2025.01.23 認知症介護問題、59
認知症は75才以上では12人に1人、85歳以上は3人に1人、発症するという大変な病気であり、老人介護においてはどう対処するかが大きな問題となっている。編者もこの問題に関心があり、福祉関係の講演会やシンポには積極的に参加し、そこで得た知見を纏めてみることにした。

1. 介護の基本方針
 いうまでもなく、介護においては被介護者の人権尊重や尊厳遵守が基本となる。認知症の場合、被介護者が自分の要求を出しにくくなっているので、非介護と介護との関係をどう作るかが一のポイントとなっている。この観点から、介護の仕方や非介護の要件について論究する。なお、ここでは、人権も尊厳の中に入れておくことにする。

2.尊厳遵守
 尊厳遵守はどう実施していくのであろうか。大上段に構えて「こうあるべき、こうすべき」とするやり方と、介護の一つ一つの行動にいわゆる小さな尊厳として遵守していくやり方とがあり、通常は特別意識しなくてもマクロにもミクロにも併用とされている。
では、遵守の場合、どういう事項があるのであろうか。列挙すると;
自律、健常状態、生への積極姿勢、感覚磨き、
   人間関係づくり、信頼関係づくり、行動理念

3. 各論
(1)尊厳遵守;非介護者を人間として大切にする基本。マクロな目標も、小さなことから積み上げていくことで達成できると考える。
(2)相互の対応
(2.1)コミユニケーション;被介護者が自らのニーズを発しにくいので、介護者は被介護者を体の調子も合わせてしっかりと観察することになる。声を発する次元の物にはならないことに注意したい。
(2.2)相互の行動;介護は、観察に基づいて状況に応じて対応する
(2.3) 感覚;コミユニケーションや行動について感覚的に喚起するようにする。

(3)自律;
(3.1)自律意思;被介護者自身が何事にも時間をかけ行動することが自律である。今までと同じように行動することが日常であり自然であることを体得確認といったところである。例えば食事は自分で食べること。
(3.2)健常状態の実感;介護を受ける以前からのいつも通りの状態が今なお続いているという感を持つ。例えば、服、靴、日用品も今まで使っていた物を介護を受けているときも使用し続けることで、いつもどおりが常に続いているという感覚が維持される。
(3.4)積極姿勢;生きてることを自ら実感する。これこそが巣を未来を生き抜く力となる。すなわち、自分がこれまでもそして今も生きており、未来をも生き抜くことが実感されるのである。

(4)信頼関係
(4.1)他者の存在;他人と自分との繋がりを感ずるようになれば、自分がより自分らしくなりる。これも、人と出会うごとに対応していると自然とそうなる。
(4.2)信頼関係を築く;介護では、被介護者をよく観察し、最善を尽くしているという気持ちが信頼に繋がる。また、
(4.3)行動理念;人の優しく、みんなで楽しく、その時その瞬間を大切にしながらの行動が一番。。
(4.4)人間として;人間は一人ではなく、かつ自然に振る舞えれる。しかも、人間は、皆が必ず通る人生の道を歩む。、そう思えば、介護側も非介護側も人間として同じ道を歩んでいる。そこに、各人の人生観や経験を背負って歩んでいる。

