6月1日をもちまして、「玉屋傷害事件」控訴審を取り止めるべく、記者会見を本日11時より開催致しました。
記録動画は追ってアップしますが、当日会場で配布された「弁護人コメント」をアップします。


小柳肇新発田市議会議員の傷害事件に関するコメント
     郷原総合コンプライアンス法律事務所
               弁護士  郷 原 信 郎
               弁護士  新 倉 栄 子

小柳市議は、平成25年6月20日に発生した事件に関して、平成27年3月5日、新潟地裁で、傷害罪で罰金20万円の判決言い渡しを受け、同日、控訴を申立てたが、同年6月1日に控訴を取り下げた。
 同控訴申立て後、同氏の弁護人を受任した当職らは、事件の発生の経緯、捜査経過、一審での審理経過等を精査し、控訴審の審理の見通し、対応方針等について検討を行った上、小柳市議に控訴取り下げを行うことを助言した。
以下に、その理由を述べるとともに、新発田市議会において、本件控訴取り下げで事件が確定したことを理由に提出された辞職勧告決議案についても当職らの所見を述べる。

1 暴行・傷害の程度が極めて軽微であること
本件は、飲食店でのささいなことからの口論の末のトラブルであり、一審判決で認定された小柳市議の被害申告者のAさんに対する暴行は、「腕をつかんで押す」という程度、傷害も「加療1週間を要する右前腕打撲」で、その症状も「軽度膨張、発赤」といずれも極めて軽微ものである上、その「打撲」が実際に生じていたか否かについても疑義があり(病院での受診直後に警察で撮影したAさんの両腕の写真には、「腫れ」も「赤み」も写っていない。)、通常であれば、刑事事件として取り上げられる程度には達しない極めて軽微な事案であることは明らかである。一審判決は、本件直後にAさんが受診した県立病院の研修医のカルテの記載などから、一応傷害罪を認定して罰金20万円を言い渡したものの(求刑も罰金20万円)、一貫して事実を争った小柳市議に対しても、不利な情状の指摘はほとんどなく、逆に、「傷害事件の中では軽い部類に属する」などと判示している。
なお、最近の同種事案の量刑では、略式命令の事案も含め、傷害罪では罰金30万円以上、暴行罪で10〜20万円程度であり、本件は、量刑から言えば、暴行事案と同等と評価されたものと考えられる(刑法の暴行罪は、「人の身体に対する有形力の行使」と定義されており、社会的な意味での「暴行」とは言えないものも広く含む。)。

2 被害者側の過大な被害申告
  本件では、飲食店の女将のAさんは、小柳氏と店内でトラブルになった後、警察に通報し暴行の被害届を提出し、新潟日報記者を帯同し県立新発田病院を受診、その数時間後に、ポルトガルへの海外旅行に出発させ、一週間後に帰国し、その後、複数の医院を受診し、「手のしびれ」などを訴え、「正中神経損傷」の病名で「全治3週間」と「全治2か月」の診断書の作成を受けて警察に提出した。警察では、それらの診断書に基づいて傷害事件として本件捜査を行い、8月20日頃、小柳市議を書類送検した。しかし、その後、被害者が受けたとする暴行によっては「正中神経損傷」は発生しない旨の専門医の意見書が提出されたことで、傷害が発生していたとしても、当初の県立新発田病院での受診時の「前腕打撲」だけの傷害にとどまることが明らかになった。
Aさんは、「正中神経損傷」と診断した上記各医院で、11月12日までの間だけでも合計38回にわたりリハビリ等の治療を受け、小柳市議との示談交渉においても、それらの治療費も含めた210万円余を請求していたものである。本件が刑事事件として取り上げられることになったのは、Aさんのが「手のしびれ」などを伴う全治2か月の「正中神経損傷」の傷害を負ったことが前提だったはずであるが、結果的には、小柳市議の行為によってそのような傷害が生じたものではなかった。本件刑事手続によって、そのようなAさんの過大な被害申告が明らかになったのである。

3 控訴取り下げと一審判決後の示談交渉の不調
  本件事案は、飲食店での客と女将とのトラブルが、同人の過大な被害申告によって刑事事件化したものに過ぎず、一審判決は有罪判決ではあるが、認定された暴行の事実は極めて軽微で、刑法上の「暴行」には該当するとしても社会的な意味での「暴行」とはかけ離れたものであり、判決で認定された「打撲」が、「傷害」と評価し得るかどうかも疑わしい。このような判決が確定したことが、小柳市議の社会的・政治的信用に影響を与え得るようなものではないことは常識的にも明らかであること、社会的な意味での「暴行」とは言えない程度であっても、「有形力の行使」としての刑法上の暴行に該当することは否定できず、控訴審で無罪判決を得ることは困難と思料されたことから、当職らは、控訴を維持することに実質的な意味はないほとんどないと判断し、控訴取り下げによって事件を早期に決着させ、市議会議員としての活動に専念することを助言した。小柳市議も、当職らの助言を受け、一審判決の認定には納得し難い点が多々あるものの、控訴を取下げることを決意したものである。
なお、Aさんに対しては、一審判決後、5月20日頃から、小柳市議の代理人において、一審判決の事実認定を前提に認められ得る損害賠償額を上回る金額の示談金を提示して示談の申入れを行ったが、示談交渉は不調に終わり、現時点では示談は未成立である。

