チャリダー久保田の世界楽翔〜世界一周自転車旅行記〜

自転車による世界一周に向けた準備の話や、旅の話など

Foz do Iguaçu~Yguazú

8/27


イグアスの滝を満喫した後は、お隣パラグアイへ。
パラグアイと言えば日本からの移民やその子孫たちが多く住むイグアス居住区を筆頭に、日系の町が多くある国なので、普通のスーパーでも日本の食材が手に入ると聞く。
勿論それも嬉しいが、戦前戦後に日本を離れ遠くパラグアイで暮らしてきた歴史や文化を知ることもできるので、日系人の人たちとのふれ合いも又楽しみだ。
フォスドイグアスからイミグレを抜けイグアスの滝上流のイグアス川を越え、19か国目のパラグアイに入国。
荷物検査も書類の記入もなく、パスポートにスタンプをポンと押されサクッと入国審査は終了した。

パラグアイのイミグレを抜けるとすぐにごちゃごちゃした雑居ビル群が広がり、所狭しと巨大な看板が掲げられた電化製品店が乱立し、怪しげな両替屋が声をかけながら徘徊している。
イミグレを出てすぐの町がこれ程賑わっているのは珍しく、これまで走ってきた中ではアメリカとメキシコの国境以来だ。
それ以外の国境間にはジャングルや砂漠、もしくは無人の緩衝地帯が置かれていたりするので、両国間に規模の大きい街があるのは実に久しぶりの事だ。
ここ、シウダーデルエステは南米の秋葉原と言われるほど電化製品の種類が豊富で、しかも海外の中ではかなり安く買え、電化製品の安い日本と遜色ないと言われている。
カメラのメモリーなど何点か買いたいものがあったが、流石に自転車を店頭に置いて買い物をするわけにもいかないので、まずは国境から53km地点にある日本人宿『民宿小林』に向かう。
アスンシオンに続くメインの国道沿いは片側二車線の道なのだが、路側帯は路駐で埋まり走行車線でも車の乗り降りをするため、非常に邪魔で走っていてストレスがたまる道だ。
町を抜けてやっとまともに走れると思いきや、路側帯には100mごとに小さなTOPEがあり、路駐の車以上に鬱陶しい。

このTOPE(トペ)とは、メキシコ走行時のブログでも書いたが、全世界の自転車及びバイク乗りの宿敵であり、作った人間の無能さを怨む道路上のトラップの事である。
信号が無い、もしくは守らない人が多い中南米では町中でスピードを落とすために、道路を横切る様にかまぼこ型の障害物を作り、強制的にスピードを緩めさせているのだが、このかまぼこの角度がきついと自転車で乗り上げた時かなり衝撃を受けるので、ブレーキをかけスピードを落とさなければならない。
それこそ設置した目的通りの行動なので設置者にとっては良い事なのかもしれないが、アップダウンが続く道の下り坂の底部分にトペがあると、下りのスピードを生かして一気に上り坂を駆け上がる事が出きないので、坂の途中のトペには腹が立つのだ。
それが集落の手前にあるなら仕方なしと思うのだが、意味のない所にも多くあるので作った奴に恨み言を言いながら毎回乗り越えていくのである。
一応トペ手前100m位の所には注意を促す看板があるが、一度下り急カーブの先に看板なしでトペがあり、フルブレーキをかけたがスピードが殺せずトペの段差でジャンプ台のように弾み、危うく吹き飛びそうになったこともあるので、最早障害物でしか無いトペには心底うんざりしているのだ。
デメリットはそれだけでなく、日本のニュースだったと思うのだが、小学校近くの横断歩道手前にトペを設置し、子供たちの安全を守るというのがあった。
確かに【この先通学路あり】の看板を設置するよりも、強制的にスピードを殺させた方が安全を確保できるので、良いアイディアのように見えたが別の面で問題が浮上したそうだ。
それは緊急車両の走行時に起きた問題で、1秒でも早く現場に向かわなければならない時に、一々トペでスピードを止めていては支障が出るというものであった。
全ての運転手が交通ルールを守ればこんな物いらないはずだが、それはあり得ないので難しい問題ではある。

