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トランプは「王様は裸だ!」と叫ぶ少年 −大統領選とその後の世界秩序−

●暴言により、トランプへの支持率が失速している。普通は大人の知恵により自制しそうなものだが、攻撃スタイルで不動産王となった成功体験がそれを阻んでいる。
●今後、本人の一部発言に対する反省、大規模な米国内テロの発生、メール問題の再燃・展開等によるヒラリーの失点および健康問題、暴言の中にあるリアリズムへの理解等の複合作用により、挽回する可能性は残る。
●大方の予想に反してトランプが大統領になれば、各分野で直感的に「正しい」と思う方向に進む。外交ではプーチンのロシアとの事実上の同盟を標榜する。日本はこの「米露同盟」に一枚乗るのが、あるべき外交基本戦略となるだろう。

◆トランプ失速◆
比較的お行儀よくこなした共和党大会での大統領候補指名後、ご祝儀相場もあったが、トランプへの支持率がヒラリーの支持率を上回った。
そのまま、メール問題の再燃等のヒラリーの失点を待てば、選挙参謀だったマナフォートの言う通り、本選挙勝利はそれ程難しいものではないと思われたが、トランプは民主党大会で戦死した米軍将校のパキスタン移民である両親の演説に過剰反応し一気に支持率を落とした。

戦死者の家族への攻撃は、古今東西のタブーで、登壇させた民主党側にどんな意図や目的が在ろうとも、受け止めて見せるのがお約束事であり大人の知恵だが、自身の徴兵回避問題を蒸し返された部分等に対しトランプは自制が効かなかったようだ。
保守系「国策指導新聞」であるウォールストリート・ジャーナル紙も、一旦トランプ支持の論調に変わりかけていたが、これで踵を返した。

◆裸のトランプ◆
反対派のアーティスト集団によるトランプ裸像が各都市に建てられているが、   トランプは、いわば「王様は裸だ!」と叫ぶ少年の側である。
自身やそのビジネスへの非難を含め、不法移民、テロ対策、イラク戦争、一連の中東民主化革命での米国の不首尾、誤解を含めてメキシコ、日本、中国との貿易不均衡等、主観的に「おかしい」と思った事に対して、攻撃を緩めない。
これまで、直観と攻撃スタイルで不動産王となったビジネスでの成功体験が、この手法への確信へと変えている。

映画監督のマイケル・ムーアが、「トランプは本当は大統領になんかなりたくなく、よりネームバリューを上げ、ビジネスに使おうと考えている。」と唱えている。
トランプの本選挙勝利への合理性を欠く言動を考えると、確かにさもありなんという気もするが、恐らくトランプが16日にウィスコンシン州のテレビ局に対し下記のように語ったのが本心だろう。
「誰も彼もが『方向転換しなければならない』というが、私はそうしたくない。自分を変えたくない。ありのままでいるべきだ。もし方向転換したら不正直になる」。
なお、トランプは本選挙敗戦後に備え、過激保守系メディアの立ち上げも準備しているようだ。

◆本選挙の行方と世界秩序◆
さて本選挙の行方はどうなるか。
筆者も、現状(8月27日時点)では四分六でヒラリーが勝つと見る。
しかし、大方の予想のようにほぼヒラリーに決定とはせず、トランプに四分の可能性ありとする立場だ。
今後、本人の一部発言に対する反省、大規模な米国内テロの発生、メール問題の再燃・展開等によるヒラリーの失点および健康問題、暴言の中にあるリアリズムへの理解等の複合作用により、挽回する可能性は残る。

仮にトランプが大統領になれば、各分野で直感的に「正しい」と思う方向に進むだろう。
日本に関していえば、金融、為替、貿易政策により、大幅な円高、関税引き上げにより輸出産業が大打撃を受ける可能性がある。
また、費用もしくは戦力で、より防衛負担を求めて来る。

亀井静香と石原慎太郎が、本選挙前にトランプに会いに行くと外国人記者クラブで会見していたが、あの話はどうなったのか?その実現性は不明だが、その意気やよし。
トランプ勝利の場合に備え、政府、各党、経済界、学会も事前に陣営にアクセスして日本の立場の説明、働き掛けをすべきである。

