Voice of Asia 〜バングラデシュ編〜
                           四方僧・田坊記

『マルマ僧侶との再会』


・・・、急がなければならない。



今日、投宿するホテルにチェックインするとすぐに
バングラデシュの少数民族マルマ人の僧侶と落ち合い、それから一緒にFCCT(
Foreign Correspondents Club in Thailand=タイ在住・外国人特派員クラブ)の「ビルマ会合(〜サフラン革命はまだ終っていない〜)」に出席しなければならない。

タイ・スワナプーム空港は
相変わらず様々な国籍の人・人・人でごった返している。
空港の出口間際にはタクシーの呼び込み人が入れ替わり立ち代りするように行く手を塞いでくる。


「タクシー?」

「ヘイ!ヘイ!タクシー?」

「バンコク?  タクシー?」

「1,200バーツでどうだい?」

「うちは800バーツだよ! お得だよ、お得!」


声がかかる度に
それを右手で制するようにして自分の針路を作り、
ムッとする熱帯気候独特の空気に閉口しつつ
ターミナルの左端にあるパブリック・タクシーの停車場へと急ぐ。

ターミナルを出て左に進むといい。
一番端に「Public Taxi」と書いた掲示がある。
そこにある受付で、行き先を言うと、チケットを手渡される。
目の前にある長蛇の列は、客の順番待ちをしているタクシー運転手の隊列だ。
順送りに自分の番に当たった運転手はチケットをちらりと見て、こっちの車に乗れと合図してくれる。

バンコク市内まで、大方200〜300バーツで到着する。
但し、高速道路の料金は客が持たなければならない。
バンコクの中心街まで2ヶ所。25バーツと40バーツだ。(1バーツ=3〜4円)



(800バーツに、1,200バーツか…。あいつら、ぼろい商売しやがって…。)



バンコク市内のホテルに泊まるのは2年ぶりになる。
それもこれもタイの飛行場がドンムアンからスワナプームに変わったからに他ならない。今度の空港は市街地から随分と離れた場所に建てられている。

ホテルは昨日、日本から予約した。
フロントのタローさん(タイ人)は、もう長年の友達で、いつでも部屋の都合をつけてくれる。もちろん、タローさんというのはニックネームだ。


が、実は、今でも彼の本名を知らない・・・。


部屋に着くとすぐに電話が鳴った。
受話器を取ると、なんとチャリーダおばちゃん(People Empowerment代表)からだった。
なんとも早い展開。

『お帰りなさい!
ようやく着いたようね。ところで、申し訳ないんだけど、今日は別件の会議が入ってFCCTの「ビルマ会合」には行けなくなったから、あなたとマルマのお坊さんと二人で行って頂戴。あなたと会うのはあなたがバングラデシュから戻った20日か21日で調整するから。ごめんなさいね!』

『了解、了解。こっちは全然大丈夫だよ!
ところでさ、もう身体の具合はいいの?』

『ええ、もう随分と良くなったのよ。(気にかけてくれていて)ありがとう。』

去年の11月のバンコク会議には、チャリーダは具合が悪くて同席できなかったのだ。

『もうさ、何時向こう(あの世)に行っても可笑しくない歳なんだからさ、気をつけてよね。』

『OK! OK!』
ワッハッハッハ!
という大きな笑い声を残しながらプツンと切れた。
いかにもチャリーダおばちゃんらしい・・・。


と、またも電話のベルが鳴る。

今度はバングラデシュのマルマ人僧侶のガヤム(Bangladesh Jumma Buddhist Forum in Thailand代表)からだった。
もうホテルのロビーに来ているという。

慌てて支度をし、ロビーまで行くと、
奥まったところにあるソファーに、小柄で華奢な身体をしたガヤムが笑顔で待っていた。

「ハーイ!」

と、声をかけると、
ガヤムの笑顔が一段とはじけた。

顔を右に左にとお互いに交叉して抱擁しあう。
上座部のサフラン(袈裟)を着たガヤムと、カンボジア製の作務衣を着た自分とが抱擁しているのを、タイ人のホテル・スタッフや観光客の人達が不思議そうに見ている。

ガヤムとは去年の11月に初めて会ったばかりなのに、あれ以来長々と交わしたメール交信のお陰で、まるで旧友に久し振りに会ったかのような気持ちになる。

「話しは車の中でしよう。会合が始まる、さあ、行こう!」


つづく 第2話『チッタゴン丘陵問題』へ