チャリダー久保田の世界楽翔〜世界一周自転車旅行記〜

自転車による世界一周に向けた準備の話や、旅の話など

~進め!ノーチラス号~
 4,小屋作り編 前編

10/7~10/10

10/7
今日は日曜なので、おっちゃんは休み。
午前中は床のやすりがけをし、午後はホームセンターに行って買い物をする。

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10/8
土台が完成したので、次はイカダの上に小屋を作る作業に入る。
小屋に必要な角材を購入しに、いつもの材木屋へ。
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150cm×29本、180cm×14本、200cm×10本、210cm×12本の計65本が必要なので、250cm×36本と300cm×15本の計を51本を262ソルで購入。
6本一組で積まれているので、それを担いで崖を降りて船まで運ぶ必要がある。
重さは40kgほど。
もった瞬間
「重っ!!」
と叫ぶくらいだ。
ハマと顔を見合わせ、二人で運ぼうとアイコンタクトで打ち合わせし、運び出そうとしたときおっちゃんが木材の前で背を屈め、
「背中に乗せろ」
と言う。
60過ぎのおっちゃんが一人で運ぶのに、僕らが二人がかりで運ぶことはできない。
「えっ、どうする?」
「やるっきゃないっすよ」
「やっぱり?」
「・・・」
諦めて一人で担ごうと思ったが、角材を背中に乗せて歩きだしていたおっちゃんを見ると、足がふらつきかなりきつそうだ。
「セニョール!無理しないで、一緒に運ぼう。」
自分一人で運ぶのがきつくなる事よりも、お年寄りに無茶をさせるわけにはいかない。
二人で端を持ち6本を船まで運ぶ。
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2回目からはワイヤーで汲まれていない木材があったので、3本を一人で持って往復する。
積み終えた後、角材をイカダまで運ぶ。
当初は5m×5mの床に4m×4mの正方形の小屋を作る計画だったのだが、完成してみると何故か床が4辺とも5m無いことが判明したので、小屋を若干小さめに作ることにした。
まずは土台に角材を打ち、枠組みを作った後柱を建て、小屋梁を打ち付けたところで今日の作業は終了した。
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夜の打ち合わせ時お互い避けてきた、船の名前を決める日がやってきた。
お互い付けたい候補が沢山あるので、互いに納得する名前を付けるにはどのくらい時間がかかるかわからないからだ。
リマで合流した時から、思いついた名前をつらつらと上げて酒のネタにしていたが、本決めの議論は今日が初。
まずは、この話題を切り出したハマから第一候補を言う。
「ノーチラス号はどう?」
「・・・僕の第一候補と同じじゃん」
「じゃぁ、これで決定で」
開始一分で終わってしまった。
お互い小説好きでヴェルヌも抑えているので、これ以上ない名前だ。
因みにほかの候補は、
・ハックルベリー号
・チャレンジャー号
・大和
・武蔵
・しらせ
などである。

10/9
横木を付けた後、屋根の製作に取り掛かる。
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棟木は390cm必要なのだが、一本の長い角材が無いため、中央部は10cmの相欠きにして釘で固定する。
そこに50cmの小屋束を付けた後、小屋梁に乗せて釘を打ち最後に垂木を乗せる。
三平方の定理を使い垂木の長さも決め、細かく設計しているはずなのだが、組み立てながら作業するとあちこちに計算ミスや、打ちミスがある事が判明し、釘を抜いたりあてぎを添えたりと不格好な骨組みになってしまった。
職人のおっちゃんは作業を手伝ってくれるしアドバイスもくれるが、基本は僕らがメインで動き、設計図と頭にあるイメージで作っているのでちょいちょいミスが起きるのだ。
垂木を打ち付けた後、外壁となるベニヤを明日購入するため寸法をハマと一緒に測る。
今回はハマが計測し、僕が作業ノートに書き留める。
「縦○○cm、横○○cm」
「OK」
「次、縦〇〇cm、横○○cm」
「OK」
「次、縦〇〇cm、横○○cm」
(ん?ちょっと待て。さっきから柱を打ち付けた時の寸法と誤差があるぞ)
「ちょい待ち、どこの長さ測ってんの?」
「えっ?こことここの長さですよ」
「違うよ、こっちからこっちの間を測るんだよ」
「何でですか!?ここにベニヤはめるんだからここの長さですよ」
「ベニヤはそこじゃなくて、こっち側に嵌めるんだよ!」
「それはおかしいですヨ!」
「いやいや、そっちの方が変だって!考えてごらんよ、・・・・」
・・・・
設計図まで書いたというのに、ここにきて違うイメージを持ち続けたためお互い意見を譲らず、話し合いは平行線。
10分ほど言い争った後、このままでは一生決着はつかないとわかり、負けたら一切の文句を言わない条件で、じゃんけんで決着をつけることにした。
「最初はグー、ジャンけんぽん、あいこでしょ!」
かーー、負けてしまった!
仕方ない。ハマ案でいくか。
それ以降も釘の打つ場所や、持っていく道具で言い争いになり傍から見れば喧嘩してるように見えるほど、熱く意見をぶつけ合うことがあったが、お互いそれすらも楽しんでおり(多分)、帰宅後のミーティングでは毎夜ビールを片手に二時間ぐらい語り合うのであった。
しかし、一番時間がかかると思った小屋の骨組みが二日で終わったのは意外だった。
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問題のベニヤは、その後何だかんだあって僕の案が採用されたので満足いく仕上がりとなった。

