九段新報

犯罪学オタク、新橋九段によるブログです。 日常の出来事から世間を騒がすニュースまで犯罪学のフィルターを通してみていきます。 (筆者は素人なのであまり内容は信用しないでください) 皆さんに少しでも話題を提供できたら幸い。

ほしいものリストを公開しています。
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干上がっているブロガーに昼飯を奢る感覚で、あるいは犯罪に関する気になっている本をレビューしてほしいという場合に是非どうぞ。

九段新報プレゼンツ #総選挙に役立つ本

 衆議院総選挙が告示されたので、今回は特別編。来る総選挙に向けて役に立つ本をピックアップしていきます。ただし犯罪学ブログという立場上、そっち方面へ分野が偏ることになりますのでそこはあしからず。
 また取り上げた本の中には、今すぐ候補者選びに役立つというものは少ないかもしれません。しかし短期的に役立つ知識ばかりが知識ではなく、貯め込んでおき忘れたころに火を噴くようなものもまた知識です。そのような長期的な観点からも、書籍を選んでいきます。
 なおリンクは本ブログの書評記事に通じています。また取り上げるものはすべて私が読んだことのあるものに限ります。

 安倍政権が何に立脚しているか
 中村一成(2014). ルポ京都朝鮮学校襲撃事件 <ヘイトクライム>に抗して 岩波書店
 高 史明(2015). レイシズムを解剖する 在日コリアンへの偏見とインターネット 勁草書房
 まず挙げるのはレイシズム、とりわけ排外主義にかかわるものを取り上げた2冊です。
 いうまでもなく、安倍政権の根幹にある要素の1つが排外主義です。『差別主義者は無限の証明を要求する』でも取り上げましたが、朝鮮学校に対する補助金排除の政策が代表的です。まぁこれは自民党だけの問題ではないのですが、終戦後から長年政権を担当してきた自民党に最も大きな責任があることは間違いありません。
 そして長期政権がそのような姿勢をとるということは、それを支持する人々の思想を反映しているためであろうと考えられます。そのような排外主義の行き着く先、不寛容と差別を放置する社会が表出するほんの一部が表れているのがこの2冊です。
 気鋭の社会心理学者である高氏による著作は、インターネットとヘイトスピーチという密接にかかわる二者の分析へ先鞭をつけるものです。ネット上での選挙運動も盛んになった今だからこそ目を通すべき一冊でしょう。
 中村氏による著作は岩波ブックレットであり、手に取りやすく読みやすくなっています。在特会による朝鮮学校襲撃事件は、野蛮な側面のヘイトクライムが日本においてピークだった頃に発生した事件でした。カウンターが盛んになった現在ではこのように露骨な事件もなりを潜めつつありますが、一方で政権に就く権力者による丁寧な側面のヘイトスピーチはかえって目立つようになりました。麻生による「武装難民銃殺」が最たる例でしょう。排外主義の行き着く先を、気分が悪くなるほど精巧なタッチで描いています。
 なおヘイトスピーチに関しては以下の2冊も読みやすく参考になります。
 師岡康子 (2013). ヘイト・スピーチとは何か 岩波書店
 安田浩一 (2012). ネットと愛国 在特会の「闇」を追いかけて 講談社

 角田由紀子 (2013). 性と法律――変わったこと、変えたいこと 岩波書店
 牧野雅子 (2013). 刑事司法とジェンダー インパクト出版会
 安倍政権がもう1つ立脚するのは女性蔑視的な視点です。まぁこれだって自民党の責任だけじゃないんですけど(以下略)。これは非嫡出子に対する差別的な制度を裁判所に是正するように判決された際の反応であるとか、夫婦別姓制度に対する態度から推し測れるものです。また自民党の今回の公認候補の男女比率からもわかります。
 さて、そこで取り上げるのはとりわけ性犯罪を規制する法律について考察された角田氏の著作です。先ごろ改正された強姦罪が実は性的自由を保護法益とせずに、夫の妻に対する貞操権を保護していたのではないかという主張には説得力があります。
 制度上の性差別もさることながら、排外主義の項でも指摘したように意識の上での差別もその放置は社会に重大な問題を表出させます。その1つを取り上げたのが牧野氏による著作です。これは知人の逮捕を契機として、警察が容疑者と「協働」し「性欲が抑えられなかった故の性犯罪」というレイプ神話を再生産していく過程が描かれています。むろんそれは神話であって事実とは異なるのですが、性差別を是とする警察組織の中ではそれが事実とされてしまい、それが桶川ストーカー事件にみられるような様々な齟齬を生み出す一因となっているのです。
 ジェンダーに関して全く前知識がないという場合には、以下の著作が非常に役に立ちます。
 加藤秀一 (2017). はじめてのジェンダー論 有斐閣
 また社会的な性差別の別の側面を把握するためには以下の著作をお勧めします。
 仁藤夢乃(2014).女子高生の裏社会  「関係性の貧困」に生きる少女たち 光文社

