南アフリカのワインの中でも、日本国内で特に人気が高く、その名を轟かすワイナリー。
ブーケンハーツクルーフ社より、オーナー兼醸造家のマーク・ケント氏が来日を果たしました。

大阪で業者向けにセミナーが開始されましたので、本日はその様子をお伝えします。



ブーケンハーツクルーフとは??

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■ブーケンハーツクルーフ 公式サイト
http://www.boekenhoutskloof.co.za

ブーケンハーツクルーフは南アフリカのフランシュックを拠点とするワイナリー。

設立自体は1776年。現在のオーナーであり、セラーマスターであるマーク・ケント氏の功績により南アフリカのトップワイナリーの一つとして知られるようになりました。マークケント氏の代は、設立は1994年、ファーストヴィンテージを1996年とします。

南アフリカの中でもトップワイナリーとして君臨。R.パーカーによるワインバイヤーズガイド(米国)、ワインレポート(欧州)の双方で、南アNo.1ワイナリーとして選ばれています。

ブーケンハーツクルーフのフラグシップである「7つの椅子のラベル」各種は世界完全割り当ての希少品とされ、国内外問わずコレクターがいると噂されます。特に「シラー」がトップレンジとして知られており、直近の16年度は300本ほどが輸入されながらも依然として、超がつくほどの入手難。WEBショップでは数十本の在庫が販売開始から1~2分で売り切れるなど話題に事欠かない銘柄です。ティムアトキンMWの独自格付けである、南アフリカワイナリー格付けでは「第1級」の最新版評価。

ブティックワイナリーに思われがちですが、世界64カ国に輸出がされている大手社です。
プラッターズガイドなどの表記を見ると、ワインメーカーは複数人、また栽培責任者も別に表記されており、組織的なチーム化が成されていることがうかがえます。



オーナー兼醸造家 マーク・ケント氏


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ブーケンハーツクルーフ社のオーナー兼醸造家。
南アフリカのプレミアムワインの市場を世に広めたといっても過言ではありません。
パーカー5つ星評価を与えられた生産者として知られます。


南アフリカ・ケープポイントのブラックマーリンというレストランに在籍していた経緯を持つマーク氏。

そこのレストランオーナーは熱狂的なワインコレクターでありました。
マーク氏自身も22歳という若いころにDRCやペトリュス、エゴンミュラー、フリッツ・ハーグなど、世界に名高いワインにテイスティングする機会に恵まれます。
マーク氏はその後ローヌのE.ギガルのワインに惹かれ、更にはコルナス・スタイルのワインに魅了されます。


南アフリカというワイン生産地の魅力に可能性を感じ、自身のレーベル「ブーケンハーツクルーフ」を立ち上げ、ファーストヴィンテージを1996年にリリース。そして、2年目のヴィンテージの「シラー」でWA93点を獲得してしまいます。
その時、マーク氏は25歳。あまりに早い評論家からの高い評価から「天才」と称され、現在に至るまで南アフリカのワールドクラスのワインを作り続けます。

フランシュックのブーケンハーツクルーフ社を拠点とするほか、カーリー・ロウとの共同プロジェクトである「ポルセレインバーグ」も運営しています。南アフリカではレジェンドというべき一級生産者。今回が日本初来日。




ブーケンハーツクルーフ セミナー内容



本日は15年ヴィンテージの比較試飲です。50分という短いセミナーでマーク・ケント氏の解説ありつつのテイスティングですので、私とすると結構ハイペース。

例によって1本ずつ個別記事としたいのですが、取り急ぎここでも大きくまとめたいと思います。



■ブーケンハーツクルーフ セミヨン 2015

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セミヨン2015はブーケンハーツクルーフ7つの椅子の唯一の白。
セミヨンは1902年植樹の樹齢100年を超える古木のものを使用。
また、このヴィンテージからマスカットオブアレキサンドリアをわずかにブレンド。

現状ではそのなりをまだひそめているものの、はちみつやキンカンのような甘いオレンジ系のかんきつの香りがしっかりとあります。
ほんの僅かにこんぺいとうのような甘い香りが感じ取れます。