外交においては、順当にヒラリーが当選すれば、オバマ外交の枠組みのままである。その上で、自身の性格や、中国や軍産複合体との柵から更に事態を悪化させる。
中東に於いては、尻も拭けないのに余計な介入を続けて行く。
また放っておけば、中露は「不信同盟」を深めて行く、そしてそれを後押しに今までは中国軍人の戯言だった太平洋の米中2分割論が現実に近付いて行く。

トランプの場合はどうか。
このところの世界情勢では、トルコ、イランとの連携強化等、プーチンの存在感が突出している。
トランプは、現状の言動の延長線で、プーチンのロシアとの事実上の同盟を標榜するだろう。
これが、中露間に楔を打ち込み、米国が単独スーパーパワーから「相対的スーパーパワー」へシフトして衰退を遅らせると共に、中国とイスラムから牙を抜き新たな世界秩序を形成する唯一の道である。
普通に考えればそうなるが、トランプ以外の多くの米国知識層はそれに気付いていない。
もしトランプが実質上の「米露同盟」を目指しても、プーチンvs米議会の図式は続く。

日本としては、ヒラリーが勝った場合は、米国の介入を受け流し、中露の仲を裂くべく先回りしてプーチンのロシアに接近し、そしてトランプが勝った場合にはこの「米露同盟」に一枚乗ると共に後押しするのが、あるべき外交基本戦略となるだろう。

英国EU離脱 −英vs独vsヘッジファンド三巴戦とEUの帰趨−

●英国離脱可決により、主に関税ゼロ等を維持したい英国と、離脱国続出を防ぐため、引き換えに移民受け入れ継続を飲ませたいEUとの駆け引きが始まった。
●ジョージ・ソロスを筆頭としたヘッジファンドは、EUの歪みをついてユーロ、南欧国債、フランクフルト市場等の売り浴びせを仕掛ける。その時期は、恐らく9月新英国首相選出の前後だろう。
●EUの目指す統合国家創出は、理論的にはともかく、実質的にはドイツ第四帝国の出現となる。第四帝国内の半植民地、二等国民となる事に多くの国は耐えられない。東欧諸国等とプライドを捨ててドイツにタカりたい国だけが残る。
●統合国家の夢を捨て、自由貿易等のみに絞って仕切り直す事が事態安定化と「EU」存続の道であり、そこへ至るシナリオが必要となる。

◆離脱交渉とヘッジファンド◆
先月23日に行われた国民投票での英国EU離脱可決を受け、世界中に余波が続いている。
キャメロン後任の次期英首相選出は9月に行われ、英・EU間の離脱交渉は最速で9月以降、新首相次第だが恐らく来年以降に行われる模様だ。

前哨戦としてアナウンスレベルでは、主に関税ゼロを維持したい英国と、離脱国続出を防ぐため、引き換えに移民受け入れ継続を飲ませたいEUとの駆け引きが始まった。

ユーロに参加していない英国であっても、移民自由化は英国民の雇用維持、テロ対策の等の面で耐えがたいものだった。
加えて、ユーロに参加している加盟国は、更に通貨政策、財政政策で縛られて不満が鬱積しており、英国に続いて離脱の動きが出て来きている。

ジョージ・ソロスを筆頭としたヘッジファンドは、そうしたEUの歪みをついてユーロ、南欧国債、フランクフルト市場等の売り浴びせを仕掛ける可能性が高い。
その時期は、恐らく9月新英国首相選出の前後だろう。
その前触れとして、現に投票日翌日(6月24日)、ジョージ・ソロスが、所有する700万のドイツ銀行株の空売りに入っていたことが、複数のメディアの報道から明らかになった。

こうした中で英国としては、関税ゼロの維持と移民受け入れ拒否を勝ち取る一方、域内金融共通免許を停止準備期間あり等の条件付きで諦める辺りが及第点だろう。
金融共通免許を失っても、ヘッジファンドの「歪み」攻撃でEUが地盤沈下する事も考慮に入れれば、金融の中枢機能をシティーからフランクフルトへ奪われる可能性は低くなる。