話はそれたが、このトペがブラジル後半から、路側帯のみに一定間隔で続くミニトペが設置されるようになった。
車道にある奴は一応台形の型をしているのでスピードを抑えれば越えやすいが、このミニトペは余ったアスファルトを一列に盛っただけのような雑な作りで、高さは5~10cmほど。
垂直に盛られているので乗り越えるたびに衝撃が伝わり、自転車にも精神的にも負担のかかる道で、しかも路側帯のトペは看板が無いため、油断していると急に表れるので質が悪い。
そしてパラグアイもその道が続き、ミニトペを乗り越えたりかわしながら進んでいたのだが、パラグアイに入って10km程の地点に差し掛かった時だった。
下り坂でスピードが少し乗った時、丁度木陰で車道が陰で黒くなり黒色のトペが見えずそのまま気づかず乗り上げてしまったのだ。

「しまった!」
と思ったときにはもう遅く、タイヤからカツンカツンと何かがぶつかる音が聞こえてくる。
「衝撃で荷物が緩みタイヤに干渉しているのかな?」
と、自転車を止め荷物を点検したが干渉している部分は無い。
「おかしいな」
と思いつつ走り出したがやはりカツンカツンと音が聞こえてくる。
ガードレールに立てかけ、今度はタイヤをチェックするとなんとフロントのリムの一部が外側に歪んでおり、そこが左ブレーキに干渉し音が出るようだ。
「最悪・・・」
今使っているサンリングルのリムは約3万km走り、既にリムの内側に亀裂が入っていたので、そろそろ交換しなければと思いつつ限界まで粘っていたら、まさかこんな所でリム打ちして破損してしまうとは。

今日の目的地である民宿小林まではあと40km。
イグアス居住区までなら30kmなので、イグアス居住区にも日本人宿があるしそこまで行ければ何とかなるだろう。
しかし、走れるには走れるのだが、走行中は常にカツンカツンと音がしてうるさいので、タイヤを外し曲がった部分をペンチで曲げて元に戻してみる。
直したおかげで音は止まったが、曲がった部分は付け根にひびが入っており応急措置をしたところで長くは持たなそうなので、これは時間との勝負だ。
「30kmなら多分行ける!」
と走り出したが、5kmもしないで再びカツンカツンと音がする。
どうやら亀裂が入ってしまったせいで、直したところでタイヤの負荷に耐えきれず簡単に歪んでしまうらしい。
仕方ないので歪んだリムには目をつむり、あまりいい対処方法ではないがせめて音だけで止めようとフロントのブレーキを外し、リアブレーキのみで走り出す。
時限爆弾を抱えながら走っているようなもので、折角新しい国に来たというのに全く楽しむことができない。
路側帯のみのミニトペは永遠と続くし、交差点では路側帯と車道にも高い段差があり、一々ブレーキをかけるのでそれも又ストレスになる。
おまけに、路側帯を車やバイクが逆走してくるので、交通ルールの適当さ加減にも腹が立つし、今までに行った国の中でこれ程初日にムカついた国は初めてだ。

腹立ちながらもなんとか走る事ができていたのだが、30km地点を過ぎ上り坂を走っている時、タイヤからプシューと空気が抜ける音が聞こえてきた。
チューブは徐々にしぼみ、遂に坂の中腹でタイヤは力尽きてしまった。
「(イグアス居住区まで)あと10kmだったのに・・・」
リムが原因のパンクなのでパッチを当てたところで意味は無く、最早お手上げ状態だ。
パンクしたまま自転車を押すとチューブやタイヤに負荷がかかるし、2,3kmならまだしも10km押すのは大変なので、走行は諦めてヒッチハイクをすることに。
自転車をガードレールに立てかけ、ウルグアイに入国する時以来のヒッチを開始。
ピックアップトラックが多いので、すぐに乗せてもらえそうな予感がしたが、反応は薄い。
時折運転手と目が合うが、僕の方を見てにっこり笑って親指を立てるだけでそのまま通り過ぎてしまう。
「違う違う、そうじゃ そうじゃなーい」
僕は挨拶してるわけじゃないんだよ!ヒッチをしてるんだよ。
しかし思いは伝わらず、笑顔で挨拶してくる運転手ばかりだ。
「んー、パラグアイ人が人が良さそうなのは分かったが、全く止まる気配はないなー」
イグアスの滝に行くときもそうだが、いつ来るかわからないものをただじっと待っているのはもどかしく、だったら自分で進んだ方が気が楽な性格なので、チューブもタイヤも交換時期に近づいているのでダメになってもいいから10kmくらい歩くかと、20分ほどでヒッチを諦め、パンクしたまま自転車を押してイグアス居住区へと歩きだした。
ふらつく自転車を押す事3km、チューブが外れてハブに絡まってしまいタイヤが回らなくなったのでチューブをはさみで切り、チューブなしの不安定な状態でめげずに押していたが、1km進んだところでリムが完全に割れてフロントフォークにぶつかるようになったので、押す事も不可能になってしまった。
「流石にもうだめか」
スケボーやローラースケートでも持っていれば前輪に取り付けて進む事はできるが、いくら荷物が多いとはいえ流石にそんなものは持っていないので、今度こそ諦めて大人しくヒッチを再開。