基本的にはハチミツや花梨のような果実みがあり、ワクシーでタイトな味わい。
スパイス感もあり、堅牢なイメージ。先をみたいワイン。

個人的に香りの柔らかさがあるなぁ、というのは過去限られたヴィンテージを飲んだ記憶と比較して感じた部分です。前述の通り、こんぺいとうの様な柔らかい甘さがあります。

ミュスカ(マスカットオブアレキサンドリア)をブレンド理由は後述します。
なお、コルクはTCAチェック、という処理を行っており、
ブショネの確率をほぼ100%除去できるとのこと。南アフリカで導入したのはブーケンハーツクルーフが初。



■ブーケンハーツクルーフ チョコレートブロック 2013

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南仏をイメージしたワインで、シラー、カベルネソーヴィニヨン、グルナッシュ、サンソー、ヴィオニエのブレンド。
それぞれの役割は、シラーがアロマやスパイス、カベルネソーヴィニヨンがボディ、グルナッシュはフレッシュな酸味、サンソーはフルーティーさ、ヴィオニエはアロマティックな要素。

ムスクの様な動物的な香りやユーカリ(湿布など)の香りがしっかり感じられます。



シラーは新樽を使わず、中古樽。カベソーは新樽。それとグルナッシュとサンソーは大きな中古樽を使用しているとのこと。2,400樽くらいをもともと仕込んでいるものの、最終的にチョコレートブロックで使用したのは1,511樽。つまり、900樽ほどをほかに回し、下位レンジに持って行った、という感じになります。

過去飲んだ時は、もう少し新世界的な、ガツーンとくるビターな感じだったような気がするのですが、年々エレガントな傾向になってきているような…と思えるのがこのチョコレートブロック。

なお、ほかの方から「チョコレートブロックって、なんでチョコレート、って名前なの?」という質問があり、「いや、チョコレートってみんな好きでしょう?だからみんなに好かれるように。」という答えが返ってきてました。がちょん、雰囲気ネーミングでした。(一応要素としては感じるけどね、という補足あり)なるほどなぁ。



■ブーケンハーツクルーフ シラー 2015

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北ローヌをイメージしたシラー。表記も「シラーズ」ではなく「シラー」としているのはフレンチ・スタイルを想起させるエレガントな味わいを目指しているため。

今年からスワートランドのブドウを100%使用。
80%をポルセレインバーグ地区、また20%はゴールドマイン地区。

従来フランシュック産で使っていたワインを年々スワートランドのものにスイッチしていった経緯があるようです。スワートランドの畑は2009年にブーケンハーツクルーフ社で購入した畑(自社畑)

フランシュック産は買い付けブドウであったが、ブドウの供給面の確保、安定的な生産という観点から徐々に自社畑に。ただ、一気に変えるわけにもいかず(顧客からテイストが違うと言われるため)徐々にスワートランド産の比率に移行していった。すべてスワートランドになったのはそういうこと。


「スワートランド」という地区はかつて「ブラックランド」と言われていて、黒っぽいブッシュ(芝)が生い茂っていたことに由来する。
ポルセレインバーグの土壌はシスト。ゴールドマイン地区はかつて金がうまっているんじゃ「ないか」と言われていた地域(実際は金は埋まっていなかったようです)

スワートランド地域の特徴はドライな気候にある。フランシュックが2,500mm/年程度の降水量に対して、スワートランドは500mm/年ほどとのこと。



若々しいのですが、非常に紫の花やムスクを想起させ、華やかなシラーです。南アフリカのエルミタージュ、と言って差し支えないでしょう。
エレガントでスパイシー。チョコレートブロックと正直香りが近しい部分もあるのですが、やはり7つの椅子の方が洗練されていて、スパイス感もやわらか。なお、白コショウのニュアンスはゴールドマイン地区によくみられる特徴とのこと。




■フランシュックカベルネソーヴィニヨン&ステレンボッシュカベルネソーヴィニヨン(比較)


