2016年06月24日

イギリス、EU離脱を選択

23日に投票が行われた欧州連合(EU)からの離脱を問う英国の国民投票で、英公共放送BBCは24日午前6時(日本時間午後2時)、独自集計の結果、離脱票が投票総数の過半数を上回ったと速報した。28カ国からなるEUから加盟国が脱退する初の例となる。拡大と深化を進めてきた欧州統合は大きな転換点を迎える(朝日新聞)。

なんだかんだいっても、僅差で残留という見方が強かったのではないか。世論調査は、それを示していた。ブックメーカーは圧倒的に残留のオッズが低かった。そして、残留派議員の暗殺事件もあった。情勢は残留派有利とみられていた。しかしふたを開けてみれば、予想以上に離脱派の票が伸びたのである。

イギリスはEUの中核を占める国だが、通貨統合には参加していない。その意味では微妙な立ち位置にもあった。そんな中、移民の増加や地域経済の低迷によって、社会的な不満が高まっていた。EUに入っていることが、いったい何のメリットがあるのか?と。そして政界、特に保守党が分裂し、独立党のような勢力が伸びてきた。これに対しキャメロン首相は政治的賭けに出て、国民投票で決める、とぶちあげて総選挙に勝利した。

投票結果を見ると、地域差がはっきり表れている。スコットランド・アイルランドは残留が多数。問題はイングランドで、ロンドンはじめ都市部では残留が多数だったが、地方では離脱派が優勢となった。つまり、豊かな都市部と疲弊する地方という、なにか聞いたことがある構図が見え隠れするのである。さらに、富裕層と労働者層の分裂、そして若者と年配者の分裂も指摘されている。これも実は、イギリスに限った問題ではない。ある意味では現代世界を覆うグローバル資本主義の持つ問題が、典型的に表れているともいえる。「反グローバリズム」が、右翼と結びついてついに政治的勝利を挙げたともいえそうだ。

ただこれがイギリスにとって、世界にとって望ましい選択かというと引っかかる点は多い。すでにEUの枠組みができてからでも20年以上。経済構造の中に組み込まれてしまっている。実際の離脱までは2年の猶予期間が設けられるとはいえ、その条件をめぐって混乱は避けられない。そしてスコットランドや北アイルランドはイギリスから離れ、EUを選ぶ動きを見せている。「イギリス」という枠組みに対する遠心力が働きはじめているのだ。

もちろん、EUに与えるダメージも大きい。いくつかの国では国民投票実施が呼びかけられているし、右翼の反EU運動は活発である。離脱を選ぶ国がほかにも出てくるのではないか、と懸念されている。せっかく今やほぼヨーロッパ全土に広がったEUが、崩れるかもしれないのだ。こうした、EUに対する「遠心力」も働きはじめている。

ちょっと性急だったのかもしれない。「国民」としての意識を持ちつつも、人や物、情報の動きがすっかりグローバル化する中で、社会的な摩擦が強まっていた。人々の意識がついていけてないのだ。そして、利益を得るのは一部の金持ちばかりというのでは、多数の理解は得られない。

日本への影響も大きくなるだろう。安倍政権の消費税延期判断は正しかった、と叫ぶ人たちがいるようだが、政権は経済を立て直すことによって支持を得、そして憲法改正などに手を付けることを狙っていたのだから、経済が低迷すれば対策に追われることになり、憲法問題などは遠のいてしまう。何より、経済が低迷することが政権にとっていい結果になることなどあり得ない。参議院選挙への影響もあるだろう。

冷戦終結以来、「グローバル化」が30年近くにわたって推し進められてきた。その潮流に待ったがかかるのだとすれば、このイギリスの選択は世界史的な事件として歴史に記録されるであろう。

ktu2003 at 18:20コメント(0)トラックバック(5)国際ニュース  

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