 芹沢一也(2006). ホラーハウス社会 法を犯した「少年」と「異常者」たち 講談社
 芹沢一也(2005). 狂気と犯罪 なぜ日本は世界一の精神病国家になったのか 講談社
 もう1つ、精神障害者に対する姿勢も取り上げておきましょう。なぜなら、理由はよくわかりませんが安倍首相と日本精神科病院協会が非常に懇意で、晋精会なんて講演会もあるくらいです。マジで理由はよくわかりませんが、日本精神科病院協会は世界の潮流に反し長期入院を推し進めるような方針をとり、悪名高き神喪失者等医療観察法を支持する組織です。故に、日本における精神障害者に対する政策の問題は自民党というよりも安倍首相にダイレクトに帰属される面があります。
 上掲2冊はこのような方針、政策の問題点を平易に理解することのできるものです。

 疑いの力を味方につける
 浜井浩一・芹沢一也. (2006) 犯罪不安社会 誰もが「不審者」? 光文社
 荻上チキ・浜井浩一 (2016).  新・犯罪論 「犯罪減少社会」でこれからすべきこと 現代人文社
 森達也(2015). 「テロに屈するな!」に屈するな 岩波書店
 民主主義国家において権力の監視は主権者たる国民へ課せられた義務であり、その行使は健全な政治を推し進める原動力でもあります。そのためには、政府や権力の一挙手一投足を批判的かつ懐疑的に見つめる必要があります。
 権力が民衆を騙そうとするとき、まず行うのは虚偽の流布による恐慌の誘発でしょうか。とりわけ犯罪という要素はこの目論見に都合よくつかわれる場合の多いものです。しかし浜井氏による2冊は犯罪がもはや民衆にとって脅威とは考えにくいことを端的に示しています。同時に、政府の行う政策がいかに根拠に基づかないか、そしてどのようにエビデンスベースの政策論議を進めていくべきかを考えるうえでも役に立ちます。
 政府が恐怖を煽ろうとするとき、かつての石原慎太郎の「三国人発言」のように犯罪を利用することもありますが、実際にはテロというより限定されたキーワードを利用する場合が多くあります。そのような欺瞞に対抗するヒントを森氏の著作は与えてくれるでしょう。実際に日本では、余計なことさえしなければテロの脅威はさほどでもないのですが、それでも緊急事態条項や強力な防護策が求められる現状もあります。それが本当に役に立つのかという視点も必要ですが、そもそも必要なのかという疑いにも立脚することを忘れるべきではありません。

 浅野健一 (2004). 新版犯罪報道の犯罪 新風舎
 ネットの一部の層では、マスコミが政府を嫌い偏向報道をしているということが「定説」と化していますが、実際には真逆の様相です。いまやマスコミの幹部が首相と会食し、政府の主張を批判抜きで垂れ流す状態です。というか、幹部と会食しておきながらばかすかバッシングされているのだとしたらどんだけ首相根回し下手なんだよという話になりますが。
 浅野氏の著作は、直接的ではないもののこうしたマスメディアが権力とねんごろになった結果の弊害を存分に描き出しています。警察権力と密接に結びつくことでスクープを得ようとする刑事記者の姿は、国会に張り付き議員のご機嫌を取って独自の情報を得ようとする政治部の記者に重なることでしょう。

 荻上チキ (2011). 検証 東日本大震災の流言・デマ 光文社
 ネットのデマという分野では、この一冊がダイレクトに響くでしょう。疑う力といっても、それが明後日の方向へ向かっては意味がありません。本書は東日本大震災に関するものですが荻上氏が指摘するようにデマはパターンを繰り返します。ゆえに事例が異なるデマでもその情報を理解することはデマへ対抗するワクチンとなるのです。

 坂井豊貴 (2013). 社会的選択理論への招待 : 投票と多数決の科学 日本評論社
 最後は、選挙の構造自体を疑おうというものです。小選挙区制が与党有利に働いているのではないかという指摘もありますが、ここではより大枠の仕組みへ疑問を投げかける一冊を提示します。
 一番だけへ票を投じるのではなく、順位を投じることでより細やかな民意を反映しようとするボルダルールを本書では提唱しています。詳しくは『多数決は意思決定手法の欠陥製品であるという話』で取り上げましたが、重要なのは選挙のルールの根幹すら疑うという徹底した懐疑主義的な姿勢です。口を開けて権力の言いなりになるのは簡単ですが、民主主義国家に生きる主権者であれば常に権力は批判的に見つめるものなのです。
 なお同内容の書籍(といってもこればかりは私も読んでいないのですが)に、以下のものがあります。こちらは新書なので入手も容易で読みやすいでしょう。
 坂井豊貴 (2013). 多数決を疑う――社会的選択理論とは何か 岩波書店