二回目のヒッチでは、15分ほどで丁度イグアス居住区に向かうパラグアイ人に止まってもらうことができたので、荷台に自転車を乗せて居住区へと向かった。
その人は日本語はできなかったが、町に居た日系の方に話をつけてもらい、近くのスーパーで民宿小林さんに車で迎えに来てもらえることになった。

待つ事30分。宿のオーナーと丁度宿泊中で南米で何度か会った友達が迎えに来て、車で宿へ向かう。
入国早々災難にあったが、地元の人や日系の方たちの優しさに触れ、道は最低だが人は最高という感想を得た初日の出来事であった。


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ブラジルイミグレ
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国境からアルゼンチンを望む
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ミニトペ
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歪む
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直す
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既にできていた亀裂のせいで、耐久性が無くなっていた
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逆走パラグアイ人
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蟻塚
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力尽きて
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ドナドナ
Sin título





8/25.8/26


フォスドイグアスに着いた翌日は天気が崩れたため、一日お預けとなり、三日目にイグアスの滝に向かう。
イグアスの滝はブラジルとアルゼンチンの国境を流れるパナマ川上流のイグアス川にあり、両国間では見え方が違うので二度楽しむことができる。

まずはブラジル側のイグアスの滝に向かう。
ホテルの前にあるバス停からバスに乗りで30分ほどで公園入口に到着。
滝があるイグアス国立公園は17万haと広大な面積を持ち、町から150㎞以上離れた数日前に霧によって走行が困難になった村の先まで広がっている。
入場料を払い園内を走るシャトルバスに乗って滝に向かう。
ジャングルの中に延びた道を進み、滝手前で降ろされる。
アメリカ大陸のゴールがウシュアイアではなく、ブエノスアイレスから再び自転車で走り出した最大の理由が、ここイグアスの滝に来るためだ。
そんな憧れの滝と遂にご対面の時間がやってきた。

今は乾季の為水量が少ない可能性があるので、過大な期待はしないようにしていたが、バス停から少し離れた展望台からは、川越しに横幅1km以上ある巨大な滝のパノラマが見える。
滝は上流から一気に渓谷の底に落ちるものもあれば、中洲のよう場所をつたい二段三段と階段状に落ちていく滝もある。
しかし、展望台から滝までは距離があるので、滝の規模の大きさは分かるが迫力は感じないので、次のポイントに期待して散策路を進む。
散策路は道路から離れ、斜面に延びた階段で川面に続いている。
階段を下りていくと徐々に川の流れる音が大きくなり、期待も高まってくる。
そして遂にブラジル側のメインスポットである、滝つぼ正面に延びる遊歩道に到着。
そこでは、滝が流れる音と水面を叩きつける音で、人の声がかき消されそうそうなほど激しい音が響き
、滝の風圧で帽子が飛ばされそうになり、飛沫で体はしっとりと濡れている。
「こいつは凄げーや」
圧倒的なまでの迫力に、打ちのめされてしまいそうだ。
迫力はもちろん、底が水飛沫で見えないほどの渓谷や、滝にかかる虹など滝以外の周りの要素も壮観で、ブラジルのゴールに最高のご褒美となる景色に出会えた。

翌日はアルゼンチン側の滝へと向かう。
宿手前の通りから国境行のバスが出てると聞いたのだが、待てども暮らせども中々来ないので、30分して待つのが面倒になり国境の分岐まで行くバスに乗り、そこから歩いて6㎞先の滝の玄関口となるパラグアイの町に行く。
荷物なしの6kmならば歩いて1時間で着くので、いつ来るかわからないバスに乗るよりも確実に着くので、歩いた方が気が楽だ。

