厨房は不思議の国

大阪府吹田市にある特養、弘済院第1特別養護老人ホーム(定員270人)の厨房物語。

弘済院第1特別養護老人ホームは社会福祉法人みなと寮が大阪市より指定管理者として選任されて運営してます。厨房は委託給食業者の日清医療食品が任されています。

厨房は設計段階で動線とゾーニングが重要視される。清潔区域と汚染区域の区別、倉庫と下処理、盛り付け、洗浄などのゾーニングなどを明確にすることで、衛生管理は徹底できる。その最初の入口になるところが調理室に入出する入口だ。服を着替えて、手洗いの後に粘着ローラーで、作業衣についた埃やゴミや毛髪を取り除きます。きれいにしているつもりでもローラーをかけると結構ゴミが付着しています。

自分で頭の上から足の先まで丁寧にローラーをしますが、背中は無理なので二人一組になってお互いの背中にローラーをかけます。二人で遊んでいるんじゃないですよ。真剣にコロコロ、ゴロゴロ。かけるほどにゴミが付着するので驚きです。

でも、これだけでもまだ不十分なのです。弘済院第1特養の厨房には他の特養の厨房にはない秘密兵器があります。なんと、エアシャワーが設置されているのだ。このエアシャワーは次の機会に紹介します。びっくりしますよ。

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厨房に隣接する栄養士室は管理栄養士さんの居城です。このパソコンで献立表を作成しています。
机の上がきれいなのは管理栄養士らしい清潔感があるのかな。衛生管理上の注意をいつも調理員に言っているので机の上もいつも清掃が行き届いているみたいです(^_^;)
まあ、ここがごちゃごちゃになるといい献立ができません。

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通常はこんな感じで仕事をしています。机の引き出しも整理整頓できているのかな。一度のぞいてみたいものです。

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栄養士業務で一番重要な仕事は献立作成です。献立作成には命をかけています(大げさなと笑わないでください。結構マジに思っているのです)。誰にも文句を言わせない完璧な献立を作ることが目標ですが、なかなかそんなものはできあがりません。

委託給食業者側には3人の栄養士がいるのですが、2番手の栄養士(3年目)にすらこの献立作成という聖域は渡せません。部分的には作ってもらいますが、基本的にはやっぱり献立作成は自分(11年目)でやります。経験がなければオリジナルメニューを継続して作成することは難しいのだと勝手に判断しています。

ここの職場はサイクルメニュー(特養の場合は3ヶ月単位のサイクルメニューを採用しているところが多い)を採用していませんので、委託側の栄養士が好きなように献立を作れるのですがその自由度が実はくせ者で、ご利用者様に喜ばれる献立はなかなか難しいのです。献立はメインのものから考えるわけですが、人気の献立や献立の頻度、流通の品物、材料の値段などたくさんの要因を考慮しながら作る必要があります。メインの献立はひとまず6~7週間をめどに参考してそこに変化を加えて作成していきます。

もちろん、作業工程も考慮しなければならないので勤務シフトとの関係も大切です。勤務表は例えば6/15から7/14までの1ヶ月分を6月初旬に作成します。希望公休2日までです。これでシフトを組むので変更はなかなか大変です。シフトによって献立内容が変わりますからね。これらの要素を考えて作るわけですから、なかなか経験のない人には難しいわけでありその意味、献立作成の力はは栄養士の命といってもいいのだと思っています。できあがるまではいつも苦戦していますが、しんどい部分できあがった献立には愛着があるものです。

しかも、この職場は施設側の考えで1ヶ月前に献立を作るのではなくて1週間前ぐらいに献立表を渡します。施設側の間近な要望にも応えられるのでこんな形になりましたが、それだけぎりぎりなので材料の発注なども大変になってきます。ある意味、日常が緊張の連続なのです。

このようにしてできあがった愛着あるオリジナルメニューなので、どうしても献立表については、施設側の管理栄養士とガチンコ対決になります。よく言えば緊張感のある関係ですね。緊張感がなくなれば良いものができませんからね。委託側栄養士3人に対して施設側栄養士は2人。3対2で委託側の勝ち。委託側栄養士の年齢和は81歳、施設側は71歳なので委託側の勝ち。栄養関係のトップは33歳対43歳で施設側の勝ち。しかも、気力というか覇気は委託側が4で施設側が6で施設側の勝ちかな。トップはどちらも気が強そうだけど、施設側は業務委託をする側だから地の利の有利があるのだと思う。けんかをするわけではありませんので、ガチンコと言ってもにらみ合うわけではありません。真剣に意見交換をするって考えてください。

献立を毎週施設に提出する時はどきどきします。学生の頃にレポートを先生に提出するみたいな感覚です。朱色で添削だらけのレポートなんか返ってきたらがっくりですものね。献立表は毎回、施設の栄養士から1~2点は指摘を受けるのでその都度訂正します。一人で作成しているのでそれは仕方ないことと思っていますが、時には作業工程上無理な要求もあり、その時は「できません」と粘って断ります。このあたりの関係が緊張するわけです。駆け引きですですから、ポーカーフェイスも使うし下手に出たり強気に出たりと戦術を立てます。もちろん、断るときは丁寧な説明をしますのでほとんどの場合は問題なくコミュニケーションが取れます。時々、施設側の管理者が無茶な要求をする時がありますが、これは仕方ないと思って表面上は折れています。(でも、できないものは現場で修正しています。結果を出せばいいのですからね)

