佐藤総研 (独立系シンクタンク)

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トランプとAIがもたらす未来 −常設雇用税制と包括通商バランス−

●トランプが図る製造業の国内回帰策は、副作用としてロボット化とAI化を加速させ究極的には消費者の消滅をもたらす。
●これを防ぐためトランプは何れかの時点で、人を雇い賃金を払う事を奨励する「常設雇用税制」のようなものを導入せざるを得ない。
●こうして折角維持した消費者を他国製品に奪われないためにも、トランプは関税、国境税調整、為替制度等による「公正な貿易協定」をより一層打ち出し、激しい通商摩擦を引き起こす。
その争いの末、結果として「包括通商バランス」として、各国との折り合いをつけた何らかの新しい原則が形作られ、「常設雇用税制」と共に新たな世界標準となるだろう。

◆雇用!雇用!雇用!◆
Twitterでゼネラルモーターズを罵倒し、会議の場でトヨタに米国に新工場を作る事を強引に首肯させ、トランプは公約通り米国に雇用を呼び戻すことに突き進んでいる。

これによって雇用は戻り、選挙戦で吠えていた「BUY AMERICAN、HIRE AMERICAN」は、一定程度実現するだろう。
問題は、その規模と持続性である。
米国に新工場を建てさせられた各社は、株主の手前にも当然に利益を上げねばならなく、海外生産に比べ高コスト化した製造原価を下げるため、やがてトランプの目を盗み工場ではロボット化・AI化が進み、国内に戻った雇用はそれらに置き換えられて行く。

雇用の減少は、究極的には消費者の消滅を意味し、これを防ぐためトランプは何れかの時点で、人を雇い賃金を払う事を奨励する「常設雇用税制」のようなものを導入せざるを得ない。
それは、例えば次の式で出した控除額を、所得控除もしくは税額控除として連邦法人所得税を算定する事等が考えられる。

控除額 = 雇用人数の2乗 × 年間支払い給与額 × α

しかしこの税制によっても、従来型の製造業のロボット化、AI化はスローダウンするも不可逆的に進み、雇用はそれ以外の恐らくはサービス業を中心にした今後生み出されて行くであろう新機軸のビジネスにシフトして行くだろう。

なお、例えば日本では、雇用関係助成金や雇用促進税制、所得拡大促進税制等によって雇用と所得について一定の政策手当がなされている。
しかし、これらは規模が小さい上に、基本的に雇用と所得の増加に着目した恩典であり、時限的措置であるものも多い。
加えて、地方税である事業税には報酬給与額が増えると基本的に税額が一部上がり雇用に対する実質上のペナルティとなっている外形標準課税が導入されており、総務省等はこれを中小法人にまで広げようとしている。

大規模かつ、雇用の増加だけでなく維持に、かつ継続的に恩典を与える「常設雇用税制」は、各国にとっても必要なものになる。

◆「公正な」貿易協定◆
しかしこうして維持、増加した雇用による消費者、消費市場は、またしても海外製品に狙われる事になる。
折角維持した消費者を他国製品に奪われないためにも、トランプは関税、国境税調整、為替制度等による「公正な貿易協定」をより一層打ち出す。
しかし、この「公正な」はトランプの米国にとっての公正に過ぎない。
また、仮に相手国から見ても「公正な」協定での通商が行われるようになったとしたら、そこで米国が貿易収支、経常収支が黒字になるとは限らない。
否、むしろ米国の高賃金を維持するのが前提であるなら、赤字となると考える方が自然だ。

そのためトランプは、結局は通商に於いて実質的に「結果の平等」を求める事になるだろう。

折角維持した消費者を他国製品に奪われないためにも、トランプは関税、国境税調整、為替制度等による「公正な貿易協定」をより一層打ち出し、各国からの激しい反発による通商摩擦を引き起こす。

これまで、賃金と通貨の低い国には製造コスト安によって輸出ドライブが働き、やがて豊かになりコスト高になり、高賃金、通貨高の国と長期的に見て収支はバランスするとされてきた。
また、リカードの比較優位論によって、例えば精密機械の得意な国は精密機械を作り、コーヒー豆作りが得意な国はそうする事により、基本的に適材適所で世界経済は回り、各国の相互依存関係により戦争のリスクは減り、各国民はハッピーになるという大前提で、世界は貿易の自由化へ向けて進んできた。