この様に、英国とEU(実質ドイツ)との離脱交渉は、心理戦を含めたヘッジファンドを絡めた三巴戦の様相の中で、多くの変数を伴いながら混沌を経て方向付けられると思われる。

◆EU国家統合の正体◆
EUの目指す統合国家創出は、理論的にはともかく、実質的にはドイツ第四帝国の出現となる。
ユーロの共通通貨政策によるユーロ安により、ドイツは輸出ドライブのもたらす経済的繁栄を謳歌している。
半面、多くの国はユーロ維持のために緊縮財政を強いられて、実際に失業率増加等の実害を被っており、第四帝国内の半植民地、二等国民となる事に耐えられない。

EUには、低賃金工業により利益に預かっている東欧諸国等と、ギリシャのようにプライドを捨ててドイツにタカりたい国だけが残る。
そのギリシャ等も、数年前の危機でドイツを騙してやりくりしていた事が明らかになった。

移民の自由化と通貨統合は、国家統合への必須条件であるのだろう。

筆者は、これに対し統合国家の夢を捨て、自由貿易等のみに絞って仕切り直す事が事態安定化と「EU」存続の道であると考える。
あるいは、ドイツと東欧諸国等のみで統合国家を作り、そのコアを関税ゼロ等の域内諸国が囲む姿である。
理屈で考えれば、筆者にはその道が関係各国にとって何の不都合もなく、ゴールであるように見える。

それを拒むものは、第四帝国を作りたいドイツの野望か、統合国家の理想に燃えるEU原理主義者か、グローバル化で利益を得たい国際資本なのか。 

欧州安定化のためには、その正体を明らかにし、障害を排して落ち着くべき所へ至るシナリオが必要となるだろう。

G7一人負けの日本経済 −アベノミクスの今後と「戦犯」財務省の解体−

●伊勢志摩サミットを経て、消費税10%増税の2年半再延期が決まった。日本経済G7一人負けの最大の元凶は、2年前の8%への誤った消費税増税だ。
●消費税増税は順序が違った。もし増税するなら継続的な過熱気味の経済成長を実現させ、冷やし玉の意味も兼ねて行うというプロセスが不可欠だった事が改めて証明された。そのため増税は本来延期でなく中止とすべきだ。
●「社会保障と税の一体改革」は日本破滅への行進曲だ。これに対し「社会保障と働き方の一体改革」で国の仕組みを変える事にシフトし始めた安倍政権には期待が持てる。これらの具体化と共に、増税翼賛体制に後戻りさせないため、「戦犯」財務省は解体し国税庁と切り離さなければならない。

◆サミットと増税延期◆
先月の伊勢志摩サミットでの「世界経済の見通しに対する下方リスクが高まっている」、「新たな危機に陥ることを回避する」としたG7首脳宣言を背景に、安倍首相は1日夕の記者会見で、来年4月に予定していた消費税率10%への引き上げを、「内需を腰折れさせないため」として、2019年10月まで2年半延期することを正式表明した。
7月10日投開票の参院選で、国民の信を問う事になる。

中国バブルの崩壊等の世界経済の潜在的危機は確かに厳として存在しそれへの備えは不可欠ながらも、安倍首相のサミット前後の一連の「世界経済へのリーマンショック級のリスク」発言は、やはり唐突で日本経済のG7中一人負けをカムフラージュしつつ消費税増税を再延期するための一人芝居の感が強かった。

しかし、サミットを国内政治利用したと言われようが何だろうが、安倍首相の消費税増税の再延期の正式表明は、置かれた状況を勘案すれば本来延期でなく中止とすべきながら、政治家として正しい決断である。

◆アベノミクスの金融財政◆
現下の日本経済は、衆目も一致するようにとても消費税を増税出来る環境にない。
日本経済G7一人負けの最大の元凶は、2年前2014年4月の8%への誤った消費税増税だ。

