アメリカでは大学の廃校が加速しているという記事をウォールストリートジャーナルが配信していました。

日本の大学にも同様の危機が到来しています。業界内外の方々向けに、日本の伝統的な4年制大学が直面している6つの危機を整理しつつ、今後の処方性を提案してみたいと思います。

■日本の伝統的4年制大学が直面する6つの危機

(1)18歳人口の減少
1990年前半に日本の18歳人口はピークを迎えました。その数約205万人でした。2017年の18歳人口は約120万人でした。ピークと比べて約4割減少しました。今後も減少が続き、2023年には約107万人になります。2016年の出生数は98万人でした。2034年の18歳人口は97〜98万人です。既に約4割の大学が定員を割っています。

(2)家計の悪化
高校生の子供がいる世帯の年収が悪化しています。1992年頃から就職氷河期が始まりました。今から25年前です。当時大学を出て新社会人になった22歳だった若者は現在47歳です。30歳で第1子に恵まれていると、子どもは17歳です。つまり、今の高校生の両親は就職氷河期世代です。もうすぐ大学生の両親が就職氷河期世代になります。私の体感値ですが、首都圏では世帯年収400万円前後が4年制大学に行くか2年制の短大・専門学校に行くかの分岐点です。400万円を下回ると、2年制の教育機関を選ぶ確率が上がります。不安定な雇用にさらされてきた就職氷河期世代が大学生世代の親になる、このことを私は「"子供の貧困"の"若者の貧困"へのスライド」と呼んでいます。2018年はその始まりの年です。

(3)若年層の所得低下
大学を卒業しても、奨学金を返済できるほどの収入を得られるかどうか分からないのは日本も同様です。特に非正規雇用の方々の低所得が問題です。また、所得が上がらない中、奨学金の返済義務は若い人たちが多様なキャリア形成を図る上で重荷になっています。

(4)インターネット大学
アメリカでは、インターネット大学が在籍者数を増やしています。学生にとっての最大のメリットは「コスト」です。また、低コストをただ売りにするのではなく、テクノロジーを活用した高等教育を再創造するような大学が出現しています。例えばミネルヴァ大学です。こういった大学と伝統的な大学は同一のマーケットで戦っていくことになります。

(5)新卒一括採用の変容
2016年10月3日、ヤフーが「新卒一括採用を廃止し、新卒や既卒、第二新卒など経歴に関わらず30歳以下の方を対象とした『ポテンシャル採用』を開始する」と発表しました。これまで日本の企業は、就業経験のない大学生をいきなり正規雇用、しかも実質的な終身雇用で一括採用していました。これは例えれば、これまで一度も走ったことのない競走馬の一生を血統と調教だけで保証するスタイルから、30歳以下を対象に競争成績も見ながら広く採用していくというスタイルへの転換を意味します。(恐らく今後は、もっとダイナミックな転換が待っています。具体的には、終身雇用の転換です。)今後は、在学中のインターンシップでのパフォーマンス等も含めた20代の競争成績がモノを言うようになります。そうなれば、大学に求められる役割も大きく変わります。

(6)全国的な人手不足
都市も地方も人手不足になりました。生産年齢人口が減少を始めたからです。2017年3月卒業の高校生の求人倍率は1.75倍。23年ぶりの高水準でした。わざわざ奨学金を借りてまで大学に行かなくても、高卒で引く手あまたな状況になりつつあります。生産年齢人口は今後も減少を続けます。かつて存在した「高卒では就職できないから大学進学」というタイプの高校生は、既に減少傾向にあると聞きますが、今後さらに減少する可能性があります。


■危機を乗り越えるための処方箋

昨年、ある4年制の私立大学から「副学長で来てほしい」というオファーをいただきました。結果としてはお断りすることになりました。その時、定員充足率の低下(既に50%未満まで低下)という目先の危機と、上記のような今後本格的に大学を襲うだろう危機を乗り越えるにはどうしたらよいか?具体的な方法を考えました。

私の答えは「まずは、その問いに筋の良い回答を出し、熱く実行できるチームを組成すること」でした。つまり、そういう人材を採用しまくる、ということです。最低でも全教職員の1割に相当する数の改革人材を(他大学から)新たに採用することです。全教職員が50人なら5人、100人なら10人の新規採用です。

そのための権限、予算、具体的な採用リストが揃わなければ、この危機を乗り越え生存していくことは困難だと思いました。

そのためには、理事長を含む理事会の強力なバックアップが必要です。同窓生にも協力を仰ぎたいです。

つまり、危機を乗り越えるための処方箋は「大きなチーム作り」でした。

2020年頃から、日本でも大学の廃校が加速すると思います。厳しい環境ですが、市場(危機)に向き合い、筋の良い回答を出し、熱く実行していくチームを作れた大学が生き残っていくと信じています。別の言い方をすれば、個々の大学で歴史も立地も経営資源も異なりますので、その大学らしい独自の回答が求められています。共通解はありません。