しかしこれでは、低賃金、通貨安国に製造、輸出させるグローバル企業、国際資本が儲け、米国はじめ先進国の国内雇用が失われ、貧富の格差により国内が二極分化するという現象が起きた。
また、通貨操作、不当労働、特許侵害による下駄の効果も相まって、巨大な中国は貿易黒字によって蓄積した富を軍事に費やし覇権国になろうとしている事が顕在化した。

これまでの貿易自由化礼賛では、どうも世界は上手く回らないと言う事を、トランプは「王様は裸だ」とばかりに世界に向かって叫び、新たな通商戦争の口火を切った。
各国から保護主義と言われようが、WTO違反と言われようが突き進もうとしている。

◆ピケティと新たな世界標準◆
トランプが引き起こす激しい通商摩擦の争いの末には、トランプの米国も完全孤立主義を貫く訳に行かない以上、結果として「包括通商バランス」として、各国との折り合いをつけた何らかの新しい原則が形作られるだろう。

「包括通商バランス」原則がどんなものになるのかは分からない。
それは、関税、国境税調整、為替制度等が巧妙に組み合わさったものかも知れないし、全く新しい指標、仕組みによるものになるかも知れない。
「バランス」が2国間のものなのか、多国間のものなのかも読み切れない。
それは、実際にトランプと各国が激しくぶつかり合って後に、初めて形が見えてくるものだろう。

少し前にブームとなったフランスの経済学者のトマ・ピケティは、その著書の中で、貧富の格差是正とタックスヘイブンの回避ために国際累進富裕税の導入を主張した。
これは、基本的に富める者から取り貧しい者に配るという点で、形を変えた共産主義である。
対処療法としては一つのアイデアではあるが、本家の共産主義と同様、世界を縮小均衡に向かわせるものとなる。

これに対し、「常設雇用税制」と「包括通商バランス」の組み合わせは、筆者自身にもその姿は朧月に程にしか見えぬものの、各国民が雇用によりその糧と居場所を持続的に得る事を善とするならば、筆者は新たな世界標準の方向性であると考える。

見えてきたトランプの戦略 「景気を吹かして、先ず中国を通商と包囲網で干し上げる」

●トランプは、先ず中国を通商で干し上げ、その経済力と軍事力を削ぐ。それによる返り血は、公共事業と軍拡、規制緩和、減税等による景気浮揚と「米露同盟」を中心とした包囲網構築で撥ね返す。
●シリアとISは、当面プーチン主導に任せる。しかし中東戦略全体については今のところ示されたヒントは殆どない。
●プアホワイトを中心とした格差問題には、製造業の米国回帰で対処する考えだが、持続的なモデルとなるかは疑問である。また、財政赤字と金利高、ドル高への対処法も不明である。

◆ピーター・ナヴァロ◆
米国大統領選で勝利後、12月4日現在、国務長官を除きトランプ政権の陣容が固まりつつある。
また、選挙期間中に吠えまくった「公約」も、「就任後100日行動計画」、その他発言によって徐々に整理され、トランプの政策が断片的に示された。

それらは未だ取りとめがなく、なかなかストーリー性のある「戦略」と言えるレベルのものが見えないが、筆者は、来年1月の政権発足前ながら、現時点でもいち早くトランプ政権の戦略を読み解くことは、特に今の日本にとって先手を打って対応を立案するために必要不可欠だと考える。

そのため、示された断片を並べながら、そのパズルを解こうとしているが、それには、経済と外交・軍事を結ぶストーリーが必要だ。
そのヒントとなるのは、ピーター・ナヴァロ(カリフォルニア大学アーバイン校教授)だろう。
選挙陣営から引き続き政権移行チームでも政策顧問を務め、経済、貿易、そしてアジア政策を担当している。
そして、ナヴァロは、トランプ陣営の中で唯一、経済と外交・軍事の双方に通暁している。

その主張をまとめると、凡そ下記の通りだ。
●中国製品を購入すれば、その利益は回り回って米本土を脅かす中国軍の兵器に化ける。中国との貿易により米国では5万社以上が倒産した。
●アメリカは中国との通商交渉でタフな(強硬な)姿勢を貫け。中国国内での知的財産権の侵害は厳しく取り締まれ。中国からの輸入品には高い関税を課せ。
●中国の重商主義に真っ向から立ち向かえ。アメリカに職を取り返せ。そして「偉大なアメリカ」を取り戻せ。

