7月3日、中国当局の宣伝部門が中国国内メディアに対して、国内の資金不足問題を報道しないよう指示したことが明らかになった。



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これは、当局の宣伝部門が中国国内の記者に携帯のショートメッセージで指示を送信したもののようで、その内容は「「いわゆる『銭荒』についてあおるような報道をしない」ことに加え、中国国内の金融市場では「流動性が十分に保たれていることを宣伝、詳説する」よう指示。更に、「現在の経済金融情勢の積極的な一面を十分に宣伝して、市場心理を盛り上げる」との指示も出されたようだ。

政府当局がそんな指示を携帯メールで直接送るなんてのも驚きなのだけれど、単に流動性が保たれていることを詳説せよなんて、それだけの指示で、各紙で整合性のとれた説明記事が書けるのか。或いは、結論さえ指示どおりにしておけば、その理由は何だってよい、ということか。

現在、問題となっている資金の流動性不足は、中国で「銭荒(チェン・フォアン)」と呼ばれている。

元々、「銭荒」という言葉は、中国宋代に発生した銅銭の流通不足の意味で用いられた。「荒」とは、飢饉の意味があり、庶民生活に必要な銅銭の不足によって齎される生活苦が、飢饉での食糧不足に匹敵することからそう呼ばれた。

当時、銅銭が不足した原因として、大きく次の4つが挙げられている。
1)商品経済の急激な発達や物価の騰貴、政府財政の拡大に対して、施設や技術的な問題によって銅銭の生産量が追いつかなかったこと

2)仏教信仰の広がりに伴う仏像・仏具の製造など銅銭製造以外の目的による銅の需要が高まり、銅材が不足したこと

3)唐や宋などの中国王朝の通貨が周辺諸国を含めた共通通貨として認識され、対外貿易とともに銅銭がアジア諸国に広く流出したこと

4)銭納による納税を原則実施したこと
平たく言えば、実体経済の拡大に、銅銭の供給が全然追いつかない状況だったということ。

これに対して、現在の中国国内が流動性不足に陥った原因について、大きく次の2つが指摘されている。
A)アメリカのQE3の規模縮小との観測が広がったことで、元高期待が弱まり、海外からの資金流入が減少。更に、経済成長鈍化予想と成長鈍化に対策を打たない中国政府に対する失望感がそれに拍車をかけた。

B)前年度の企業所得税の納付期限が翌年5月末であることと、6月の端午節の連休を迎えるなど、毎年この時期は、現金ニーズが高まること
とまぁ、こちらも、資金需要の急激な高まりと海外流出によって、資金不足になったということ。

これに対して、中国政府は、流動性不足に陥った一部の金融機関に対して、資金を供給して支える一方で、市場に資金を大量供給することもせず、むしろ抑制的な対応を取っている。実際、短期金利が高騰した6月第3週でも、公開市場操作による資金放出量は、6月第1、2週よりも絞っている。



この短期金利が上昇していた、6月下旬は、昨今問題視されている例の「理財商品」の大量償還期だったのだけれど、見方によっては、中国当局が、高い金利のまま放置した、ということもできる。みずほ総研アジア調査部中国室長の伊藤信悟氏は、中国当局が今回の流動性危機を、金融市場健全化の「好機」として、逆手に取り、短期金利上昇を放置することで、経営管理の甘い銀行に対して流動性リスクを自覚させるという。一種の教育効果を狙ったのではないか、と指摘している。

実際、流動性逼迫については、中国人民銀行が、一部銀行救済のために資金を提供したことを認めた後に改善したようだから、本当のところはどうか分からないけれど、一応、表向きは、流動性は確保されているということなのだろう。

ただ、こうした中国政府の動きをみると、みずほ総研の伊藤氏が指摘するように、中国は中国なりに金融市場の健全化を目指しているように見えなくもない。

先日も、広東省の深セン市統計局が、同市の5月の輸出額が、210億3400万ドルと、前月比で35.3%減。輸入も161億5300万ドルと39.1%減と発表している。

中国の経済特区であり、貿易も中国各市の中でも最大規模を誇る深セン市で、これほどまでに輸出入が減少しているのは只事ではないのだけれど、その理由は、香港から投機資金を持ち込むための架空取引が取り締まりで急減し、統計上の水増し分がなくなったためと見られている。

李克強首相は、6月19日の国務院常務会議で「穏健な貨幣政策を堅持し、それを立派に生かして、合理的な貨幣量を保持していく」と強調したという。これは裏を返せば、"合理的でない貨幣供給はしない"ということであり、要するに、これ以上の金融緩和、財政出動はしないということ。

まぁ、これはこれで、目指すべき理想の姿ではあるのかもしれないけれど、これまで膨れに膨れ上がったバブルに、急拡大している「影子銀行(シャドーバンキング)」問題。そんな状態で、金融引き締めをやって、本当に上手くいくのか。

今後の中国経済の行方は要注意だと思う。




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