ここで、2012年12月の第二次安倍政権発足時からの、(1)大胆な金融政策、(2)機動的な財政政策、(3)民間投資を喚起する成長戦略を柱に据えた   3本の矢アベノミクスの一連の軌跡を振り返ってみたい。

先ず、(1)大胆な金融政策だが、日銀の黒田バズーカを誘導した未曾有の金融緩和等、平たく言えばジャブジャブマネーは、円安による輸出増進、海外子会社利益・資産の日本円換算価値増加、金利低下による株高、それらによる求人数増加等で日本経済に大きなプラス要素をもたらした。
半面、輸入資材・物価上昇をもたらし、実質賃金水準が上がらない中で、特に中小零細企業とその従業員にしわ寄せが行った。

今は手仕舞いを模索している米国等が先行したとは言え、何しろ未曾有なので、歴史から学ぶことが出来ずその顛末がよく見通せないのがジャブジャブマネーである。
こういう場合は、現実世界に存在する別のもの、例えば人体に置き換えてみると分かり易い。
いわば、貧血気味で過労で寝込んだ人に、輸血と造血剤を打って動き回れるようにした状態だ。
それ自体は良いのだが、やはり一時的な措置であるべきで、やがて筋トレと体質改善に切り替えて行くべきである。
今やマイナス金利にまで踏み込んだ黒田ジャブジャブマネーだが、エコノミストや与野党はここだけ切り出して肯定あるいは批判をしている感がある。
しかし、ジャブジャブマネーは、輸血であり造血剤であり手段であり道具であるのだから、それ自体の是非を論じても仕様がない。
他の施策の実行状況と合わせて評価すべきであるものだ。

(2)機動的な財政政策については、東日本大震災の復興と東京オリンピックに向けての首都圏での建設ラッシュによる人手不足で、予算を付けても着工が出来ず箱モノについては頭打ちの感がある。

◆成長戦略の方向性◆
(3)民間投資を喚起する成長戦略については、安倍首相がインフラ輸出にセールスマンとなって先頭に立っている事は、中国等に競り負けているものもあるものの、インドの鉄道建設等で実際の成果が出ている。
また、ロボット、人工知能、TOI(いわゆるモノのインターネット化)等の分野を推し進めている政府の政策は将来的に向けて有望である。

TPPにはグローバル企業による搾取の危険性等重大な欠点がある。
また、輸出入、市場参入自由化自体は、基本的にはあるべき方向だが、農業に於ける食糧安保の確保のみならず、経済原理を超えて安全保障上その他で守るべきものと、開くべきものの整理が出来ていない。

また、規制緩和についても、例えばタクシー一つとっても自由化と事業免許制による台数制限との方針の迷走等、かつて竹中平蔵氏が主導した粗野で拙い自由化の後遺症とその反動が目立つ。
タクシー等は、ニューヨークのように一台毎の事業ライセンス制にした上で、その売買・貸し借りは自由に出来るような規制と自由化を適切に組み上げた合理的なシステムにすればよかった。
このような工夫は、Uber等の新しい配車サービスの導入時を含め、あらゆる分野に於いても形を変えて行うべきである。

以上纏めると、守るべきものと開くべきもの区分と原理、自由化と規制の合理的ベストミックス、進んでは「良い既得権」と「悪い既得権」の腑分けの理論化が不足している事が、成長戦略の筋道を強く描けず、十分な成果が出ていない原因である。
利害関係者同士の局地戦ではない、国民を巻き込んだ議論を尽くした上での決然とした意志決定が必要である。

◆働き方の改革◆
繰り返すが、日本経済G7一人負けの最大の元凶は、2年前2014年4月の8%への誤った消費税増税だ。
これが、日銀のジャブジャブマネーによる円安に原油安の神風が加わり始めたとは言え、未だヒョロヒョロした経済に冷や水を浴びせ、消費を冷え込ませた。

消費税増税は順序が違った。
ビジネスに例えれば、売り上げが伸びず借金が嵩んだ時に、挽回策として値上げをして一気に客離れを招いた馬鹿な経営陣が率いる会社のようなものだ。

