佐藤総研 (独立系シンクタンク)

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ロシアゲートは、大事の前の小事  −ロシア抜きに、IS、北朝鮮、中国にどう向き合うのか?−

●「ロシアゲート」問題の背景として、米指導層の中に「ロシアは中国よりも悪であり、害毒である」という大前提がある。しかし東西冷戦はとうの昔に終わっており、現実を見る必要がある。
●ISの台頭、北朝鮮危機、中国の覇権拡大等の国際情勢の大問題は、事実上の「米露同盟」を以て当たる以外に解決できない。
●ロシアと結ばない事は、即ち中国と結ぶ事を意味する。その結果米国は、将来中国と激突するか、飲み込まれるのを甘受するかの選択を迫られる事になるだろう。

◆「ロシアゲート」◆
トランプ大統領は、「ロシアゲート」で窮地に追い込まれ、弾劾の可能性も出てきた。
ロシアゲートの発端の一つである、フリン元大統領補佐官の就任前のロシア政府関係者との外交交渉が問題とされたのは、端的に言ってそれが法令で禁じられていたからである。
しかしながら、例えば北朝鮮問題で5月9日、北朝鮮外務省で対米交渉や核問題を担当する崔善姫(チェソンヒ)米州局長とノルウェーで非公式接触を開始したのは、米国の民間代表団であるとされているが、これは特に問題とされておらず、このような例は米国外交史で枚挙に暇がない。
即ちこれは、より大きな国益のためには、形式的な法令違反は問題とされるべきではないという原則が働いたからである。

もう一つの大きな柱は、ロシアが、昨年の米大統領選にトランプ陣営と共謀して干渉したとされる問題である。
これについては、ロシアが干渉したのか、したとすれば具体的にどの様なものか、またトランプ陣営が共謀していたのか、していたとすればどのポジションの人物が、どの様な行動をしたのかが、現時点で具体的な証拠と共に示されていない。
この問題は、上記のフリン氏の件に比べて遥かに大きいものの、筆者はこれについてもその違法性の大小と外交上の得失が比較衡量されて判断されるべきと考える。

そもそも、「ロシアゲート」問題の背景として、米指導層の中に「ロシアは中国よりも悪であり、害毒である」という大前提がある。
しかし東西冷戦は、とうの昔に終わっており、米マスコミ、上下院議員、知識層、ビジネス界のリーダーは現実を見る必要がある。

◆中国を取るのか◆
ISの台頭、北朝鮮危機、中国の覇権拡大等の国際情勢の大問題は、事実上の「米露同盟」を以て当たる以外に解決できない。

ISの撲滅の完遂は、ロシア軍抜きに出来るのか?
中東問題の解決は、イスラム・スンニー派、シーア派諸国、イスラエルとの複雑なパズルをロシアを外して解く事が可能なのか?
北朝鮮の核開発、大陸間弾道ミサイルの問題の解決は、平和裏に収めるにせよ、戦火を交えるにせよ、ロシアの関与抜きに行えるのか?

今や世界の工場を超えて世界のマーケットとなった中国とビジネスで繋がることは、確かに産業面で遅れているロシアと結ぶより、米国の利益となる。
しかし、それは主にグローバル企業の、また現時点での利益である。
中国を不公正な通商でグローバル企業と共に肥え太らせて、米国民の経済的利益と安全保障が守られるのか?

身も蓋もないが、「良い国と結び、悪い国を避ける」と言うのが外交ではない。
「悪い国と、より悪い国があって、そのましな方の悪い国と結ぶ」といのが外交の要諦だ。
形式的ながら、民主主義が取り入れられているロシアと、形式的にも民主主義が取り入れられていない中国のどちらがましなのか?

