{%iアプリ(枠付き)docomo%}
1月27日、国土交通省は2025年度にも開業見込みの北陸新幹線について、新幹線規格も在来線も走れるフリーゲージトレイン(軌間可変電車)の導入を検討していることを明らかにした。
フリーゲージトレインとは、新幹線の線路幅(標準軌1,435mm)と在来線の線路幅(狭軌1,076mm)それぞれに対して、車輪の左右間隔を、軌間変換装置を通過するだけで変換できる車両のこと。
これは、標準軌の新幹線と狭軌のままの在来線を直通運転できることから、在来線と新幹線間の乗換えが不要になり、利用者の負担軽減になる他、新規路線の建設用地確保も要らないので、建設コストや建設期間は大幅に抑えることができる。
現在、運用されているミニ新幹線方式は、車両を在来線規格にして、新幹線と在来線の相互乗り入れを可能にはしているのだけれど、在来線の線路幅を新幹線と同じ標準軌へ広げる工事が必要となる。
その点、フリーゲージトレインは、線路幅を広げる工事も不要になるから、必然的に工事に伴う在来線の運休もない。メリットは格段に大きい。
軌道を変更するときには、軌道変換区間という、標準軌と狭軌を繋げた途中で幅の変わる線路区間を車両が通過することで行う。車体がこの区間を通ると、車体は支持レールによって支えられ、車輪はガイドレールに従って左右に移動して車輪幅を自動的に変える。
勿論、フリーゲージトレインを実用化するに当たっては、技術的ハードルがいくつかある。
その一つには、まず、在来線を高速で走行できるのかという問題がある。現在、日本の鉄道の速度は、新幹線が時速300km以上、在来線が特急で時速130kmで走行しているのだけれど、フリーゲージトレインも最低限これらを満たさなくてはならない。
例えば、山陽新幹線内では、時速300kmで運転する列車の割合が多く、時速300kmで走れない列車は途中駅で通過待ちすることになる。折角、直通で乗り入れできるようにしても、途中で通過待ちばかりとなって、結果的に所要時間の短縮はできなくなってしまう。
ところが、ほんの数年前までは、試験走行でも、在来線区間では目標速度を出すことができなかった。これは、直線区間だと130kmの速度で安定走行できるものの、半径600m以下の急カーブとなると、横圧が基準値を超え、脱線の恐れが高まる(脱線係数基準値超過)というのがその理由。結果として、既存の特急列車より最大40km/hも遅い速度しか出せなかった。
この問題に対しては、これまで何とか車両を改良して対応しようとしていたのだけれど、車両側では吸収しきれず、レール側を継ぎ目の少ないロングレール化することで、漸く目標速度を達成できるようになってきた。
※1/29追記
ロングレール化することで運行速度を高速にできる理由として、継ぎ目の少なさが挙げられる。輸送中の振動の90%は上下方向に発生するのだけれど、振動が上下方向に発生した場合、貨物や製品には、重力加速度に加えて振動の加速度が加わることになり、最悪の場合、落下に近いレベルの加速度が貨物や製品にかかり危険になる。日通総合研究所の調査によると、列車の走行中の上下方向の加速度は、レール上では、0.1~0.4Gであるのに対して、レールの継ぎ目では、0.2~0.6Gにも及ぶ
レールは温度によって伸縮するために、線路敷設技術が未熟であった昔は、あまりにも長いレールは温度変化による伸縮で線路の破断などが起きてしまうと考えられていた。そこで、線路に継ぎ目を設けて、少しだけ隙間を開けることで、線路が伸縮してもよいようにしていた。
だけど、近年、枕木の改良や線路軌道の敷設技術が向上すると、温度による伸縮よりも線路強度が勝るようになって、安全性が向上し、ロングレール化が図られるようになった。
ロングレールとは、文字通り、通常のレールを溶接することで特別に長くしたレールのことで、普通のレールの長さが25メートル(定尺レール)であるのに対して、ロングレールは200m以上のものを指すのだけれど、一般的には、1kmから2kmの長さになることが多い。
床面と枕木で固定されているロングレールは、中央部分がしっかり押さえ込まれているために、あまり動かない不動区間があることが研究で分かってきており、温度変化により伸縮する可動区間は両端それぞれの100m程度。
だけど、それでも、温度変化による両端それぞれの伸縮量は5cm程度になることから、従来の隙間がある継目では対応できない。そこで、ロングレールには、「伸縮継ぎ目」と呼ばれる独特の構造を持った継ぎ目が使われている。