創意工夫による製品付加価値の増加、新規製品投入で顧客満足度を上げ、コスト低減と冗費削減、血の滲むような営業努力により強い利益体質を築いた上で、それでも将来に渡って資金が不足するなら初めて値上げに踏み切るというのが、凡そ窮地にある企業の基本動作だろう。

これを国家に置き換えれば、一連の打ち手によって継続的な過熱気味の経済成長(少なくとも実質GDP成長3.5%以上を2年間以上維持等)を実現させ、仮に増税するなら冷やし玉の意味も兼ねて行うというプロセスが不可欠だった事が、2年前の8%への消費税増税による失政によって改めて証明された。
そのため増税は本来延期でなく中止し、経済成長こそ公約とし最優先すべきだ。

旧民主党の野田内閣時代から唱えられる「社会保障と税の一体改革」は日本破滅への行進曲だ。
マスコミ等にも好意的、少なくとも価値中立的に用いられるこの言葉は、要は年金の支給年齢を上げ、支給額を下げ、社会保障料と消費税を上げ続けるという子供でも考えられる単なる算盤勘定でしかない。
そして、少子高齢化が急進する中では、永久増税運動へのお墨付きを与える悪の免罪符である。
そこには、社会の仕組みを変えて対処しようという、健全な問題意識が欠落しており、国民をマインドコントロールして思考停止に留め置こうとする、これを作文した官僚の意図も透けて見える。

これに代えて、「社会保障と働き方の一体改革」で国の仕組みを変える事にシフトし始めた安倍政権には期待が持てる。

安倍首相が「同一労働同一賃金」を唱え始めた時は、かなり唐突感があった。
しかし、この施策の実施により、深夜残業で社畜かした正社員と時間に代えて金のない非正規社員の垣根を低め、一度非正規に落ちたら2度と這い上がれない保身至上主義を緩め、労働流動性を高めて適材適所化を進め、非婚率を下げて出生率を上げ、女性や老齢者の就労率を高めるメリットが考えられる。
様々な弊害もあるだろうが、工夫によりデメリットは低減出来る。

これに加えて、筆者は例えば在職老齢年金の減額制度の積立制への改変で、働き損をなくし、老齢者の就労率を上げる等の新機軸を打ち出す事も提言したい。

また、「給付付税額控除」(就労していれば、一定条件の下に低賃金者に国から現金が支給される制度、就労を促し生活保護支給者を減らす効果等があると言われる)等も、民進党が唱えているからと言って拒否感を持つ必要はない。

このまま、社会の仕組みを変えずに日本の年金制度が持つはずがなく、「社会保障と働き方の一体改革」は今後の成長戦略の中核を占めるべきだろう。

◆財務省を解体せよ◆
8%への消費税増税は、安倍首相は当時に於いてもやりたくなかったと想像は出来るものの、明らかな失政である。
しかし、増税を回避したら財務省主計局の主導により、官僚組織、政財界、マスコミ、学会に張り巡らされた増税翼賛会を上げて袋叩きにされ、スキャンダルを仕掛けられ、場合によっては検察、司法を動員して逮捕、有罪判決を下されかねない当時の状況を見ればギリギリの選択であったか。

安倍首相は、前回は米国財務省(ルー財務長官)の増税反対の幸運により、そして今回は周到に準備した会談でのステグリッツやクルーグマンの2人のノーベル経済学賞受賞者等の後押しと伊勢志摩サミットでの見てくれをかなぐり捨てた演技によって10%への消費税増税を回避した。

しかし、これは安倍首相の個人技による戦功である面が強い。
8%消費税増税による景気低迷の「戦犯」財務省は、今は家来の政治家や学者に騒がせるのみで死んだふりをしているが、増税DNAが死ぬはずもなく、隙を伺い必ず復活し立て直してくる。
財務省の力の源泉は、予算編成権と国税庁による税務調査権である。
これにより各省庁、政治家、マスコミ、学者、司法に間接直接に飴と鞭を与え、増税翼賛会を構築し国家を壟断してきた。

