2008年12月18日

かつてない事態がおきつつあるんではないか、という経済ニュースが相次いでいるのだが。

銀行に預けても金利がほとんどつかない時代が、日本では長く続いているが、なんとアメリカが事実上のゼロ金利政策に踏み切った。日本より低い金利になる。秋以降の利下げは10回目で、ついに打てる手はすべて打った、という感じである。

これは日本にとっては、円高という形ではねかえる。輸出でもっている日本を直撃するのは間違いない。1ドル=70円台はこれまで体験があるが、もっと進んで1ドル=50円台もありうるのではないか、と言われている。海外旅行が安くなって歓迎、とは今回ばかりはいかないだろう。

このところ連日、派遣社員を中心とした人員削減、業績の下方修正、計画されていた事業の中止・延期が伝えられている。自動車産業はもう総崩れで、他の業界も含め、日本経済が総崩れに陥りそうな勢いである。

当面は、アメリカの自動車ビッグ3が果たして年を越せるかどうか、が大きな注目を浴びている。これが破綻処理ともなれば、一時的には世界中に大津波のような影響がありそうだ。

来るべき年の厳しさがこれほど語られたことは、これまたかつてなかったような気がする。もうあと10日ぐらいで2008年も終わりだが、2009年はなんともいえない不安を思わせる響きがある。



ktu2003 at 19:44コメント(0)トラックバック(4)国際ニュース 

2008年12月15日

野球の第2回WBC日本代表1次候補が発表された。

【投手】(16人)
 岸 孝之(西武)、涌井秀章(西武)、小松 聖(オリックス)、ダルビッシュ有(日本ハム)、渡辺俊介(ロッテ)、岩隈久志(楽天)、田中将大(楽天)、馬原孝浩(ソフトバンク)、杉内俊哉(ソフトバンク)、和田 毅(ソフトバンク)、内海哲也(巨人)、山口鉄也(巨人)、藤川球児(阪神)、松坂大輔(レッドソックス)、黒田博樹(ドジャース)、斎藤 隆(元ドジャース)

【捕手】(4人)
細川 亨(西武)、阿部慎之助(巨人)、石原慶幸(広島)、城島健司(マリナーズ)

【内野手】(8人)
中島裕之(西武)、片岡易之(西武)、松中信彦(ソフトバンク)、川崎宗則(ソフトバンク)、小笠原道大(巨人)、栗原健太(広島)、村田修一(横浜)、岩村明憲(レイズ)

【外野手】(6人)
稲葉篤紀(日本ハム)、亀井義行(巨人)、青木宣親(ヤクルト)、内川聖一(横浜)、イチロー(マリナーズ)、福留孝介(カブス)

メンバー全体に若返り感がみられる。投手陣はおそらく出場国中でも1・2を争うだろう。
リーダーになるのは投の松坂・打のイチロー。さらに、前回は2名にとどまっていたメジャーリーグ勢が7人になっている。その点では、メジャー主体のチームに気後れしない姿勢が望める。

全体的にパリーグ優勢が目立つ。この陣容に、セリーグが危機感を持って欲しい。

打線はパワー面ではやや物足りない部分がある。栗原・村田が大砲として機能してほしい。
名指しするのもなんだが、亀井(巨)が入っているのはなんとも理解不能。そもそも候補に入るレベルの活躍は現在も過去もしていない。よもや、日本のプロ球界にそこまで人材がいないとは思いたくないが。

多少の入れ替えは、もちろん大会までの間に起きるだろう。そういう選手が活躍するかもしれない(前回の福留のように)。

http://plaza.rakuten.co.jp/macca/diary/200812150000/



ktu2003 at 20:04コメント(2)トラックバック(22)プロ野球 

2008年12月12日

11日(米東部時間)、米連邦議会上院は本会議を開催、下院を通過済の最大140億ドルにのぼる“つなぎ融資”を供与するビッグスリー(3大自動車企業)救済法案を審議したが、結果として賃下げをめぐる対立が解けず、可決に必要な超党派合意は成立しなかった(廃案)。

このところ焦点となっていたアメリカ自動車業界の大手3社、いわゆるビッグ3救済をめぐる議会の審議。日本なんかだと、大きい会社は救わねばならないから、ととにかくあいまいでも合意を形成するものだが、アメリカはやはり違う。
さすがに深刻な危機ともなれば回避が第一と考えるものなのだが、納得できない世論がいまだ多数を占めているのだろうか。