これは、非常に浅い角度で斜めにカットされたレールに次のレールを横に差し込んだ構造になっていて、これによって、車輪は通常の継ぎ目のような隙間や急激な段差を越えることなく通過することができるようになっている。
また、ロングレールがどこまでも続く一本のレールではなくて、ある程度の長さにしているのは、温度変化によるレールの伸縮への対応だけではなくて、運用上の安全確保の意味合いもある。
鉄道は、列車どうしの追突や衝突を防止するために、ある区間内に列車が存在する場合、その区間に他の列車が進入できないよう信号機や自動列車制御システムによって管理されている。だけど、この時、列車の位置を検出するため区間ごとにレールを利用して信号電流を流していて、継ぎ目をこの管理区間が変わる部分に使用している。だから、あまりにも長い区間が一本のレールだと安全管理の"目が粗く"なって都合が悪い。
また、そのほかの課題としては、軌間可変区間を通過して、車輪幅を変えるまでの時間短縮というのがある。開発当初は極端な低速でしか通過できず、1両通過するのに1分以上掛かっていたから、たとえば新幹線のような16両編成だと、軌間変更に16分掛かってしまう。これなら在来線へ乗り換えした方が早い。
海外で運用されているフリーゲージトレインには、スペインのタルゴ列車というのがあるのだけれど、軌間変更できるのは車両だけで、機関車側は、境界でそれぞれの軌間に応じた機関車に付け替える。しかも、新幹線と違って、機関車が客車を引っ張る方式だから、車両は自力で軌間可変区間を通過できない。従って、タルゴ列車の軌間変更は、まず、境界で機関車を付け替えてから、軌間可変区間を通過して車両の軌間変更をすることになり、変更までの時間がより多く掛かる。
スペインは日本と同じく、起伏が多い国土で、鉄道は勾配やカーブが多い山岳路線が多く存在するために、列車には、通常の2軸台車ではなく、1軸台車が採用されている。これは、2軸台車だと、曲線区間で車輪とレールの方向が微妙にずれて、軋みが発生するためで、軸を1つにすることで、車輪とレールの方向を一致するようにしている。
その代わり、車輪1つに掛かる重量が重くなってしまうので、車両1両の長さを短く(最新型で13m)して負荷を軽くしている。新幹線の車両1両の長さは25mだから、タルゴ列車は半分くらいしかない。それでも、タルゴ列車の軌間変更には20分かかるそうだ。
日本のフリーゲージトレイン試験車の軌間変更時間は、今では数分程度にまで短縮されているようで、ようやく許容できる範囲にまで近づいてきているといえる。
北陸新幹線の総工事費は1兆1300億円だけれど、フリーゲージトレインが導入されれば、投資効果が高まり、北陸の経済活性化にも一役買うことになるだろう。
←人気ブログランキングへ
北陸新幹線でフリーゲージトレイン案が浮上 国交省
国土交通省は27日、2025年度にも開業見込みの北陸新幹線(金沢―敦賀)について、新幹線規格も在来線も走れる軌間可変電車(フリーゲージトレイン)の導入を検討していることを明らかにした。実現すると金沢から関西に出る場合、敦賀で乗り換えせずに、京都や大阪へ行くことが可能になる。
整備新幹線(北海道、北陸、九州)の投資効果などを検証する「整備新幹線小委員会」で、北陸新幹線の整備効果を高める手法として示された。
北陸新幹線の総工事費は1兆1300億円。昨年末の政府・与党合意で整備方針が決まっているが、敦賀から先はルートが決まっていなかった。ただ、金沢―敦賀間でフリーゲージトレインが導入されれば、既存路線との接続が可能となり、投資効果が高まるという。
URL:http://www.asahi.com/business/update/0128/TKY201201280398.html
1月27日、国土交通省は2025年度にも開業見込みの北陸新幹線について、新幹線規格も在来線も走れるフリーゲージトレイン(軌間可変電車)の導入を検討していることを明らかにした。
フリーゲージトレインとは、新幹線の線路幅(標準軌1,435mm)と在来線の線路幅(狭軌1,076mm)それぞれに対して、車輪の左右間隔を、軌間変換装置を通過するだけで変換できる車両のこと。
これは、標準軌の新幹線と狭軌のままの在来線を直通運転できることから、在来線と新幹線間の乗換えが不要になり、利用者の負担軽減になる他、新規路線の建設用地確保も要らないので、建設コストや建設期間は大幅に抑えることができる。
現在、運用されているミニ新幹線方式は、車両を在来線規格にして、新幹線と在来線の相互乗り入れを可能にはしているのだけれど、在来線の線路幅を新幹線と同じ標準軌へ広げる工事が必要となる。