筆者は、増税翼賛体制に後戻りさせないため、今回の消費税増税延期を機に過剰な力を持つ財務省を解体し、予算編成権を取り上げると共に国税庁と切り離して、その壟断の芽を摘み、国家の中の健全な一省庁へと改編すべきと考える。

「トランプ大統領」に備えよ。 −TPP、米露同盟、および核武装−(月刊日本 2016年5月号)

●トランプの主張するTPP参加破棄は、別の方法で中国包囲網機能が補完されるならば日本にとってウェルカムである。
●トランプとプーチンは、公言し合っているように肌が合う。「米露同盟」が結ばれる場合には、日本は可能なら3国同盟化、少なくとも仲介等により優位な立場で絡まなければならない。
●トランプであろうが無かろうが、ファイナンスに行き詰まった米国は日本により防衛負担増を求める。日本はこれを、自主防衛を高める契機とすべきである。
ただし、核武装は別次元の問題であり、切り離して駆け引きしなければならない。

◆ジュリアーニ副大統領?◆
米大統領選挙の行方は予断を許さないが、共和党予備選挙の焦点は、ドナルド・トランプ候補の副大統領候補選定に焦点が移った感がある。
4月7日に、ジュリアーニ元ニューヨーク市長がトランプ支持を正式に表明した。
もしジュリアーニを副大統領候補とするなら、本選挙で民主党のヒラリー・クリントンを本拠地のニューヨークにある程度釘付けする効果があるだろう。
また、市長在任中に治安対策等で確実な成果を上げた手堅い行政手段が、共和党主流派のアンチ・トランプ感情を宥めるのに多少役立つ。

トランプは、不法移民対策やテロ対策である意味現実離れした過激な主張をする一方、自分は政治家ではないので、実際の行政はプロの政治家に任せるとも発言しており、副大統領候補選び(ペイリン元アラスカ州知事となる場合は、国務長官選び)が実際の「トランプ政権」を性格付けるだろう。

何れにしても、大統領予備選挙および本選挙の結果は、様々な要素、なかんずく今後大なり小なり起こる可能性のある米国内外のテロの規模、背景、タイミングにより、米国世論がどちらに転ぶかによって大きく左右されると思われる。

◆TPP参加破棄◆
さて前置きが長くなったが、米国「トランプ政権」が成立する蓋然性が相当程度ある以上、我が国日本としても、その備えをして置く事は当然に必要である。
外務省が情報収集を始めたと既に公式に発表したが、それと並行して国家レベルでの対応基本戦略を今から検討して置かねばならない。

まず、トランプは「TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)は米国民の利益にならず参加を破棄する」と公言しているように、もしトランプ政権が成立すれば恐らく破棄するであろう。

そもそもTPPには、次の3つの機能がある。(1)自由貿易の理想の実現、(2)中国包囲網の構築、(3)米国(グローバル)企業による日本からの収奪である。
(1)と(2)は、日本の利益になるが、(3)についてはISDS条項(投資家対国家間の紛争解決条項)や、ラチェット規定 (自由化不可逆規定)のような強力な武器がTPPに組み込まれており、丁々発止の米国(グローバル)企業・弁護士・およびロビーに動かされる米議会により日本企業・政府・国民が手玉に取られ毟り取られる可能性が高い。

もし、TPPの持つ中国包囲網の機能が別の方法で補完されるならば、米国のTPP参加破棄は日本にとってウェルカムである。
ただし、トランプは誤解も含めて中国と並んで日本を貿易不均衡国として名指ししており、更に過酷な要求をしてくる可能性は想定して置かねばならない。

◆「米露同盟」と日本◆
「トランプ政権」となった場合に、「米露同盟」が締結される可能性も相当程度ある。
トランプとプーチンは、公言し合っているように肌が合う。
トランプが「米国の復活」を本気で進めるならば、「米露同盟」締結で中国を牽制し、中東関与を薄め、軍事予算を減らすのは合理的な選択肢だろう。
これまで、その選択を阻害していたのには、中国贔屓のキッシンジャーと、オバマの外交指南役にしてポーランド難民で旧ソ連に恨みを持つブレジンスキーという米外交戦略の2大巨頭の力が大きかった。
しかし、東欧・中東での度重なる失策と中国の台頭で2人の発言力も低下し、若しくは微妙に方向転換しており、ハードルは下がって来ている。