おなじ7つの椅子のシリーズから、地域違いの比較です。

■ブーケンハーツクルーフ ステレンボッシュ カベルネソーヴィニヨン 2015
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ステレンボッシュは14年からリリースを開始したばかりの新しい銘柄。
ステレンボッシュ・ヘルダーバーグの1906年という古い樹齢を含む畑を購入できたことから生産を開始。合計で4つの畑からブレンドしている。カベルネソーヴィニヨンのほか、カベルネフランを14%ほどブレンドしている。

テロワールは仏のメドックを連想するような場所とのこと。
ヘルダーバーグは別名「クリア・マウンテン」とも呼ばれ、海から近い位置にある。

非常に好評な銘柄、とのことで、マーク氏が「ありがたいことに」と前置きした上でエミレーツ航空のファーストクラスにも採用されたとのこと。


■ブーケンハーツクルーフ フランシュック カベルネソーヴィニヨン 2015
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これに対してフランシュックカベルネソーヴィニヨンは従来からリリース。
カベルネソーヴィニヨンの比率がこちらは96%と高く、4%がカベルネフラン。
ステレンボッシュ・カベルネソーヴィニヨンよりもストラクチャーとタンニンを重要視していて、熟成で花開くようなワインメイクをイメージしている。


比較すると、ステレンボッシュのほうがどちらかというと黒系果実のイメージがバシッと来ています。インキーな印象です。
これに対してフランシュックの方が果実みの膨らみ、軽やかさがなどがありエレガントな印象でした。この辺は醸造家自身の説明とは違って、私個人としてはステレンボッシュのほうがガッシリ系で、フランシュックのほうがエレガントだなぁと思いました。





ブーケンハーツクルーフ マーク・ケント氏に聞いてみよう


ちなみに、みたまり酒店さんの店主ソムリエさんが今日は来ていまして、質問をバシバシされていました。さすが。

当方の質問は、過去参加させていただいた南アのジュリアンスカールの来日、同じく南アのグレネリー来日時にした同じような質問になってしまいました。頭が回らないのか、質問自体がテンプレ化してきましたが行ってみましょう(次回はもう少し質問考えます)


Q.ブーケンハーツのセミヨンにミュスカ(マスカット・オブ・アレキサンドリア)をブレンドした理由は?(過去はセミヨンとソーヴィニヨンブラン)
A.マスカットオブアレキサンドリアのフレグランスさを表現したかったから。19世紀の後半では実際にボルドーでもマスカットオブアレキサンドリアを使用したブレンドがあった。マスカットオブアレキサンドリアは比較的早めに摘み取ってフレッシュな感じを出している。


Q.ブーケンハーツクルーフシラーと、ポルセレインバーグシラー、共同経営でスワートランドのシラーで…同じブドウとか使ってるの?
A.別だよ!そもそもポルセレインバーグは100%ブーケンハーツクルーフの傘下にあって、本丸のブーケンハーツクルーフとは別プロジェクトという位置づけにしている。だから異なるブロックのブドウをそれぞれ使用している。
ポルセレインバーグの醸造家のカーリー・ロウは元ブーケンハーツクルーフの出身。とっても優秀な醸造家の一人。

※ちなみに「どうやって(日本のユーザーが)カーリー・ロウのこと知ったの?」と逆質問受けたくらいなので、現地でもすごく希少なカルトワインのようです。



Q.ところで、マークさんのご趣味は・・・
A.セイリング(ヨット)とかフットボール(サッカー)だね。特にサッカーは今もちょいちょいやってる。


Q.7つの椅子でほかの品種、シュナンブランとか作らないの?
A.下位レンジ自体ではブレンドに使っている。今のところは既存の7つ椅子のクオリティを維持したいので予定はなし。


Q.日本のマーケットに何を期待しますか?
A.基本的に、あまりものごとを楽観視しないようにしている。期待しすぎるとズッコけた時にとてもヘコむから。だから、とにかく今やってることを(過度に期待感を持ったりせずに)きちんとやりたい。
せっかく日本のユーザーとは長く付き合いをさせてもらってるのだし、率直に日本の消費者に自分たちのワインを楽しんでもらいたい。