10/10
出勤時、屋根に使うトタンと釘を購入。
トタンを垂木に打ち付ける場合、流れる雨水が釘穴から漏れてこないようトタンの波状の山側に傘釘という専用の釘で打ち付ける。
名前の通り釘の頭の部分が傘の様に広がており、その下にゴム製の2mmほどのワッシャーがあるのでゴムで釘穴の隙間を抑えて水漏れを防ぐ仕組みだ。
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トタンを扱うときの注意点は、トタンの四辺は非常に切れ味がいいので運ぶときはラバー軍手を使うことをお勧めする。
作業用に持ってはいたが、舟まで運ぶときに着けなかったため小休時地べたにトタンを置く際、親指と手のひらをスパッと切ってしまい、驚くほど血が流れ出て手が真っ赤に染まってしまった。
手首の動脈を抑え心臓より傷口を高く上げ止血した後、薬局で消毒等を購入し応急処置をした後、トタンを船で運びイカダに向かうのであった。
今日はトタンを打ち付けて、ベニヤを壁のサイズにカットして終了。
作業中三人して手足をトタンで切りまくり、あちこちに血痕がついてしまった。
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10/11
トタンを乗せた棟木の部分が隙間が空いているので、ビニールシートで覆い傘釘で固定。
トタンは片面から打ち進めていくのだが、片方が打ち終わった後残りの面にトタンを打つときにシートで被いなが作業をしなければ、シートの中央部の釘が打てないとわかりあとで後悔。
経験が無いので毎日のように、手順を間違える。
まぁ、それもご愛嬌か。
ベニヤを打ち付け、網戸を張る。
小屋梁の高さは150cmあり下100cmがベニヤで、100cmから150cmの位置が全面網戸張りとなり、風通しのいい小屋になるはずだ。
網戸が半分終わったところで、1.5号釘が切れたので今日の作業は終了。
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おっちゃん事、Walterさんは今日で終了。
まだ作業は残っているが、大物は終わったので後は僕らだけで作業を薦められるはずだ。
ペルー人のイメージを覆すほど働き者のおじさんで、初日以外は遅刻もしないしさぼりもしない、追加の代金も請求しないし、失礼ながら中南米にもこんな人がいるのかと驚いた。
最後にチップを100ソル渡して、おっちゃんと別れる。
素人の注文に嫌な顔せず手伝ってくれてありがとう。
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プカルパでの更新はひとまずここまで。
10/15に95%完成したので10/16に出航します。
網戸やその他いろいろな細工づくりは、いずれまた。
それではみなさん、ごきげんよう。



はまお・くぼ太のアマゾン漂流記 (仮)
 3、土台作り編
10/2~10/6

10/2

おっちゃんと9時に対岸で約束したが時間内には現れず、当たり前のように30分遅刻して登場。
まずはイカダの基礎となるトンパと呼ばれる、軽くて浮力の高い丸太を探しに行く。
おっちゃんの知り合いの舟をチャーターし、まずは町の南部(上流)にあるカーニョ・マナンタイという小さな支流へ。
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ウカヤリ川(アマゾン川の支流の一つでスタートとなる川)と合流するところに大きな木材加工場があり、工場わきには投棄された材木が転がっているので、ここで使える土台となる丸太を探す。
イカダのサイズは5m×5mの正方形に決まったので、長い丸太が大量に必要になる。
長い丸太を見つけ次第、お互いを呼びあい協力して廃材の山から引っこ抜き岸に集める。
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木はあるにはあるが長い木があってもトンパではなかったり、太さが足りなかったりとおっちゃんに駄目だしされながら、汗だくになってトンパを集めたが、結局2時間ほど探して4本の収穫しかなかった。集めたトンパは
マナンタイ川に突き落とす。
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トンパは
浮力があるのでぷかぷかと浮かびながら流れに乗ってウカヤリ川まで行き、そこで棒でつつきながら回収しロープで船の左右に縛って浮かしたまま作業場へと戻る。
流されないよう
岸に上げた後は、町に戻って昼食をとる。
薄暗い体育館のような倉庫内にある食堂に入り、5ソルの鶏料理を注文。
ご飯の上からレモンを絞り、かきこむように胃袋に飯を詰めこみ、前回アマゾン地方を走っていた時によく飲んでいたセバタ(大麦コーヒー)を1リットルほどを一気に飲み干す。
暑いのでみんな水分を良くとる為か、飲み物を出されるのは普通のコップではなく500ml入る計量カップというのがアマゾンらしい。