「米露同盟」が結ばれる場合には、日本は北方領土問題に筋道を付けて置き可能なら3国同盟化、少なくとも仲介等により優位な立場で絡まなければならない。
米露が日本の頭越しで同盟を結ぶ場合、日本の関与する余地は少ないが大国同士の面子維持のため調印式は第三国で行う等で、最悪象徴的な意味だけでも日本が絡むことは可能である。

◆防衛負担増と核武装、および新秩序◆
トランプであろうが無かろうが、ファイナンスに行き詰まった米国は日本により防衛負担増を求めて来る。

トランプ等の言う、日本安保ただ乗り論は、日本が相当額の米軍駐留経費を負担しているとしても、ある意味正しい。
米軍が日本を守っても、昨年成立した安保関連法によっても基本的には日本は米国を守らないのが日米安保条約の内容である。

トランプ等の主張する防衛負担増への対応には、日本が米軍駐留経費等を増額する選択と日本がより自主防衛を高める選択の2つがある。

筆者は、前者は選択すべきでないと考える。
理由として、トランプは大きく吹っかけて来るだろう。
第一、それにより日本がより主体性を失って行く事になる。

日本はこれを、自主防衛を高める契機とすべきである。
場合によっては、米国や米軍が危機に在るとき日本が助けに行ってもよい。
しかし、例えばイラク戦争のような筋の悪い戦争に、従属的に付き合うべきではない。
兵を出す際には、国際的大義を伴い、かつ長期的国益に適う場合にのみ主体的に出さねばならない。
その原則を具体化するために、日本は安全保障基本法を成立させ、進んでは憲法改正をすべきである。

ただし、トランプの言う、日韓から米軍が撤退した場合、両国の核武装を容認するという発言には飛躍がある。
米軍が撤退しても、米国の西向きおよび太平洋等の潜水艦搭載の核ミサイルは、中国と北朝鮮とロシアに向いている事は変わらないので、米軍の核配備費用が削減される訳ではない。(ただし、日韓が中・北に攻撃されたとき、米軍核ミサイル使用で米国が反撃されるリスクは減る。)

トランプの日韓核武装容認発言は、不動産王としての交渉術の側面が強いだろう。

日本にとって、核武装は別次元の問題であり、切り離して駆け引きしなければならない。
核拡散の危険性(残念ながら日本の現在の核管理能力の不足も含めて)を考えれば、費用負担の引き換えに米国管理の核ミサイルの発射ボタンを日本がシェアリングする、所謂「レンタル核」が現実的だろう。
もちろん、米国が日本の永遠の味方である保証はなく、そのために核の自主開発を出来る能力と核物質を(核管理能力を高めて)、国際社会を説得しつつ保持して置く必要もある。

よく言われるように、モンロー主義的に米国が他国への軍事的関与を減らして行くというのは、トランプもオバマも同じである。
ただ、オバマは負け犬風に、トランプは吠えながら撤退戦を行おうとしている。

米国が覇権を降りたら、米国の衰退は止まらず、世界も多極化し大混乱するとの恐れが外交軍事の専門家から語られており、筆者も賛同する。
しかし、米国も無い袖は振れまい。

筆者は、米露同盟に日本が加わり世界の安全保障体制の基軸を為す一方、イスラムを世俗化穏健化して統一させキリスト教はこれと和解し、他国も合わせ中国包囲網を完成させてその牙を抜く事が、今後の世界秩序の大戦略であらねばならないと考える。

これは、次期米大統領が誰になっても変わらない。
しかし、トランプ政権となった場合、事態は加速する。
日本はタフな交渉で国益を確保しつつ、この画を実現させるべく、より主体的に動く事が必要となるだろう。

