kt60の小説ブログ

小説家になろうで「物理さんで無双していたらモテモテになりました」などを書いていたkt60です。 暫定的に引っ越してます。

「そそっ、そのへんにしておかないかっ!」

 リアといちゃいちゃチュッチュをしていたら、ライナから怒られた。
 見ていて恥ずかしかったのか。真っ赤な顔になっている。

「こっ……この招待席では薄い結界があり、こちらから観客を見ることはできても、観客の側からこちらを見ることはできん」
「そうだったんだ」
「知らずにしていたのかっ?!」
「うん」
「はぐうぅ……っ!」

 だけどそれなら、いろいろやっても問題ないのか。

「それでもここは、公共の場だ。わたしがヤキモチで言っている部分も多々あるが、主張自体に大きな間違いはないというのも事実であろう」

 ライナはグッと腕を組み、神妙な空気を作って言った。
 けれどちっちゃい。
 ライナちっちゃい。
 なので正論を言っている姿も、愛らしくって仕方ない。

 オレはライナのほっぺたを、ぷにっと突ついた。
 ちっちゃいライナのほっぺたは、おもちみたいにふんわりしてた。
 すべすべなのに弾力があって、実に突きがいがある。

「キキッ、キミは、わたしの話を聞いていなかったのか?!」

 ライナが、もっともな怒りを見せた。
 だけどかわいい。
 ライナかわいい。
 オレはライナのほっぺたを、ふにふにと摘まんだ。

「はぐうぅ~~~~~~~~」

 ライナが唸り、怒りの涙が滲んだ瞳でオレをにらんだ。
 なのにかわいい。
 ライナかわいい。

 ライナはとっても怒ってる。オレのことをにらんでる。
 でもその顔は、上目遣いにしか見えない。
 それだからオレは、ライナのほっぺをふにふにする手をとめることができなかった。

「わたしの話を聞けえぇ!」

 ライナは腕を振りあげ、○(><)○になってオレを怒鳴った。
 そんなライナも、やっぱりとってもかわいかった。
 そしてライナとイチャついてると、ライナの懐のカードが鳴った。

〈予選Cブロック、第三試合が始まります。予選Cブロック、第三試合が始まります。
 試合場のほうにまでお越しください。試合場のほうにまでお越しください〉

「わたしの出番か……」

 ライナはポツリとつぶやき、立った。

「それでは、行ってくるが……」

 ライナはジト目でオレを見る。

「行ってらっしゃい。ライナ」
(………。)

 オレが小さく手を振ると、リアも小さく手を振った。
 かわいい。
 幼稚園の先生にさようならをする子どもみたいだ。
 はたから見れば、オレたち三人で親子にみえるかもしれない。

「…………」

 ライナも、それは意識したらしい。ほんのりとほっぺたを赤くした。

「そそっ、それでは、行ってくるぞっ!」

 最後はテレを隠すみたいに、そっけなく背を向けた。
 ただし尻尾は、パタパタ左右に振られてた。
 かわいい。

 そしてライナが立ち去ると、リアは会場のほうを見た。
 オレのヒザに乗ったままだが、目つきはわりと真剣だ。

「そんなに興味があるのか? ライナの試合に」
(こくっ。)

 リアは、眉を逆八の字にしてうなずいた。

(ラナさんより強ければ、ラナさんより強い人からも、ラクトのこと………守れる。)

 そういう理由か。

(こくっ。)

 どうしよう。なんかすっごくうれしいぞ。
 胸の奥があったかくって、ぽわぽわとする。心の真ん中でタンポポの綿毛が飛んでるみたいな気分だ。
 リアはオレのこと大好きだけど、オレもリアのこと大好きだなぁ……と実感する瞬間だ。
 ただオレは、ライナがリアに負けたくないと思っていることも知っている。

(オマケにリアは、ライナと違って胸もあるしなぁ……)

 思ったオレは、リアの胸に手を伸ばす。
 手のひらからは、ほんの少しあまるぐらいの大きさの胸。サイズで言えばCに近い、美乳と巨乳のあいだのおっぱいの触感が伝わってきた。

(んっ………!)