腹越しらえをした後、再び船に乗りトンパを探しに行く。
今回は午前中に探した場所よりさらに南に進んだとこにある、川岸にある小さな集落だ。
川岸と言えども水面から10mほどの崖のような急な斜面を登ったところに、民家がぽつぽつと点在している。
その内一軒の庭に保管してあるトンパを、1本10ソル、計5本で50ソルで購入。
購入したトンパは崖から滑り落とし、午前の時と同じように船に係留して作業場に運ぶのだが、この時事件が起こる。
崖を降り船に乗り込もうと、順番待ちしていた時突然乗り込もうとしたハマが
「うわーー」
と叫び声を上げた。
「何事か!?」
とハマの方を見ると、足場にしていた流木から足を滑らし尻もちをつき、足は川に浸かっていた。
距離も多少離れていたし、僕の足場もぬかるんで滑りやすい粘土質の地面なので、手を貸したところで共倒れになりそうだし、何より面白そうなので笑いながら様子を見ることに。
立ち上がろうとしても流木は滑るわ、回転するわで、中々立ち上がれないようだ。
最初は笑って見ていたが、どうも本気で落ちていきそうなので、流木や岸に繋がれている小舟をつたって、とりあえず濡れたらいけないものだけ受け取り、後は見守る事に。
そして荷物を受け取って1分もしないうちに、彼は遂に乗り上げるのを諦めアマゾン川へとずるずると沈んでしまうのであった。
ただ川に落ちたところで、ハマは元消防士で水難救助をやっていたほどの男なので心配することは無い。
すぐに丸太地獄を潜って脱出し、そのまま僕らの船へと上がっていった。
作業中に誰かしら一度は川にドボンすると思っていたが、まさか一日目で落ちるとはなかなか笑わせてくれる男である。
が、笑っていられたのもつかの間、彼の濡れた服を見て思わず顔を覆いたくなる惨状に気づいた。
彼が背負っていた小さなリュックの中に、昨夜二人で書いた設計図などが描かれたノートを入れていたのだ。
慌てて出したがもう遅く、ノートはびちょぬれで文字はふやけ使い物にならなくなってしまった。
彼の貴重品よりも先に共用のノートを救出しておけば良かったと思っても後の祭り、折角作ったのに一日でダメにするとはまったく。

10/3

9時集合と言われたが、30分ほど待ってもやってくる気配はない。
「あのおやじ逃げたんじゃないですかね?」
中南米では約束の1時間2時間は平気で遅れるのを知っている僕は、そのうち来るだろうと気楽に考えていたが、こっち
の人と仕事をしたことのないハマは不安になって、そわそわしだしている。
昨日前金として半分の250ソルを渡しているのでその可能性も多少あるが、イカダを作れば倍の金額を貰える状況で、逃げるのはあまり考えられない。
「只の遅刻だよ」
と言って日陰で寝ていたのだが、10時頃に
「自分たちでやりましょう」
と起こされてしまった。
とりあえず近くで聞き込みをしようとこちら側の岸に係留している、
navegante(船乗り、航海士)と書かれたイカダ小屋に出向く。
が、説明がうまく伝わらず結局何の情報も得られないまま去ろうとしたところで、おっちゃんが渡し船に乗って登場。
ほっと胸をなでおろしたところで、今日も渡し船をチャーターして、木材集めに出かける。
今日はトンパの続きとイカダ二段目に挟むトンパより細く硬い木材を、昨日よりもさらに上流の木場で調達。
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トンパは
ワイヤーで繋がれた木材が浮かぶ木場の中にある為、船で運ぶには木場から出す必要がある。
浮かんだ木材の上に乗って作業ができれば楽なのだが、一人分の体重でも沈むような細い木材置き場の為、最終的には水深2mある川に飛び込み泳ぎながら押し出す。
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木材やワイヤーをうまい事活用して、無事トンパを3本手に入れることができ、二段目の細くて硬い丸太も手に入った。
食後3段目の角材を材木屋で20本70ソルで購入。
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追加のトンパも対岸の浜で保管されていた物を、イカダに住んでいる人に売ってもらい、これで土台の基礎が揃った。
帰りがけに襟首を紫外線から守るために、テンガロンハットもどきを15ソルで購入。

