佐藤総研 (独立系シンクタンク)

代表 佐藤鴻全  少数精鋭の独立系シンクタンク /研究分野:政治、経済、外交、軍事、歴史、科学、技術、経営、ビジネス、芸術、芸能、森羅万象 

■調査、執筆のご依頼は、下記Twitterへご連絡ください。
■研究員募集中(学歴・職歴・専門分野不問、知的好奇心と文章力のある方歓迎、語学堪能尚可)



■ご訪問頂いた皆様、ありがとうございます。お気に入り下さいましたら、当ブログ http://blog.livedoor.jp/ksato123/ を、BLOGOS http://blogos.com/recommend/blog/add/ に推薦頂ければ幸いです。

日露平和条約は「日米露三国同盟」への布石でなければ意味がない。

◆プーチンの無茶ぶり◆
9月に露ウラジオストクで開かれた「東方経済フォーラム」での、プーチンによる唐突な無条件での日露平和条約締結のオファーに対し、安倍総理は流石に「無条件」は避けるものの、前のめりの姿勢で臨んでいる。

当然ながら日本の報道と世論は、果たして北方領土が何島返ってくるのかに焦点が当たっている。日本としては4島一括返還が予てからの国是ではあるが、歯舞・色丹の2島返還に加え、国後・択捉の2島について平和条約締結後の継続協議に持ち込むのが現実問題としてのリミットではないかとも言われている。

さて返還の一番のネックとなるのが、返還された島に米軍施設が設置されるか否かであると言われている。2島の場合、北海道本島に施設を設置するのと軍事的に実質的な差異はないが、プーチンとしてはロシア国民に対する面子を保つためにも絶対に譲れない線であろう。このため、それについての日米露間での同意なしでは、2島も返ってくる事はない。

しかし、全てが上手く運んで2島+アルファとなったとしても、ましてや2島以下で打ち切りになった場合には特に、国是であった4島一括返還から遠く離れると言うことになる。その上プーチンからの請求書にどの位の額が書き込まれるかも不明だ。

◆国運を掛けて◆
それゆえ筆者は、敢えてこの時期に日露平和条約を結ぶのは、実質的な「日米露三国同盟」への布石でなければ意味がないと考える。それ無くば、コストとリスクを負ってここでカードを切る事は4島一括返還でもない限り無駄と言えるだろう。

即ちプーチンは中国との「不信同盟」を捨てて、トランプは米国内の反対勢力を抑え、日本を触媒として、将来の実質的な三国同盟(少なくとも協商)関係への方向性を打ち出せるかをもって、今回の日露平和条約の是非が諮られるべきである。

第一の軍事大国の米国が、第三の軍事大国であるロシアと結び、第二の軍事大国である中国を抑える。それに重ねて、第一の経済大国である米国が、第三の経済大国である日本と結び、第二の経済大国である中国を抑える。古来、勃興する挑戦者に対する勝利の方程式は自明である。

今の中国は、その人権、領土、経済に対する無法ぶりと影響力を考えれば、嘗てのナチスドイツに匹敵し、習近平は巨大市場を抱えた現代のヒトラーである。いわば大悪魔である習近平に対するには、現在の覇権国の主トランプが中悪魔であるプーチンと組むべきなのが、国際秩序の現実的正義である。またそうでなければ、恐らく日本の安全保障も保つ事は出来ないであろう。

奇しくも冒頭の「東方経済フォーラム」でのプーチンによる唐突な、無条件での日露平和条約締結のオファーは、座席の配置から安倍総理に対し習近平を挟む形で行われた。プーチンとしては、「三国同盟」は恐らく視野に入っているだろう。しかし、日本が乗って来なければ中国からの侵略リスクを抱えつつ「中露不信同盟」を続けざるを得ず、それをバックに習近平は南沙諸島掠奪等々を始めとした覇権拡大を背後の守りの憂い無く続ける事になるだろう。