 暴力的に揉みほぐすというよりは、持ちあげるように包み込んで、もにゅもにゅふにゅふにゅ揉みまくる。
 この世界には、ブラジャーがない。
 だから衣服の上から揉んでも、限りなく生のそれに近い触感が味わえる。

(んっ………。んっ………。)

 恐らく恥ずかしいのだろう。リアはほっぺを赤くして、いじらしく身をよじった。
 しかしオレの上に座っている状態でそれをされると、リアのとってもかわいいお尻が、オレの体の、描写ができないところに当たる。
 リアもそれは感じたのだろう。

(んぅ………。)

 と顔を赤くして、小さな声で言ってきた。

「………えっち。」

 しかしイヤではないらしい。
 リアは顔を赤くしつつも、オレの右の手首を掴んだ。
 そしてオレの右手を、太もものあたりに|誘《いざな》った。

(ラクト、えっち………です。)

 などと言いつつ、こんなことをやってくるリアはかわいい。
 オレはリアの太ももや、太ももの近くのえっちぃところに、たっぷりとエロいことした。

 蒸気が沸いて、不愉快なほどに蒸し暑い控え室。
 リアの対戦相手となるマッスル=ハードマンが言った。

「次の対戦相手は女の子だよ。双子の兄者」

 兄のマッスル=ブレインマンは、腹筋をしながら答える。

「次の対戦相手は女の子だね。双子の弟」

 ふたりの関係は二卵性の双子で、名前は通り名である。
 しかし通り名を使いすぎて、今では本人たちでさえ、元の名前を忘れた。

 弟のハードマンは黒光りするビキニパンティを履いた、黒光りする|筋肉《マッスル》。
 兄のブレインマンは、黒光りするビキニパンティに白衣を着込んだ、黒光りする|筋肉《マッスル》である。

「でもあの女の子。すごく強い女の子だよ。双子の兄者」
「うむあの女の子。すごく強い女の子だね。双子の弟」

 フンッ、フンッ、フンッ。
 ふたりは会話のあいだでも、トレーニングを欠かさない。
 ハードマンがダンベルを上下させれば、ブレインマンは腹筋を鍛える。

 ふたりの体が動くたび、汗がシュピシュピ飛び散った。
 散った汗は地面に落ちて、蒸気となって部屋を蒸す。
 蒸された部屋には、陽炎も立っていた。

「勝てる気がしないよ。双子の兄者」
「勝てる気がしないね。双子の弟」
「困ったよ。双子の兄者」
「方法はあるね。双子の弟」
「それはなんだい? 双子の兄者」
「それはこいつさ。双子の弟」

 ブレインが腹筋をとめた。白衣から白いケースをだす。
 フタをあけると、細い注射器をでてきた。

「この『注射器で食べるおいしいクスリ』を食せば、筋肉がモリモリになるんだね。双子の弟」
「それはすごい薬だよ。双子の兄者」
「夢の世界に現れた『神』を名乗る男が、作り方を伝授してくれたのさ、双子の弟」
「それはどんな存在なんだよ? 双子の兄者」
「それはよくわからないのさ、双子の弟」
「とても怖いよ、双子の兄者」
「それでも効果は間違いないね、双子の弟」
「わかったよ、双子の兄者」

 ブレインマンの語った言葉は、紛れもない真実だ。
 夢の世界に現れた、神を名乗る謎の男が、ブレインマンに薬の精製法を教えた。
 神は――神というにはあまりにも禍々しい雰囲気を放っていたが、それと同時に、呑まれるようなカリスマ性もあった。
 それゆえにブレインマンは、目覚めたあとも逆らうことができなかった。

 ハードマンは注射器を受け取ると、自分の首筋に刺した。
 ボゴンッ、ボゴボゴ、ボゴンッ。
 黒光りした筋肉が、爆発的に隆起した。

「生まれ変わったような気分だよぉ……。双子の兄者」
「生まれ変わったのだね……。双子の弟」

〈Cブロック一回戦が始まります。Cブロック一回戦が始まります。
 リングのほうへご移動ください。リングのほうへご移動ください〉

「行くとしようか。双子の兄者」
「行くとしようね。双子の弟」

 ふたりは連れ立って歩き、控え室をでた。


 悪夢の時が近づいていた。


   ◆

「次の試合は、リアか……」

 オレのライナがトーナメント表を見つめ、意味深につぶやいた。

「その通りだけど……それがどうかしたの?」
「このトーナメント表を見てもらえればわかると思うが、
 わたしとリアが順調に勝ち進んだ場合、三回戦目でぶつかるのだ」
「あ、ホントだ」