10/4

町でナイロン製のロープを100m購入し、一段目のトンパ15本と二段目の木4本を固定していく。
いぼ結びのように木がクロスした部分をロープでバツ印のように結ぶのかと思っていたら、2段目の棒にかかるロープがトンパに対して平行になるように結んでいる。
素人考えでは強度を考えるとクロスして結んだ方ががっちりつきそうだが、職人がやるからにはそれなりに理由があるのだろう。
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作業をしていると、昼過ぎから広がりだした雨雲が全天を覆いぽつぽつと雨が降りだした。
これで少し涼しくなるなと思いつつ汀で膝まで水に浸かりながら作業を進めていると、突然襟首に針で刺したような鋭い痛みが入った。
「あいたたたたた!」
何かに刺されたのかと思い、首に手をまわしてみると蠢くものを発見。捕えてみると1cm程の羽蟻が犯人のようだ。
そいつを倒し作業を再開したのだが、5分もしないでまた首筋に痛みが走る。
「いてててて、何だよくそっ!」
もう一度首筋に手をやるとまたもや羽蟻が首にまとわりついている。
別に吸血するわけでもないのに、なんで首をかむんだよと腹を立てつつ、作業に戻るもすぐに首を羽蟻に噛まれる。
「どんだけ蟻が居るんだよ!?」
原因を探る為日焼け対策に首に巻いているタオルを外したところ、タオルには10匹近い羽蟻が蠢いている。
「なんじゃこりゃー」
急いで川でゆすぎタオルに着いた蟻を洗い流したのだが、よく見れば服やズボンにも羽蟻が歩き回っている。
気づけば首以外にも腹なども咬まれ、痛さと鬱陶しさにかられ頭に来たので水に飛び込み体中にまとわりついた蟻を洗い落とす作戦に出る。
蟻を落とした後、みんなは平気なのか?と見渡すと朝から手伝ってくれているおじさんも水に浸かって飛び回って、蟻を払い落としている。
この蟻被害は土砂降りとなり作業を切り上げるまでずっと続き、強い雨が降っている時は虫は飛ばないと言う僕の中での定説が覆されることとなった。
この羽蟻は日が差している時は見かけないので、雨の日限定の虫なのかもしれない。
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10/5

1段目と2段目を結び終えた後、3段目の角材が高さが揃うよう2段目の木を削りながら乗せて釘で固定していく。
この3段目を乗せる作業の時に、1段目と2段目をロープで結ぶのにクロスさせない理由が判明。
3段目を乗せるのに2段目に棒にロープがクロスしていると、ロープが文字通り板挟みになり負荷や摩擦等で切れやすくなるので、3段目の角材に挟まれないよう1段目と3段目に対して平行に結ぶ必要があったのだ。
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(なのに、手順を間違え時折クロスを入れてしまうおっちゃん)

3段目まで打ち終わるとイカダらしくなり、大分見た目も良くなってきた。
昼食後に、床板を船で買い付けに。
いつもの材木屋で250cm×12cmを100枚100ソルで購入。
購入した板を10枚ずつ担いで、ぬかるんだ急な斜面を降りていくのだが、重いし滑るし浮かんだ小舟ゾーンもあるしで、落ちないようそろそろと慎重に歩いていたが、2回目の下りで足を滑らし腰を強打して一人悶絶。ロ
この足場の悪い斜面を、運ぶのを手伝ってくれた従業員の方たちは、滑る様子もなくサクサク運ぶのだから尊敬してしまう。
帰宅後日課の打ち合わせで再度設計図を書くも、庇の長さで意見がまとまらない。
昨日蟻に噛まれたところが腫れて痒い。

10/6

昨日購入した床板を打ち付ける。
歪みがありどうしても板と板に隙間ができてしまうが、両足やバールのようなものを使い、てこの原理を利用してで隙間の方に向かって無理やり押して隙間を埋めて釘を打てと、おっちゃんに教わる。
この方法でかなりゆがんだ板でも真っすぐ3段目に取り付けることができた。
そして15時すぎ最後の一枚を打ち終え、外側にはみ出した部分の長さをそろえて切り落とし、床が完成。

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これから小屋や生活用品などを乗せなければならないが、太いトンパ15本のおかげで喫水線が丸太の半分ほどあるので十分耐えてくれるだろう。

次回小屋作り編、こうご期待。
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自転車少年的アマゾン川イカダ下りの旅 (仮)
 2,職人探しの旅の巻