また、11月に入って「米中もし戦わば」(原題:Crouching Tiger: What China's Militarism Means for the World)を刊行している。
https://www.amazon.co.jp/dp/4163905677?_encoding=UTF8&isInIframe=0&n=465392&ref_=dp_proddesc_0&s=books&showDetailProductDesc=1#product-description_feature_div

これらのナヴァロの主張と、示された政策の断片、12月2日のトランプと台湾蔡総統と異例の電話会談等を混ぜ合わせてみると、トランプは、先ず中国を通商で干し上げ、その経済力と軍事力を削ぎ、それによる返り血は、公共事業と軍拡、規制緩和、減税等による景気浮揚と「米露同盟」を中心とした包囲網構築で撥ね返すという戦略が浮かび上がる。
そして、同2日のキッシンジャーと習近平の北京会談は、筆者にはこれらによる「パワーシフト」を中国と決定的な対決を避けながら、ジリジリと行いたいというトランプの意思表示に映る。

なお、ナヴァロには、現時点で政権の要職ポストを示されていない。
経歴を見ると、過去3回公職に立候補したことがあり(何れも落選)、決して理論家一本でやっていこうという訳ではなさそうだが、性格や健康問題に難があるのか?
しかし、今後、経済担当補佐官等に指名されるかも知れないが、たとえ要職から外されても、経済と外交・軍事を跨いだシナリオが他にない以上、筆者はトランプ政権の戦略の理論的中核はナヴァロに在ると見る。

◆見えぬ中東政策◆
一方、中東戦略全体については今のところ示されたヒントは殆どない。
ただ、公言しているように、トランプは、シリアとISは、当面プーチン主導に任せるだろう。

トランプはエルサレムをイスラエルの首都と認めるとネタニヤフ首相に約束すると共に、ユダヤ教正統派有力者家系の娘婿のジャレッド・クシュナーを選挙戦および政権移行チームで重用する等、親イスラエルの姿勢を明確に見せる一方、2015年にオバマが纏めたイランとの核合意を破棄することも明言している。

トランプが盟友とするロシアのプーチンは、イスラエルと接近する一方、シリアのアサド政権を支援すると共に空軍基地を使用する等、同じシーア派のイランとも緊密でありその点ではトランプと真逆だ。

トランプは現在、不動産ビジネスを大規模に展開した経験もない中東に対する知識、関心は殆どないと思われるが、イラク戦争については、米国にとって全く無駄で必要のなかった戦争としている。
米国をネオコンと共にイラク戦争に引きずり込んだとも言えるイスラエルに対する親密な姿勢は、大統領選でユダヤ人社会の支援を受けるための方便だったのかも知れないし、逆により親イスラエルを深めて行くのかも不明だ。
国内でのシェールガス等のエネルギー開発に対する規制緩和で、中東の石油に依存しない体質を作り上げ、中東丸ごとプーチンに任せるつもりがあるのかも知れない。
但し、中国について一段落が着いたら、中東問題について学習して解決に乗り出す可能性もゼロではない。

◆「米国の形」と日本の対応◆
また、トランプは、プアホワイトを中心とした格差問題には、製造業の米国回帰、公共事業、エネルギー開発に対する規制緩和、移民の制限、減税による景気浮揚等で対処する考えのようである。

だが、元より公共事業やエネルギー開発の投資段階の雇用は、一時的なものである。
また、製造業の国内回帰も持続的なモデルとして定着するかは疑問である。

10年間で6兆ドルの大減税、同じく1兆ドルの公共事業、軍拡の計画は、株式市場の高騰をもたらしているが、経済成長による税収増がそれに伴う財政赤字と金利高、ドル高の影響をペイ出来るかについて、ノーベル賞受賞者を含めた主流経済学者は悲観的だ。
トランプは、1期4年で大統領を辞めるなら逃げ切れるだろうが、2期8年を続けるなら、その帳尻を合わせなければならない。

大統領選での暴言にあった米国債のデフォルトや、あるいはプラザ合意のような形のドル切り下げは、米経済次第であり得るシナリオだろう。

話を戻して、プアホワイトを中心とした格差問題は、今後AI(人工知能)、自動運転、ロボット化の進展により、更に深刻になると思われる。
日本こそ他人事ではないが、米国を筆頭とした先進国は、教育、既得権の整理、社会保障、少子高齢化問題、労働流動性を含めた持続可能な社会の形を試行錯誤で構築する必要がある。
さもなければ、ピケティーのような形を変えた共産主義が世界を席巻することとなる。