一時間ほど歩いて着いた集落でバスに乗り、そこから国立公園入口へ。
公園内は広く、滝スポットまでは距離がある為、園内を走る列車で移動する。
しかしこの列車、観光客に対して本数が少ないので乗車するのに時間がかかるので、結局ここも歩いたほうが早い。
公園の奥がイグアスの滝で一番有名な『悪魔の喉笛』と呼ばれるスポットで、滝の上に作られた遊歩道から大瀑布を眺めることができる。

幅広の緩やかな流れ川が、大地の裂け目のように切り立った崖を轟音と共に流れ落ちていく姿は圧巻で、その絶え間なく流れる水量から生み出されるすさまじいエネルギーに圧倒される。
乾季ですらこの迫力ならば、水量多い雨季に来たら一体どうなっしまうのだろうか?
散策路の途中には枯れた滝がいくつもあったので、今岩肌が見えるところも白い滝のカーテンに覆われるとなると、今以上の絶景となるのだろう。
フィッツロイ以来久しぶりに心を奪われた大自然の景色イグアスの滝、いつか雨季にも訪れてさらなる感動を味わってみたいものだ。


ブラジル側
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公園のマスコットであるアナグマ

パラグアイ側
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Agro-Cafeeira~Foz do Iguaçu
8/20~8/23

世界が霧に包まれた翌日の事。
出来れば早くアスンシオンに向かいたいのだが、予報通り朝から霧が町を覆っている。
昨日よりも濃く、視界は50m程度。当然走れないので連泊することにしたのだが、一番霧が濃い時間帯では、ホテルの扉などから建物内にも霧が流れ込み、乳白色に滲む廊下にオレンジ色の照明がぼんやりと浮かぶ姿は、幻想文学の舞台のようであった。

名もなきホテルは一泊R30(900円)と安く、歩いて一分の所にスーパーがある好立地で、キッチンを使わせてもらえたので自炊にも困らない。
ただ、ベッドのマットレスがくの字に凹むほど弾力性が無く、そのまま寝ると腰を炒めるので毛布やエアーマットを詰めて高さを合わせたり、壁の隙間から隣の部屋が見え、洗面所は目が染みるほどのアンモニア臭がひどい、安宿らしさ全開の宿だ。
それでも恰幅が良くいつも麦わら帽をかぶっている赤ら顔の、場末の酒場が良く似合いそうな陽気なオーナーには、夕方から道路に面した駐車場で売っている肉の串焼き(一本R1,5)を頂いたり、キッチンにあるフルーツなどを頂いたりと、とても親切にしていただいたので、クリチバ以来7日ぶりの宿泊でゆっくり休むことができた。
予報では二日で雨は止むと言っていたが、三日目は霧こそ弱まったが雨が強く降り、イグアスの滝目前にして長い足止めになてしまた。

4日目、ようやく雨は止む。
残すとこあと80km。
余計な水を積まなくて済むので荷物は軽く、何事も無ければ夕方には町に着くだろう。
朝はまだ雲が広がっていたが、次第に雲が抜け昼には綺麗な青空が広がる。
地図上では、道の北部には木の根のように細く伸びて入り組んだダムが湖が広がり、道はまっすぐ伸び集落も多いので、これまでのパターンからアップダウンは続くが、峠のような長い坂は無いだろう。
青い空の下、麦畑に延びる一本道。
雨で足止めされた後、回復した天気の中走るのは非常に爽快だ。
Foz do Iguaçuまでもう少し。
イグアスの滝はウシュアイア以降久しぶりの大イベントとなるので、期待に心を弾ませながら風を切って坂道を下るのであった。


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道端に止まっていた警察のヘリ
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うっすら見える上流のダム
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左の列が赤、右が青で上部の玉が徐々に落ちていくカウント式信号