確かに、自家用ジェットで救済を求めにきた経営陣の非常識さは、世の憤激を買った。果たして最善の経営努力を尽くしてきたのか?という思いが、アメリカ国民の間にあったのだろう。何百万人という雇用が失われる、という会社側の主張は事実だろう。だが、だからといって会社存続が前提とされていいのか。世の中、経営危機になっても救われない会社が大半なのだ。

そこで検討されるのが連邦破産法の適用だ。ちゃんと法的整理をして、身奇麗になって出直したほうがいい、という議論。
なおホワイトハウスを中心に救済策も模索されるだろうが、この際きちんと処理をして、新しい会社・業種で雇用を創出することを考えたほうがいいのではないか、と私も思うようになった。
環境問題が叫ばれる今、アメリカ的なライフスタイルそのものが問われているのだとすると、危機は危機であってもそこからよりよい方向へ転換するきっかけとならないだろうか。

もっとも、現実に生活の危機に瀕する人々が増大するのは間違いない。世の中残酷ではある。

日本では景気対策をめぐって迷走が続いている。首相の意向すらなかなか実現しないほどに、政府の力は低下している。ほんとうに、この国は大丈夫か、と思う。1929年の世界恐慌のとき、みんなはどうだったのだろう。あるいはそのときに匹敵するかそれ以上の危機が、自分の身にも降りかかってくることすら、想定しておいたほうがいいのだろうか。



ktu2003 at 20:10コメント(0)トラックバック(8)国際ニュース 

2008年12月10日

ノーベル賞の授賞式が行われるということで、出席する日本の3氏がスウェーデンはストックホルムに赴いている。

現地での様子も逐一伝えられている。一番個性の強い?益川氏が取り上げられることが多いようだが、心強いのは以下のようなことだ。

下村さんの講演では、初めに頭上の照明が消えた。試験管に入れた持参のGFPに紫外光を当てて緑色の光を浮かび上がらせると、聴衆から大きな拍手が起きた。米西海岸でオワンクラゲを家族ぐるみで採集したエピソードを交えて聴衆の関心を引きつけ、GFP発見の意義を説明。一方、疎開先の長崎が原爆により被災した写真を映し平和の尊さを訴えた。講演終了後、下村さんは「役目を終えた感じだ」と一言言い残し会場を後にした。(毎日新聞)

下村氏は旧長崎医大の出身。焼け跡から復興を図る地で、研究生活をスタートさせた頃のことにふれている。ノーベル賞という、世界が注目する場でこうした発言をすることの影響は、大きいと思う。


大学の学費値下げや無償化を呼び掛ける「学費ゼロ大集会」が14日午後1時半から、京都市中京区の京都商工会議所で開かれる。ノーベル物理学賞を受賞する京都大名誉教授で京都産業大教授の益川敏英さんも集会の賛同人に名を連ねており、学生や保護者が学費負担の軽減を訴える。(京都新聞)

益川氏は科学者の運動団体の活動家でもあった人で、「9条の会」にも関わっているなど意識的に社会的発言をしているが、なかなか学者がこの種のことに賛同しても現実的に世間へのアピール力が強いわけではない。しかしノーベル賞受賞者ともなれば、権威主義的であるかもしれないが耳を傾けてくれる人は増えそうな気がする。もちろん、思想的にまったく逆の人物が出てきてしまうと困ることもあるんだが。

益川・下村の両氏が戦争体験者であることはやはり大きいのだろう。いかに戦争というものが、人間の一生に重大な影響を与えるかを示しているだろうか。
これに比べると小林氏についてはあまりこの種の発言が聞かれないが、それは世代的な問題もあるのかもしれない。

ともかく、受賞を祝福したい。



ktu2003 at 19:43コメント(0)トラックバック(3)国内ニュース 

2008年12月07日

ナツコ沖縄戦の悲劇に関心を寄せる人々は多い。
そして、今も時に政治を巻き込む論争になる。

だが、私たちは沖縄の「戦後」についてはあまり知識を持っていない。教科書にはほぼ一行も書いていないし、詳しく研究・紹介してある本も、概説的なものを除くと、沖縄以外では入手が難しいところである。

本書は、沖縄の戦後、それも表には決して現れてこない「密貿易」で名をはせた女性の生涯を、ほぼ聞き取りによって再構成したものである。

 

 