2024.06.10 ポスト資本主義にむけて資本主義論考、58
 現代では、地球環境保全の観点からも今の資本主義体制を見直す動きが高まっている。ここでは、資本主義そのものの概要を簡単に整理し、近未来に向けての足固めとした。また近現代史として、資本主義の台頭以前からの歴史をやや詳細に記し、近現代資本主義の様相を掴むことにした。なお資本主義ポスト論については稿を改めたい。
▲資本主義概要; 
(1)定義;資本を持つ側(資本家)が生産手段や労働力を管理し、商品生産を行う生産様式のこと。
(2)特徴;
・私有財産、利益追求、市場経済(競争原理による自由購買売買の場)を基本。
  エネルギや材料等の資源は安価で無尽蔵として使用
・基盤;貨幣経済☜→資本家側への富の蓄積
    経済活動推進が大量生産 →維持のための技術(情報化、ハイテク)
     大量生産大量消費→いつしか大衆支配
・膨張;安く仕入れて作り、ほどよく(高く)売る。
  安く→生産原料確保(時には非先進国からの略奪、
     最近は原材料枯渇を危惧)、
     労働力確保(賃金は労働対価でなく労働力維持のため「低賃金」)
     購入拡大→購入意欲向上のための
種々システム利用活用
 →国民の一方的意識すり込み
▲資本主義欠陥の修正
 欠陥1;不況と格差
  対応:帝国主義を暴走させる
 欠陥2;再び、不況と格差
  対応1;植民地解放で略奪と支配を終わらせる
  対応2;労働者に一定の水準アップ
(社会福祉の恩恵含め購買力維持)
      政府からの経済活動調整
 欠陥3;資本主義を掲げる政府を巻き込む
  対応;政府介入が資本主義の自由性を奪うとして
 政府権力を経済活動にあまり介入させず(新自由主義)←資本主義の強暴性が形変
▲資本主義のいきづまり
  環境や人間について無視(資本主義の基本)
   資本主義の暴力性が出現
    →地球環境破壊進行→
・資源枯渇(エネルギー資源枯渇、金属等資源枯渇)
   ・地球へのゴミ捨て(エネルギ排廃出、ゴミ投棄)                
   今は、経済成長と環境問題は相対立せずとした。←そうではないのでは
    消費ニーズに乗れば市民要求に応えたとなる 
    市場からの支持指は競争原理の納得で
     グローバリズムで世界を席巻すればそれが世界意識として定着

2024.0617、近現代の世界を展望する、近未来の世界に向けて、57
1.はじめに
 近現代史を纏めてみたい。近現代は資本主義社会。なぜ資本主義が発生し、今日を席巻しているのであろうか。意外にも歴史的変遷をふりかえりもせず、今の資本主義のさらなる発展が進められている。今後の地球環境の保全を考えていくなら、歴史的に再検討すべきと考える。
 ここでは、今日的市民感覚で歴史を展望し、将来に向けての糧を得たいものである。なお、本稿では、多くの資料を念頭に置いたものであるだけに、何だと思われるが、そこはそこ、必要な所を取り出して繋げて自分流で構成することにより目的達成とした。もちろん、誤認識や不適切箇所が見つかった場合には適宜修正していきたい。

2.問題の所在
 資本主義がなぜ起こり、どう世界を席巻していたのか。そこにはブレーキを掛けることは何もなかったと市民レベルには見える。なぜか。その資本主義がどんどん進化しているが、どんな方向性をもっているのか。興味は尽きない。そんな発展過程についてコメントをはさみながら本題について記すことにする。扱う項目は以下のとおりである。
 ・資本主義の勃興、・初期の資本主義の膨張模様、
・新興国の台頭
 ・戦争、     ・戦後の様相   ・現代

3.資本主義の勃興と資本主義特有の国家形態
<1>近世、資本主義以前
 時代区分について、18世紀後半の産業革命を期にして、それ以前を近世、それ以降を近代としている。東洋では、清国が、チベット、モンゴル、満州、漢を支配していた。国の統治にも、各地の民俗を排除せず、各地域の主体性をあたかも尊重するかのような究極の機構で統治していた。また、工業、商業、文化も、清国の中で育てあげていた。根底には大中華思想があり、世界は中華そのものという考えであった。
 一方、西洋は、国力しかり、文化水準しかり、清国を上回ることはなかった。西洋では、17世紀には貿易を基本として覇権争いが起こり、スペインの衰退の後、オランダの衰退もあって、(18世紀前半)イギリスが覇権を征した。
<2>産業革命
 17世紀には伝染病(ペスト)に苦しめられたこと、商業資本が蓄積され始めたこと、東洋を越えようとの気迫があったことで、イノベーションのエネルギーが高まった。18世紀後半には、イギリスではイノベーションが見事に花開き、イギリスがインドの綿製品に対抗すために、機械の導入で大量の製品を安く製造することができるようになった。これが産業革命である。これをもって、インドの綿製品に大打撃を与え、インドをイギリス製品のマーケットにした。
 なお、資本主義は市民(ブルジョア)の大量生産による経済活動の様式のことであり、宗教世界の枠を超えて、人間中心の活動として神からの信託を受けている(カリビン見解)とし、教会や国王のいない国民が主役の社会体制を形成した(権力奪取の革命)。
<3>国民国家
 ブルジョア(市民)が産業革命により一層力をつけ、より一層の経済活動するには皇帝権力が邪魔になり、帝政打破の市民革命が多発した。これによって、市民が国の主として、国民国家が誕生した。経済は資本主義体制、軍事は国民の軍隊として帝政時代には比べ物にならないくらい力をつけ、市民革命に干渉する帝政の国々をはねのけた。これにより、国内では民主制が敷かれ、神からの解放、続いて王権からの解放が実現した。
<4>帝国主義
  自国の利益拡大を狙って、他国を経済的・軍事的に侵略・支配する考え方の総称。当時、イギリスは自国の工業製品を他国に売りつけるために、軍隊を派遣してマーケットを確保し、他国を植民地として支配することを(周知のように)帝国主義という。そして、帝国主義の存在理由には、白人が他の人種より優れるゆえ他国を支配する権利がある、と説かれていた。 
 実際の帝国の様相として、イギリスの場合を記そう。インドとアフリカのトライアングルで富を集積した。その後、英国ではお茶を消費するようになり、清国からお茶の輸入で、輸出はできなかったので、これに業を煮やして清国にインド産のアヘンを密貿易して清国との貿易に主導権を握った。こうした不条理の源は帝国主義の凶暴さがなせる業である。