Curitiba~Agro-Cafeeira
8/6~8/20

クリチバのホテルに到着し、荷物を部屋に上げる。
クリチバのホテルは安く、個室でR30で泊まることができるのだが、目星をつけていた一階に入り口があるホテルは満室だったため、階段を登った所にレセプションのあるホテルに宿泊。
二階に荷を揚げるのは面倒なうえ、移動中に物が盗まれないよう注意を払う必要があるので、運び終わるまで気が抜けず、自転車旅では二階にフロントがあるホテルはできるだけ避けたいのだが、荷を付けた自転車で宿を探して町をふらふら走るのも避けたいので、難しいところだ。
全ての荷物を外して部屋と道路を何往復もすると隙ができるので、目に付くロビーや踊り場に複数回に分けて荷を運び、極力目の届くところに荷がある状態で運び出さなければならないので、神経を使う作業だ。
クリチバは昔は治安が良かったらしいがここ数年は悪化しているらしく、夜間はもちろん郊外に延びる道でも、日中車で移動中に強盗に襲われたなんて記事もある。
それを裏付けるかのように、ホテルの入り口でバッグを外している際に怪しげなおじさんに声をかけられ、挨拶もそこそこに
「これ盗んだスマホだけど、買わない?」
と話しかけられた。
断ったらすぐに去っていったが、これは油断できない街だと印象付けるには十分で、一層気を引き締め急いで荷を部屋に運び入れる。

今回泊まるセントロにあるホテルは大通りに面し、一階はラーメン屋、向かいにはとんかつ屋と、面白い立地に建っている。
以前の記事で自分で作るので日本食レストランに行くことはほとんどない、と書いたがラーメンだけは気になる存在だ。
鶏ガラを煮込んでラーメンを作る事もあるが、スープづくりだけで半日業なので頻繁には作れない。
遠ければわざわざ行くこともなかったが、折角一階にある事だし、久しぶりにラーメン屋の暖簾をくぐる。
料金は醤油ラーメンのドリンク付きでR30、900円となかなかの値段設定。
ブラジルの食堂はR10~20なのでR30は結構高い。
日本でもラーメン一杯900円なら、トッピングを複数追加できる金額だ。
この金額にもかかわらず、席は8割ほどブラジル人で埋まっているので、どうやら人気店のようだ。
オーナーは日本人なのでこれは期待できそう。
運ばれてきた醤油ラーメンはもやしとチャーシュー、ゆで卵が乗った昔ながらの醤油ラーメンだ。
麺は生麵で日本の物と変わりはないが、スープはさっぱりとして少々物足りない。
まずくはないが正直この値段でこのクオリティーでは、日本ならすぐ潰れてしまいそうなレベルで、一回食べればもう十分な味であった。
メキシコに居た時は近所に日本人のおじさんがやっている屋台のラーメン屋があり、味もいいので通っていたが海外でおいしいラーメンを見つけるのは非常に難しいのである。
パラグアイの地図を見ていた時、アスンシオンに向かう途中にラーメン屋があるのを発見したので、タイミングが合えば食べてみたいものだ。

これと言って見るものが無く、日本の施設も小さな公園だけで、特筆すべきところのないクリチバだったが、唯一気に入ったのがムニシパウ・デ・クリチバ市場だ。
野菜や魚などはスーパーとさほど変わらない値段で、中南米のローカル市場というよりちょっとおしゃれな観光型市場といった雰囲気である。
ただ、ここのスパイスの品ぞろえは今旅の中では一位の数で、パプリカだけでも4種類あり、今まで見つからなかったガラムマサラやコリアンダー、カルダモンの粉末も売っている。
量り売りしてくれるので50G~100Gずつ購入し、これでより一層美味いカレーが作れそうだ。
近くにはコーヒーショップもあり、普段あまり飲まないが折角ブラジルに来たので、本場のコーヒーを堪能。
苦くて少し酸味を感じるタイプのコーヒーだったが香りは良く、一緒に頼んだチーズケーキによく合う味であった。
天気や準備等で1週間滞在し、次はブラジル、いや南米でも指折りに楽しみにしているイグアスの滝に向かって進路を西に取る。

クリチバからイグアスのその先パラグアイの首都アスンシオンまでは、クリチバから真西に1000㎞の道のりだ。
クリチバは標高900ⅿ、イグアスやアスンシオンは調べていないが、内陸にある事だし付近のボリビアやアルゼンチンの内陸は標高が高いので1000ⅿ~2000ⅿぐらいだろうか。
町を抜けると森や畑が広がる丘陵地帯が交互に続き、6~8%で2kmと急な勾配の坂が永遠と続く。
時折7㎞続く峠もあるが、路側帯が無くなるのは変わらないがクリチバに入るときの坂に比べ交通量も減り、走りやすいので珍しく足をつかずに登りきることができた。
ただ、長い坂ではカーブも多く、途中二カ所で大型トラックがひっくり返っていたので、かなり事故の多い地区みたいなので、スピードの出しすぎには気を付けなければならない。
それでも、直線下りの追い風に乗った時は気持ちよく、おもいっきしペダルをこいで久しぶりに76km/hを出して喜んだりもしたのだが。