その点、フリーゲージトレインは、線路幅を広げる工事も不要になるから、必然的に工事に伴う在来線の運休もない。メリットは格段に大きい。
軌道を変更するときには、軌道変換区間という、標準軌と狭軌を繋げた途中で幅の変わる線路区間を車両が通過することで行う。車体がこの区間を通ると、車体は支持レールによって支えられ、車輪はガイドレールに従って左右に移動して車輪幅を自動的に変える。
勿論、フリーゲージトレインを実用化するに当たっては、技術的ハードルがいくつかある。
その一つには、まず、在来線を高速で走行できるのかという問題がある。現在、日本の鉄道の速度は、新幹線が時速300km以上、在来線が特急で時速130kmで走行しているのだけれど、フリーゲージトレインも最低限これらを満たさなくてはならない。
例えば、山陽新幹線内では、時速300kmで運転する列車の割合が多く、時速300kmで走れない列車は途中駅で通過待ちすることになる。折角、直通で乗り入れできるようにしても、途中で通過待ちばかりとなって、結果的に所要時間の短縮はできなくなってしまう。
ところが、ほんの数年前までは、試験走行でも、在来線区間では目標速度を出すことができなかった。これは、直線区間だと130kmの速度で安定走行できるものの、半径600m以下の急カーブとなると、横圧が基準値を超え、脱線の恐れが高まる(脱線係数基準値超過)というのがその理由。結果として、既存の特急列車より最大40km/hも遅い速度しか出せなかった。
この問題に対しては、これまで何とか車両を改良して対応しようとしていたのだけれど、車両側では吸収しきれず、レール側を継ぎ目の少ないロングレール化することで、漸く目標速度を達成できるようになってきた。
※1/29追記
ロングレール化することで運行速度を高速にできる理由として、継ぎ目の少なさが挙げられる。輸送中の振動の90%は上下方向に発生するのだけれど、振動が上下方向に発生した場合、貨物や製品には、重力加速度に加えて振動の加速度が加わることになり、最悪の場合、落下に近いレベルの加速度が貨物や製品にかかり危険になる。日通総合研究所の調査によると、列車の走行中の上下方向の加速度は、レール上では、0.1~0.4Gであるのに対して、レールの継ぎ目では、0.2~0.6Gにも及ぶ
レールは温度によって伸縮するために、線路敷設技術が未熟であった昔は、あまりにも長いレールは温度変化による伸縮で線路の破断などが起きてしまうと考えられていた。そこで、線路に継ぎ目を設けて、少しだけ隙間を開けることで、線路が伸縮してもよいようにしていた。
だけど、近年、枕木の改良や線路軌道の敷設技術が向上すると、温度による伸縮よりも線路強度が勝るようになって、安全性が向上し、ロングレール化が図られるようになった。
ロングレールとは、文字通り、通常のレールを溶接することで特別に長くしたレールのことで、普通のレールの長さが25メートル(定尺レール)であるのに対して、ロングレールは200m以上のものを指すのだけれど、一般的には、1kmから2kmの長さになることが多い。
床面と枕木で固定されているロングレールは、中央部分がしっかり押さえ込まれているために、あまり動かない不動区間があることが研究で分かってきており、温度変化により伸縮する可動区間は両端それぞれの100m程度。
だけど、それでも、温度変化による両端それぞれの伸縮量は5cm程度になることから、従来の隙間がある継目では対応できない。そこで、ロングレールには、「伸縮継ぎ目」と呼ばれる独特の構造を持った継ぎ目が使われている。
これは、非常に浅い角度で斜めにカットされたレールに次のレールを横に差し込んだ構造になっていて、これによって、車輪は通常の継ぎ目のような隙間や急激な段差を越えることなく通過することができるようになっている。
また、ロングレールがどこまでも続く一本のレールではなくて、ある程度の長さにしているのは、温度変化によるレールの伸縮への対応だけではなくて、運用上の安全確保の意味合いもある。
鉄道は、列車どうしの追突や衝突を防止するために、ある区間内に列車が存在する場合、その区間に他の列車が進入できないよう信号機や自動列車制御システムによって管理されている。だけど、この時、列車の位置を検出するため区間ごとにレールを利用して信号電流を流していて、継ぎ目をこの管理区間が変わる部分に使用している。だから、あまりにも長い区間が一本のレールだと安全管理の"目が粗く"なって都合が悪い。