残念ながら、この地球はヘブンではないので、皆等しく仲良くというのは成り立たない。
ロシアと結ばない事は、即ち中国と結ぶ事を意味するのが国際情勢の厳しい現実である。
その結果米国は、将来何れかの時点で、太平洋上で中国と激突するか、飲み込まれるかを甘受するかの選択を迫られる事になるだろう。
No.1の軍事大国が、No.3の大国と組む事無しに、勃興するNo.2の大国の覇権は押されられないというのが、概ね古今東西の歴史が示す所だ。

更に言えば、国益だけの問題ではない。
そもそも正義とは何か?
平時には、既存の秩序を守る事が正義となる。
一方、激動の時代には、既存の秩序を破壊し新しい秩序が台頭した場合、その新しい秩序が齎す多くの人の幸福の総和から、変化に伴う破壊と流血の不幸を差し引いたものが、既存の秩序のそれを上回った場合に正義とされるべきだろう。

現覇権国である米国は、少なくとも今後数十年単位の世界秩序の具体像を描く責任がある。
筆者は、米指導層が深い洞察の下、歴史的大局観を持ってロシアゲートに対処することを望む。

北朝鮮危機3つのシナリオと日本の備え −北爆、核容認、ロシア亡命−

●トランプvs金正恩の対決の行方は、共に特に国内に弱みを見せると政権崩壊を招きかねない事情を抱えているため、軍事衝突に至る可能性が高い。
●米国に届く長距離弾道ミサイル開発を破棄する事を条件に、トランプが一転、北朝鮮の限定的核保有を容認する可能性も、排除出来ない。
●金正恩がロシアへ亡命するシナリオも考えられるが、プーチンのロシア側に直接的メリットは乏しいため、国際社会の対露制裁解除等の対価を要求してくる事も想定される。

◆北朝鮮征伐◆
4月6日の米中会談のデザートの最中にトランプはシリアへのミサイル攻撃を知らせ、習近平と世界を驚かせた。
トランプはシリア政府の化学兵器使用に対する報復と言っているが、化学兵器をシリア政府が使った客観的証拠は示されておらず、反体制派の自作自演や、反体制派の化学兵器貯蔵庫が攻撃を受けた可能性が残る。
それにも関わらずトランプが攻撃に踏み切ったのには、死者10名以下でロシアへ事前通告済での基地攻撃なら、たとえ後で化学兵器使用の反体制側のやらせ等が判明しても、人道に関する緊急避難的措置だったと言い訳できる範囲だという計算がある。
その目的は、北朝鮮への牽制と、それへ圧力を掛けるように中国への尻叩きだというのが、大方の見方だ。
そして今、カールビンソン空母打撃群が日本海で日本と、次いで韓国と合同軍事演習を行い、米国、北朝鮮の対決ムードが高まっている。

トランプにとって、北朝鮮が米本土に届く大陸間弾道弾を完成させる事は受け入れられない。
一方、核を放棄したリビアのカダフィーが消された事を見ている金正恩が、核開発を放棄する事はほぼ有り得ない。

筆者は、トランプvs金正恩の対決は、共に特に国内に弱みを見せると政権崩壊を招きかねない事情を抱えているため、軍事衝突に至る可能性が高いと考える。

米国による北朝鮮攻撃は、斬首作戦、ミサイル発射台破壊、広範な基地等破壊の何れかに関わらず、難民が鴨緑江を渡ってくるのを防ぐため、トランプ・習近平会談とその後の電話会談と調整によって中国の地上軍投入とセットで考えられているとの予測が有力だ。
また、駐留米軍が中国と国境を接する事は習近平としては許し難く、韓国が北朝鮮と統一することも韓国側の経済がもたないため、軍事作戦後の戦後処理は体制変更した上での中国による属国化が想定されているのではないか。
トランプとしても、中国が完全コントロールして核とミサイルが廃棄されるなら許容できる範囲だ。

◆限定的核容認とロシア亡命◆
一方、米国に届く長距離弾道ミサイル開発に限って破棄する事を条件に、トランプが一転、金正恩の限定的核保有を容認する可能性も、高くはないが排除できない。

