2018年05月03日

第129回サロン・ド・小田原 『石川県の桑島層(前期白亜紀)から発見された新種の小さな両生類の化石』実施報告

開催日:2018年04月14日(土曜)
場所:博物館東西講義室
話題提供者:スーザン・エバンス教授(ロンドン大学)& 松本涼子(当博物館 学芸員)
参加者:26名

 今回の話題については、4/6に石川県白峰で発表され、全国紙や地方紙のオンライン版、印刷版で取り上げられており、如何に重要な発見かが分かる。そのような話を研究者から直接聞けるというまたとない機会に立ち会えたのは幸運であった。それだけに参加者26名というのは余りにもったいないことで、博物館(友の会)の宣伝方法については一考をお願いしたい。
 まず、松本先生が、今回の化石が発見された桑島化石壁(国指定天然記念物)についてお話された。1874年にライン博士によりイチョウモドキという植物化石が、1986年に日本最古の恐竜化石がこの化石壁から発見されている。その後、1997〜1999年に、化石壁の裏に「ライントンネル」が掘られ、掘削された大量の岩石を手取層群化石調査団が発掘・研究し、多くの爬虫類や恐竜、昆虫、魚類などの貴重な発見を報告している。
 休憩後、松本先生の逐次通訳つきで、スーザン・エバンス教授が今回発表された新種の小さな両生類(アルバノペトン類)についてお話された。両生類は、現生ではカエル、サンショウオ、アシナシイモリしか知られておらず、その小ささゆえに化石として発見されにくいことから、その進化についてはほとんど知られていない。今回発見された両生類は、これまでヨーロッパ、北アメリカ、南アフリカのジュラ紀から鮮新世にかけ複数個体が発見されていたが、アジアからはウズベキスタンの白亜紀後期の地層でしか発見されておらず、北アメリカからアジアに渡ってきたと考えられていた。しかし、今回の発見が白亜紀前期の地層であったことなどから、これまでの仮説が覆る可能性がでてきた。また、今回ほぼ完全な頭骨が立体的に発見されたことから、現生の両生類よりも古い生物(実は両生類ではない可能性もある)であることも分かった。
 さて、実際の化石の大きさであるが、大きいものでも4mm程度で約1.5×2×0.5cm3の岩石の中に43個もの化石が存在していた。このように小さな化石であったので、クリーニングして掘り出すことは難しく、最終的にマイクロCTスキャンを用いて1200枚もの画像を打ち出し、肉眼で1枚1枚精査して個々の形状を決定するに至ったという。更に、化石を取り出す代わりにスキャニングデータから3Dプリンタで20倍に拡大したレプリカを作成し、立体的な頭骨を復元している。
講演終了後に、顎の実物化石と、20倍に拡大したレプリカ化石群を見せていただいたが、参加者の皆さんは、一様にその小ささに驚いていた。
 学術名は、発見地と調査団長の伊左治鎭司(いさじしんじ)氏(千葉中央博・主任上席研究員)の名前を基に、「シラーペトン(白い這う者)・イサジイ」と名付けられた。
(文書 両生類・爬虫類ボランティア 井上 昭、写真 飯島俊幸)

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話題提供者のスーザン・エバンス氏と松本涼子学芸員

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頭骨の微小化石群

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20倍化された3D化石レプリカに興味津々

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3Dレプリカの組み立てにトライ