「そしてわたしは、今回の大会でキミ以外の知り合いには勝ちたいというか……。
 負けるわけにはいかんというか……。
 戦う力でも負けるわけにはいかんというか…………」

 ライナは自身のつるぺた貧乳を押さえて、はぐぅ……と縮こまった。
 目じりには、本気の涙もにじんでる。
 かわいい。
 そしてセシリアが言った。

「しかしリアさまと対峙なされているハードマンさまは、少々奇妙なご様子ですわね」
「そうなのか?」
「前回の大会はもちろん、先に予選を勝ち抜いた時より、禍々しい空気を、お放ちにならっておいでですわ」
「確かに……セシリア=フェアゲッセンが言う通り、漂うマナは、若干不穏だ」

 確かに言われて見てみると、ヘドロのようにドロドロとした雰囲気が、黒光りする半裸体からもれでているようにも見える。
 強いのか弱いのかまでは不透明だが、不透明という事実自体が、底の見えない古井戸を眺めているかのような、原始的な恐怖を想起させてやまない。

(………。)

 ハードマンに対峙しているリアも、逃げたそうにしている。
 もっともリアは、相手の雰囲気がどうこうというより、油なオイルでテカテカ光る、マッスルオブ・アブラギッシャーな姿に怯えているといった感じだ。
 実際オレも、あのマッスルとは戦いたくない。
 というより、さわりたくない。

 それでもリアは、オレのほうをチラりと見ると、すぐに気を取り直した。

(こくっ。)

 とうなずき眉を逆八の字にして、ふたりのマッチョに対峙する。

『それではヴァーラスキャルヴ学園武芸会本戦、Cブロック一回戦…………始めえぇっっ!!』

 司会の女が高らかに叫び、リアの戦いが始まった。

「|憤怒摩羅《ふんぬまら》AAAAAAAAAAっ!」

 始まるや否や、ハードマンが突っ込んでくる。
 テカテカと黒光りした巨大なる筋肉が奇声をあげて突っ込んでくるサマは、悪夢の具象化とも言える光景であった。

「らばぁ!」

 黒光りするハードマンが、|右腕《うわん》を派手に振りおろす。
 大ナタのような一撃に、リアは本気でイヤそうな顔をした。
 ハードマンの腕が、まるで寸止めしたかのような形で止まる。

「なっ……、馬我っ、なっ……」

 しかしそれがハードマンの意思でないことは、なによりもハードマンの表情が物語っていた。
 力を必死に込めているようであるが、リアのそれには敵わない。

(ん~~~~~~~~~っ!)

 苦いクスリを飲まされたみたいな顔をしたリアが、グイッと両手を前にだす。
 相手に触れることはない、寸止めの突き押し。
 それでもリアの力から言えば、かなりの近距離。

 ドォンッ!

 ハードマンは吹っ飛んだ。
 後方にいた白衣の筋肉、ブレインマンも巻き込んで、リングの外に飛んでいく。
 ふたりはリングと観客席の中間にある、見えない結界にぶつかってとまった。

 リアの力は特性として、相手との距離が近づくほどに威力を高める。
 そんなリアに接近戦を挑んだりすれば、当然の結果と言えるだろう。
 もっともそれは、リアのことを詳しく知ってる、オレの目線から見たお話だ。

 司会の女や会場は、想像以上の瞬殺劇に呆気に取られ――。

『瞬・殺うぅーーーーーーーーーーーーーーーーっ!』

 ワンテンポ遅れてから叫んだ。
 会場もその一叫びで、火がついたネズミ花火のごとく盛りあがる。
 リアの敗戦フラグみたいなものが立っていた気がするけど、そんなことはまるでなかった。
 フラグもへし折るリアっょぃ。

『すさまじぃぞぉ、リア選手! 強すぎるぞぉ、リア選手!
 可憐な姿でそのパワーとなると、司会・実況のわたくしとしては、今後の注目選手としてインタビューを…………あれ?』

