6d5adb28.jpg 煙草脂と湿気染みまみれになっている二階北面の古い京壁に珪藻土を塗ってみた。一坪用一箱約四千円を三箱、一度も使ったことはないがこても併せて購入する。
 バケツを用いて水と珪藻土の粉末を手で捏ね、耳朶くらいの柔らかさにしてしばらく放置した後、上部よりこてで塗り始める。
 ペンキやポスターカラーを塗る作業は教わったこともあるが左官仕事は初めてであるから作業は遅々として進まない。上手く延ばせないので厚塗りになり珪藻土が足りなくなりそうだ。二時間ほどかけて一坪分を塗り終わるが隅や仕上げ塗りは完了できないでいた。
 休憩後作業を開始したのだが、他の面を担当している家人が猛然と両手を駆使して塗りだした。何かに憑依されたかの如く手を上下左右に動かし塗りたくる様を見て、手を止め呆然と眺めること暫し。なまじ道具に頼らず自らの指と手のひらを駆使してぬり広げる鬼気迫る迫力に、人類が進化の末に得た手を使う道具として使う素晴らしさをまざまざと見せつけられた。
 斯くして作業は格段の進捗を見せ、再開後二時間で全工程を完了。
 見返りとして家人の手のひらに血が滲んだのが哀れではあったが、素人でも比較的簡単に塗れる壁材であることは巷間云われている通りであった。

購入した珪藻土のパッケージ横にある使用説明書には
●準備する材料と道具
 コテ・コテバケ・炊事用凹凸スポンジ・ヘラ・刷毛
 以上の道具が紹介されていて、且つコテが無くても塗りつけできますとある。
 ならばぜひともこの項目に「手」を追加するように関係各位に要望したい。
 
※写真は拘りの手延べ珪藻土壁