トランプはというと、ペンス演説によって国家第一の敵は中国であるという認識が米国民にも芽生えつつあると言え、身動きが縛られるロシア・ゲートの行方は流動的だ。

日本は、刻々と動く国際情勢とその行く末を見極め、更に自ら情勢を作り出しながら、国際的大義と国運を掛けて日露平和条約交渉に臨まなければならない。(一部敬称略)

米中覇権戦争の今と、トランプの肚の中

◆冷戦宣言◆
4日のペンス副大統領のハドソン研究所での演説によって、トランプ米政権は実質的に中国に対し覇権を掛けた冷戦入りを宣言した。

これまで米大手メディアの多くは、トランプの仕掛ける貿易戦争は11月の中間選挙目当ての短期的なものだろうと見ていたが、4日のペンス演説によって見方を変えざるを得なくなって来ているようだ。

続く10日、NYダウ平均株価の急落を発端として世界同時株安が発生した。これは、米中貿易摩擦による景気の冷え込み懸念、減税による財政悪化と共に、米金利上昇が原因と言われており、トランプ大統領はFRBの利上げ政策を前にも増して激しく非難した。

この一連の流れを見ると、トランプは対中貿易戦争での景気の落ち込みを見越して、予てからFRBの利上げ姿勢を批判してきたとすると辻褄が合うようにも見える。トランプは、経済貿易と軍事力で長期に渡るであろう米中覇権戦争を勝ち抜くつもりのようだ。

◆中国、韜光養晦へ?◆
一方の中国は、米中関税合戦で経済に対米輸出エンジンを失うため、内需シフトを加速させる共に、AIIB(アジア開発投資銀行)、一帯一路構想に日本を巻き込んで、その杜撰さと経済植民地指向によるこの所の世界的悪評をかわそうとして日本に急接近して来ている。

習近平国家主席は覇権への道を進めてきたが、関税合戦で中国に勝ち目はなく、恐らく対米貿易戦争を一旦休戦するだろう。11月6日に行われる米中間選挙の結果を見てトランプへの譲歩の幅を見定めようしているところだ。

だが米国民は、国家第一の敵は「中悪魔のロシア」でなく「大悪魔の中国」であると10年遅れで気付きつつあり、たとえ共和党が下院選挙で負けても、これまでのようには、少なくとも民主党等によるロシア・ゲート追及は盛り上がらないと思われる。

中国が実戦になる可能性も考慮に入れ米国と正面から対決するのは、早くとも一人っ子政策が「二人っ子政策」になった成果が出て来て、生まれた子供が兵士と成り得る2040年前後以降だ。それまでは、小平の唱えた「韜光養晦」(能ある鷹は爪を隠すという様な意)の方向へ一歩後退し、少なくとも、2年後若しくは6年後のトランプ政権終焉後までは臥竜として力を蓄えて行くスタンスを取るのではないか。

◆トランプの肚◆
気が付けば、トランプの始めた貿易戦争は、対EU、対メキシコ・カナダ、対日本で、暫定的に小康状態となり、中国による技術の違法コピー問題等々を中心に中国包囲網が出来上がりつつある。トランプのこれまでの全方位的な貿易強硬姿勢は、北朝鮮核廃棄に向け中国の影響力を利用するに当たって、対中強硬姿勢を突出させないためのカムフラージュと見えないこともない。あるいは、家康が関ケ原で動かぬ小早川陣内に鉄砲を打ち込んだような効果も狙ったのかも知れない。

もっとも、経済と軍事で中国との覇権戦争を勝ち抜くべき事を唱え、トランプ政権の戦略の中核となっている補佐官のピーター・ナヴァロは、貿易問題で対中のみならず対日を含む同盟国にもシビアな見方をしている。それに加え、トランプはレシプロカル(相互的)というワードを多用しており、貿易に於いて2国間バランスで結果の平等を実現させるのを最終ゴールとしているとも見え、警戒が必要だ。

トランプの肚の中は良く見えない。筆者は、トランプが2016年の大統領選でイラク戦没者遺族を正面から中傷したことを思い出す。たとえ民主党大会で自身の徴兵回避を揶揄されたにせよ、戦没者遺族に強い言葉を浴びせるべきでないのは古今東西の常識だろう。筆者にはその時トランプは大統領選を放棄したように映った。