 苛烈に叫んだ実況であるが、リアの姿は既になかった。
 ではどこにいるのかというと、オレの腕の中である。
 試合が終わると即行で駆け寄って飛び込んできた。

(むきむきのひと、こわかった………です。)
(そうか。怖かったか)
(こわかった………です。)

 オレの胸板に顔をうずめて、背中に小さな手を回し、オレの背中を
(ぎゅううぅ~~~~~~~~~)っと強く握り締めてる。

 かわいい。
 オレが背中と頭を撫でてやると、(ん………。)と、オレの胸板に顔をこすらせたりもした。

(だいすき………です。)
(らくとのことは、だいすき………です。)
(せかいで、いちばん。だいすき………です。)

 本当にかわいい。

『ええっと……』

 司会の女はこちらを見てたが、気を取り直して叫ぶ。

『なにはともあれ、ヴァーラスキャルヴ学園武芸会、Cブロック初戦を勝ち抜いたのは、リア選手だあぁぁぁぁぁっ!』

 しかしそんな声はどこ吹く風で、リアはオレに、すりすりべたべた懐きまくって、マッチョに迫られてしまった悪夢の傷を癒やしていた。
 オレの膝の上に座って、オレの瞳を(じっ………。)と見つめて――。

(ちゅっ………。)

 と、唇へのキスもしてきた。

(ちゅっ。)
(ちゅっ。)
(ちゅっ………。)

 何回もしてきた。
 右のほっぺたや左のほっぺ、さらには耳たぶになんかもキスをしてきた。
 特に耳たぶへのキスの際には、リアの体が押しつけられる格好になって、リアの胸がオレの胸板に、(ふにゅうっ………♡)と当たった。
 それでもリアは、オレにべたべたくっついた。
 それなのでオレも、リアの頭や背中に、お尻も撫でた。


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「オマエもサンドイッチか」
「摘まやすさと運びやすさを考えれば、ある種の必然とも言えますわ……」

 食べてもらえるかどうか、不安に思っているのだろう。
 セシリアは、しょんぼりとして答えた。

「一応試合の前だし、あんまり大量に食うわけにはなぁ」
「みいぃ……」

 オレが難色を示してみると、セシリアはうなだれた。
 頭のかわいいネコミミも、しゅうぅん……っと垂れる。

 オレはチラりと、セシリアのサンドイッチを見やった。
 見た限り、普通のサンドイッチであった。
 カミーユに比べると形はあまりよくないが、『慣れていないけど、がんばって詰め込みました』といった感じはでている。

「わかったよ……」

 オレは不承にうなずいた。
 たったそれだけのことで、セシリアの顔に光が差した。
 瞳をキラキラ輝かせ、ほわあぁっと温かな笑みを浮かべる。
 オレもフフッと、おだやかな笑みを浮かべる。


「オマエのサンドイッチはゴミ箱の中にしまっておいて、あとで捨てるよ」


「なんということをおっしゃるのですのっ?!
 ラクトさま、わたくしのことをいったいなんだと思っていらっしゃるですのっ?!」
「オレを相手に勝つためだったら、毒とか盛っても構わないと考えている女」
「おひどいですわぁ!」

 セシリアは叫んだ。

「確かにわたくし、そのような思考は現在進行形で所持してますわっ!
 しかしそのお弁当を作った時には、一切考えておりませんでしたわぁ!
 そのお弁当は、ラクトさまのためだけを想って朝の四時から一生懸命お作りしたものですわぁ!」

「いやオマエ、さっき自分でそれ否定してたじゃねぇか」
「みゃ……っ!」

 指摘されて気がついたらしい。
 セシリアは、ボンッと真っ赤に爆発し、あわてふためき必死に叫ぶ。

「たたたっ、確かにそれは、ラクトさまが正しいですわっ!
 わたくしがラクトさまのために手料理をお作りするなど、ありえるはずがございませんものっ!
 ですからですから、手料理を作ったというのは――――リーシャ! そう、リーシャですわっ!」

 はい?