4 本件に関連する辞職勧告決議案の提出
  Aさんが、小柳市議の行為による傷害の程度を過大に申告し、手のしびれを伴う全治2か月の「正中神経損傷」の傷害事件であることを前提に警察捜査・検察官送致が行われた直後の一昨年8月29日に、更に起訴後の昨年3月に小柳市議に対する辞職勧告決議案が提出され、いずれも否決された。
そして、その後、「正中神経損傷」が本件とは無関係であることが明らかになり、一審判決でも、極めて軽微な「前腕打撲」しか認定されなかったにもかかわらず、その一審判決が控訴取下げで確定したことが明らかになった今月12日に、再び、新発田市議会において小柳市議の辞職勧告決議案が提出された。
  一審判決を前提にしても、本件が、市議会議員に辞職を勧告すべき事案とは到底考えられないことは既に述べたところから明らかであるが、そればかりか、同決議案の文面を見ると、「罰金20万円の実刑が確定しました」、「最悪の場合は公民権停止に発展する重大な事件であります」などと、明らかに誤った記述が並んでおり(「実刑」というのは、「執行猶予が付かない自由刑」のことを言うものであり、罰金に「実刑」などあり得ない。また、「公民権停止」は、実刑で服役する場合を除けば、収賄、公職選挙法違反、政治資金規正法違反等の犯罪の場合にとられる措置であり、傷害罪の罰金刑の本件とは全く次元の異なるものである。)、提出者の議員の方々は、刑事事件についての基本的理解を欠いているのではないかとの疑いを持たざるを得ない。
選挙において市民の支持を得て、市議会での活動を負託されている市議会議員に対して刑事事件の判決確定を理由に辞職すべきとの意見を公にされるのであれば、判決での認定事実を確認し、社会的・政治的責任の軽重を適切に評価した上で行われるのが当然であり、今回の小柳市議に対する辞職勧告決議案は、そのような前提すら欠いているのではないかというのが当職らの率直な印象である。
このように明らかに不当な辞職勧告決議案によって議会活動に不当な影響が生じることがないよう、市議会において速やかに適切な対応がとられることを期待するものである。


   時系列

2013.6.20 <事件当日>
21:30頃  飲食店入店
22:35頃  同店女将Aさんの腕をつかむ行為
22:37    Aさん・小柳市議 両者が警察に通報
23:30まで 現場検証
2013.6.21
 0:20    被害届作成・提出
 1:00頃  Aさん、県立新発田病院 受診(研修医)
「右前腕打撲 全治10日間」不在のはずの院長名の診断書( 
※作成者は、診察していない病院長、いつ作成されたものかも不明
 3:00頃  Aさん海外旅行のため成田へ出発
2013.6.27  Aさん帰国
2013.6.28  なかだい整形外科 受診(以降2013.7.8までの間に同医院を5回受診)
「右前腕打撲、正中神経損傷 受傷から全治約3週間の見込み」診断書(◆
Aさんが警察に持参。 これにより暴行事件から傷害事件となる
2013.7.4   小柳市議 若月議員と共に菓子折り持参でお詫びに伺う
2013.7.9   手の外科受診(以降2013.11.12までの間に同医院を33回受診)
2013.7.13  小柳市議 メロン持参でお詫びに伺う
2013.7.16  手の外科 受診
「右正中神経損傷 受傷から2か月程度の通院加療を要す見込み」診断書()
Aさん 議会事務局に4日の菓子折りと13日のメロンを返却
2013.8.12   第1回 示談交渉
2013.8.20   書類送検 (診断書◆
2013.8.29   新発田市議会 市民クラブ 小柳市議辞職勧告決議案提出(1回目)
2013.9.26   辞職勧告決議案 否決
2013.9.28   第2回 示談交渉 決裂
2013.11.13  神経専門医師意見書「正中神経損傷はあり得ない」(↓を否定)
2013.12.27  起訴
2014.3     新発田市議会 市民クラブ 小柳市議辞職勧告決議案提出(2回目)→2度目の否決
2014.10.28  訴因変更 「全治10日間を要する」→「加療約1週間を要する」
2015.3.5    判決(罰金20万円) 控訴申立
2015.5.20頃から 小柳市議代理人弁護士がAさんと示談交渉 
示談金として20〜30万円を提示するも折り合わず
2015.6.1   控訴取下げ(控訴趣意書の延長した提出期限日)