ただ、自信作の献立表の場合は注文をつけられると、ちょっとイラッとします。簡単に別のものと言いますが、その材料を使った献立は全体のバランスの中ではベストチョイスであり、それ以外の組み合わせにすると調和が崩れるのです。そのあたりを分かってもらうためにこちらからの反論をする時もありますが、委託する側とされる側との駆け引きは微妙なものがありそこはかとなく心得ています。

でも、委託側の栄養士とか調理員には正直言って口出しはさせません。献立表作成はある意味独裁政権であり、みんなの意見を聞いていたら良いものができあがらないのです。一人で作るから質の高いものができるのです。ある程度の満足のいく献立表を作ることができるにはやはり5~6年はかかります。2番手の栄養士はまだまだ今のとこは勉強中です。11年たっても未だに完璧と思うような献立はなかなかできませんが、時々うまくいったと思える献立を立てることがあります。その時は栄養士室の中で一人にんまり笑っています。(ある意味、栄養士は孤独なのであって、この孤独に耐えた者だけが良いものを作れるのです)

調理過程で栄養士が考えているものとイメージが違ったものができる時があります。その時は基本は作り替えたりもしますが、理にかなっている時は折れることもあります。調理員が現物をイメージできなかったり、献立を知らない時は写真でも説明しますが一番いいのは食べに行ってもらうことです。そういうことをする中で栄養士と調理員のイメージの差を埋めていきます。この差が大きいとやっぱり美味しいものはできませんからね。

献立作成、これはやっぱり栄養士にとっては宝物であり、ここにこだわることでみなさんに喜んで頂ける食事を提供していきたいと思っています。弘済院第1特養は270人分の食事にプラスしてお昼は職員食が50食あるので、320食ぐらいを毎日作っています。全員が満足して頂けるものは作られませんが、最大限満足してもらえるものは工夫をすることで作れると信じています。直営の食事に負けない委託給食会社の新しい質の食事をこの施設で考えていきたいと思っています。

勝手なことばかり書いていますが、施設の栄養士さんにはいつも感謝しています。これは本音ですからね。弘済院第1特養をトップレベルのサービスの質にしていくために一緒にがんばりたいと思っています。

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《吹田の特養、弘済院第1特別養護老人ホーム食事サービスに力を入れています。特別献立、イベント食が年間70回も実施されています。もちろんオリジナルメニューです。厨房を任されている日清医療食品も全力で高品質の食事サービスに取り組んでいます。》

福祉施設では温冷配膳車が使われています。
厨房で作った食事を、温かいものは温かく、冷たいものは冷たくして配膳車で各階の食堂に運ぶわけです。
弘済院第1特養は270人という定員ですので、4つのフロアに2台ずつの温冷配膳車が準備されています。
1台が36食分入ります。だいたいが24膳から60膳ぐらいまで入るタイプが多いので36膳は中ぐらいなのですが、それでも大きく感じます。

では、質問です。
「36食が入る温冷配膳車は一般的にいくらぐらいするのでしょうか」
1.1台100万円
2.1台300万円
3.1台1,000万円

【介護支援専門員の正答率は33.3%でした。】

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答えは、2番の300万円です。
ただし、手動型、電動型の差などもあり、36膳タイプでだいたい250万円から500万円すると思って間違いありません。

一般の感覚からすると結構高いですよね。
なんか高級車が買えそうな値段です。
介護職員はこの値段がよく分からないので、この配膳車をよく壁面にぶつけたり、エレベーターにぶつけて壊します。修理費が高いのが理解してもらえないのが残念です。自家用車ならこんなにぶつけたりしないと思うのですが、温冷配膳車は軽く見られているのが悲しいです。

盛り付け室で盛り付けられた食事が、この温冷配膳車に運ばれてきて管理栄養士や盛り付け担当者がセットしていきます。普通食や刻み食やミキサー食などが次々にセットされ、最後にごはんが入ります。温かいものは65度、冷たい物は5度に温度設定をしています。

セットされた温冷配膳車は専用のエレベーターで各階に運ばれるのですが、ここで委託給食会社の管理栄養士がゲームの最終ステージのラスボスのように登場します。1台ずつ全ての食事のチェックをします。1台につき約5分間のチェックが入るので、全部が終わるのに40分がかかります。ここは集中する時間であり、緊張が走ります。ここで、食札と中身が間違っていたりすると、「やり直し」と厳しい指示が飛びます。ここは調理員に厳しくならなければ、管理栄養士としてはなめられるので少し演技をしてでも強気で注意します。もちろん間違いの指摘だけではなくて、盛り付けた段階でお皿が汚れていたりしても当然注意してきれいにしてもらいます。

温冷配膳車が思ってた以上に価格が高いことと、厨房のラスボスの手強さを改めて認識しました(^_^;)