4.帝国主義から民主主義へ
<1>民族自決の芽生え
 新興国の勃興としてヨーロッパ強国に間に割り込んだのはアメリカと日本であった。第0次大戦として位置付けられる日露戦争(1904-1905)では、大国ロシアが新興国に敗れたことは世界に激震を与えた。これによって、植民地として苦しんでいた国々に、独立を望む声が強くなっていった。
<2>一次大戦(1914-1918)、帝国主義の覇権争い
 帝国主義は衰えを知らずますます加速し、覇権は一国よりも国どうし連合するブロックを誕生させ、ヨーロッパではイギリス・フランス・ロシアの三国協商とドイツ・オーストリー&ハンガリー、トルコの三国同盟の二つのブロックが熾烈を極め、一次大戦が勃発した。アメリカは、武器商人として富を蓄積し、ゆるぎない大国となっていった。
<3>一次大戦後から二次大戦(1939-1945)まで
 大戦のあと、民族自決や植民地撤廃が叫ばれ、西洋の多くの国が独立し、強国はアジア地域の(インドなど)非先進国は先進国が出した委任統治の施策の下におかれたものの帝国主義を継続できなくなった。これより世界の脱帝国主義という秩序の下で平和が続いていた。ところが、日本満州事変(1931)を起こして中国侵略が始まり、(1936)イタリアがエチオピアを、(1938)ドイツがオーストリアをそれぞれ併合し、帝国主義を続ける国が領土拡大で世界を揺るがした。
 世界はこれを許さじとして直ちに対応し、二次大戦が勃発した。ヨーロッパの国々にはパワーがなく、結局、資源やエネルギーに恵まれた大国アメリカとロシアにより、戦争が終わった。そして、大戦の結果、民族自決と植民地撤廃により、世界各地で非先進国が続々と独立し、その一方ではヨーロッパ諸国の没落とともにアメリカとソ連が二超大国として世界を君臨することになった。
<4>二次大戦以降
 戦後、世界は二超大国により分断統合化が進み、アメリカは資本主義陣営を、ソ連は共産主義陣営を率いた。二超大国の間では、「平和は抑止力」として軍拡が進み中で危うい平和が保たれたとはいえ、両陣営のしのぎの削りあいは、開発途上国における内戦、すなわち代理戦争があちこちで長きにわたり続いた。
 こうした二大国支配はソ連の崩壊(1991)により、アメリカ一国支配となった。加えて、アメリカの企業が経済的にも世界を牛耳ることとなり、アメリカ以外の国が束になってもアメリカを越えれす、アメリカ一極集中が確立した。

5.新自由主義の台頭とグローバル化
 アメリカ一極体制となって、新時代が政府の経済への介入を抑え、経済の効率化と発展を目指す新自由主義として、アメリカ企業がグローバル展開で世界を席巻し、アメリカ中心の地球規模の経済活動が続き、他国もその波に飲み込まれるかのように、あらたな地球統治機構が静かに動き出しているといっても過言ではない。国際協調路線とか、地球規模での各国独自性といったことが霞んできている。そんな時期において、国連の提唱(2015)するアジェンダ2030にてSDGsや地球危機の問題に対処することが迫られている。

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