戦前の沖縄は、海外に多数の移民を送り出していた地域だった。それは、沖縄の生活水準の問題もあったし、海で生計を立てる人々が多かったことも関係している。夏子は、徳之島で生まれ、長じてからはフィリピン・マニラに渡って家庭を持った。そこで商売を覚え、日米開戦前夜に本島の糸満に戻る。戦局の悪化とともに当時日本領だった台湾へ疎開。敗戦とともに引き揚げ、石垣島に居を構えることになるが、夏子の縦横無尽の活躍はそこから始まる。

海、というのは人々を隔てるものではなく、むしろ生き生きと活動させてくれるものだ、と改めて実感。それはいとも簡単に国境をこえ、時の権力や常識をもこえていく。夏子は、屈強な男たちをしたがえて、巨額の密貿易に携わっていくのである。帝国の崩壊とその後の混乱という時代の中で、誰もが自分の力で生きていくしかなかった。
日本最西端の島である与那国島が、現在1700人ぐらいの人口だそうだが、敗戦後の密貿易の拠点となっていた時代には、2万をこえていたというから驚きである。敗戦で国はほろんだはずなのに、空前の繁栄をむかえていた島があったのだ。

夏子個人については、賞賛の声ばかりではない。家族をかえりみないで密貿易に手をそめていたのだし、周囲から畏怖の念を抱かれてはいたが、まっとうな商売の才覚となると、おおらか過ぎて高い評価はできないようにも思える。ただそれが、混乱の時代にあっては求められた人物像でもあった。

権力や常識をこえる、とはいうものの、混乱の時代が収束するにつれて密貿易の余地も狭くなる。いつまでも続くことはない。夏子もやがて密貿易からは足を洗って、本土で事業を起こす。しかしそこでは、もう秩序の壁が立ちはだかっている。女性である夏子は、沖縄の表舞台には立てなかったのである。30代にして夏子の人生は終わる。彼女は、ほとんど記録を残していない。この奥野氏の叙述によって、はじめてきちんと彼女の人生が記録されたのである。

私も歴史家のはしくれだが、こういう仕事を一度はやってみたい。私が掘り起こすことによって初めて記録される何事か、何者かを探して。

それはともかく、沖縄の戦後は苦難に満ちていただろうが、人々が力強く生きていた側面を見ることができた。時には命をかけて、人々は一攫千金の夢を追い、いつの間にか静まっていったのである。そんな時代はきっと来ないほうが幸せなのだろう。しかしなぜか、そんな時代を懐かしむ証言が多かったのも事実なのである。

 



ktu2003 at 21:15コメント(0)トラックバック(3)書評・映画評 

2008年12月04日

連日のように、企業の人員削減計画が報じられている。

自動車各社ではすでに1万人を超える派遣・期間従業員の削減が発表された。
削減は、他の業種にも及んできている。東芝やキャノンも発表した。

いつからだろう。「派遣社員」という響きが珍しくなくなったのは。
当初は、むしろ肯定的なイメージで語られてすらいた。好きなときに働き、ほどほどの待遇で、ひとつのところにとどまらない。会社に拘束されない自由な働き方。
不況の中で、正社員では雇用されにくい人々が、とりあえずの職として選んだ背景もあっただろう。

しかし、製造業への派遣解禁が大きな引き金になったと思われる。要は、企業があまりいい待遇や保障をしなくてもよく、何かあればすぐに切ることのできる存在。労組というバックもない。いつまでたっても給料を上げなくてもいい。労働者側からすれば、正社員と同じ仕事なのに待遇に格差があり、しかもそれはいつまでたっても改善されない。かりに職を探すにしても、派遣社員の経歴は評価されにくい。だんだんと、派遣社員はネガティブなイメージに変わってきた。

そして「ネットカフェ難民」と呼ばれる人々の発生。その人々が生計を立てる手段であった日雇い派遣や、大企業による偽装請負が問題となった。フルキャストやグッドウィルといった企業のあくどさが明らかになった。政治の世界でもようやく、規制強化への流れが出てきている。

しかし秋以降の金融危機で、状況は大きく悪化した。会社は自らを正当化する。「経営が危機である」「正社員を優先せざるをえない」その言い分は、会社側からすれば正しいのかもしれない。だがそこで、「仕方がない」と泣き寝入りしたり、我慢する必要はまったくない。もうそういう人のいい思考法はやめにしようではないか。

いすゞ自動車の解雇問題については、解雇取り消しの仮処分が申請された。声を上げるしかない。そこには人間の生存がかかっている。何万人という失業者が出れば、おのずから社会の雰囲気が悪くなる。秋葉原の殺傷事件を、ある種の共感をもって迎える向きさえ出てくるだろう。あの加害者は、自動車工場の期間工だった。そしてそんな人間を増やすことが、企業にとっていかなる利益になるのだろうか?