「わたくしリーシャの手料理を、わたくしが使ったものとカンチガイしたのですわぁ!」

 いやオマエ、それどんなカンチガイだよ。

「つーか本気で、それが言い訳として通ると思ってんのか?」
「もちろんですわぁ!」

 セシリアは、胸に手を当て言い切った。

「わたくしとリーシャは、心よりも深い絆で結ばれた一心同体の身!
 ならばリーシャが作ったサンドイッチをわたくしが作ってしまったとカンチガイするのも、ありえないとは言い切れませんわぁ!」

 なにそれ、こわい。
 そんな亜空間で作られた料理とか、毒がなくても食べたくないぞ。
 なんてオレが思っていると、アリシアが前にでた。
 バスケットを抱えて、オレを見上げる。

「申しわけありません、ラクトさま。
 このサンドイッチは、わたしが作ったものでした。
 おねぇさまと一心同体であったわたしは、自分が作ったサンドイッチをおねぇさまが作ったものとカンチガイしてしまっていたようです」

「そうなのですわっ! そうなのですわぁ!
 そのサンドイッチは、リーシャが作ったものなのですわぁ!」

「リミィの目には、セシリアさまのお手製に見えたのですが……」
「それはリミィの錯覚ですわぁ!」
「そうだったのですか…………!」

 アリシアはどう見ても演技だが、リミィは本気でうなだれた。
 このあたり、流石のアホの子主従である。
 しかしアリシア、こんなアホの子な言い訳にも付き合ってあげるとか……。
 いい子だなぁ、本当に。

 そういう意味では、アリシアのためにも食べてやりたい。
 オレはサンドイッチを指で摘まんだ。
 カットされたピンクのイチゴと、白い生クリームが入ったフルーツサンドだ。

 あまり馴染みはない組み合わせだが、パンにイチゴジャムを塗る文化があることを思えば、『アリ』な組み合わせだと思う。
 っていうかピンクと白のコントラストは、見ているだけで食欲をそそる。
 セシリアが、胸に手を当て言ってくる。

「わたく……リーシャは料理が得意ですのよ!
 生のタマゴを、片手で割ることもできるのですのよっ!」

 セシリアの顔は、喜色満面に得意げだった。
 実際それが事実なら、なかなかすごいとも思う。
 だがオレは、冷淡に尋ねた。

「オチは?」
「みぃ?」
「そのお話にくっついているオチはなんだって聞いてるんだよ」
「それは……」

 思い当たることがあるのだろう。セシリアはうつむいて、指をもじもじと絡ませた。
 空気を察したアリシアが答える。

「三回に一回は、タマゴのカラが混ざります」
「リーシャ~~~!」
「ラクトさまがお尋ねになった以上、隠匿は偽りと変わらないと思います」
「みいぃ…………」

 アリシアの正論に、セシリアはしょんぼりとうなだれた。

 そうなんだよなぁ。
 こうなんだよなぁ。
 大体の話に要らんオチをつけてくるのが、セシリアっていうアホの子なんだよなぁ。

 顔やスタイルは抜群にいいが、中身はセシリア。
 ハープやフルートの演奏は一級品だが、超のつくドオンチ。
 歌の感想の一番目に、『まず、頭が痛くなります』と言わなくてはならないレベル。

 そういうオチをつけてくるんだよなぁ。
 それなら見た目はおいしそうなこのサンドイッチにも、オチがあると思うのが当然であろう。

「みいぃ……」

 しかしセシリアは両手を合わせ、祈るようにオレを見ている。
 その表情を見るに、朝の四時に起きたというのも、一生懸命作ったというのも、ウソや誇張ではないのだろう。
 オレはしばし悩んだ末に、サンドイッチをバスケットに戻し、ひとつの提案を発した。