クリチバまでは治安に不安があったのでホテルを使用したが、クリチバ以西はのどかな雰囲気となったため、道路わきでテントを張るブッシュキャンプスタイルに戻る。
森が多いので隠れる場所も多く、100㎞に一カ所程度S.A.U.(Serviço de Atendimento ao Usuário)と呼ばれる小さなサービスエリアがあり、そこで冷たい飲料水やコーヒーが無料で飲めるので、水の心配もいらず食料を積んでおけば町に寄ることなく走り続けられるので、野宿主体の走行が非常に気楽な道だ。
おまけに景色が良く、緑に包まれたジャングルや風に戦ぐ青々と育つ麦畑、黄色く染まる菜の花畑など坂の苦労も吹き飛ぶ景色が続くので、パタゴニア以来久しぶりに気持ちよく走れる道が続く。

イグアスまでの距離は約650㎞。
アップダウンが多いので一日平均80km走行で8日間で到着予定と計算していた。
天気も良く6日目までは順調に進み、残り130㎞まで来た時のことだった。
農道脇でテントを張っていたのだが、深夜ポツンポツンとテントを叩く雨音で目を覚ます。
寝る前は星が見えていたので安心していたが、眠りだしてから急に天気が崩れたらしく、大粒の雨が降ってきた。
あわててフライシートを張り、ペグを打ち終わったところで雨は弱まり、寝付くころには止んでしまっていた。
翌朝テントを出ると、雨は止んでいるが一面真っ白な霧に包まれている。
視野は100m未満。
霧が濃いと車のライトの明かりも届かないので、夜間の走行よりも危険度が増し、ここまで濃いと自転車で走行するには危険なため、テントの中で読書をして様子を見守る。
一時間ほど読書をし、外の様子を見ると霧は薄まり、視界は1kmほどまで回復したので、今がチャンスと急いでパッキングを済ませ10時半に走り出す。
しかし、走り出してすぐ道路南側に広がるジャングルから、湧きたつように流れ込む霧に景色は包まれ、再び視界が遮られてしまった。
おまけに霧雨交じりの為、水滴がメガネのレンズについて地面すらまともに見えない。
雨天走行時は、雨の勢いで水滴が流れるのでメガネでも辛うじて走れるが、霧雨では水滴が流れないので視界がぼやけるどころか、何も見えないと言って過言は無い。
僕の視力は0,01なので裸眼では、全ての形はぼやけて距離感も狂い、路面上の小さな障害物は避けられないが、大きな段差や車の存在などはなんとなく見つけられるので、水滴が付いて何も見えないメガネよりかはましなので、眼鏡を外して慎重に走る。
昔車のフロントガラスに塗る撥水クリームで、
「45km/hで雨吹っ飛ぶ」
なんてのがあったが、流石に車のクリームを塗るわけにもいかないので、何かいい対策方法はないものか?
最近使っていないが、眼鏡用の曇り止めクリームを持っていたので、それをしっかり塗りなおせば効き目はあるのか、次回検証してみようと思う。

それでも何度か休憩を挟んで、霧が薄いタイミングを狙って30㎞ばかし走ったが、霧はさらに濃く霧雨も本格的になってきたので、これ以上の走行は危険と判断しガソリンスタンドに避難する。
地図アプリによればホテルのある町まであと6km。
「せめて雨だけでも止まないかなぁー」
と、ぼ~と空を見ていると、道路を挟んだガソリンスタンドの向かいにHOTELの文字が見えた。
こんな小さな集落にもホテルがあるとは、ありがたい。
入口で料金を尋ねると一泊R30(900円)。
これ以上待機しても晴れることはなさそうなので、今日はここに決定。
明日も雨との情報も入り、イグアス目前で足止めを食らってしまいそうだ。

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市内にある日本公園
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豊富なスパイス
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ボターニコ・デ・クリチバ庭園
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藤子・F・不二雄が描く異世界に出てきそうな変わった枝ぶりのパラナ松
実は茹でて食べるらしく、道端でよく売られている
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Sin título