しかし今振り返れば当時は7月の共和党大会で候補者指名を受けた直後で、その大会でトランプは比較的お行儀良く振舞っており、もしそのまま「上品なトランプさん」のままヒラリーとの10月の討論会に臨んだら、果たして自身へのセクハラ問題追及に対してビル・クリントンにレイプされたという複数の女性を記者会見させて会場へ連れて来て対抗するという飛び道具を使う事が出来ただろうか? 戦没者すら罵倒するような「下品なトランプさん」のキャラだからこそ出来たのではないか。筆者はトランプが自身へのセクハラ追及の火消しをするために予め仕込んで演じていた可能性は大いにあると考えている。

トランプが、接近する中露の間に楔を打ち込んで、ロシアと結び進んでは「米露同盟」と各国による包囲網で覇権を狙う中国の牙を抜く戦略なのは分かるし、それ以外の選択肢はない。しかし、世界的な貿易システムをどうしたいのかは明確には見えない。またイスラエルの既得権維持を基本に据えつつも、中東秩序全体を具体的にどうしたいのかはもっと見えない。(全く白紙なのかも知れないが)

日本は、こうしたトランプの一挙手一動を読み解きながら、国際的大義は奈辺にあるのかを模索しつつ、強かに国益を確保することが必要だろう。

金正恩、米中露3竦みの薄氷の上で開発独裁の瀬踏みか

◆シンガポールの夜景◆
6月12日にシンガポールでのトランプと金正恩の米朝首脳会談が終わり、トランプは返す刀で習近平の率いる中国に貿易戦争を仕掛けている。

米朝合意の共同声明では、トランプによる北朝鮮の安全保障と、北朝鮮による「朝鮮半島に於ける完全非核化に向けての努力」が約束され、その手順、スケジュール等具体的なことは今後の交渉事項とされた。

トランプの思惑は、米朝友好を成果の一つとして中間選挙を乗り切って、もし金正恩の核廃棄に進展が見えなければ軍事オプションを含む制裁強化へ豹変するというものだろう。一方、金正恩のメインシナリオは、仮初の「体制保証」の下、部分的核廃棄を緩慢に行い、それに応じて制裁解除を得つつトランプ引退(3年ないし7年後)を待って核保有国として国際的に認知を受ける事にあると思われる。(参照:米朝首脳会談 トランプの2段階戦略と金正恩の思惑

しかし、今回の米朝首脳会談を通し金正恩は、上記メインシナリオと並行して、米中露3竦みによる薄氷のパワーバランスを実質的な体制保証として用い、核廃棄を進めて開発独裁へ転換する瀬踏みを始める風情も出てきた。その動機は、経済制裁が厳しく耐え難いという点、米国との良好な関係を持続できなければ中国の完全属国になってしまうという恐れ、シンガポールの夜景を見て感じた開発独裁による繁栄への希望といった所か。

もちろん、これには前述3国のパワーバランスが実質的な体制保証であるという点、軍部によるクーデター、開発独裁が軌道に乗った局面での民衆蜂起の可能性等の大き過ぎるリスクが伴い、いわばギャンブルである。そのため、有事の際の亡命オプションは必ず必要になってくる。亡命先は中国であれば中朝2千年来の屈辱となるので、スノーデンで実績があり客分として扱ってくれそうなプーチンのロシアとなるだろう。

◆トランプの大欲と日本◆
ともあれ金正恩の腹がどこにあるかに関わらず、ひとまず朝鮮半島は束の間の安定を得た。(私事、筆者も躊躇していた当地への旅行を今夏計画した。)

米中冷戦は、貿易戦争に限らず、それとリンクして南シナ海、台湾等での地政学的攻防へ加速して行くだろう。トランプは今月16日にフィンランドでプーチンと首脳会談を行う予定だ。