「オレが食べると食べないのあいだを取って、犬かブタのエサにするっていうのはどうだ?」
「いったいどんな中間ですのっ?! わたくし意味がわかりませんわぁ!!」

 セシリアが珍しく、もっともな反応を見せた。
 食うと食わないの中間がそれっていうのは、確かにおかしな話ではある。

「けどオマエ、作ったあとに味見はしたのか?」
「それはもちろん……」

 セシリアは、無意味なタメを無意味に作り、胸に手を当てて叫ぶ。


「一切やっておりませんわ!」


「なんでじゃバカタレ!」
「みいぃ~~~~~~~~~~~~~~~っ!」

 オレはセシリアのほっぺたをつねった。
 セシリアは、オレにつねられたほっぺたをさすり、くすん、くすんと鼻をすすって答える。

「できた料理は、まずラクトさまに食べていただきたかったからですわぁ……」

 そういう理由か。

「となるとちょっと責めにくいな……」
「ほっぺたをつねったのは、責めたうちに入りませんのっ?!」
「いいからまずは、自分で食えよ」

 オレはアホみたいに大口を開けたセシリアの口に、サンドイッチを突っ込んだ。

「もごっ、んぐっ、んっ…………!」

 セシリアはなぜか、エロいものでも咥えさせられているみたいに頬を赤らめ、サンドイッチを咀嚼した。
 ゴクリと飲んで、小さな唇を両手で押さえる。
 さらに耳をキュウゥン……と垂らし、小刻みに震えた。
 それはやたらかわいく、オレは思わず怒鳴ってしまった。

「なんだよ! その反応!」
「ラクトさまこそ、今わたくしにおこなったのは、
 仲睦まじき男女がおこなうという、『はい、あーん』では…………」

 セシリアは、つぶらな瞳を可憐に閉じて、みいぃ……としおれた。
 かわいい。
 セシリアなのに、やたらかわいい。
 オレの顔が熱くなり、心音も高鳴った。
 しかし今さらセシリアに『かわいい』と言うのは、恥ずかしくって仕方ない。

「んなわけあるかっ! ばかっ!」

 誤魔化すように叫び、セシリアのサンドイッチを食べる。
 ふわりとしたパンの触感に、とろけるようなクリームの甘み。
 そしてイチゴの甘酸っぱさが、口いっぱいに広がった。
 それでいて、後味は爽やかだ。

 これは……。

「うまい……?」
「本当ですのっ?!」

 セシリアの顔が、一気にほわあぁっと明るくなった。
 お尻についてる猫の尻尾も、ふりふりかわいくゆれている。
 かわいい。
 本当にかわいい。
 オレは直視できなくなって、セシリアから顔をそむけた。

「オオッ、オレがオマエに遠慮してやったことが、過去に一度でもあったかっ?!」
「ございませんわぁ!」

 何気にひどい話にも、セシリアは、満面の笑みで同意した。
 なんかもう、オレに恋してるとしか思えないほど、キラキラした目でオレを見ている。

 かわいい。
 マジでかわいい。
 外見だけのお話じゃなくって、中身もかわいい。
 美人で巨乳でネコミミでかわいいって、はっきり言って反則だ。
 呪いでもかけられたみたいに、セシリアの顔から目を離すことができない。

 なんてオレが思っていると――。

「ああっ、あんまり量を食べたらいけないんだよなっ! オマエ!」

 カミーユが、不安げに言ってきた。
 オレがセシリアのサンドイッチに夢中になって、自分のを食べてもらえなかったら……みたいに考えている顔だ。

「カミーユッ!」

 オレは、呪縛を解いてくれたカミーユに抱き着いた。

「うわっ! ひゃっ、なななっ、なにするんだよっ! くそばかっ!
 ボボボ、ボクはオトコだぞっ?!」
「わかってる。うん。わかってるから……」

 オレはほうっとため息をついて、カミーユのやわらかな体を全身で感じた。
 そして気持ちを落ち着かせ、カミーユの頭をポンと叩いた。

「それじゃあセシリアのサンドイッチといっしょに、カミーユが作ってくれたのも食べるか」
「べべっ、べつに、無理して食べるとか、そういうのだったら、要らない…………からな?」

 うつむき気味に言うカミーユは、うかがうような上目遣いだ。
 日ごろからカミーユをいじりまくっていて気がついたことだが、カミーユは、根っこがかなり臆病だ。
 オレにやたらツンツンするのも、素直に甘えて拒絶されたら……と考えてしまっているせいだ。

 しかしオレに嫌われることを人一倍怖れてもいるので、オレがちょっと強めに押すと、あっさり折れる。
 むしろオレに強く押されて、折られてしまうのを待っているような節もある。
 オレはニコッと笑って言った。

「いつものオレを見ればわかるだろ?
 オレはしたいからする。やりたいからやる。食いたいから食うってやつだ。
 気を使って無理に食べるなんて、絶対にしないよ」
「そんなふうに言われても、うれしくなんかないんだからな……」