8/1~8/6
Florianópolis~Curitiba

久しぶりの魚介成分を補った後、海側を北上する。
海側と言っても、フロリアノーポリスを過ぎると、海を見ることはほとんどなく、道の左右には田畑や山が広がっている。
標高100m以下の所に道は伸びているが、西側には500m程の山が続いており、思った以上にブラジル南部には緑が多く、ウルグアイの丘陵地帯とは大きく変化している。
海側にもせりだした山々は時折数㎞の峠を作り、海外では珍しい延長1㎞にもなるトンネルも出現した。
トンネル天国の日本に居るとトンネルの存在は当たり前に感じるが、海外では滅多なことではトンネルは作らず、トンネル掘るくらいなら勾配が急になろうとも斜面に意地でも道を作る民族が多い。
ペルーのワスカラン国立公園を覗けば、アンデス山脈にもトンネルはほとんどなく、覆道を覗けば前回いつ走ったか思い出すのも困難なほど、めったに見ることはない。
しかも、それが山岳地帯ではなく海岸線となると記憶にないかもしれない。
そんな幻の存在に近いトンネルがブラジルの海岸線に現れたもんだから、思わず自転車を止めて写真に収めるのも無理はないだろう。
片側二車線道で上り(クリチバ方面)はトンネルになり、下り(フロリアノーポリス方面)は峰に沿って峠越えのようだ。
ブラジルでは片側車線のみトンネルで、片方は峠道という車線を分離した変則的な道路づくりをしばし見かけたが、まるで日本の高速道路のような作りかただ。
写真に収めた後、前後のライトを点灯させて走り出す。
トンネル内は道路と歩道をコンクリートのブロックで遮られており、歩道側も荷物を積んだ自転車でも走れそうなほどのスペースはあるが、内部で突然狭くなる可能性もあるので、途中で引き返すのも面倒なので初めから車道を走るここにする。
有難いことにトンンル内は一車線増えて3車線になり、その内一車線は車の走行が禁じられているので、快適に走る事ができる。
おまけにライトが不要なほど内部は明るく、日本とは大違いだ。
日本のトンネルは、暗く狭く交通量も多く、プシュンプシュンと鼻息を立てて迫りくるトラックに追い立てられながら、避難するスペースもなく命懸けで走らなければならないトンネルの多い事。
チャリダー同士なら、トンネルへの文句だけで一晩語り合えそうなくらい、日本のトンネル事情は酷いものがあるが、ブラジルのトンネルが走りやすく抜けた時は、
「ブラジル人やるじゃん」
と、褒めたい気分になったほどだ。

Itajaiに到着後二日雨が続き、思うように進めない事へいらだちが募る。事は特になく、宿でごろごろするのも嫌いじゃないので、無理して走る事はよほどの時じゃない限りしないのである。
4日目に走り出し、90㎞走って小さな集落の宿に着く。
クリチバまでは残すところ130㎞。
普段なら一泊二日のコースだが、天気予報では明後日再び雨が降ると書いてある。
今までは100㎞前後で町があり、1200円ほどの宿に泊まっていたが、丁度この間は宿が無くキャンプ必須のコースだ。
こんな時に限って雨とはタイミングが悪い。
野宿の連泊はブラジルではしたくないので、
「ここはいっちょ早起きして、一日でクリチバ目指すか!」
そう気合を入れたのはいいが、そのあと地図を見なおしていると、どうもクリチバは標高900mの地点にある町のようだ。
現在地は50mにも満たない海に面した町だ。
約900mアップの坂を上り、一日で130㎞走るのはちょっと厳しいので、言語撤回して大人しく一泊二日の分けて走る事にした。
町から50㎞は大きな坂もなく、天気もいいし気持ちよく走ってお昼時に到着。
さてここからが久しぶりの峠道だ。
目標は山頂と思わしきダム湖のある75㎞地点。
計算上平均勾配は5%以下だが、地図上では道路のカーブの数が少ないので、勾配はきつめと予想。
登坂が始まると同時に、路側帯は登坂車線に変わり片側三車線道になってしまった。
自転車のスペースは無く、登坂車線を走るトラックが左側に車が居て車線変更できない時は、自転車の横すれすれを走っていく。
危険なので避けようにも路側帯のスペースは一切なく、森との間に斜めに溝の掘られた側溝があるだけだ。
流石に側溝の上は走れないので、ミラー越しにトラックが連続して通過しそうなのが見える時は、足を止めて列が通り過ぎるのを待つ。
安全優先とはいえペースが乱れるのはストレスとなり、自転車や歩行者の事を一切無視した道路づくりにはうんざりし、
「ブラジル人ダメじゃん」
とぼやいてしまう。
このトラックへのストレスは、坂の疲労以上に精神と肉体に大きな負荷がかかるのだ。
少しでも自転車がぶれたら轢かれる位置を巨大なタイヤが通過する時に味わう恐怖心。
自転車に乗るものなら誰でも恐怖心を感じることだが、僕はそれが人一倍強く感じてしまうのだ。