9/29~10/1

9/29

リマからプカルパに向けバスで出発。
50ソル(1700円)で所要時間は約22時間。
今回乗ったバスは、チリからリマを往復した時に乗った2階建てのバスとは違い、一階にセミカマと呼ばれる一等席の無いバスで、バックパックも預けられず狭い座席に持ち込みと安い事だけはある2等バスだ。
バスは北ターミナルを時間通り15時半に発車したが、渋滞の激しいリマ市内の長距離ターミナルを周りながら乗客を拾うので、町を抜けるころにはすっかり暗くなっていた。
明るいうちは読書をしていたが、日が落ちるとすることが無くなるので、音楽を聴きながら暮れてゆく街並みを眺めている。
表面こそ穏やかに装っているが、内心は心臓がバクバク鳴りだしそうなほど、高揚している。
深夜の内にアンデス山脈を越え、起きたらもうそこはアマゾンで、どのようにイカダを準備するかわからないが、そこから半月後には熱帯の森を流れるアマゾン川をイカダで流れ出しているはずだ。
どのような冒険が待っているのか?憧れのアマゾンに思いを寄せ、狭い車内で足を抱え込みながら眠りにつくのであった。


9/30

浅い眠りを何度も繰り返し、暑さで眠ることができなくなった12時過ぎ、バスはようやくプカルパの町に到着。
途中標高4000m後半の峠を越えるので高山病にならないか心配したが、薬に頼ることなく高山病も車酔いも無く地に足を付けることができた。
バスを下車し、縮こまった体をほぐして深呼吸一つする。
日陰に居てもじっとりとした暑さに汗がたれ流れ、暑さと湿気で密度が濃い気さえするこの懐かしい空気。
「戻ってきたんだ」
一年ぶりのペルーのアマゾン地帯。
昨年やり残したことを遂に実行する日がやってきた。

「暑ーい!!」
体力お化けでタフなはずの相棒は、慣れないバスと暑さのために早くもグロッキーだ。
バスターミナルは中心部から5kmほど離れているので、ターミナルに居るモトタクシーでセントロに向かう。
プカルパはアマゾン川沿いのちょっと大きな村程度と考えていたが、調べてみると人口20万の大都市で、国道沿いにはケンタッキーフライドチキンも入っているかなり立派なショッピングモールが2軒建っている。
そしてメインの国道は中央に車用の車道があり、そのわきにバイクとモトタクシー用の車道が伸びると言った、車よりモトタクシーの多いアマゾン地域ならではの光景が広がっている。
大きなエンジン音を立てて走るモトタクシーの客席は吹きさらしの為、汗をかいた顔にすーと心地よい風を受けるので、暑い地域では非常に爽快な乗り物だ。
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セントロに到着した我々は、重い荷物を持ったままホテルを探して、町中をうろうろ歩く。
このご時世、ネットがある所で調べれば安い宿などすぐ分かりそうなものだが、
「着いてから探せばいいんじゃね?」
とリマで調べることをせず行き当たりばったりで来てしまうのは、普段から宿の予約をしない(というより、人力だと予定がたてられないので予約ができない)チャリダー二人組ならではといったところか。
安そうなホテルで逐一値段を聞き歩き、結局アルマス広場に面したホテルに投宿。
最初聞いた値段は60ソル(1950円)だったので、高いので断った所、
「幾らまでなら泊まる?」
「30ソルかな」
「んー、じゃあ40ソル」
「(近くに35ソルがあったので)ありがとう、別の所さがすよ」
と出ようとしたら
「よしっ、30ソル!」
「OK!」
別に値引き交渉したつもりはなかったが、一気に半額まで落としたところを見ると、最初の60ソルはかなりふっかけてきたのだろう。
ホテルの入り口がある雑居ビルの通路は薄暗く、アンモニア臭すらするのでよくこれで60ソルの値段で泊まらせようとしたものだ。
二人部屋ならもう少し安くなるが、この先狭いイカダの上でで2か月間嫌でも顔を見合わせることになるので、せめてそれまでは別々の部屋で過ごそうと個室を取る。
部屋の風通しは悪く、扇風機があるので暑さはしのげるが起動音がガーガーとうるさい。
それでも、僕の部屋はまだ良かったが、荷物を置いてハマと合流すると、
「窓に網戸無いので、めっちゃか蚊が居るんですけどー」
と文句を言いだす。
蚊の多いジャングルの地区でも、安宿は網戸が壊れていたり、ガラスがはまっていなかったりと、そのくらいならよくある事なので、
「(他人事なので)ちょっとぐらい我慢しろよなー」
と思っていたが、階段横の彼のシャワー室にも窓は無く、トイレまで丸見えなうえ階段から簡単に出入りできる、防犯意識がまるでない部屋だったので、流石にそれはイカンと部屋を交換してもらい、それからイカダ職人を探す旅に出る。