 カミーユは、やはり素直ではないことを言った。
 しかし語気はとても弱くて、ほっぺたも赤く、瞳はツ――と伏せられていた。
 そして尻尾は振られてた。
 ふり……。ふり……。ふり……と、幸せそうに振られてた。
 かわいい。
 それからオレは、会場の中の、比較的平たくなっているゾーンに移動した。
 移動する途中では、セシリアの頭を撫でてやったりもした。

「みいぃ…………っ!」

 セシリアは、幸せそうな顔をした。
 これですべてが報われましたわと言わんばかりの表情だった。

 オレたちは、輪になって座った。

「ささっ、先ほどの、お返しですわっ!」
「ラクトさん! お口の横に、ソースがついてしまっています!」

 セシリアがオレにサンドイッチを食べさせてきたり、ロミナがオレの口の横についてるトマトソースをぬぐったりした。
 オレはオレで、リアの口元にサンドイッチを持っていったりもした。

(ん………♥)

 リアはオレの右手を両手で持って、もこもこと食べた。
 食べ終わったあとは、オレの右手の、ソースがついてしまった指をじっと見つめて、口に咥えこんできた。

(はむ………。ちゅる………。ぺろ。)

 丁寧に舐め取ってから、満足そうに唇を離す。
 リアの唇や舌は、とても気持ちがよろしかった。
 そしてリアの行動は、衝撃的だったらしい。
 ライナとリンディスとシャルルが、持っていたサンドイッチを落としてしまった。

「ぜなっ!」
「はうっ!」

 リンディスの手から落ちたサンドイッチはリンディスの巨乳に当たって弾み、シャルルが持っていたサンドイッチは、シャルルの巨乳の根元に乗った。
 しかしライナのサンドイッチは、何物にも当たることなく虚空を通り、ライナの太ももの上に落ちた。

「はぐぅ……」

 ライナが心底哀しげに、太ももに落ちたサンドイッチに、シャルルとリンディスの胸を見つめた。
 かわいい。

「落としたらダメじゃん」

 オレは白い布を持ち、ライナとリンディスのソースをぬぐった。
 ライナの太ももについたうらやましいソースを揉みぬぐいながら、リンディスの胸を――ではなく、胸についたうらやましいソースをぬぐう。
 しっかりと鍛えてあるライナの太ももと、男勝りな性格にギャップを添えるリンディスの巨乳は、甲乙つけがたいほどにすばらしかった。

「ふわあっ、あっ、あぁん……」
「手つきが、いやらしいぜなぁ……!」

 ふたりはさして抵抗することもなく、黙ってオレにぬぐわれた。
 かわいい。
 そしていよいよメインディッシュだ。
 オレはシャルルの胸に乗りやがったサンドイッチを見やる。

「はぅわん。はぅわぁんっ…………!」

 想像だけで、恥ずかしくなってしまっているのだろう。
 シャルルは瞳に涙を溜めて、首をプルプル左右に振った。
 そんなかわいいシャルルのことを、オレが逃がすはずはない。
 シャルルの腰に腕を回して、一息に抱き寄せた。
 胸元のサンドイッチを、ダイレクトに食べる。

「はうぅぅ…………!」

 恥じらうシャルルの息遣いが、途方もなく愛らしい。
 真っ赤な顔をしていることが、容易に想像できるほどである。
 そこから先にも色々やったが、ちょっと言えない領域に入ったので省く。
 具体的にどんなことをしたかと言えば、シャルルへのセクハラのあとに――。

「ねぇー、ラクトさぁん♥
 ボクもおっぱいの下に、えっちな気分がくっついちゃったんだけどぉ♥♥」

 などと言って下乳を見せてきたミーアの胸から、えっちな気分を取り除いてあげたりといった感じだ。

「しょしょ、少々、はしたないのではなくって?!」

 セシリアはそんなことを言ってきたが、当然のごとく流した。

 そして食事と休憩が終わるころ、リアの懐から声がした。

〈Cブロック第二試合が始まります。Cブロック第二試合が始まります。
 会場のほうまでご移動ください。会場のほうまでご移動ください〉

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