2016年10月13日

「賊軍」の靖国合祀を申し入れ

西郷隆盛や新選組、白虎隊も靖国に合祀(ごうし)を――。石原慎太郎・元東京都知事や亀井静香衆院議員らが12日、東京・靖国神社を訪れ、国家に敵対した「賊軍」と称される人々の合祀を求める申入書を渡した。(朝日新聞)

靖国神社に対する有力な批判の一つに、敵味方を区別する戦没者慰霊となっており、等しく戦争で亡くなった人々を追悼する施設となっていない、というものがある。靖国神社には戦後、鎮霊社という小さな施設が建てられ、世界のすべての戦争犠牲者を追悼の対象としている、とされる。だがその存在を大きくアピールすることもないし、知名度も低い。さらには、犠牲者たちが祭神になることもない。

もともとの靖国神社の成り立ちからいえば、天皇制国家に対抗した勢力の死者を祀ることはあり得ない。とはいえ明治維新からもう150年がたち、国家の体制も変わり、関係者の感情も変わっている。申入書に賛同する政治家は、タカ派からハト派まで幅広い。彼らの文脈からいえば、明治維新150年を控えた顕彰事業が国によって企図されている中で、当然ながら問題となる敗者たちについて、歴史的和解を演出したいのだろう。

とはいえ新たな祭神を加えるとなると、ではどこまでか、という問題が発生する。象徴的に西郷隆盛や新選組だけというわけにはいかず、戊辰戦争や士族反乱で死亡した反政府側の戦死者は、数千人から1万人近くになるはずだ。その確定作業だけでも相当な時間がかかる。

ただ私自身は、靖国神社がもしこの要求を受け入れるとすれば、明治維新「顕彰」の動きには警戒しつつも、画期的なこととはなるし、歓迎したい。つまり、天皇制国家に尽くして命を落とした人間だけが顕彰される場、としての論理を初めて、超えることになるからである。上記の事務的な問題があるので、実際に今の靖国神社の力量からすると、要求通りに合祀作業を行うのは難しい。とすると浮上するのは、そうした反政府側の死者を追悼(顕彰)する何等かのモニュメントや施設を作る、という可能性ではないだろうか。

ktu2003 at 19:17コメント(0)トラックバック(2)歴史関連  

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1. 『靖国神社』に祀されてる人の“誤解”  [ つぶやき古道(コミチ) ]   2016年10月15日 08:31
またまた、閣僚らの終戦記念日に合わせた靖国神社参拝が行われたことで、いつものように韓国と中国と日本国内でも一部の方々やマスメディアが反対、賛成の大騒ぎですね。私としては、なんだかその騒ぎに慣れてきた感があります。 さて、靖国神社には様々な誤解や勘違いが日本
2. 靖国問題をまた複雑にする気か?  [ つぶやき古道(コミチ) ]   2016年10月15日 08:32
報道によれば、亀井静香衆議院議員(無所属)、石原慎太郎元東京都知事、自民党の平沢元内閣府副大臣、民進党の原口元総務大臣、の4人は10月12日(水)に靖国神社を訪れ、「西郷隆盛や戊辰戦争で敗れた白虎隊や新選組、そして西南戦争で敗れた西郷隆盛などは『賊軍』の

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