今日は日曜なのでイカダ屋は閉まっていると思うが、とりあえずアマゾン川の支流ウカヤリ川に向かい歩き出す。
歩いて数分で川に到着。
川と町の間は粘土質の斜面が広がり、水面からの高さは10m弱といったところか。川幅は600mほどで、流れは緩やかだ。
岸には渡し船や貨物船が停泊しているが、ぱっと見た所イカダは浮かんでいない。
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川沿いの公園にはカラフルなパラソルが無数に広がり、遊歩道に沿って市場が続いている。
南国らしく幾種ものフルーツが所狭しと置かれ、その横ではピラニアやナマズが売られ、屋台の網の上ではぶつ切りにされた小さなワニが焼かれており、切り落とされた頭が生々しい。
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とりあえずぶらぶら歩くが、痛いくらいの日差しで帽子を被らないとすぐに日射病でやられてしまいそうだ。
町中で木造船を作っている工場(こうば)を見つけたが、イカダは作っていないと言われ、またとぼとぼと歩く。
川沿いに歩くとアスファルトが切れ、ちょっと怪しげな感じの集落へと続く道となる。
治安的にはあまりよろしくは無いが、こういうところにイカダ職人がいそうな気がするので、構わずずんずん進む。
しかし、そこにはイカダ屋は無く、陽気な音楽を鳴らし入口のテーブルで一杯やってごきげんなおっさんがたむろする、まさに【酒場】という文字が良く似合うbarが軒を連ねている。
それを横目に歩いていたが、数軒目を越えたところで二人はどちらともなく足を止め顔を見合わせ同時に
「飲むか!」
と意見が一致。
薄暗い店の奥に入り、ビールを二本注文。
【San Juan】というジャガーの絵が描かれた、多分アマゾン限定のビールだ。
キンキンに冷えたビールをグラスにつぐ。
「アマゾンに乾杯!」
ぐびっ、くびっ、ぐびっ
「くはぁー、うめーー」
「まぁ、まぁ、もう一杯どうぞ」
「ありがとう、ありがとう、では」
ぐびっ、くびっ、ぐびっ
「うまい、うまずぎる」
外は35度を超える夏日だ。
暑い日に飲む軽めのビール。これ以上ない贅沢な一杯だ。
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ゴキゲンになった二人は、店を出て聞き込みを再開。
すると
「この近くで作ってくれるよ」
と教えてもらえたので、そこに向かって歩いたが日曜の為か工場らしきものは開いていない。
取り合えず家の前で飲んでる家族に話を聞くと、
「日曜はやってないよ。明日市場に行ってごらん」
と教えてくれた。
お礼を言って去ろうとしたのだが、
「これでも飲みねぇ」
と手に持っていたビールを渡された。
断る理由は無いので、有難く頂戴する。
飲み乍ら世間話をしていると、飲み終わったころに
「もう一本どうだい?」
と新しいビールを渡される。
既にすきっ腹に1L近く飲んでいるので、ちょっときつくなってきたが、断っては悪いのでありがたく頂戴し、家の前で酒盛りは続くのであった。
酔いが回ってきたので、今度こそお礼を言い握手をして別れる。
「職人は見つからなかったが、これはこれで楽しかったので良しとしよう」
と、軽い千鳥足でホテルに戻るのであった。

10/1

ホテルの条件が悪かったので、個室30ソルで冷蔵庫付きの別のホテルに移動したのち、昨日の聞き込みを基に市場で職人探しを開始。
市場手前にいたおっちゃんたちに聞いたところ、
「イカダ職人ならあっちにいるぞ」
と、一様に対岸を指さすので、岸に停泊している渡し船に乗り、一人3ソル払って対岸に渡る。
対岸には小屋の乗ったイカダが数軒(?)浮かんでおり、これは期待できそうだ。
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対岸には町は無く、砂浜が伸びその奥は森が広がり、小さな集落がいくつかあるだけなので、とりあえず浜伝いに歩いてみる。
すると、小さな木造船を修理している60歳ぐらいのおっちゃんいたので、職人が居ないか尋ねる。
「すみません、イカダを作りたいのだけど、この辺にイカダ職人は居ますか?」
「イカダ職人?あー、それならあっち(上流)にいるぞ」
「そうですか、ありがとうございます」
「ハマ、あっちに居るって」
「そうっすか、じゃあ行きましょう」
と歩き出したころ、さきほどのおっちゃんが呼び止めてきた。
「あっちは、あまり歩かん方がよいぞ。前にアメリカ人がカメラ盗まれておった」
「イカダならわしが作ってやる」
「幾らですか?」
「500ソルで二日で作ったる」
「500ソル?安っー!」
イカダの相場は正確には知らないが5万円(約1500ソル)~10万円ぐらいかと考えていたので、これは破格だ。
「どうする?」
「めちゃくちゃ安いじゃないですか!?でも絶対二日じゃできませんよね。」
「できないだろー」
二人とも南米に長くいるので、こっちの人の適当さ加減は良く知っているつもりだ。
「2週間は見た方がいいですよね」
「料金も500ソルじゃ無くて、結局追加支払われるだろうね。」
「まぁ、それでも安いからここにしますか?」
「よしっ、じゃここに決めようか」
こうして交渉はまとまり、明日の9時にここで待ち合わせとなった。
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とんとん拍子に話はまとまり、鬱陶しくなった髪を二年ぶりに切って坊主頭にしたことだし、明日からいっちょ気合を入れていくっか。