蟹工船ならずとも、団結と闘争以外に、生き残る道はないのではないか。たとえ敗北に終わろうとも、人間が使い捨てのモノではない、人間であることを証明するために。それは、私の属する学問の世界とて同じ。せめて、なんらかの形で声をあげていきたい。黙っていてもいいことは何も降ってこない。

おりしも、Jリーグでも大量解雇が話題になっている。FC岐阜なんかはチームの半数が解雇、そのほかにも東京V、札幌、徳島などがJ2落ち、経営難などから主力を含む大量解雇に走っている。サッカーの世界だって、身の丈をこえた拡大路線を取りすぎているんではないか、と懸念する。一見華やかに思えるプロスポーツの世界も、企業社会となんら変わりはないのである。



ktu2003 at 20:41コメント(2)トラックバック(8)国内ニュース 

2008年12月02日

オバマ次期米大統領は1日午前(日本時間2日未明)、シカゴで記者会見し、次期政権の外交・安保担当閣僚を発表した。国務長官にはヒラリー・クリントン上院議員(61)を指名、国防長官はロバート・ゲーツ現長官(65)の留任を決めた。(時事通信)

大統領・副大統領でタッグを組むのではないか、という説もあったが、別の形ながら米民主党の「最強」布陣が実現することになった。

新鮮なイメージのオバマ氏にとって、ネックになるのはやはり経験の浅さ。それは大統領選のときから変わらない。副大統領には民主党の重鎮・バイデン氏を配したが、外交・安保についても同様の選択をした。
クリントン氏としては、まだ大統領への目をあきらめてはいないだろうから、ここは野にあって次を狙うという選択肢もあった。ただ、閣僚として実績を残すことも大統領への道を近づける。それが4年後になるか、8年後になるかはわからないけれども。オバマ氏の影が薄くなるような活躍をするかもしれない。
日本にとっては手ごわい布陣になりそうだ。

また、国防長官の留任は、今後のイラク・アフガンをどうするか、という点では懸念を抱かせる。当面は大きな政策転換はないということか。だが、金融危機が深刻化している状況もあり、現状を続けられないのは確かで、政権がそれをどうまとめていくかが注目される。



ktu2003 at 09:45コメント(2)トラックバック(7)国際ニュース 

2008年11月30日

新幹線鉄道の世界だけでなく、日本を象徴する存在のひとつだった車両が、今日をもって現役を引退する。

写真の新幹線「0系」は、1964年の新幹線開業時からずっと走り続けてきた型式。時代の経過とともに廃車が続いて、いまや山陽新幹線でわずかに生き残っていた。




もう乗ったことのない人も増えてきたかもしれないが、新幹線といえば私にとっていまだにこの型式の車両を思い浮かべる。正面のこの丸い形。今は流線型が進化して、正面が鋭角化していて、確かに未来イメージをかき立てるようではあるが、安心感を与えてはくれないのである。それに比べると、この丸さは、どこか愛らしさが感じられたのだ。
戦前に新幹線が計画された段階では、「弾丸列車計画」と銘打たれていた。まさしく高速の弾丸にふさわしい外観である。

日本の戦後史を描くとき、この新幹線の開業シーンは、よく映像や写真で使われる。東京五輪が始まる直前に開通した新幹線が颯爽と走るシーンは、焼け跡から復興し、高度経済成長を続けていた新生・日本を象徴するものだった。
仕事であれ旅行であれ、東へ西へ、多くの人々をその人生とともに運んできた。

この車両には、当時のまったく新しい技術は導入されていないという。日本が蓄積してきた技術、既知の技術を結集して作られた。そしてついに、車両の責任による事故を起こすことはなかったのである。これまでにない高速で走り、しかも安全であったという、稀有な存在だった。

