2019年10月11日

694号系統 名来 ゆき

694号系統 さくらやまなみバス 名来 ゆき

128日目
10:46 かぶとやま荘
11:00 舟坂橋                         240円


 六甲保養荘の駐車場の端から山に入る小さな道があり、その道を進んでいくと木々の間の広場にたどり着きます。この広場に立つと心が揺すぶられます。

 あぁ、懐かしい森よ。

 昔、ボーイスカウトの野営があり、この森の中で一週間ほど暮らしていたのでした。中学生の頃も、隊指導者になった大学生の頃も3月末の一週間はこの森で過ごしていたのでした。広場は朝礼場で、毎朝ここでみんな集まり、国旗を揚げて、体操をして1日が始まったのでありました。電気もガスも水道もないこんな不便な場所で過ごした日々が思い出されます。あの時は私も若かった。

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                 懐かしい朝礼場。



 かつて一週間を過ごした山の中ですが、今では特段することもないのでわずか5分で朝礼場をあとにします。バス停まで戻りますが次のバスまで少々時間がありますので、六甲保養荘に入ります。日帰り入浴する訳でも、ましてや宿泊する訳でもありませんが、フロントに断わって館内に入り南に広がる展望を愉しみます。

 丸い甲山の右肩には遠く大阪市内のビル群が望まれます。その中でひと際高いのはあべのハルカス、そしてそのあべのハルカスのすぐ右に霞んで見える山はおそらく二上山でしょう。

 
 うつそみの 人にある我れや 明日よりは
 二上山(ふたかみやま)を 弟背(いろせ)と我れ見む 

 
 二上山といえば、大伯皇女(おおくのひめみこ)が、謀反の疑いをかけられ24歳の若さで死に追いやられた弟の大津皇子を偲んで詠んだ歌が思い出されます。されどやはり万葉の世界にある二上山は大和盆地から眺めてこそでしょう。高層ビルの背後にある二上山に万葉の香りはしません。                              

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              六甲保養荘からの眺め。



 さて、次に乗るバスは六甲山を挟んだ西宮市の南北を結ぶさくらやまなみバスで、西宮市が補助を出して阪急バスに運行が委託されています。ここから南行きのバスに乗れば次のバス停は「西宮甲山高校前」。そのバス停はこの路線バスの旅の初日に訪ねており(2号系統、3号系統参照)、そのバスに乗って次のバス停に着いてしまえば128日続いた「こうすけの路線バスの旅」は即時終了となります(後日同一地点をバスで訪ねないというルールに抵触するため)。

 とういことで、当然ながら北行きのバスに乗車です。六甲山を貫く盤滝トンネルを越えて有馬温泉を経由するバスは行楽客で満員で、吊り革をしっかり握って揺れる車内で耐え忍びます。バスは山の中をクネクネと登っていき盤滝トンネルに吸い込まれていきます。

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          西宮市の南北を結ぶさくらやまなみバス。



 トンネルの出口が遠くに見え始めた頃、対向車がしきりにパッシンングをしてきます。これはトンネル出口付近で事故だとピンときます。そして、

 トンネルを抜けると、昔このトンネルが有料だった頃に料金所があった場所で車が炎上しております。どうしてこんなことになるのかというほどに炎の勢いは強く恐怖を覚えます。それでもドライバーと思われる人は車から離れて無事なようで何よりです。炎を目の前にしたバスの車内は興奮した空気で満ちていきます。乗客の中には燃える車を写真に撮る人がいるのですが、自分の車が燃えている人の気持ちを推し量ると私にはとてもできません。


 バスの運転手      「ただいま車が炎上しておりますが、このバスの安全に変わりありません。」


 そう言って乗客を安心させたあと、運転手さんはゆっくりとハンドルをきります。バスは燃える車の横をゆっくりと通り過ぎるのですが、その際車内が一瞬炎の影響で熱くなります。


 車内の興奮した空気はまだ治まらないままですが、バスは遅れて「舟坂橋」のバス停に到着。私はここで下車します。のどかな農村の雰囲気が漂う船坂地区、このほっとするような風景は西宮市の宝であります。

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               のどかな雰囲気の船坂。

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       バス停の隣りには有機野菜の直売所があります。



 船坂の交差点から東には舟坂山王神社という小さな鎮守の森があります。この小さな神社は播州三木城主別所長治の勅願所であったこともあり、羽柴秀吉の播州攻めの際に兵火の難に遭ったといいます。昔は秋祭りの際に勇壮な馬遊びの行事があったそうです。木々に囲まれた静かな境内の空気からは、無残な炎の香りも、馬の駆けるさまも全く想像できません。

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                  舟坂山王神社。



 舟坂山王神社の裏から善照寺へ向かいます。振り返ると六甲山の北麓に広がる船坂の風景が広がるのですが、ある一点から黒い煙が空へ伸びていきます。あの一点が盤滝トンネルの出口であり、まだ車は燃えているようです。早く火が治まりますように。先程来、緊迫したサイレンの音があの一点を目指していきます。

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     車はまだ燃えているようです。早く火が治まりますように。



 善照寺の手前に古民家がありまして、ここは春至山荘といいます。公益財団法人ボーイスカウト日本連盟に寄贈されたこの春至山荘には舎営などのプログラムで多くのボーイスカウトの仲間が訪ねます。春至山荘の名は「百花春至為誰開(ひゃっかはるいたってたがためにひらく)」という禅の言葉に由来します。花は春が来れば誰の為でもなく咲くべくして咲くというような意味で、人もどう生きるべきかについて深く考えさせられる言葉です。
 また、この古民家に住んでいた故尾崎春治さんの春の字も由来の一つです。ちなみに、この路線バスの旅に同行者としてたびたび登場するU先輩は春治さんの親戚でして、その寄贈に大きな役割を果たされたのでありました。

 ここで活動に励み、未来のいつの日かに、この素朴な古民家のたたずまいを懐かしいと思う後輩がたくさん育つことを願ってやみません。

 あぁ、懐かしい森よ。懐かし家よ。

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       舎営などで多くのスカウト仲間が集う春至山荘。

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      「百花春至為誰開」という言葉に由来する春至山荘。





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kousuke0217 at 00:30コメント(2)│ 
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