それは、2006年に自転車で日本を旅していた時に島根県でトラックと接触事故を起こし、全身打撲の頭部裂傷顔面挫傷で気を失い救急車で運ばれたことが起因している。
要因は複数あるのだが、簡潔に言えば下り坂でスピード違反のトラックに追い越された際、風圧にハンドルをとられコントロールを失ってそのまま後輪に接触し、数十m吹き飛ばされたのだ。
大げさな話ではなく本当にぶつかる瞬間は回転しているホイールのボトルの一つ一つがはっきりと視認でき、
「あー、こりゃー駄目だな」
と考える時間があるほど、全てがスローモーションに見えていた。
ぶつかる瞬間は恐怖心は無かったが、手術後に襲われた全身の痛みや、折れ曲がったサイドキャリア、フロントバッグのゴムが切れて飛び散ったために壊れたカメラなどを見て、後から全身が震えるほど事故の怖さを知ったのだ。
一時帰宅後、傷が癒えALPSで自転車の修理が終わったのち(自転車本体には大きな損傷は無かった。衝撃の割には程度の軽い体の傷といい、フレームが無事というのは、サイドバッグが衝撃を吸収してくれたおかげじゃないかと考えている)、再び事故を起こした手前から再スタートしたのだが、すぐ隣をトラックが通過するたびに条件反射のように肩がびりっと震え、その年に帰宅して早々に取った車の運転免許でも、最初の内はトラックが近くを走るときは不安に慄いていた。
と、改めて昔の事を書いてみたが、事故を起こした後治ったらすぐに再び自転車に乗って旅行しだすとは、母親にどれだけ心配をかけたのだろうと、親不孝を少し反省してしまう。
大きく反省した、と書けないのは今でも心配をかけているので、もう少しの間だけ許してほしいと勝手に願うわがままからである。

そんなわけでこんな道は、できれば飛ばしてしまいたい位いろいろときついのだが、限界値に達するまでは自分を奮い立たせて進むのである。
20㎞ほど続く坂と思われたが、半分の13㎞地点に来た時に予想より早く頂上が見えた。
標高は800ⅿ。
平均5%と思ったわりに勾配がきつく感じたのは気のせいではなく、13km800mアップなら平均6%越えとなかなか手ごわい勾配と距離の坂であった。
トラックへの不満はあるが、途中冷たい沢の水で顔や腕を洗った時の気持ちよさは山ならではで、そう悪い事ばかりではない。
予定のダム湖周辺にはテントを張れそうな場所が無く、そこから5㎞ほど進んだところで道路から辛うじて隠れられる場所にテントを設営し、ブラジルでは久しぶりのキャンプで朝を迎えた。

町の手前に来た時『Parque da Imigração Japonesa』と書かれた案内板が道路に立っていた。
どうやら道路わきに点在する池を含めた一帯が日本公園らしい。
季節的な物か、整備された小さな地には何かしらの植物が生えているが花は咲いておらず、駐車場の奥にあるに施設は、建設中か改装中かわからないが工事中の為中には入れず、いったい日本の何をコンセプトにした公園かわからずじまいであった。
そして、街中に入りセントロを目指していると、前方にお寺のような建物が見えてきた。
クリチバは日系人が多い街と聞いていたが、何の建物だろうか?
前まで来ると門の所には『兵庫県姫路会館』と書かれた木製の看板が掲げられている。
流石に地元でもないので中に入って声をかけることもなく、写真だけ取ってそのまま去ったが、調べたら他にも日本に関係した建物や土地があるのかもしれない。
久しぶりに日本の文化に触れることができそうなので、クリチバ観光が楽しみになってきた。

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湾にある村
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ブラジルは地方都市もでかい
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スピードを緩めることはない
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クリチバ
Sin título



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