北朝鮮攻撃に対する反撃によって韓国、日本、在日米軍基地に甚大な被害が及ぶ事が今後米国内でも大きく報道されるようになると、世界経済への影響懸念も合わせ、厭戦ムードが強くなり、米国世論はトランプに妥協を求めるかも知れない。
あるいは逆に、事態の膠着状態に米国民が焦れ、開戦ムードが高まるかも知れない。
北の今後の挑発の度合い、トランプの国内基盤の揺らぎ具合等とも絡みどちらも考えられる。

日本に目を転じれば、既に前大阪市長の橋下徹が、日本への被害の可能性を考えたら北の核保有を国際社会が容認し、核保有国家として位置付ける事が国益に適い、それをトランプと国際社会へ働き掛けるべしと主張し始めている。
橋下は、日本維新の会の実質的オーナーであり、その日本維新の会は野党ながら安倍政権の盟友である事を考えれば、この動きは軽視できない。
加えて、仮に5月9日に投開票を迎える韓国大統領選で文在寅(ムン・ ジェイン)が勝利すれば、この流れは国際的に加速するだろう。

更には、金正恩が対米開戦を避けロシアへ亡命するシナリオも考えられる。
トランプが引かなかった場合に、金正恩が開戦して金王朝が滅亡するのか亡命するのか究極の選択に迫られた時、亡命を選択する可能性は残る。
その場合の亡命先は中国だろうとの予測が有力だが、筆者は、金正恩としてみれば、2013年末にパイプ役の張成沢(チャン・ソンテク)を処刑する等で関係が悪化した習近平に今更頭を下げるのはあり得ないのではないかと考える。

また金正恩はスイスに留学経験があるとは言え、北朝鮮とは繋がりが希薄で人権問題に敏感な欧州諸国も国内の反発を恐れ亡命受け入れには二の足を踏むであろうし、正恩自身もリビアのカダフィー殺害を黙認したとも言われる欧州各国への亡命はリスクを伴うと考えるだろう。
ましてや、かつてのフィリピンのマルコス大統領の例に倣い、トランプの懐に飛び込み米国に亡命してハワイ等に居住するのは、正恩としてはトランプ政権後にどうされるか分からず考え難い。

その場合、北朝鮮の生みの親で中国の制裁以降、万景峰号による定期航路を開く等関係性を高めているロシアが亡命先として浮上してくると思われる。

4月27日の日露首脳会談の際に、北朝鮮への影響力行使を要請されたプーチンは、6カ国協議の重要性を強調して、それをかわした。
これは、「ロシアゲート」で政権基盤の揺らぐトランプとのバイの取引は避け、6カ国協議なり国連なりの国際的枠組みからの正式な要請なら動く用意はあるという事だ。
仮に金正恩の亡命を受け入れた場合、プーチンには朝鮮半島への発言権を確保し中国を牽制するインセンティブは有るものの、直接的メリットは乏しいため、国際社会に対露制裁解除を決める事等の対価を要求してくる事も想定される。

◆日本の備え◆
筆者は、トランプvs金正恩の対決の行方は、以上述べた主に3つに絞られると考える。
クーデターによる金正恩暗殺や核の完全放棄と改革開放も考えられるが、前者は確立されたと見られる密告制度と粛清体制のため、後者は叔父の張成沢や異母兄の金正男を処刑、暗殺し手を血で染めた金正恩を儒教文化が根強く残る北朝鮮国民が許す事は考え難く、可能性に乏しいと思われる。

現時点で考えれば、それぞれの蓋然性は、(1)トランプによる北朝鮮征伐60%、(2)大陸間弾道ミサイル開発破棄と核保有容認30%、(3)ロシア亡命10%以下と言ったところではないか。
(1)のトランプによる北朝鮮征伐は、前述したように日本が返り血を浴びるリスクが高い。
また(2)の大陸間弾道ミサイル開発破棄と核保有容認について、前述の橋下徹は米露中が核を持っている現状下で北朝鮮の核保有が加わったとして然したる違いはないと主張している。
しかし、その後の北朝鮮が米国の先兵として中国に対する刃(やいば)ともなり得るかも知れぬが、逆に中国のアジア侵略の走狗となるかも知れぬ等、余りにも不確定要素が大きいため、筆者は橋下の主張は的を射ていないと考える。