Q.一番の取引国ってどこ?
A.額面か量か、で変わってくる。高額帯のものはカナダが一番良く売っている。本数ベースではイギリス。日本はどちらかといいうと高額レンジのほうが売れている(輸入元さんいわく、まだまだ取引相手国としては日本は下位ですね…とのこと…)
輸出は64カ国にしていて、南アフリカでの国内消費は全体の40%とウェートは大きい。


Q.仲のいいワインメーカーって誰?
A.私が影響を受けた人から話し始めるとキリがないけど、南アフリカで?たとえばアディ・バデンホースト(AAバデンホースト)、カーリーロウ(ポルセレインバーグ)、イーベンサディ(サディファミリーワイン)、ルディ(ライネカ/ロバートソンワイナリー)、アラン・フィンレーソン(クリスタルム)などなど。サディは同じワインスクールにいたくらいの旧知の仲。


Q.新しい世代のワイナリーが増えてるけど、ブーケンハーツクルーフの今後は?変えていったりするのか?
A.世間の流れとか、ブームみたいなものは「それはそれ」ということであまり気にしていない。これまで培ってきたものがあるし、前年よりもより良いヴィンテージを作っていくことを大切にしたい。
南アフリカはリーズナブルで非常に良いブドウができる素晴らしい生産国。そこを代表するワイナリーでありたい。





ということで、めっちゃガチガチに緊張して、本当に「何聞くんだっけ…」と固まりました。

ワインをまず切り取りますと、率直にいえば、15年ヴィンテージはまだまだ早く2時間前くらいから抜栓していたようですが、その実力は見えきらないという感じです。
たとえばトップレンジのシラーは華やかで紫系のフローラルさが前に立っていてナチュラルなイメージ。
また、チョコレートブロックが年々洗練されていく、というかこれだけ唯一13年ヴィンテージというのもあるのですけど印象が良かったりしました。

もっとも、私もリリース2年たらずでテイスティングに恵まれたのは初。過去にブーケンハーツクルーフは垂直試飲をする機会に恵まれ、4年くらい経過した2012シラーに感銘を受けたので、やはり「待ち」なのでしょう。

この日、1番良かったのはエレガントな印象を受けたフランシュックカベルネソーヴィニヨンでした。


ボトルで飲み比べも本来はしたいのですが、数がないですからね。
エントリーレンジを頑張って飲んで輸入量増やしてもらいましょう。


話が変わりますが、以前に”ブーケンハーツクルーフ7つの椅子の垂直比較”というトンデモない企画を開いてくださった、兵庫の伊勢屋さんとお話しする機会があったのですが、いくつかブーケンハーツクルーフはバックヴィンテージ持ってらっしゃるそうです。どの銘柄とは聞きませんでしたが、2、3年前のヴィンテージとも…。
欲しい方は立ち寄ってみては。仮にブーケンがなくても南アのバックヴィンテージ他、内心あまり教えたくないお宝が眠ってるお店の一つです。
過去記事:南アフリカ ブーケンハーツクルーフ 垂直・水平試飲会 「七つの椅子の会」に参加



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ということで、発見のあるセミナーでした。
マークさん、想像するにめっちゃお硬い感じの人かなぁと思っていたのですが、「ほかにみなさん質問ある?」と参加者に聞いていたり、輸入元さんいわく「マークさんは、さっそく京都の伏見稲荷を散策されてたようです…」などなど茶目っけある方でした。

あと、マークさん、日本語で「こんにちはみなさん、マーク・ケントです。」と言ってた上に、たまに私が通訳さん(輸入元さん)はさんでいる時に、簡単な日本語の質問はかぶせるように先に(英語で)返し始めてたので日本をきっちり見てくれてるんだなぁ、という印象を持ちました。


ほか輸入元さんにも聞いたところ、長野のワインブティックヴァンヴァンさんに訪問したり、東京に行ったりと過密スケジュールなようです。

またぜひとも来てください。もっと話を聞きたい人がたくさんいるはず。貴重な経験でした。ありがとうございました。


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