「同一労働同一賃金」実現には、日本人の労働倫理の精神革命が必須である

●「同一労働同一賃金」の実現は、経団連と労組から陰に陽に激しい反発に遭うだろう。
●そもそも、例えば皆を置いて残業せずに帰るのを許さないような、協力し合うのを美徳とする日本の労働倫理は、古代からの稲作文化のDNAに根差したものだ。
●これらを改変するには、欧米のように「同一労働」の定義や「ジョブ・スクリプト」よる個別の労働契約が不可欠だが、それには終身雇用制への決別を含む日本人の労働倫理革命への覚悟が必要だろう。

◆安倍首相と野党の本音◆
安倍首相は先月下旬に施政方針演説で、「同一労働同一賃金」の実現を目指すと表明した。

日本の労働状況を単純化して概観すれば、一旦正社員のレールから外れた者は、二度と低賃金の非正規労働から抜け出せない一方、特に若手の正社員は一応終身雇用が約束されているのと引き換えに深夜に及ぶサービス残業を強いられている。

同一労働同一賃金が実現すれば、これらは均衡し解消に向かうと共に、雇用の流動化が進み経済の変化のスピード化と国際化に合わせた適材適所が進むだろう。

しかし、それには、人件費を安く抑えたい経団連始めとする経営側と正社員の既得権を守るのが主要ミッションである労組から、陰に陽に激しい反発に遭うだろう事は容易に予想され、実現には困難が付き纏う。

安倍首相は、「同一労働同一賃金」実現の一方で、これまで労働政策の中核として「非正規労働者の正社員化促進」を繰り返し述べており、雇用を流動化したいのか、したくないのか腰が定まっていないように見える。
また、民主党を筆頭とした野党も、口では「同一労働同一賃金」を唱えるが、労組と公務員の支援が最大の基盤であるため、少なくとも早期には本音ではその実現を願っていない。

◆少子高齢化への楔◆
日本の終身雇用制は、戦時体制下に出来て戦後復興、高度成長で定着したもので、戦前の日本の労働流動性は高かったと言われる。
しかしながら、明治から戦前までの近代国家としての勃興期や、戦国時代が特殊な時代であり、弥生時代や江戸時代を見ても、終身雇用制の基となる互いに協力し合うのを美徳とする日本の労働倫理には、稲作文化のDNAの基盤があると思われる。

現在、少子高齢化を迎え、何か抜本的な対策を打たねば、年金財政を始めとして早晩日本は破綻する。
移民もある程度必要だろうが、移民のもたらすメリット、デメリットを勘案すると、それ以前に日本自身が拡大再生産する施策が必要である。

その一つとして、例えば在職老齢年金の減額制度の改変がある。
簡単に言うと、現在、一定以上働くと年金は減額され「働き損」となる事が、老齢者を早期の年金生活に誘導してしまっている。
この減額分を積み立てて置き、年金生活に入った際に一定額を増額支給(但し遺族年金等へは不算入)すれば、老齢者の就労を促し、医療費の圧縮、消費の拡大、人手不足解消、年金財政の継続性、老後の不安軽減による出生率の増加等に繋がるだろう。
このような施策は、政府が法律改正を起案すれば容易に出来る事だが、恐らく厚労省と財務省が目先の算盤勘定から反対しているのだろう。

「同一労働同一賃金」は、こんなものに比べると遥かに難しい。
その実現には、欧米のように「同一労働」の定義や「ジョブ・スクリプト」よる個別の労働契約の導入が不可欠だが、それには、日本の労働倫理の革命が必要だからだ。

例えば、現在の日本代表サッカーを見ても、集団性・連携プレーの強さを活かしながらも、同時に個の決定力が強く求められている。
各々の職場に於いても、日本が縮小から拡大に転換するには、集団性の強さのメリットを活かしつつも、個の確立、活性化、冒険心の醸成が不可欠と思われる。

「同一労働同一賃金」が本当に実現すれば、必然的に労働市場の流動化が起こり終身雇用制も徐々に崩れて行くだろう。

そこには日本社会にとってのリスクを孕み、賛否が分かれる。
しかし筆者は、今後の日本の発展のために、今敢えてリスクを取り、日本的工夫を加えつつも「同一労働同一賃金」を実現すべきであると考える。
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