今、昭和30年代ブームである。昭和30年代の最後の年に登場したのがこの「0系」だが、ついに現実の存在から、昭和30年代という、ノスタルジーをかき立てる歴史の一こまに納まっていく。それは、社会が元気だった時代が、まぎれもなく遠ざかっていくことを意味してもいるのだ。



ktu2003 at 10:04コメント(2)トラックバック(10)国内ニュース 

2008年11月27日

インド西部の商都ムンバイで26日夜、中心部にある高級ホテルや鉄道駅など10カ所で武装集団による同時多発テロ事件があった。ロイター通信によると、銃の乱射や手投げ弾により日本人男性1人を含む101人が死亡(うち外国人が6人)、287人が負傷した。(朝日新聞)

日本で「テロ」と大騒ぎになったのはごく最近のことだった。それも今となっては不可解な殺人事件のひとつとして処理されようとしているが、テロの恐怖は世界的には、もっと普遍的に、しかも大規模に襲ってくるのだろうか。

10ヶ所も同時に襲撃するというのは、かなり組織された集団でなければできないことだ。そして手口も銃乱射や手投げ弾であり、残虐である。巻き込まれた日本人男性は、当日出張で到着したばかりで、チェックインしているところだったらしい。気をつけようにもつけようがない。

インドでも近年、イスラム原理主義勢力が伸張しているという。一方、ヒンズー至上主義政党も一大勢力を持っていて、その宗教対立が先鋭化しつつあるらしいのだが。
また、インド国内ではこのところの経済発展の一方で、格差や貧困の拡大も指摘されている。今回狙われたのは高級ホテルや駅。欧米人客を狙ったようだ。
しかし詳しい背景は今のところまだ不明である。

「テロと闘う」のは当然のことだ。問題は、どう闘うのか、である。その答えは、なかなか簡単には見つからず、またひとつだけでもないのだろう。

http://plaza.rakuten.co.jp/macca/diary/200811280000/



ktu2003 at 20:42コメント(0)トラックバック(19)国際ニュース 

2008年11月26日

ディフェンディングチャンピオンとして迎える第2回WBC。

原体制のもとで選手選考が進んでいるが、ひと悶着があった。

すなわち、中日勢で候補に挙がった選手が、全員出場辞退の意向だったというのである。これを原監督や山田投手コーチがやり玉にあげたので、落合監督からは、「選手の意思であって球団や監督は何も言っていない」と反論があった。
私はこの発言が本当に正しいか、という点には若干の疑念があるが、落合監督の言い分からはいろいろと引き出せるものがある。

とかく野球界の代表編成は、これまでカリスマを利用して「情」に訴える面が多すぎたように思う。「長嶋さんのためなら」とか「王さんが言うなら」とか。五輪では星野監督が選手のコンディションよりも気持ちを重視しすぎ、自分のよく知る選手を重用して失敗した。個人でなくとも、たとえば「日本球界のため」とか「一致団結」などという言葉が語られ、協力しない選手や球団はまるで悪人扱いになる。

おそらく落合監督のスタンスはそうした現状に対する批判である。プロ野球選手はひとりひとりが個人事業主であり、自分の技術という身体を売って金銭を得ている。WBCはそれ自身としては給与にははねかえらないし、けがをした場合の補償もない。名誉だけで人間がみんな動くわけではない。イチローレベルになれば、名誉も欲しくなるだろうが。

たとえば韓国代表があれだけ強いのは、「韓国球界のため」とか「韓国の名誉のため」などという情の世界ではなく、よく言われるように兵役免除という重要な実利的メリットがあるからだ。それがあった上で、球界もバックアップ体制ができている。
日本は何のメリットも選手に示さず、球界全体としてもバックアップする姿勢が弱い。それだったら、「出たい人だけでどうぞ」というスタンスが現れてきて不思議ではない。

中日で候補に挙がったメンバーをみると、1軍で不動の地位を確保した、とまではいえない選手もいるし、コンディションがよくない選手もいた。そのへんの理由説明は選手サイドからわかりやすく出されてもいいとは思ったが、WBCに出て、帰ってきたら自分の居場所がなかった、なんてことになったら目も当てられない。

球界のバックアップ、というのは、単に各球団がこころよく選手を送り出す、というだけではない。みんながWBCに出たい、と思えるようなメリットを選手に示すことである。年俸面での優遇だったり、けがの補償であったり。それで最善を尽くした上で、選手の心を動かす説得もし、最終的には選手の意思を尊重する、ということなのである。
実はそういうやり方のほうが、集団としてまとまることができる。「情」の世界への依存は、かえってまとまりを困難にする。

http://plaza.rakuten.co.jp/yohkura/diary/200811230001/

 



ktu2003 at 09:31コメント(11)トラックバック(11)プロ野球 
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