次回イカダ作成編がついにスタート。
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自転車少年的アマゾン川イカダ下りの旅 (仮)
 1,一年越しの計画の巻

昨年、アマゾン川にある村で釣りをしながら数日過ごしたのだが、これが面白すぎてもっと釣りをしながらジャングルで過ごしていたいと思いつつ、時間の関係でアマゾン川を去ってアンデス山脈へと向かったのだ。
(この時の記事は↓
http://blog.livedoor.jp/kubota944/archives/2017-06.html

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大漁

いつかアマゾンに戻ろうとは思っていたが、一つの村に腰を据えて釣りをして過ごすのも良いが、それよりももっと面白そうなものに気づいてしまった。
それがタイトルにもあるイカダ下りだ。
イカダと言えば冒険の代名詞とも言える乗り物で、将来無人島に漂流した時は手作りのイカダで荒波を越え脱出したいと、子供のころから夢を持つほどイカダに対して強い憧れがあったので、夢とは違うが今の所無人島脱出する機会が無いのでこれはいい機会だ。
昨年行ったユリマグアスの地は、丁度50年前の1968年6月に植村直己がイカダでアマゾンを下りだした地であり、それに気づかずに自然と足を向けたのも何かの縁(植村直己の自伝『青春を山にかけて』は以前に読んでいたが地名までは覚えていなかった)。
ここはいっちょ、イカダを組んでアマゾン川を下ってやろう。
そう思いつつ、『楽しい事なら何でもしたい』がモットーの僕がすぐに決定しなかった理由は一つ。
イカダ下りは自転車で世界一周するよりもはるかに危険度が高いからだ。
アマゾンには盗賊、ゲリラ、スコール、ピラニア、マラリア等々、危険の要素が高く逃げ場のない川の上では回避しようがないものばかりだ。
ニュースサイトやナショジオのページでもゲリラに捕まっていた家族が命からがら脱出しただの、イカダ下りをしていた旅人が毎年何人も死んでいるなんて記事が出てくるので、流石に慎重にならざるを得ない。
どうしようかと悩んでいた時、アンデス山脈の宿で出会った日本人が丁度イカダ下りをしたばかりで、話を聞いたらやっぱり面白いので、くすぶっていた好奇心と冒険心に火がついてしまった。
危険ではあるが冒険に危険はつきものだし、余り恐れすぎていては自転車旅すらも出来なくなってしまう。
だが、闇雲に突っ込むのは愚かな行為なので、勇気と蛮勇をはき違えず危険な行為は極力回避しつつ、その中でできる最大の冒険をしようと心に決めたのであった。
おまけにイカダの憧れとともに、ユーコン川をカヤックで下った時川下りの面白さに気づいてしまい、いつかまたカヤックで川を下りたいと願ってたので、今回は二つの夢を掛け合わせて面白さ倍増の挑戦になるのだ。

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と言っても、その年はウシュアイアに行くのが優先なので、ぼんやりと計画しながらアメリカ大陸縦断をし、遂に今年イカダ下り実行計画に移す。

やることはいろいろあるが、大まかに書くと以下の通りだ。
・仲間集め
・ルート、期間計画
・イカダの作成または手配
・道具の準備

【仲間集め】
植村直己は一人で二か月かけて下っていたが、単独走行は危険度が増すので、できれば2~3人が好ましい。
複数いれば漕ぐのが有利だし集落に寄る際、買い出し班と見張りに分けられるし、何かと心強い。