議会が、ジャーナリズムが、EUが、軍産複合体が何と言おうと、中露の紐帯に楔を打ち込んで、実質的な米露同盟に少しでも近付けなければ、アジア太平洋の、進んでは世界の覇権が中国へシフトするのは水が高きから低きに流れる如く自明なことだ。ロシアも問題を抱えているが中露の何れかがより地球にとって害があるか比較衡量が必要であろう。トランプには少なくともその大局が見えていると思われる。

今のところ日本は、対朝、対中では、トランプが作り出す潮流に乗るのが基本的に国益に適うと思われる。だが従属的であってはならない。

金に関して言えば、日韓基本条約での準賠償には北朝鮮分も入っていると考えられ、北朝鮮から過去の有償食糧援助の債権、拉致の賠償金は受け取れども、本来日本から北朝鮮に金を払う必要も理由もない。しかし、国際世論の趨勢や日朝平壌宣言を結んだ経緯から実際的にはある程度出さざるを得ないだろう。

それには、拉致、核、ミサイル問題の解決を条件とするのが大前提である。そしてこれは、極く低利であっても全額有償の円借款とするのが適当だ。トランプから要請された核廃棄費用については、国際的な基金を作ってそこに支出し、将来、上記円借款とスワップ出来る余地を残す等、強かさが必要だろう。

自我肥大の、エゴ大王であるトランプの大欲は、世界を大乱に引き込むのか、否それはほぼ確実だが、その果てに新しい世界秩序があるのか。日本は国際的大義を伴う長期的国益の実現を軸に据え、主体性を持って臨む必要があるだろう。

米朝首脳会談 トランプの2段階戦略と金正恩の思惑

4月末の南北首脳会談、今月9日の北朝鮮により拘束されていた米国人3人の開放を経て、初の米朝首脳会談が6月12日にシンガポールで行われる事が決まった。(なお、事前の条件闘争により中止若しくは延期となる可能性は残る)

本年3月時点で筆者は、金正恩による核放棄はないだろうと予測していた。その予測自体には変更はないが、核放棄が無い場合のトランプによる「北爆」は米朝首脳会談後から11月の米中間選挙前の秋口迄に行われると見ていたが、その時期の修正を含め、現時点で筆者は今後の展開を以下のように考える。

●米朝首脳会談では、非核化のプロセスについて曖昧さを残すか、若しくは準備期間と工程を長めに取ったもので決着する。

●トランプは、今回の金正恩による米国人解放と非核化の言質等の成果を利用し、弾劾回避等に向け中間選挙で上院の過半数死守を図る。

●一方の金正恩は、非核化の実行を引き延ばし、トランプの大統領選での敗北、若しくは再選後の引退を待つつもりである。

●トランプは中間選挙後、非核化へ向けて北朝鮮への圧力を倍加させ、非核化の実現を目指し、それが叶わないと見れば「北爆」の実施を行い、何れかの「成果」を用い2020年の大統領選を勝ち抜くつもりである。

上記のように予測を変更した理由としては、金正恩が2度の訪中をして習近平の懐に飛び込んだ事が筆者にとっては想定外だったためである。

金正恩は、激しく批判し合っていた習近平に今更頭を下げられなく、頼りとするならプーチンであり、ロシア等への亡命(なお、この場合は非核化が有り得る)以外にないと考えていたが、中朝の利害が一致して当面は結束を深めるようだ。これで、中国の協力ないし容認を得られなくなり、トランプは「北爆」をやり難くなった。

◆問われる日本の主体性◆
これにより、束の間日本へのミサイル飛来等の危険は遠ざかったが、引き続き防空体制他の危機対応の備えを充実させて行く必要があるのは言うまでもない。

また、FNNは10日付で、下記のようなニュースを伝えた。

「4月27日の南北首脳会談で、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長に日本人の拉致問題を提起した際、金委員長が「なぜ、日本は直接言ってこないのか」と語っていたことが、FNNの取材で明らかになった。

政府関係者によると、南北会談で文大統領から、日本が拉致問題の解決を求めていることを伝えると、金委員長は『韓国やアメリカなど、周りばかりが言ってきているが、なぜ日本は、直接言ってこないのか』と語ったという。」