日本について言えば、安倍政権はトランプの当選可能性を殆ど無視する失態の後、一番乗りで就任前のトランプと会談するリカバリーを図った。

トランプにより世界は激動する。
1月20日の就任式など悠長に待っている暇などない。
今ある材料でトランプの戦略のパズルを解いて、先手を打って対応策を練る必要がある。
そして、新しい情報により逐次そのモデルを修正して行くことが求められる。

当面トランプは、公式な形、非公式な形を問わず、「米露同盟」を模索するだろう。
それは、共和党を含めた米国議会から反対され実現に困難が伴う。
トランプの大統領選当選により、12月15、16日の日露首脳会談で北方領土問題の進展可能性は殆ど無くなったので、安倍首相は会談を「米露同盟」を緩衝材として仲介するための瀬踏みの場とすればよい。
それが、行く行くは「日米露三国同盟」となるのか「日米露印四国同盟」に結実するかは分からないが、その模索が当面の日本の戦略となるだろう。

Requests to President Trump: Rebuild the United States and preside the new world order

- Based on the "Japan, the US and Russia Trilateral Alliance", pull out fangs of China and the Islamic extremists, and become the leader of the new world order based on the great cause.

- After the withdrawal of the current TPP treaty, detoxify the arbitrariness of international capital, and revise the treaty to true WinWin based one for people of the US, Japan and other nations.

- Establish a success model of the social structure to solve the disparity problem, so that each citizen layer will be full of vitality.

I think these are just "MAKE AMERICA GREAT AGAIN".

Nov.19th 2016
Kozen Sato from Japan,

トランプ大統領への要請書: 米国を立て直し、新しき世界秩序を主宰せよ

●「日米露三国同盟」を基軸に、中国とイスラム過激派の牙を抜き、大義に基づく新しき世界秩序の主宰者たれ
●現行TPP条約離脱後、国際資本の恣意性を解毒し、真に日米両国民等にとりWinWinとなるものへと組み替えよ
●格差問題解決に向け、国民各層が活力に満ちそれぞれ所を得るような、社会構造の成功モデルを構築せよ

◆新三国同盟◆
11月8日に行われた米大統領選で、トランプがヒラリーを降し勝利した。
筆者は、8月のトランプのイラク戦没者家族への過剰反応以降、大統領選の勝敗確率を四分六でヒラリーの勝ちと見ていたので、予想を外した。
しかし筆者は同時に、トランプの選挙スローガンを織り込んでボブ・ディランの「風に吹かれて」の替え歌を作り、米国へ向けTwitterで拡散を試みてディランファンの顰蹙を買うなど、日本からささやかなトランプ応援活動をしていたこともあり、今回の勝利を祝福したい。

さて、トランプは、先ず選挙期間中に唱えていた経済政策を急進的独断的には進めない旨のメッセージを出して、マーケットの混乱を鎮めなければならない。
そして次に、直ぐにでも始めなければならない大仕事が待っている。
手始めは、トランプ自身が就任式を待たずに直ちにプーチンと会談すると語っていたように、シリア・IS問題解決に向け米露の関係正常化に動かなければならない。
オバマの任期が残るうちに、政権と軍部内の「冒険主義勢力」(ネオコン)がシリアを舞台にロシアと戦争を始めないために、これは喫緊の課題だ。

この冒険主義勢力の基本戦略は、ビジネス界と組んで所謂軍産複合体を形成し、中東に介入しロシアと代理戦争、進んでは直接衝突を起こす一方、中国とは表面上対立姿勢を示しつつも譲歩も止むを得ないとするものとみられる。
その狙いはよく解らないが、中東に覇権を確立するとともに火種を絶やさぬようにし戦争経済によりビジネスとしての実を取り、中国のマーケットは当面確保するというのが複合体の集合意思のようだ。
スターリン時代のポーランド亡命貴族の家系で、ロシアに消せない恨みを持つ米国外交の重鎮ズビグニュー・ブレジンスキーがこの戦略の思想的主柱となっている。

そして、これにより中国とロシアを組ませる結果を招いており、やがて米国は太平洋の西半分を失うだけに止まらず、中国による世界覇権とイスラム過激派による混乱の拡大を許すことになるだろう。
米国は、この倒錯した自国が損をするのみならず独裁国家による世界覇権を導く愚策を捨て、中露の間に楔を打ち込み、進んでは「日米露三国同盟」を基軸にイスラムから過激派を一掃し穏健化して取り込み、中国包囲網を完成させその牙を抜く正しい戦略を採るべきであり、この大義を伴う新しい世界秩序の主宰者とならねばならない。
なお、これは軍費ファイナンス上も合理的選択である。