何れにせよ、トランプの言うようにあらゆる選択肢がテーブルに乗っている以上、日本は最低限、ミサイルに対する早急な防空訓練の実施、防空体制の更なる充実、米国の核ボタンのシェア(所謂レンタル核)への道筋作りが不可欠である。

また、前述の中で最も日本の国益に適うのは、最も可能性は低いが(3)のロシア亡命である。
日本は、直接間接にあらゆる場面でこの実現のために国際社会で労を取るべきだろう。
筆者は、プーチンがトランプと金正恩の間を仲介する用意があるなら、日本はその仲介の仲介、ロシアと国際社会の橋渡し役を買って出るべき時と考える。
(敬称略)

トランプとAIがもたらす未来 −常設雇用税制と包括通商バランス−

●トランプが図る製造業の国内回帰策は、副作用としてロボット化とAI化を加速させ究極的には消費者の消滅をもたらす。
●これを防ぐためトランプは何れかの時点で、人を雇い賃金を払う事を奨励する「常設雇用税制」のようなものを導入せざるを得ない。
●こうして折角維持した消費者を他国製品に奪われないためにも、トランプは関税、国境税調整、為替制度等による「公正な貿易協定」をより一層打ち出し、激しい通商摩擦を引き起こす。
その争いの末、結果として「包括通商バランス」として、各国との折り合いをつけた何らかの新しい原則が形作られ、「常設雇用税制」と共に新たな世界標準となるだろう。

◆雇用!雇用!雇用!◆
Twitterでゼネラルモーターズを罵倒し、会議の場でトヨタに米国に新工場を作る事を強引に首肯させ、トランプは公約通り米国に雇用を呼び戻すことに突き進んでいる。

これによって雇用は戻り、選挙戦で吠えていた「BUY AMERICAN、HIRE AMERICAN」は、一定程度実現するだろう。
問題は、その規模と持続性である。
米国に新工場を建てさせられた各社は、株主の手前にも当然に利益を上げねばならなく、海外生産に比べ高コスト化した製造原価を下げるため、やがてトランプの目を盗み工場ではロボット化・AI化が進み、国内に戻った雇用はそれらに置き換えられて行く。

雇用の減少は、究極的には消費者の消滅を意味し、これを防ぐためトランプは何れかの時点で、人を雇い賃金を払う事を奨励する「常設雇用税制」のようなものを導入せざるを得ない。
それは、例えば次の式で出した控除額を、所得控除もしくは税額控除として連邦法人所得税を算定する事等が考えられる。

控除額 = 雇用人数の2乗 × 年間支払い給与額 × α

しかしこの税制によっても、従来型の製造業のロボット化、AI化はスローダウンするも不可逆的に進み、雇用はそれ以外の恐らくはサービス業を中心にした今後生み出されて行くであろう新機軸のビジネスにシフトして行くだろう。

なお、例えば日本では、雇用関係助成金や雇用促進税制、所得拡大促進税制等によって雇用と所得について一定の政策手当がなされている。
しかし、これらは規模が小さい上に、基本的に雇用と所得の増加に着目した恩典であり、時限的措置であるものも多い。
加えて、地方税である事業税には報酬給与額が増えると基本的に税額が一部上がり雇用に対する実質上のペナルティとなっている外形標準課税が導入されており、総務省等はこれを中小法人にまで広げようとしている。

