July 04, 2006

白月夜 41

鋭い牙を剥き出しにして、アズマさんが変化した鬼が吠える。それを見て、カグさんだった鬼がにやりと笑った。そして、その懐に飛込んでいくアズマさん。その鋭く延びた爪がカグさんの腹を引き裂こうとして、
「ぎゃぁああぁあぁぁあ」
悲鳴を上げたのはアズマさんだった。その片腕はカグさんが放った白い鬼火に焼かれている。
カグさんの力が圧倒的に勝っているのが良くわかった。こんなの、アズマさんは勝てる筈がない。
だが、事態は、僕の予想とは違う方向へ動いた。片腕を無くして膝を着いたアズマさんを見て、カグさんが笑い、

kotuki at 16:51
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June 12, 2006

白月夜 40

「童子の遊びに付き合う暇なぞないぞ、剣鬼。」
しわがれた声が響く。
「ようやく原身をあらわしたわけですね…、では苦し紛れのそのお姿でどこまでやれるか拝け」
アズマさんの声は中途で途切れた。その体は、ぐるりと白い鬼火に囲まれている。夜叉鬼が、低く笑った。
「…白の姫、…」
アズマさんは何か言おうとしたのだろうが、言えなかった。ただ咆哮して、そこに、姿を変える。ざんばらな髪で、手の指の代わりには光る刃。
しかし、ただそれだけで、カグさんの変貌ほどの大きな変化はなかった。それを僕は少し意外に思った。

kotuki at 08:09
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May 12, 2006

白月夜 39

そこに在ったのは、真っ白な炎を纏った夜叉鬼だった。丈の長い死装束みたいな和服。しかしその裾は広がっていて、浮いたからだの下にひらひらと翻っている。袖からは手が見えていたが、それはふしくれだって木の枝のよう。そして、顔は…
鬼、だった。光る金色の目。耳まで裂けた口。そこからつき出た牙。髪はざらざらと波打って長く、頭頂、両脇からは、ぐるぐるとねじれた、角。
正真正銘の鬼が、そこには居た。
「……カグ、さん…?」
僕は愚かにもそう尋ねてしまう。ほかにここに現れ出るひとが居ないことを知りつつも。

kotuki at 02:07
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May 10, 2006

白月夜 38

ごぽり。
そんな感じで、カグさんが血を吐いた。そのまま地面に崩れ落ちる。
アズマさんは、それをじっと見ていた。冷酷な瞳だと思った。
「姫よ、眠るがいい」
そう呟く。そして、震えている僕に歩み寄ってくる。
「あ、ぁああ…」
情けないくらいに僕は動けなかった。ほんとうに情けないくらいに。そんな僕にアズマさんは太刀を向け、
「ま、て、」
それを遮った声があった。
「!?」
アズマさんが振り返る。そして、
「ほぉ…美しいな」
と、呟いた。
僕は呆気にとられてそれを見つめていた。
白い炎が燃えている。

kotuki at 01:42
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May 09, 2006

白月夜 37

「やはり渉か…」
カグさんが苦々しげに呟く。
「当然、あなたも倒すべき相手ですけどね。しかし、第一の目標は、白血の子。」
アズマさんが言う。次の瞬間その両手にいくつもの剣が浮かび上がり、カグさんの方へ飛んだ。
「!」
カグさんは両手を突き出した。そこから凄まじい炎がほとばしって、剣を溶かす。ふぅ、と僕は安堵の溜め息をついた。が、気付く。
アズマさんが、居ない?
「カグさ、」
それは、一瞬だった。
青銅色の鬼が、カグさんの背後に襲いかかり、太い剣をその背に突き立てる。赤い血が、ほとばしった。

kotuki at 01:37
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May 08, 2006

白月夜 36

「当たらないな、流石は白鬼・炎輝。」
不意に声がして、上空から人が降ってきた。真っ黒な忍者服を着たその人の髪は青銅色で、胸の下まで垂れている。
「剣鬼・アズマか?」
カグさんが問うた。アズマさんはふふふと笑い、
「その通り。名を覚えていただいて光栄です、白の妹姫。」
と、言った。
「ふん…。」
カグさんは刀を綺麗に構え、
「何が目的だ?」
アズマさんは笑う。
「当然、白血の子ですよ。百年に一人も出ない、希少な人間ですから、是非貰い受けたい。」
「僕?」
僕は、ちょっと予想外の事態に焦った。

kotuki at 03:42
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May 03, 2006

白月夜 35

「けんき?」
僕は首を傾げる。
「刃物の扱いにたけた一族だ。黄鬼の縁下に当たる。」
カグさんは説明してくれるが、意味が分からない。
「えんげ?」
「属性としてその元にあるということだ。…来るな。」
カグさんは両手をぱん、と合わせてそっと離した。すると掌の中から産まれてきたかのように、そこに一口の日本刀が現れる。カグさんはそれで勢い良く空中を薙いだ。
ぎゃりい!
と、空気を削るような凄まじい音とともに、何かが地面に落ちる。僕はそれを確認して、震えた。それは恐ろしいほどとがった金属の固まりだった。

kotuki at 22:11
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May 01, 2006

白月夜 34

「どうしたの?」
僕が問うと、
「渉、悪いが帰れなくなった。」
と、カグさんは言った。
「え?」
「客だ。」
カグさんが言う。
「招かれざる…な。」
「え?」
僕は驚いて、カグさんが見ている方向を見てみる。何も見えない、ように思うが…
「伏せろ!」
いきなりカグさんが僕を押し倒した。カグさんの体が僕に押し当てられて、思わず赤面した次の瞬間、
今まで僕の頭があった場所を、銀色の何かが物凄いスピードで通過していった。
「え?」
地面に突き刺さったのは、ぎらりと光る剣。
「剣鬼か」
カグさんが呟いた。

kotuki at 20:05
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March 07, 2006

白月夜 33

ちがうよ、カグさん。何にでも大感激して、人生を楽しんでいるわけじゃない。
ただ、怖いから。
自分が忘れ去られてしまうのが怖いから。
だから、必死に印象を残そうとしているだけなんだ。
…世界に。

喫茶店の後は本屋へ行って、公園に行って、そしたらもう午後六時くらいになっていた。
「夕食も食べて帰るか?」
とカグさんは言ったけれど、それは母さんが許さないだろう。
「ううん、もう帰るよ。」
言うと、カグさんは、そうか、と言った。
「では帰ろうか。」
カグさんは、自分の車に目をやり、顔をしかめた。

kotuki at 05:34
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March 06, 2006

白月夜 32

もぐもぐ。
「…………美味い」
「そうですか?よかったー。」
ほい、と渡されたスプーンを、僕は受け取って、再びパフェをつつきだした。

「はー、食べたぁー。」
僕は最後の一口を終えて、まったり幸せに浸る。カグさんは珍しいものを見るような目でじっとそれを見ていたが、
「…珍しいな、お前は。」
と、言った。
「え?」
「そんな風に何でも最上の喜びに変えてしまうのか?正直羨ましい。」
「え?」
「そんな、たいして珍しくもない甘味に、一々大感激して。そういう生き方はいいな、と思う。」
僕は、ただ笑った。

kotuki at 06:44
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こつき
オリジナル文章書き。
ここでは、サイトに置くほどでもない、微妙な小説を携帯で投下する予定です。
よろしければ、見て行っていただければ。

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