今、アメリカ・ファースト、米国第一主義を唱えるトランプの内向き志向が、世界に心配されている。
相対的に衰退しつつあるとは言え、超大国である米国が単に世界の警察官を辞めれば、その真空を埋めるのは上述したように中国による世界覇権となる。

米国の「内向き」志向を否定し「外向き」志向を主張する所謂外交専門家が日米問わず多くいる。
しかし例えば国際政治学者の藤原帰一氏等は、不思議に「外向き」の内容と質を問わない。
中東でのイラク戦争を始め、悪事または間抜けぶりを繰り返してきたような、「外向き」志向は下の下である。
米国は、仕切り直して大義を伴う新しい世界秩序の主宰者として、王道を歩むべきである。

なお、トランプは日本に米軍駐留経費負担の増額を迫っている。
現在、日本は米軍駐留経費の7割超を負担しており、かつこの駐留は米軍にとってもメリットのあるものだ。
日本は、このことを主張しつつ、これを契機に自主防衛にシフトして行くべきなのは言うまでもない。
しかし筆者は、トランプは更なる要求を突き付けてくる可能性が高いと見る。
それは、日本が現在負担していない費用、具体的には「核の傘代」だ。
日本は、核のボタンを握らせてもらう権利、所謂「レンタル核」「核シェアリング」と引き換えに傘代を幾らに設定するのかの交渉をする覚悟を決めておく必要があるだろう。

◆TPPを解毒せよ◆
大凡、甲論乙駁の厄介な問題には、3つの顔(機能)がありそれが絡み合っているから容易に正解に辿りつけない。
TPPはその典型的なケースで、(1)自由貿易の理想、(2)中国包囲網、(3)国際資本(グローバル企業)による各国民からの収奪、の3つの顔がある。
このうち(1)と(2)は、少なくとも基本的に見れば、日米両国民にとってメリットとなるが、(3)は一般国民からの収奪であるとともに、課税回避により国家についても利益がなく、一部エリート・富裕層のみの利益となり、所得格差により社会分断を招いている。

具体的には、一度規制を緩めると二度と戻せなくなる「ラチェット規定」、外国企業が規制により不利益を受けたと考えた場合に相手国家を損害賠償請求で国際機関に訴え一発勝負で判決が出る「ISDS条項」、その他一般国民に利益のない荒業のカラクリを外す必要がある。

現在蔓延するグローバリズムは、移民等の外国人労働と自由貿易によって構成される。
このうち移民の制限は、尊重されるべき国家主権である。
どんな構造とするか、またリアルなものかバーチャルなものか等、コストパフォーマンスと費用負担を考える必要はあるが、メキシコとの国境に壁を作るのは正しく国家主権の発露である。

しかし、保護貿易も基本的には国家主権ではあるが、食料、健康等の生存に直接かかわる特定分野以外では、保護貿易を強化するのはトータルに見れば長期的な国益に適わないだろう。

貿易は不動産業に比べて優れてゼロサムゲームではなく、保護貿易を強化すれば、米国のGDPは縮小してしまう可能性が高い。
加えて、米国が保護貿易強化に走れば、その隙間を縫って中国が各種自由貿易協定で各国を取り込むことなる。

米国に雇用を呼び戻し、国民を喰わせ痛みを和らげるための短期的時限的方便としてはあり得るが、トランプは保護貿易に力を入れるべきではなく、上述したようにTPPから国際資本、グローバル企業の恣意性を解毒し、真に日米両国民等にとりWinWinとなるものへと組み替える方向へ進むべきだ。
その観点でなら、トランプの米国と日本は協調できる。

◆成功モデルを構築せよ◆
黒人や少数民族を優先する「アファーマティヴ・アクション」は取り敢えず置くとして、米国社会は基本的に自由競争に基づく実力社会でありそれが活力となってきた。
しかし、敗者が事実上復活するのが不可能な場合、特に世代を跨いでそれが不可能な場合は、社会の分断を加速度的に進めることとなってしまう。
筆者は、野球には左程詳しくないのだが、米大リーグでは、ドラフトやトレード、その他の制度が、有力チームが金とブランド力で極端に強くなり過ぎないように精緻に工夫されていると聞く。
リーグの中で加速度的に戦力を累積するチームがあれば、興行としてのゲームが成立しなくなる。

