2010年からほとんど変わっていない、即ち、横這い状態になっていることを意味してる。

ところが、コアコアCPIとなると、2010年1月では100を超えていたのが、2011年1月には99.1、2012年1月は98,3と年を追うごとにその絶対値が下がっている。今年の1月の指数は97.6と3年前と比べると3ポイントぐらい落ちている。これはデフレがまだまだ続いていることを示している。

こうしたことを考えると、やはりデフレ脱却の指標にはコアコアCPIを使うべきだと思われる。

今のところ、政府はデフレ脱却の指標として、コアコアCPIと使う方針でいるそうだから、筆者は妥当な判断だと思うけれど、当然ながら異論も出ている。

7月11日、日銀の黒田総裁は金融政策決定会合後の記者会見で、消費者物価上昇を判断する際の指標について「重要なのはどういうトレンドで物価が動いているのかということ。…生鮮食品は天候などの短期的な要因に左右されるので、生鮮食品を除いてみるのは合理性がある」との見方を示し、コアコアCPIについて、「一定の合理性はあるが、全体の3分の2ぐらいしか含んでいない。…従来通り生鮮除くCPIで見ていくのが適当だと思う」と述べている。

確かに、コアコアCPIはCPI全体の動きに遅れる傾向があり、消費者が身近に感じる物価高を機動的に映さないと指摘されるけれど、それならば、以前「東大日次物価指数」のエントリーで紹介した、東大日次物価指数を参考にすればいい。

東大日次物価指数は、全国のスーパーで販売されている20万点の商品の値段の変動から毎日CPIを算出するものだから、全体が含まれていないだとか、反応が遅れるなんて心配もない。

因みに7月9日時点での東大日次物価指数は-0.67%で、マイナスが継続してる。デフレ脱却について、政府は慎重な判断を下して欲しい。




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