期間が決まってから、宿などで会った旅人をイカダ旅に誘ってみたが見事にふられ続け、もう一人で行くしかないかと思われた頃、今まで何度も誘っていたのに断り続けていたチャリダーの濱尾君が、急きょ参戦決定。
決定打はアスンシオンの日本人宿『らぱちょ』にあった坪井伸吾著の『アマゾン漂流記』。
これを読んで面白そうだからと、決めてくれた。
もう一人は、濱尾君の友人で、今行けるかどうか予定を計算中。

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【ルート】
植村直己はユリマグアスから河口のマカパまで下っていたが、現在ブラジル側はイカダ下りが禁止されているらしいので、ペルーとコロンビア、そしてブラジルの三国国境のあるレティシアが終点予定

プカルパ Pucallpa~レティシア Leticia
約1700km

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【期間】
10月上旬から11月下旬
 イカダの準備込み

【イカダの手配】
プカルパにはイカダ屋があるので、そこで買うか自分たちで作るかは行ってから考える


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ユリマグアスで見たイカダ
これでは嵐に耐えられないので、土台を頑丈にしてその上に寝泊まり用の小屋を作る

【道具の準備】
プカルパの町が意外と大きそうなので、大抵のものは現地で用意
持ち物リストは次回以降に投稿


とりあえず一年越しの計画が動き出したので、後はリマで濱尾君を待ち計画を煮詰める予定だ


【ユリマグアスの光景】

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8/27~9/18

Yguazú・Asuncion

イグアス居住区から民宿小林までバスで移動し、とりあえず一息つける。
初日からなんともついていない。
交換が必要なパーツはチューブからスポークまで積んでいるが、流石に交換用のリムは積んでいないので、自転車屋さんに行き新たに組んでもらうしかない。
しかし、イグアスには頼める自転車屋は無いので、バスでシウダーデルエステの町に戻るか首都アスンシオンまで行く必要がある。
アスンシオンまでは270kmあるのでエステの方が近くていいのだが、アスンシオンには今、このブログに何度も登場しているチャリダーの濱尾君が滞在しており、宿で合流する予定だったので荷物を民宿小林に置いて、バスでアスンシオンに向かうことに。

ただ、直ぐにアスンシオンには向かわず、三日間小林に滞在。
ここ小林はイグアスから12km離れた国道沿いの辺鄙な集落にある。
数軒の集落はあるが、商店は無く辺りは畑が広がるのみの広々とした景色と、綺麗な夕焼けと星空が売りの日本人宿である。
夕食は+500円でそばや日本食などお母さん手料理がたらふく味わえるので、雑踏を離れ長旅で疲れた体を癒すには持ってこいであり、さらにこの宿の庭では猫が10匹ほど飼われているので猫好きにはたまらない。
(犬も10匹ほどいるがこれはどうでもいい)
オーナーのお父さんお母さんは人が良く、田舎のおじいちゃん家に遊びに来たような感覚でとても落ち着くので、自転車の修理が無ければ一週間以上は滞在したいところだったが、まず先に濱尾君に会いにアスンシオンにバスで移動。

こちら首都アスンシオンにも、世界一周した元ライダーの夫婦が経営している日本人宿【らぱちょ】がある。
ここの宿の売りは漫画や小説、PS2や麻雀といった遊び道具が豊富で、見どころが無いと言われるアスンシオンで一番の娯楽施設となっている。
合流した濱尾君と早速麻雀を打ち、毎度恒例となったシェア飯を食べ乍らとある計画の打ち合わせをしたのだが、濱尾君とはウシュアイアで別れ、僕はバスでブエノスに行き彼はウシュアイアから自走してきたというのに、何故先にアスンシオンに居るかが謎。
僕はブラジル経由で多少遠回りしてパラグアイに来たが、それでも一か月以上の差があったはずなのに。
加速装置でも付いているのか?
それはさておき、今回合流した最大の目的がこの打ち合わせなので、話を詰めたところで再び濱尾君は走り出し、僕は僕で自転車屋や歯医者に行って要件を済ます。
自転車屋は数軒回ったが、どこもカンチブレーキ用のリムのオーダーはうけておらず、ディスクブレーキのみのオーダーしかやっていないので、今回は一度諦めてひとまず小林に戻る。
戻ってきた小林では居住区にある日系のスーパーで納豆や小豆バーを買い、庭でカピパラを飼っている日本人の方に会いに行ったり、釣り堀でティラピアを釣って刺身で食べたりと、イグアスを満喫。
そして、パラグアイに入国して20日ほど経った9月18日、次の計画に移すため自転車と荷物を置いて久しぶりの飛行機でペルーのリマに飛ぶのであった。

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食用のカピパラさん
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日本ではイズミ鯛として売られ、最近は安く購入できる
コリコリとしてうまい。
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シウダーデルエステの町
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北家なので、北を自模れば跳満だった




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