私は賛成するにも反対するにも、貴重な市民方の意見と考え、なぜそのような賛否の意志決定に至ったのかを明らかにするにも、政治家の責務と考え、理由について極力討論を行う事にしています。

【提出の請願原文】▼
請願第3号
「若者も高齢者も安心できる年金制度の実現を求める請願」
請願趣旨
 貴職におかれましては、新発田市民の生活向上と福祉増進のためにご尽力されていることに深く敬意を表します。
 厚生労働省は、年金支給額を2013年10月から2015年4月までに「特例水準」解消のためとして2.5%を減じた上に、2015年4月には初の「マクロ経済スライド」適用で0.9%を減額しました。政府は、「少子化」と「平均余命の延び」を理由として「マクロ経済スライド」により、この先30年間も年金を引き下げ続けようとしています。
 年金の実質的な低下は、消費税増税、医療・介護保険料の負担増のもとで、年金生活者にとってはダブルパンチとなっています。生きる糧としての食生活さえ切り詰めざるを得ない深刻な状態をもたらし、憲法で保障された生存権を脅かしています。年金は、そのほとんどが消費に回ります。新発田市の年金受給者は約2万8千人いますが、国民年金と厚生年金を合わせて年間約374億2753万円にも及びます(2015年3月末現在・障害・遺族年金及び共済年金を除く)。「特例水準」と「マクロ経済スライド」で減額された額は、年間10億円余にも及び、毎年その分の購買力を失ってきています。年金の引き下げは地域経済と地方財政に大きな打撃を与えています。
 さらに年金の削減は、高齢者だけの問題ではありません。いま労働者の4割が非正規雇用で、その大部分が若者や女性です。「将来の年金生活者」にとって大変深刻な問題となっています。若者の年金離れや年金保険料未納の拡大も懸念されます。若者も高齢者もだれもが安心できる年金の実現が強く求められています。
 年金問題にかかわる私たちの切実な願いである下記事項について、意見書を採択し、地方自治法99条にもとづいて国会及び政府に送付されるよう請願します。
請願事項
1 年金額を毎年自動的に引き下げる仕組みをやめて下さい。
 2 安心の老後を保障するため「最低保障年金制度」を早期に実現して下さい。
 3 年金の隔月支給を毎月支給に改めて下さい。
 4 年金支給開始年齢をこれ以上引き上げないで下さい。

【私の反対討論】▼
 本請願趣旨は年金受給者の切実な願いを考えれば実に真っ当で、人間的、そして深い愛を感じるものではありますが、そもそも内容には根本的な間違いがあります。
 請願文には「特例水準解消のためとして2.5%を減じた」とありますが、日本の公的年金制度は、消費者物価に応じて年金給付水準を調整する「物価スライド」の仕組みがとられており、インフレ局面においては年金の実質的な給付水準が物価上昇に対して目減りするのを防ぐ目的で導入されていましたが、反対にデフレ局面では年金が減額されることが明確に決められております。
 つまり、名目支給額は増減しても、物価に対する実質支給額は変わらないという大原則です。
 しかし、高齢者層の反発を恐れた歴代の政権は、アベノミクス前のデフレの最中、年金給付引き下げを見送り続け、その結果、年金給付額は、本来の水準より2.5%割高の、いわゆる「特例水準」となっており、これまで物価スライドを見送った事による過剰給付の累計は7兆円にも及び年金財政悪化の真犯人とも言われています。
 これは言い換えれば、「貰いすぎていた年金を法で定められた正しい水準に是正した」だけあって、請願者が訴える減額ではありません。しかも、貰いすぎの期間分を遡って減額している訳ではありませんので、現役世代から見れば、非常に寛大な措置とも考えられます。
 更に、「2015年4月には初の「マクロ経済スライド」適用で0.9%を減額」とありますが、これも完全な誤りです。マクロ経済スライドは、物価スライドが発動され、名目年金支給額が増えた際、その上げ幅を圧縮するものであって、支給額の減額ではありません。
 少子高齢化の進展により「30年で枯渇する」とも言われ破綻の危機が指摘される年金財政ですが、若年層を中心に将来への信頼が揺らいでいる年金制度を建て直すため、国は「100年安心プラン」を発表しました。その根拠になっているのが、マクロ経済スライドです。
 我が国の年金制度は、保険料を加入者本人のために積み立てる「終生積み立て方式」ではなく、現役世代が払う保険料を年金給付に使う「完全賦課方式」ですから、マクロ経済スライドを行わなければ、このままの少子高齢化が続けば将来世代の年金原資は確実に枯渇します。
 しかしこれも、現役世代と受給世代の人口比率や出生率、平均寿命によって刻々と変化しますので、「毎年自動的に引き下げる仕組み」という指摘も完全な誤りです。
 昨今の現状では、毎年の年金加入者数の減少が0.6%、また毎年の平均寿命の伸びが0.3%で、合計すると本来0.9%ずつ年金給付を削らなければならないルールが決められているにもかかわらず、昨年まで一度も実行されておりませんでした。結果的に「マクロ経済スライド」により低下していなければならない所得代替率は逆に増えており、現役世代に比べ、年金生活者のほうが相場から見れば豊かになっている事を数字が示しています。
 また、請願者の主張する「最低保障年金制度」は理想的で素晴らしい制度で、私も個人的には大いに賛成です。しかし、例えば7万円の最低年金を保障するためには、財源として消費税を17.1%に引き上げる必要があると試算されており、2%の増税すら見送った現在の経済状況では現実的な政策とは考えられません。
 日々の暮らし向きの厳しい年金生活者の実態や、年金マネーが地域経済を支えている実情はごもっともではありますが、世代間の不公平を緩和し、孫子の代まで持続可能な年金制度にする事は国民共通の願いですが、物価などを加味した実質支給金額に目を背け、名目支給金額の下がることに目くじらを立てるというのは、既得権者の単なるエゴに他なりません。
 また、本来の過剰給付には触れずに、正常化したことを「減額」と騒ぎ立てるのも感心できません。
 今回の請願に関しての願意は理解出来ますが、市議会として責任を持って国に意見するためには「消費税を必要なだけ増税してでも」の前提の一言が必要であると考え、本請願については不採択とすべきとの討論と致します。