2013年09月28日

総評「あまちゃん」〜アイドル誕生、フィクションの力〜

NHK朝の連続テレビ小説「あまちゃん」が最終回を迎えた。

北三陸鉄道が一部区間で運行を再開。その記念式典が行われ、お座敷列車で「潮騒のメモリーズ」が復活。アキとユイは、これからもアイドルを続ける、と誓って、疾走する。ラストはほんとうにこれだけの筋書き。そう、すでに物語は尽きている。

まさに異例の朝ドラだった。ヒロインが成長して、自立していく一代記ではない。わずか5年ほどの時間の経過。ただ、そこに、母の若き日、祖母の若き日が盛り込まれ、世界観を深いものにしていった。満載の80年代ネタ、サブカルネタに、ついていけたのはわずかな人々であろうが、その人たちがネット上で、あるいはマスメディアで情報を発信し、それが増幅していった。

従来は朝ドラを観なかったであろう層に、浸透した可能性がある。宮藤官九郎の脚本、注目の若手女優の競演、多数の舞台役者の出演。そして80年代の「伝説のアイドル」小泉今日子と薬師丸ひろ子の共演。今から考えればこれで話題にならないほうがおかしいというものである。

音楽がこれほど豊かに使用された朝ドラも記憶にない。オープニングの軽快なインストに始まり、海女クラブのテーマソング的に扱われた「いつでも夢を」、潜水土木科の「南部ダイバー」、アメ横女学園が歌う「暦の上ではディセンバー」、GMTの「地元に帰ろう」、大吉が歌う「ゴーストバスターズ」や若き日の春子が歌った「風立ちぬ」など、実在の曲もオリジナルな曲も織り交ぜられる。そして物語全体をつなぐのが「潮騒のメモリー」であった。

「潮騒のメモリー」を劇中で最初に披露したのは天野春子(小泉今日子)。スナックのカラオケで歌われたそれは、14年ぶりの彼女の新曲として現実の世に送り出された。しかしテイストは80年代アイドルのそれ。あのキョンキョンが往年を思わせる歌声を見せた。そして「潮騒のメモリーズ」がお座敷列車で歌った。決してうまくはないが、地域アイドルがかわいらしい衣装で歌うという設定にはぴったりだったし、さわやかな印象を与えた。東京では、リメイクされた「潮騒のメモリー」の主題歌として天野アキ(能年玲奈)が歌った。潮騒のメモリーズよりも少し大人っぽく、若々しく。そして最終週で歌ったのは、音痴の設定にされていた鈴鹿ひろ美(薬師丸ひろ子)。その熱唱は詩的であり、80年代の彼女の歌声を知る人々からすると、あの時と変わらない美声を聴けて、感動したのではないだろうか。小泉今日子と薬師丸ひろ子が同じ曲を生で歌う。こんなぜいたくな番組はない。

「アイドル」がテーマの作品でもあった。地域限定のアイドル、激しい内部競争のある現代日本のアイドル、そして80年代のアイドル全盛時代。さらに、特別出演した橋幸夫も、60年代にはアイドル的人気を誇っていた。存在そのものが人々を元気にする。自分ではなくて周りを変えていく存在。それがアイドルであるという主張とともに、現代アイドルのあり方への批判も、盛り込まれていた。

東日本大震災がどうえかがれるか、注目された。それは直接的な映像を使用しないものだったが、東京や鉄道車内の様子を描くことで、当時を知る人々に追体験させる表現を使い、被害は観光協会のジオラマで表現した。マイルドな描写だったにもかかわらず、予想以上にズシンときた。それだけ、心の中に衝撃として残っていたということだろう。まだ2年しかたっていないのだ。

現代を舞台にしたフィクション。だがそれゆえに、フィクションが現実を動かすようになった。ロケ地の久慈には観客が殺到。劇中歌も大ヒット。そして主演の能年が、アイドル「天野アキ」として三陸地域をまわる。それは現実とフィクションが一体化したかのようである。楽天がスポーツで人々を勇気づけ、彼女はアイドルとして、人々を元気にしているのである。

訪問
















いろんなヒットの理由が語られるだろうが、この作品に関する限り、能年玲奈が熱演して、しかもかわいかったから、という総括で差し支えないと思う。前の稿の繰り返しになるが、この作品が現実に一人のアイドルを誕生させてしまったといってもいい。これも前の稿の繰り返しになるが、幅広い世代の人気を獲得したという、近年では稀有な素材を一発屋で終わらせないことができるか、日本の芸能界が試されている。

ktu2003 at 10:18コメント(0)トラックバック(3)テレビ  

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