大規模かつ、雇用の増加だけでなく維持に、かつ継続的に恩典を与える「常設雇用税制」は、各国にとっても必要なものになる。

◆「公正な」貿易協定◆
しかしこうして維持、増加した雇用による消費者、消費市場は、またしても海外製品に狙われる事になる。
折角維持した消費者を他国製品に奪われないためにも、トランプは関税、国境税調整、為替制度等による「公正な貿易協定」をより一層打ち出す。
しかし、この「公正な」はトランプの米国にとっての公正に過ぎない。
また、仮に相手国から見ても「公正な」協定での通商が行われるようになったとしたら、そこで米国が貿易収支、経常収支が黒字になるとは限らない。
否、むしろ米国の高賃金を維持するのが前提であるなら、赤字となると考える方が自然だ。

そのためトランプは、結局は通商に於いて実質的に「結果の平等」を求める事になるだろう。

折角維持した消費者を他国製品に奪われないためにも、トランプは関税、国境税調整、為替制度等による「公正な貿易協定」をより一層打ち出し、各国からの激しい反発による通商摩擦を引き起こす。

これまで、賃金と通貨の低い国には製造コスト安によって輸出ドライブが働き、やがて豊かになりコスト高になり、高賃金、通貨高の国と長期的に見て収支はバランスするとされてきた。
また、リカードの比較優位論によって、例えば精密機械の得意な国は精密機械を作り、コーヒー豆作りが得意な国はそうする事により、基本的に適材適所で世界経済は回り、各国の相互依存関係により戦争のリスクは減り、各国民はハッピーになるという大前提で、世界は貿易の自由化へ向けて進んできた。

しかしこれでは、低賃金、通貨安国に製造、輸出させるグローバル企業、国際資本が儲け、米国はじめ先進国の国内雇用が失われ、貧富の格差により国内が二極分化するという現象が起きた。
また、通貨操作、不当労働、特許侵害による下駄の効果も相まって、巨大な中国は貿易黒字によって蓄積した富を軍事に費やし覇権国になろうとしている事が顕在化した。

これまでの貿易自由化礼賛では、どうも世界は上手く回らないと言う事を、トランプは「王様は裸だ」とばかりに世界に向かって叫び、新たな通商戦争の口火を切った。
各国から保護主義と言われようが、WTO違反と言われようが突き進もうとしている。

◆ピケティと新たな世界標準◆
トランプが引き起こす激しい通商摩擦の争いの末には、トランプの米国も完全孤立主義を貫く訳に行かない以上、結果として「包括通商バランス」として、各国との折り合いをつけた何らかの新しい原則が形作られるだろう。

「包括通商バランス」原則がどんなものになるのかは分からない。
それは、関税、国境税調整、為替制度等が巧妙に組み合わさったものかも知れないし、全く新しい指標、仕組みによるものになるかも知れない。
「バランス」が2国間のものなのか、多国間のものなのかも読み切れない。
それは、実際にトランプと各国が激しくぶつかり合って後に、初めて形が見えてくるものだろう。

少し前にブームとなったフランスの経済学者のトマ・ピケティは、その著書の中で、貧富の格差是正とタックスヘイブンの回避ために国際累進富裕税の導入を主張した。
これは、基本的に富める者から取り貧しい者に配るという点で、形を変えた共産主義である。
対処療法としては一つのアイデアではあるが、本家の共産主義と同様、世界を縮小均衡に向かわせるものとなる。

これに対し、「常設雇用税制」と「包括通商バランス」の組み合わせは、筆者自身にもその姿は朧月に程にしか見えぬものの、各国民が雇用によりその糧と居場所を持続的に得る事を善とするならば、筆者は新たな世界標準の方向性であると考える。

見えてきたトランプの戦略 「景気を吹かして、先ず中国を通商と包囲網で干し上げる」

●トランプは、先ず中国を通商で干し上げ、その経済力と軍事力を削ぐ。それによる返り血は、公共事業と軍拡、規制緩和、減税等による景気浮揚と「米露同盟」を中心とした包囲網構築で撥ね返す。
●シリアとISは、当面プーチン主導に任せる。しかし中東戦略全体については今のところ示されたヒントは殆どない。
●プアホワイトを中心とした格差問題には、製造業の米国回帰で対処する考えだが、持続的なモデルとなるかは疑問である。また、財政赤字と金利高、ドル高への対処法も不明である。

