先週の日経新聞で、「日本の企業力 第3部 製造業の明日」と題した特集が4回に渡り掲載されていました。非常に興味深い企業の事例も多く、個人的には楽しく読ませて頂きました。各回の内容は、以下の通りです。

第1回:AppleのCCC(キャッシュコンバージョンサイクル)と現代自動車のITを活用しValue Chainマネジメントを事例に、新たなビジネスモデルの構築、ビジネストランスフォーメーションの必要性の考察
第2回:東レの炭素繊維、旭硝子の「曲がるガラス」などを事例に、これまで黒子役であった生産財メーカーの役割の変化(様々なイノベーションを通じて新たな製品開発の主役となる)の考察
第3回:諏訪の中小企業であるミクロ発條(精密バネ製造)、IHI呉事業所(航空機エンジン用回転軸製造)・・・を事例に、産官学の協業も含めたニッチトップとなる技術を軸とした戦い方の考察
第4回:サービスを軸に強さを発揮するオリンパス、GPSを利用した建機稼働管理システム「KOMTRAX」でビジネスを作るコマツなどを事例に、製品力だけでなく仕組で戦うことの考察

事例となっている企業の取り組みはどれも素晴らしく、このような力を持つ日本企業が新たな挑戦をして行けば日本の将来も明るいのではないかと心強く思います。しかし、何か引っかかる。皆さんは、如何ですか?私は、この一連の特集を読んで何が自分で引っかかったのか考えてみました。

日本人の思考の"癖"からの脱却も考える必要があるのでは?
上述の事例、どれも非常にレベルが高いと思いませんか?確かに、このような"凄い企業"が日本には沢山あるという事を知ると、勇気づけられます。日本の未来にも明るい兆しを感じる事が出来ます。しかし、このような取り組みを行えるのは、全体の何%の企業なのでしょうか?
このような、「今後の成長に向けどのような事を考えるべきか?」と言うようなお題になると、どうも日本人は「これまでよりも付加価値の高いもの」、「これまでにないもの」など、常に高いレベルのものを追い求める傾向が強いように思います。例えて言えば、「足算、掛算」の考え方ですね。今あるものの機能を削って「より安く」、とか「より面倒をなくす(故障などを起こしにくくする)」といった「引算、割算」の発想はどうも苦手と言うか、美徳に合わないというか、敬遠されているように思います。(但し、このような事を実現するには、生産技術を高度化したり、マーケティング機能を磨いたりなど、様々な工夫をしないと実現できないのは言うまでもありません。これも、簡単というわけではありませんね。)日本市場もニーズが多様化する中、グローバル展開も視野に入れて考えると、成熟度もニーズも異なる市場が沢山あります。その中には、何か新しいものを付け加えなくても、これまでに培ったものを違った形で出していくだけでも市場機会は色々とあるように個人的には思います。
また、これも私の感覚かもしれませんが、日本人は低価格で勝負することを嫌う傾向があるように思います。どうせやるなら、高付加価値・高品質で勝負。そうなると、当然コストもかかり低価格の勝負は出来なくなる。このような考え方が強いように思いますが、皆さんはどう思われますか?最近の消費財は安くても高品質のものが多くなってきましたが、どうも「安かろう、悪かろう」の固定概念が拭えていない気がします。この概念からすると、「低価格で勝負するのは力のないプレーヤーのすること」と言う考え方になっていきますよね。特に、生産財メーカーや耐久消費財メーカーには、まだこの考え方が強いように思うのですが。(完全に個人の感覚です。)しかし、低コスト・低価格で高品質の商品を提供できれば当然勝てますよね。また、コストに対して品質や付加価値は相反する概念、トレードオフで考えなければない概念ではありません。更に、品質や付加価値には、スピードや生産量、そしてアフターサービスの概念も加わってくる。何を言いたいかと言うと、製品自体が他社と変わらなくてもよりスピーディーに出せるとか、大量生産に対応できるとか、更にはアフターサービスまで良ければ非常に意味のある事であり、これを少しでも安く提供できれば非常に意味があると言う事です。つまり、競争のパラメーターは沢山あり、今自社が持っている強みを生かして「エッジ」をちょっと効かせれば、何も”物凄い事”を考えなくても戦い方は沢山あるのではないかなぁ、と言う事です。こう言う事を考えることは今後の企業戦略を考える上で重要であり、そのためにはこれまでの慣習にとらわれない考えが必要なのではないでしょうか?

個人も一緒
このような、「自分の強みを生かしてちょっとした”エッジ"を立てる」と言う考え方は、企業ばかりでなく個人にとっても大事なのではないかと思います。誰もがスーパーマンになって何でも出来る花形選手になれれば、それはそれで凄いと思います。しかし、そんな事は無理ですね。また、ある意味「何でもできるは、何にも出来ないと同じだ」と言う人もいます。何でも出来るような方でも、自分の一番の強みが何かを意識できないといけないのだと思います。このような強みは作っていくためには、自分か「こうなりたい」と思う事も大事ですが、自分は「何ができるか?」、「何が得意か?」を考える事が重要だと思います。これ活かして、やらなければならない事をやり、その過程で強みを磨くことで個人としての"エッジ"が立つ。そして、この"エッジ"を効かせて何かに取り組むことで他の能力も伸びる。こんな好循環を作ることで、個人も成長して行くのだと個人的には思います。

多くの企業では、来期に向け現在色々な計画を立て、実際に取り組み始めていると思います。企業としても、個人としても、「どこに"エッジ”を立てるか」なんて事を考えてみては如何でしょう?これを意識し続けて、1年間何かに取り組めば、きっと得るものは多いと思いますよ。

最後に告知です。ITメディアエグゼクティブで、今年は「海外進出企業に学ぶこれからの戦い方」と題してコラムを隔月で書くことになりました。第1回は、このブログでも何度か取り上げているユニ・チャームです。時間のある方は、是非ご覧ください。(感想ももらえると嬉しいなぁ。)