米朝首脳会談後に日朝首脳会談を構える事も含め、日本が改めて厳しく拉致問題の解決を要求する必要があるのは言うまでもないが、金正恩の発言からは南北統一を見据え文在寅と組んで、日本から金を取ろうとしているのが透けて見える。

日韓基本条約に於ける準賠償は、南北朝鮮をカバーしたものであり、2002年の小泉訪朝時に「平壌宣言」で謳われた実質的な拉致被害者開放の身代金としても本来金を払う必要はないが、国際世論の趨勢を鑑みれば、現実的にはある程度出さざるを得ないだろう。その相場は、無償分のみでは上限5千億円程度、それも核放棄、拉致解決、中距離ミサイル廃棄の実行後が必須条件だ。

残念ながら、反日国家と反日国家が組めば、反日は2倍でなく2乗となって、日本へ向かって来るだろう。これ等に対抗するためには、物事の理非曲直を明らかにし、戦略眼を備え粘り強く主張を通すタフネゴシエーターであると共に、国際世論を巻き込む事が出来るリーダーが不可欠だ。

しかし何れにせよ、今後の世界情勢の大局は、米中の覇権を掛けた冷戦が本戦であり、朝鮮半島処理はその前座に過ぎない。「北爆」が在ろうが無かろうが、非核化後のトランプのオプションの中には、コストと手間の掛かる朝鮮半島を捨てる選択肢が入っており、その場合日米同盟の極東の対中前線は対馬となる。

日本は尚一層、日米同盟の紐帯を強化すると同時に、防衛外交、経済、そして何より精神の主体性を高めて行く必要があるだろう。
続きを読む

森友「忖度の泥沼」 安倍首相、身を捨てて真摯に謝罪を

◆森友問題の構図◆

学校法人森友学園への国有地売却に絡む決裁文書の改竄問題で、支持率が急落し安倍政権が危機の中にある。一連の経緯に多少の私見を交えて示すと、森友問題の構図は概ね下記のような事ではないかと思われる。

●特異なキャラとバイタリティーを持つ森友学園理事長の籠池氏夫妻が、小学校新設のために補助金の不正受給に加えて、2015年9月、安倍首相の昭恵夫人を名誉校長に据えて、開校への便宜等に利用しようとした。

●2015年11月、昭恵氏は、森友学園の教育方針に感涙し、経産省から内閣府へ出向し自身の秘書となっていた谷査恵子氏は、籠池氏からの要請を受け定期借地契約等に関し財務省へ問い合わせ行い、昭恵氏へ報告した。

●2016年6月、これらを受け、消費税増税が悲願である財務省全体の空気の中で、理財局・近畿財務局ラインは人事への影響の考慮もあり、安倍官邸に忖度して土地の売却価格を下げて「貸し」を作り、後々の証文のために決裁文書に昭恵氏の名前もわざわざ書込んだ。

●2017年2月、安価な払い下げが世間に知られるところとなり、安倍首相は「私や妻が関係していたという事になれば、首相も国会議員も辞める」と国会で答弁。同3月、佐川理財局長は、安倍官邸に忖度し、「売買契約に関する交渉記録を廃棄した」などと答弁。決裁文書は、昭恵氏の名前等を削除した改竄版を提出。これらにより、官邸に再び「貸し」を作った。

●2017年7月、国の補助金詐欺で、籠池夫妻逮捕。2018年3月、決裁文書の改竄について朝日新聞がスクープ。近畿財務局の担当職員が自殺。佐川局長辞任。

以上のように筆者は、森友問題は、籠池氏夫婦の特異性、昭恵氏の軽率さ、財務省の官邸への忖度等が重なった結果起きた事だと考えている。

財務省はどこまで組織ぐるみだったのか? 官邸はどう絡んでいたのか? を含め、全容は今後、司法と国会で解明されて行かなければならないが、一番の焦点は、安倍首相がこれらの経緯をどこまで知っていたかだ。筆者は、野党と左派系マスコミの「安倍首謀説」に対し、少なくとも土地売却契約の経緯等については、安倍首相はほとんど知らなかったのではないかと考えている。