また、そのほかの課題としては、軌間可変区間を通過して、車輪幅を変えるまでの時間短縮というのがある。開発当初は極端な低速でしか通過できず、1両通過するのに1分以上掛かっていたから、たとえば新幹線のような16両編成だと、軌間変更に16分掛かってしまう。これなら在来線へ乗り換えした方が早い。
海外で運用されているフリーゲージトレインには、スペインのタルゴ列車というのがあるのだけれど、軌間変更できるのは車両だけで、機関車側は、境界でそれぞれの軌間に応じた機関車に付け替える。しかも、新幹線と違って、機関車が客車を引っ張る方式だから、車両は自力で軌間可変区間を通過できない。従って、タルゴ列車の軌間変更は、まず、境界で機関車を付け替えてから、軌間可変区間を通過して車両の軌間変更をすることになり、変更までの時間がより多く掛かる。
スペインは日本と同じく、起伏が多い国土で、鉄道は勾配やカーブが多い山岳路線が多く存在するために、列車には、通常の2軸台車ではなく、1軸台車が採用されている。これは、2軸台車だと、曲線区間で車輪とレールの方向が微妙にずれて、軋みが発生するためで、軸を1つにすることで、車輪とレールの方向を一致するようにしている。
その代わり、車輪1つに掛かる重量が重くなってしまうので、車両1両の長さを短く(最新型で13m)して負荷を軽くしている。新幹線の車両1両の長さは25mだから、タルゴ列車は半分くらいしかない。それでも、タルゴ列車の軌間変更には20分かかるそうだ。
日本のフリーゲージトレイン試験車の軌間変更時間は、今では数分程度にまで短縮されているようで、ようやく許容できる範囲にまで近づいてきているといえる。
北陸新幹線の総工事費は1兆1300億円だけれど、フリーゲージトレインが導入されれば、投資効果が高まり、北陸の経済活性化にも一役買うことになるだろう。
←人気ブログランキングへ
北陸新幹線でフリーゲージトレイン案が浮上 国交省
国土交通省は27日、2025年度にも開業見込みの北陸新幹線(金沢―敦賀)について、新幹線規格も在来線も走れる軌間可変電車(フリーゲージトレイン)の導入を検討していることを明らかにした。実現すると金沢から関西に出る場合、敦賀で乗り換えせずに、京都や大阪へ行くことが可能になる。
整備新幹線(北海道、北陸、九州)の投資効果などを検証する「整備新幹線小委員会」で、北陸新幹線の整備効果を高める手法として示された。
北陸新幹線の総工事費は1兆1300億円。昨年末の政府・与党合意で整備方針が決まっているが、敦賀から先はルートが決まっていなかった。ただ、金沢―敦賀間でフリーゲージトレインが導入されれば、既存路線との接続が可能となり、投資効果が高まるという。
URL:http://www.asahi.com/business/update/0128/TKY201201280398.html
コメント
コメント一覧 (7)
高速かに繋がるのかが分かり難い.
本文に追記しましたけれども、継ぎ目が車両の振動を生むので、それをなるべく減らすことで、高速化しても安全性(乗り心地)を確保することのようです。
しかし, 新幹線のどの様な挙動が曲線部において
ロングレールを必然とするのかまだ分かりません.
なぜなら, レールからの直接的な影響は在来線と
変わらん気がするのですが. 勿論, ダイナミクスが
関係するのでしょうが. 車体重量でしょうか?
しかし, それなら直線部でも変わらん気が...
『原理』
道床が十分な強度を持っている場合、長いレールを敷設した場合に中間部分はレールが伸び縮みする力と地面との摩擦力が相殺されて動かなくなる。そのためレールの温度変化に対する対処はレールの両端の約100メートルのみ行なえばよい。
レールの伸縮の対応のため、レールの継ぎ目は一般に伸縮継ぎ目が使われる。
近年ではレールの継ぎ目に接着絶縁レールを利用することで通常のロングレールをさらに長い疑似的なロングレールにすることも多い。
------------------------------------------------
http://www.wdic.org/w/RAIL/%E3%83%AD%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%AB
コメントありがとうございます。
>スペインの事情はもう古いです。現在は、電車方式の"Alvia S120"、あるいはタルゴ編成の"Alvia S130"という車両が…
なるほど、情報ありがとうございます。そうでしたか、スペインの方が先行しているのですね。これからもまた教えてください。m(__)m