大学の学費ローンで生活費も加えれば何千万円かの借金を抱えなければならないのでは、親の財力で人生が決まってしまうことが多く、米国民の分断が止まらない。
バーニー・サンダースが唱えたような授業料無料は行き過ぎとしても、4年制大学に於ける授業料合計で数百万円、場合によっては数十万円以下に抑えることは必要だろう。

格差問題には、既得権への切込みが必要である。
移民にしてみれば、米国籍こそが既得権と映るかも知れない。
低所得層にとってみれば、グローバル企業こそが既得権と映る。
IT技術を応用した新興企業サービスにしてみれば、既存の3K仕事・サービス業従事者を守る各種規制こそが既得権もとなり得る。
格差問題解決には、これら既得権の整理、即ち良い(妥当な)既得権、悪い既得権の腑分けが必要である。
その上でそれらを、社会保障や教育制度の社会制度や前述の通商政策と組み合わせて、国民が活力に満ち機能する仕組みを作り上げなければならない。

振り返って日本では、中途半端に斑模様で終身雇用制が壊れており、始末が悪い。
安倍政権は現在、「同一労働同一賃金」を始めとする働き方改革をしようとしている。
本来は、「社会保険と働き方の一体改革」としてダイナミックに社会構造を変革しなければ効果は望めないが、その方向だけは正しい。
米国では「同一労働同一賃金」は既に基本的に実現されており、なお突き当たる問題は、ある部分日本の先を行く。

AI(人工知能)等、先端技術の進歩により、経済格差はさらに拡大する。
日米に限らず、今後先進国が目指すべきものは「ナショナル・ミニマムを伴う自律社会」であろう。

格差問題解決に向け、国民各層が活力に満ちそれぞれ所を得るような、社会構造の成功モデルを構築することは、試行錯誤を伴う壮大な社会実験となる。
日米事情は異なる部分はあるが、共に手を携えて解決策をリードして行かなければならない。

以上、拙文にて述べて来たように、米国の内政を立て直し、加えて世界に向けては仕切り直した新しい秩序の主宰者として大義を示すべきこと。
「米国を再び偉大な国にする」とは、つまりそういうことだろう。

Blowin' In The Wind / Bob Dylan + A poet

Blowin' In The Wind / Bob Dylan + A poet

How many elections must we experience
Before we make America great again?
How many seas must the bald eagle sail
Before she sleeps on the nest?
Yes, and how many times must the cannon balls fly
Before we have peace again?
The answer, my friend, is blowin' in your mind
The answer is blowin' in your mind

Yes, and how many years can the ground exist
Before it's burned by the nuke?
Yes, and how many years can evil people exist
Before the swamp was drained?
Yes, and how many times can a man turn his head
And pretend that he just doesn't see?
The answer, my friend, is blowin' in your mind
The answer is blowin' in your mind

Yes, and how many times must they look up
Before they can see the sky?
Yes, and how many ears must they have
Before they can hear people cry?
Yes, and how many deaths will it take 'till they know
That too many people have died?
The answer, my friend, is blowin' in your mind
The answer is blowin' in your mind


風に吹かれて / ボブ・ディラン + 一詩人

この国は何回の選挙を
重ねなければならないのだろう
再び偉大となるまでに

禿鷲は
いくつの海を越えなければならないのだろう
樹の上の巣で眠るまでに

砲弾は
何度飛ばなければならないのだろう
再び安らぎを得るまでに
答えはね 友よ
答えは君の中にあるんだよ
答えは君の中に

大地は何年存在できるんだろう
核兵器で焼き払われてしまうまでに
悪人たちは何年存在できるんだろう
沼が乾されるまでに
君は何度振り返るんだろう
そして何度見えなかったフリをするんだろう
答えはね 友よ
答えは君の中にあるんだよ
答えは君の中に

彼らは何度
見上げなければならないのだろう
空が見えるまでに
彼らは
いくつの耳を持たなければならないのだろう
人々の叫びが聞こえるまでに

彼らにはいくつの死が必要になるのだろう
あまりに多くの人々が死んだことを知るのに
答えはね 友よ
答えは君の中にあるんだよ
答えは君の中に

https://www.youtube.com/watch?v=vWwgrjjIMXA

https://www.youtube.com/watch?v=WFxuKQ5YgYI
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