厨房の中では回転釜はスチコン次に大切な調理器具です。
弘済院第1特養の調理室にはこの回転釜が3台もあります。
この釜で煮物から炒め物まで幅広い調理に対応しています。
炒め物ができあがったら他の容器に移します。この時回転させて移しやすくするのです。
体操競技の鉄棒みたいに1回転するわけではありません。あくまで斜めにして使いやすくするだけです。

お味噌汁は回転釜1台で300人分を作ります。他の釜では炒め物などを同時並行で作るわけです。
ここで、集団給食のお味噌汁の作り方を、こっそり教えましょう。
1.昆布を入れてだしを取ります。昆布を水に浸して中火で温めます。沸騰寸前に昆布は取り除きます。
2.少し差し水をして温度を下げてから鰹節を加えます。鰹節は濾す作業が必要なので時間がないときは鰹だしの素の顆粒が活躍します。
3.次に味噌を入れて味を調整します。
4.その後に具材を入れます。堅いものは別の回転鍋で柔らかくしておきます。
5.最後に味噌を調整して、味噌汁の味を確定します。

では、ここで質問です。
「味噌汁の味を最終決定するのは誰でしょう」
1.約25人の調理員のトップに立つ調理主任(53歳)
2.施設側の2人の管理栄養士(43歳、28歳)のどちらか
3.委託給食会社の責任者兼管理栄養士(33歳)、献立も作ります

【介護職員の正答率は21%でした。】

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答えは、3番の委託業者側の管理栄養士でした。
経験豊富な調理主任を差し置いて、味の最終決定をするなんてなんかすごいですよね。
因みに僕は1番と思ってました(^_^;)


《吹田の特養、弘済院第1特別養護老人ホーム食事サービスに力を入れています。特別献立、イベント食が年間70回も実施されています。もちろんオリジナルメニューです。厨房を任されている日清医療食品も全力で高品質の食事サービスに取り組んでいます。》

この機械、舌をかみそうな名前です。
温度調整付きの大きなフライパンのようなものです。
炒め物、煮物、焼いたり、蒸したりもできます。
ある意味、万能の調理器具です。
お好み焼きなんかは、直接底面に油を引いて焼きます。
底面はステンレスと鉄の合板でできています。
最近はスチームコンベクションが幅をきかしているので、あまり出番がないのが寂しいです。
先日は、豚丼の豚肉を焼きました。

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《吹田の特養、弘済院第1特別養護老人ホーム食事サービスに力を入れています。特別献立、イベント食が年間70回も実施されています。もちろんオリジナルメニューです。厨房を任されている日清医療食品も全力で高品質の食事サービスに取り組んでいます。》


調理室の入室は衛生管理上、厳重にチェックしています。
最初の関門は手洗い。
左側にある蛇口の業務用洗剤で30秒手洗いを行い、真ん中の水の蛇口で30秒すすぎます。
洗い方の図表もあり、爪も含めてきれいに洗浄します。これを2回繰り返します。
その後、右側の消毒用アルコールを手指に噴霧します。

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帽子のかぶり方も細かい指示があります。
格好をつけたかぶり方なんて認めません。ちゃんと髪の毛は隠してください。
責任者の管理栄養士は厳しいのだ。

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《吹田の特養、弘済院第1特別養護老人ホーム食事サービスに力を入れています。特別献立、イベント食が年間70回も実施されています。もちろんオリジナルメニューです。厨房を任されている日清医療食品も全力で高品質の食事サービスに取り組んでいます。》

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調理室用のまな板の保管庫です。

まな板は側面にテープで色分けをしていて、黒が刺身用、白が果物と野菜用、黄が調理後の食品を切る(卵焼きを切ったり、加熱後の肉など)まな板です。大が3個と小が2個あります。
もちろん、仕込み用のまな板は別の場所に保管されています。

包丁も5本あります。こちらも食品によって色別で分けています。

《吹田の特養、弘済院第1特別養護老人ホーム食事サービスに力を入れています。特別献立、イベント食が年間70回も実施されています。もちろんオリジナルメニューです。厨房を任されている日清医療食品も全力で高品質の食事サービスに取り組んでいます。》

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野菜を切るにはこの機械が必要でーす。もちろん、手でも切りますけどね。
人参、大根、キャベツなどはこの中に入れると千切りになって出てきます。
千切り専用のスライサーです。

厨房のミーティングは1日2回、9時と15時に行います。

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みんなで会社の基本方針を読み上げます。毎日しているので暗記しています。
厨房の中は緊張感がいっぱいです。

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今日の献立内容と注意事項、連絡事項、前日のミスの反省点などについても話します。
管理栄養士から献立の説明と作業過程についてこまかな指示が飛びます。
早口なのでちょっと聞き取れなかった(^_^;)


《吹田の特養、弘済院第1特別養護老人ホーム食事サービスに力を入れています。特別献立、イベント食が年間70回も実施されています。もちろんオリジナルメニューです。厨房を任されている日清医療食品も全力で高品質の食事サービスに取り組んでいます。》

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