「人」を活かす経営の着眼点

社会保険労務士法人名南経営 代表社員 小山邦彦公式ブログ

8月2日の夕刻、東海地方をゲリラ豪雨が襲い、JR線、名鉄線共にストップ。これに伴い大量の帰宅難民が出ました。様々な帰宅ドラマがあったと思います。3時間待って長距離をタクシーで帰った人、早く復旧していた新幹線で帰った人、クルマで家族に迎えに来てもらった人、ホテルに宿泊を余儀なくされた人、相当な回り道をして深夜に帰宅した人等々・・・。
そして2日後。あるお客様から、これでかかったタクシー代などは自己負担?それとも会社負担?という質問が来ました。ある従業員が帰宅にかかったタクシー代を請求してきたというのです。
皆さんはどのように考えられますか?
もちろん心情的には、大変な状況に遭った従業員に何らかの支援はしてあげたいとは思います。しかし、原則論から云えば、通常、通勤にかかる危険負担(災害で帰宅が困難になるなど)は通勤する人にあり、会社に何らその損害を請求することはできません。
しかし、それでは気の毒・・・と、「支払う」選択をされることはあると思いますが、果たして会社がそれをしてしまってよいのでしょうか。そもそもどういう基準で支払うのでしょうか。新幹線やタクシー利用は事前に了承を得ればいい?、家族に迎えに来てもらったガソリン代は?、迂回の電車代は?タクシーの領収書を取っていない場合は?・・・難しいです。

問題なのは、全てのケースをカバーできないため不公平感を生み出すこと。そして、従業員に「たかる」心を生じさせてしまうことです。さらには、こんなことは当然自己負担だと考えていた人たちの心を劣化させてしまいます。「なあんだ、請求しなきゃ損なんだ。」という損得の心です。これで従業員の「民度」は確実に落ちます。
確かに、会社が支払ってあげれば一時的に従業員は「いい会社だなあ」と喜ぶと思いますが、これは「小善は大悪に似たり。大善は非情に似たり。」の典型的なケースであると思います。目先の心情にとらわれず、「これをしたら何が起こるか」ということを考えて対処されることをお勧めします。

 インターネットという言葉が人口に膾炙し始めた平成7年頃、私も含めて名南の新しモノ好きメンバー数名がこれに飛びついた。プロバイダーはBekkoameに「モザイク」というブラウザを使ってネットの海に漕ぎ出ると、目に入るのはほとんどが世界中のカオス。日本のサイトもあるにはあったが、HTMLが普及していない時代のホームページはテキストベースで読みづらい。通信もピーヒョロヒョロの電話回線128bpsモデムなので結構な時間がかかる。画像は重くて止まる。PCもやたらとフリーズする。でも「これは面白いぞ!」ということで、当時若手であったO君(現在、社労士法人の代表社員)も巻き込んでPCや通信環境を自腹で揃えさせた。相当、散財させたと思う。夜な夜なチャットや映像付PC電話、ネットミーティングでどこの誰だか分からない外国人とチャットなどをして楽しんだ。こんな遊びのような世界であったが、次の世の中に吹く風は十分に感じ取れた。革新的なネットスケープのブラウザ、ADSL通信、ペンティアムPROCPU・・・と、ネットとPC環境は日を追う毎に向上。
 こんな中、「労務に関する無償情報提供サイトを作りたい」と
O君が申し出。サイトを維持する時間も費用も全て自腹であったが、「やってみたら」ということで始まったのが、今や20年近く業界サイトトップの座に君臨し続ける「労務ドットコム」だ。このサイトは、役所に冊子で置いてある就業規則のモデルや書式などは社会的資源なので、デジタル化して誰でもどこでもダウンロードできるものにしたら便利だよなあ、という単純な発想から始まった。当然ここには法改正などの情報提供も載せることになる。セミナーの案内も楽々だ。このサイトは、私共も知らぬ間に全国の社労士に口コミで拡がっていった。社労士であれば知らない人はいないという噂も聞いた。オリジナルの簡易就業規則が全国の中小企業でダウンロードを重ねた。しかし当時、名南のほとんどのメンバーは理解不能ゆえに、「お前ら何を遊んでるんだ?趣味でやるのもいい加減にしとけ。」と幹部連中に何度も揶揄された。ゆえにかなり長い間、「労務ドットコム」はO君の趣味、という位置づけであったが、毎夜、隠れて成長を続けた。しかし、将来これが毎年数億円の売上をたたき出すサービスの原動力になるとは、私もO君も含め、誰も思いもしなかった。

 「社員の給料を正しく決める本」は平成5年の改訂新版を含めて5万5千部の発行となった。出版社にとって人事労務関連の書籍では金字塔らしい。特に改訂新版は前版とは内容を変え、中小企業での導入を意識した名南オリジナルの内容にした。今も私の賃金コンサルのベースとしている「資格給体系」はこのときに記されている。なぜかこの本は社労士ではなく税理士業界で評判になり、問い合わせが相次いだ。当時、税理士業界は経営コンサルティングに活路を見出しており、その一環に人事コンサルが位置していたのである。平成6年、早速、業界に対して影響力が大きい名南経営のネームバリューを利用し、全国の税理士事務所へ「人事コンサルタント養成講座」を案内したところ、続々と全国の事務所から参加があった。それも大手税理士事務所の労務サービス担当者がほとんど。月1回の名古屋詣でをしていただき、2年間の講座とした。参加者の方々はご苦労であったと思う。2クールほど実施した後、社労士に対してもこの講座を開催できないか、という打診があった。平成10年からある団体の中で講座を受け持つ形で始まったのだが、これが今も伝説となっている「人事あすなろ塾」だ。12回コースで東京を中心に、大阪や岡山でも開催。中小企業の人事制度構築の「今」を徹底して提供した。10年以上かけて16期続けたこの講座には新進気鋭の若手社労士のべ200名以上が参加された。当時の写真を見ると、今や皆さん業界でも有名な事務所の所長さんの面々である。懐かしい日々。「労務ドットコム」とこの「人事あすなろ塾」のおかげで、私とO君と名南経営は社労士業界でも名が知られるようになった。

 また平成6年には、大手企業の人事部の企画で、全国拠点都市にある15の関係販社の人事制度を共通化する、という大プロジェクトも始まった。販社の人事制度は全て異なっていたため、その人事制度を共通化するというとんでもないプランを現実するためには何をすべきか、相当考えた。何度も大阪本社に足を運び、打ち合わせを重ね、集合研修+個別指導という形式で実施することになった。各社にPCを揃えてもらい、人事制度講座から給与制度改定の実務までを教える。Lotus1-2-3の操作指導会になったこともあった。そして全国の販社へ飛んで個別指導。2年がかりの大仕事であった。前述の税理士事務所向けの養成講座と個別指導も重なり、膨大な仕事量になった。しかし一方で、社労士部門の経営は完全にお留守になってしまっていた・・・

 


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