でなければ、「私や妻がもし関わっていたのであれば、総理も国会議員も辞める」との感情を露わにした強気の答弁は、なかなか出てこないのではないか。昭恵氏のブッ飛び度と天然(ボケ)ぶりはよく知られているが、安倍首相自身も相当な坊ちゃん育ちで世間知らずであり、組織の利害が絡まれば権力者に対して忖度が働くのが当たり前という、普通の感覚が欠落しているようにも見える。

◆政権の命運◆

今後の展開であるが、財務省内外で誰が誰に指示していたのかは、証拠と共に明確にならなければならない。しかし忖度については、もともと誰が誰に行っていたのかは証言以外明確な証拠が残らない性質のものだ。また同じ忖度でも、全く勝手に忖度するものから、相手の目をじっと見て「分かってるよね」と忖度させるものまでグラディエーションがあり、忖度の泥沼は根深く、水を全部抜いたとしても隅々までの解明は難しいのではないかと思われる。

政治は、相対的なものであり、身も蓋もない事を言えば、人でも政策でもどちらがよりマシかを選ぶ行為である。現下について具体的に言えば、安倍氏に代わって石破氏や枝野氏や小泉進次郎氏で国が持つかと言う事が問われる。

特に北朝鮮危機が迫り、その後には覇権を掛けた米中冷戦が控える中、リーダーを誰にするかが国の存亡を決めると言っても決して大げさではないだろう。

外交では中韓北に近すぎ、地方創生相のときは政策の具体性に欠けて菅官房長官の「ふるさと納税制度」に喰われる等、内政、経済に弱い石破氏。米国頼りの防衛で十分と考え、経済成長は不要と唱える枝野氏。隠れ増税に過ぎないマンガみたいな「こども保険」を提唱し、政策立案能力・政策センスと天才的なコミュニケーション能力とのギャップが目立つ進次郎氏。

これに対し安倍首相は、オバマ大統領に強制され韓国と結んだ安易な慰安婦同意等はあれど、米、露、インド、東南アジア等と結び中国を牽制し、米朝首脳会談を控える段階になった外交、消費税の8%増税の際には景気を冷やし失敗したものの、基本的に景気への配慮を忘れない経済への姿勢、中途半端さは残るものの同一賃金同一労働等、労働流動化を見据えた雇用政策等、不十分な点や失敗も決して少なくないものの、前述のお坊ちゃん体質を差し引いても、何度も名前を出して申し訳ないが、石破氏や枝野氏や進次郎氏に比してベターであると筆者は考える。

安倍首相は、もし自身が土地の売買契約や文書改竄などについて指示していたり、知っていたりすれば、即刻辞任し国会議員も辞職すべきなのは言うまでもない。しかしそうでなければ、何れか適切な時点で国民に対し、これまでの頑なな姿勢を改め、昭恵氏の軽率な行動、周囲に忖度を発生させた自身の脇の甘さ、土地取引が歪められた事、文書改竄の発生、人命が失われた事等について真摯に反省を表明し、同時に再発防止策として土地取引の適正化、内閣人事局制度の改善、悪しき忖度を防ぐ仕組みの構築、公文書管理の徹底見直し、財務省の解体的組織再編等の方向を打ち出すべきだろう。

これらにより、果たして安倍政権が現下の危機を乗り越えられるかは分からない。しかし、このまま行けば、ジリ貧となり早晩倒れる可能性も高い。首相には身を捨てて死中に活を見出す事を期したい。
Profile

佐藤鴻全

佐藤総研代表、会社員、文筆家、196X年生、東京近郊在住
座右の銘: 四海大義
Tweet to @Kozen_Sato
!function(d,s,id){var js,fjs=d.getElementsByTagName(s)[0];if(!d.getElementById(id)){js=d.createElement(s);js.id=id;js.src="//platform.twitter.com/widgets.js";fjs.parentNode.insertBefore(js,fjs);}}(document,"script","twitter-wjs");

最新記事
アクセスカウンター
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

Profile

佐藤鴻全

QRコード
QRコード
Recent Comments
  • ライブドアブログ