◆ピーター・ナヴァロ◆
米国大統領選で勝利後、12月4日現在、国務長官を除きトランプ政権の陣容が固まりつつある。
また、選挙期間中に吠えまくった「公約」も、「就任後100日行動計画」、その他発言によって徐々に整理され、トランプの政策が断片的に示された。

それらは未だ取りとめがなく、なかなかストーリー性のある「戦略」と言えるレベルのものが見えないが、筆者は、来年1月の政権発足前ながら、現時点でもいち早くトランプ政権の戦略を読み解くことは、特に今の日本にとって先手を打って対応を立案するために必要不可欠だと考える。

そのため、示された断片を並べながら、そのパズルを解こうとしているが、それには、経済と外交・軍事を結ぶストーリーが必要だ。
そのヒントとなるのは、ピーター・ナヴァロ(カリフォルニア大学アーバイン校教授)だろう。
選挙陣営から引き続き政権移行チームでも政策顧問を務め、経済、貿易、そしてアジア政策を担当している。
そして、ナヴァロは、トランプ陣営の中で唯一、経済と外交・軍事の双方に通暁している。

その主張をまとめると、凡そ下記の通りだ。
●中国製品を購入すれば、その利益は回り回って米本土を脅かす中国軍の兵器に化ける。中国との貿易により米国では5万社以上が倒産した。
●アメリカは中国との通商交渉でタフな(強硬な)姿勢を貫け。中国国内での知的財産権の侵害は厳しく取り締まれ。中国からの輸入品には高い関税を課せ。
●中国の重商主義に真っ向から立ち向かえ。アメリカに職を取り返せ。そして「偉大なアメリカ」を取り戻せ。

また、11月に入って「米中もし戦わば」(原題:Crouching Tiger: What China's Militarism Means for the World)を刊行している。
https://www.amazon.co.jp/dp/4163905677?_encoding=UTF8&isInIframe=0&n=465392&ref_=dp_proddesc_0&s=books&showDetailProductDesc=1#product-description_feature_div

これらのナヴァロの主張と、示された政策の断片、12月2日のトランプと台湾蔡総統と異例の電話会談等を混ぜ合わせてみると、トランプは、先ず中国を通商で干し上げ、その経済力と軍事力を削ぎ、それによる返り血は、公共事業と軍拡、規制緩和、減税等による景気浮揚と「米露同盟」を中心とした包囲網構築で撥ね返すという戦略が浮かび上がる。
そして、同2日のキッシンジャーと習近平の北京会談は、筆者にはこれらによる「パワーシフト」を中国と決定的な対決を避けながら、ジリジリと行いたいというトランプの意思表示に映る。

なお、ナヴァロには、現時点で政権の要職ポストを示されていない。
経歴を見ると、過去3回公職に立候補したことがあり(何れも落選)、決して理論家一本でやっていこうという訳ではなさそうだが、性格や健康問題に難があるのか?
しかし、今後、経済担当補佐官等に指名されるかも知れないが、たとえ要職から外されても、経済と外交・軍事を跨いだシナリオが他にない以上、筆者はトランプ政権の戦略の理論的中核はナヴァロに在ると見る。

◆見えぬ中東政策◆
一方、中東戦略全体については今のところ示されたヒントは殆どない。
ただ、公言しているように、トランプは、シリアとISは、当面プーチン主導に任せるだろう。

トランプはエルサレムをイスラエルの首都と認めるとネタニヤフ首相に約束すると共に、ユダヤ教正統派有力者家系の娘婿のジャレッド・クシュナーを選挙戦および政権移行チームで重用する等、親イスラエルの姿勢を明確に見せる一方、2015年にオバマが纏めたイランとの核合意を破棄することも明言している。

トランプが盟友とするロシアのプーチンは、イスラエルと接近する一方、シリアのアサド政権を支援すると共に空軍基地を使用する等、同じシーア派のイランとも緊密でありその点ではトランプと真逆だ。

