●都議選で自民党は、スキャンダル噴出の逆風で大敗した。安倍首相は、森友、加計問題に関し、周囲の忖度に対して脇が甘過ぎた。
●小池都知事の都民ファーストの会は、「グリーン保守戦略」で保守側から左翼へ翼を拡げ、広く曖昧な投網を打ったマーケティングが奏功し、自民党批判票の受け皿となった。
●小池氏は、いずれ国政に転じ首相への成り上がりを狙うが、その過程で石破氏や麻生氏との連携を図れば、内憂外患を招き、国を滅ぼしかねない。

◆自民党の失態◆
7月2日投開票の都議選で、自民党が大敗し、小池都知事率いる都民ファーストの会が躍進して、提携する公明党と合わせ都議会の過半数を制した。
自民の敗因は、直前の豊田真由子議員の秘書への暴言暴行等のスキャンダル、稲田防衛大臣の「自衛隊として候補者を応援」の失言等が響いたが、根本には前国会での共謀罪の出来の悪さと強引な国会運営、森友学園、加計学園を巡る周囲の忖度に対して脇が甘過ぎた事がある。

共謀罪については、パレルモ条約の加盟条件であるか否かの議論を離れ、北朝鮮危機やテロの脅威が迫る中、筆者は速やかな法制化は必要だったという立場だが、テロと無関係な内容が多数入っているほか、適用要件が曖昧過ぎ時の政権、検察、警察の権力の拡大乱用に繋がる危険性が高過ぎたと考える。
官僚は、放って置けば自省のあるいは官僚組織全体の権限と権益の増大を図る生き物である。
安倍政権は、法務省が作った原案を精査し、削り込み、曖昧性を極力省いて、加えて野党とマスコミへのお土産にする糊代の部分を作り国会に臨むべきだった。

加計学園の問題については、そもそも先端的なライフサイエンス等は、特区でやらず東大等既存の大学の関連学部を拡充して行う方が教員その他の面で実際的だったのではないか。
一方、口蹄疫対策等に関する家畜を診る獣医不足問題には、それとは切り離して都会のペット医に流れてしまっている獣医を戻すために、都道府県の技術専門職獣医の待遇改善と共に、ある程度の市場の飽和化を図るための獣医学部の増員と新設を特区等用いずに、官邸主導で農水省に受給シミュレーションをさせて行うべきだった。
ここに来て安倍首相は全国各地への獣医学部の新設を唱えたが時遅しであり、既得権と票田を持つ獣医師会の顔色を伺いながら、特区で行おうとした事で文科省も巻き込んだ複雑な構図となり、周囲の忖度が生じる隙を作ってしまい脇が甘過ぎたと言える。

◆「グリーン保守戦略」◆
さて、都議選に於ける都民ファーストの躍進だが、築地市場の豊洲移転問題については、小池知事は環境問題で豊洲移転決定を引き延ばし、都議選直前になって「築地は守る、豊洲は生かす」と曖昧な方針を打ち出したが、元々市場が移転しても築地の場外店舗等は残るのだから、観光資源として築地のブランドを守る何らかのものは必要だった。
市場が豊洲に移転し、築地を解体後、食のテーマパークとして再整備するというが具体的には今後の議論に任せるとの事だ。
築地派と豊洲派の両方顔を立てた訳だが、その打ち出すタイミングと、具体策を言わば都民に丸投げした手法は、良し悪しは別として選挙戦術として巧妙だった。
市場機能の分散で非効率との批判が多いが、恐らく「見世物機能」としての小規模な特定の市場機能だけを築地に帰すのか、それが無理なら「すしざんまい」の社長に頼んでマグロの解体ショーを入れて何となく雰囲気を醸し出す等の形が落とし所になるだろう。

これを含め小池都知事の「グリーン保守戦略」は、保守側から左翼へ翼を拡げ広く曖昧な投網を打つというものだ。
このマーケティングが奏功し、自民党批判票の受け皿となった。
この保守側から左翼へ翼を拡げるという戦略は、何も真新しいものではない。
古くは小沢一郎氏が民主党政権樹立に用いたが、小沢氏は今ではさながら地上の欲望に淫したルシファーが天上界に戻れなくなったが如く左翼側の住人と化している。
亀井静香氏も同様に左翼の取り込みを図ったが、安倍首相へコンタクトを図っており綿貫元幹事長に続き自民党へ戻るのは時間の問題と見られる。

なお、保守と左翼を広く曖昧に取り込むという戦略は、エンターテインメントの世界でも拡がっている。
宮崎駿監督のアニメ映画「風立ちぬ」は、零戦の設計者堀越二郎と小説風立ちぬの作者堀辰雄を足して2で割った主人公を登場させた。
保守側からは、百田尚樹氏が「永遠の0」で、特攻を報国よりも家族愛、郷土愛を強調して描き、若干反戦の要素も入れ左翼へも翼を拡げたマーケティングをして、映画を興行的に成功させている。

◆財務省の影と国防の危機◆
さて、中央政界では、麻生太郎副総理は大宏池会を纏め上げ、石破茂自民党元幹事長は安倍首相批判を高め来秋の自民党総裁選へ名乗りを上げる構えだ。
小池氏は石破氏とは新進党在籍、2012年9月の自民党総裁選応援等で関係が近く、連携が噂されている。
小池氏は、2020年7月からの東京五輪の直前に行われるであろう任期切れに伴う都知事選で再選されてしまうと国政選挙へ出馬するタイミングを失うから、首相になるためにはそれ以前に辞任し後継に都政を託したいと考えているだろう。
国政政党設立のタイミング、都知事辞任のタイミング、自民党との間合い、公明党との協力関係、後継都知事候補者選定等については、様々な組み合わせが考えられるが、現時点では頭の体操以上のものではない。

石破氏も麻生氏も、消費税増税を図りたい財務省の意中の政治家であり、その代弁者の様な言動を繰り返している。
また石破氏については、 後に否定しているものの、韓国紙の東亜日報(電子版)が5月23日、慰安婦問題をめぐる平成27年の日韓合意に関し「納得を得るまで謝罪するしかない」と述べたとするインタビュー記事を掲載する等、過度な親韓、新北、親中の傾向が強い。
麻生氏とその後継の岸田文雄外務大臣は、宮沢喜一元首相の流れを汲む大宏池会なのでその傾向は更に顕著だ。

筆者は、将来的な消費税増税を完全否定する者ではないが、社会の仕組みを変えて少子高齢化社会を緩和させて行く事無しに増税によりその経費を賄おうとする財務省の考えは安易なソロバン勘定であり、日本破滅への行進曲であると考える。
なお、余談だが最高のコミュニケーション能力を持つ政治家であり内閣改造で入閣も噂される小泉進次郎氏は、最近「子供保険」という財務省に振付された詐欺紛いの形を変えた増税案を打ち出し、最低の政策立案能力を持つ政治家でもある事を露呈した。

また、北朝鮮危機、それに続く中国の侵略意図が迫る中、石破氏や宏池会に見られる事実に基づかない、または曖昧にした上での過度な謝罪意識は、国防の発動を誤る事に繋がりかねない。

安倍首相は、不十分ながらも安易な消費税増税と自虐史観に抵抗し、かつ潰されずに来た稀有な政治家である。
周囲の忖度に対する脇の甘さは、意固地にならずに真摯に反省した方が良い。
その上でなら、ここ暫くは国政を司る事を任せ得る唯一の政治家と言える。
小池氏は、「自分ファースト」によって組む相手を間違えれば、亡国に加担する事になるだろう。