トランプは現在、不動産ビジネスを大規模に展開した経験もない中東に対する知識、関心は殆どないと思われるが、イラク戦争については、米国にとって全く無駄で必要のなかった戦争としている。
米国をネオコンと共にイラク戦争に引きずり込んだとも言えるイスラエルに対する親密な姿勢は、大統領選でユダヤ人社会の支援を受けるための方便だったのかも知れないし、逆により親イスラエルを深めて行くのかも不明だ。
国内でのシェールガス等のエネルギー開発に対する規制緩和で、中東の石油に依存しない体質を作り上げ、中東丸ごとプーチンに任せるつもりがあるのかも知れない。
但し、中国について一段落が着いたら、中東問題について学習して解決に乗り出す可能性もゼロではない。

◆「米国の形」と日本の対応◆
また、トランプは、プアホワイトを中心とした格差問題には、製造業の米国回帰、公共事業、エネルギー開発に対する規制緩和、移民の制限、減税による景気浮揚等で対処する考えのようである。

だが、元より公共事業やエネルギー開発の投資段階の雇用は、一時的なものである。
また、製造業の国内回帰も持続的なモデルとして定着するかは疑問である。

10年間で6兆ドルの大減税、同じく1兆ドルの公共事業、軍拡の計画は、株式市場の高騰をもたらしているが、経済成長による税収増がそれに伴う財政赤字と金利高、ドル高の影響をペイ出来るかについて、ノーベル賞受賞者を含めた主流経済学者は悲観的だ。
トランプは、1期4年で大統領を辞めるなら逃げ切れるだろうが、2期8年を続けるなら、その帳尻を合わせなければならない。

大統領選での暴言にあった米国債のデフォルトや、あるいはプラザ合意のような形のドル切り下げは、米経済次第であり得るシナリオだろう。

話を戻して、プアホワイトを中心とした格差問題は、今後AI(人工知能)、自動運転、ロボット化の進展により、更に深刻になると思われる。
日本こそ他人事ではないが、米国を筆頭とした先進国は、教育、既得権の整理、社会保障、少子高齢化問題、労働流動性を含めた持続可能な社会の形を試行錯誤で構築する必要がある。
さもなければ、ピケティーのような形を変えた共産主義が世界を席巻することとなる。

日本について言えば、安倍政権はトランプの当選可能性を殆ど無視する失態の後、一番乗りで就任前のトランプと会談するリカバリーを図った。

トランプにより世界は激動する。
1月20日の就任式など悠長に待っている暇などない。
今ある材料でトランプの戦略のパズルを解いて、先手を打って対応策を練る必要がある。
そして、新しい情報により逐次そのモデルを修正して行くことが求められる。

当面トランプは、公式な形、非公式な形を問わず、「米露同盟」を模索するだろう。
それは、共和党を含めた米国議会から反対され実現に困難が伴う。
トランプの大統領選当選により、12月15、16日の日露首脳会談で北方領土問題の進展可能性は殆ど無くなったので、安倍首相は会談を「米露同盟」を緩衝材として仲介するための瀬踏みの場とすればよい。
それが、行く行くは「日米露三国同盟」となるのか「日米露印四国同盟」に結実するかは分からないが、その模索が当面の日本の戦略となるだろう。

Requests to President Trump: Rebuild the United States and preside the new world order

- Based on the "Japan, the US and Russia Trilateral Alliance", pull out fangs of China and the Islamic extremists, and become the leader of the new world order based on the great cause.

- After the withdrawal of the current TPP treaty, detoxify the arbitrariness of international capital, and revise the treaty to true WinWin based one for people of the US, Japan and other nations.

- Establish a success model of the social structure to solve the disparity problem, so that each citizen layer will be full of vitality.

I think these are just "MAKE AMERICA GREAT AGAIN".

Nov.19th 2016
Kozen Sato from Japan,
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