 というわけでざっと紹介しました。これらの本を読んでもすぐに選挙に役立つというわけでもありませんが、ここにある知見を下地とすることは必ず政治を論じるうえで役に立つはずです。

長谷川豊が千葉一区&比例代表で出馬するようなので過去の暴言を蒸し返しておく

 第48回衆院選が10日に公示された。街には候補者のポスターが貼られ、選挙カーが走り回っている。東京都知事・小池百合子氏が代表を務める希望の党の結成、民進党の希望の党合流、立憲民主党の立党……政局は日々めまぐるしく変化している。
 そうした中、日本維新の党からの公認を受け、千葉1区から出馬した元フジビテレビアナウンサーの長谷川豊氏がウェブの一部で話題となっている。おそらく多くの読者は周知のことだろうと思うが、国会議員を決める需要な選挙を前に、改めて振り返っておきたい。
 長谷川豊の「自業自得の透析患者を殺せ」という主張に変化なし。「8割の女はハエ」「60歳以上は選挙権剥奪」発言も-Wezzy
 これの件です。
 政治家として備えるべき資質、備えるべきではない特徴というのは立場によっていろいろあると思いますが、民主主義国家の国会議員になるうえで備えるべきでない資質としてまず挙げるべきは「差別主義にまみれていないこと」でしょう。これは立場上どうこうというよりも、前提です。民主主義国家を成立させるうえで、基本的人権を尊重することはイデオロギーを超えた前提であり、これを備えない人物はほかの要素がどうであれ議員として立つ資格は全くありません。
 長谷川豊という人物は、そういう意味では議員としての資質を欠く人物の筆頭候補というべき人物です。そのような人物を公認し、かつ比例代表の名簿にも組み込む維新の会の政治に関する姿勢も十分に問われるべきでしょう。
 というわけで今回は、本ブログで今まで取り上げた記事を振り返りながら、長谷川豊の発言をまとめこの人物がいかに政治家としての資質を欠くかという話をしていきます。そのような論点では上掲記事や政治家レイシズムデータベースなども取り上げていますが、ここは犯罪学ブログなのでそのような論点を中心に話を進めていこうと思います。

 暴言その1 超ありきたりなレイプ神話
 しかし、この女性、かなりキレイ…ではなく、山口氏もFacebookで疑問を呈していたのだが、そもそも…
 なんでこのタイミング?
 なのだろうね。
 「性的被害にあった」と主張する女性には、私は基本的に「その話を信じる前提」で話を聞くようにしてきた。私自身、何度も性的被害を受けた女性本人にインタビューをしている。
 性的な事件は絶対に許すことは出来ないし、私は個人的に彼女が主張しているホテルの防犯カメラの映像などは、可能であれば公開すべきではないかと考えている。彼女が薬物を使って昏睡状態にさせられ、レイプされたのであれば、それは許してはいけない犯罪だ。 が、同時に山口氏の投げかけた
「なぜこんなタイミングで?」
 という疑問にも、この女性には答えてほしい気はする。
 基本的にどっちでもいいのだが、この「自称」被害女性は「なんでこのタイミング」だったのだろう…-本気論本音論
 『「なんでこのタイミングで?」と思った人はレイプ神話と親和性が高いよ』から。フリージャーナリストの女性が強姦されたという事件に関してです。この事件に関しては『山口敬之の強姦事件、不起訴相当はなぜ?』『「強姦被害者が処女かどうかは捜査に必要な情報」という主張』などもご参照ください。
 どっちでもいいと言いながらこんな記事を書いちゃうあたり、全然どっちでもよくないことがまるわかりな恥ずかしい文章ですが、単に恥ずかしいのはそれだけではありません。
 性犯罪被害の告発に何らかの意図、要するに加害者とされた男性を貶めるためだとか金銭が欲しいからだといった背景を妄想してしまうのはレイプ神話の極めて典型的な事例です。実際には性犯罪の告発にはそれ相応の決意と被害のダメージからの一定の回復を待たなければならず、被害の直後の告発に至らないケースも多く存在します。ゆえに、告発が被害からかなり遅れたとしても別段そこには意図なんてないことが大半です。
 まぁ仮に絶妙なタイミングで被害をカミングアウトし、加害者に最大限のダメージを与えてやろうと被害者が画策していたとしてもそれ自体責められることでもない気がしますが。
 また今回の事例では被害者は検察審査会に申し立てのできる期間内に申し立てをしているというだけの話であり、そこにケチをつけられるいわれもありません。
 ルールに則ってなされた申し立てにすらいちゃもんをつける人間に政治家が務まるでしょうかね。

 暴言その2 人権なんてくそくらえ
 私、もっと苦しめて全然いいんじゃないのって考え方の人間なんですが、私がおかしいんですかね? もしですよ? もし、私の嫁さんや娘が同じことをされたとしましょう。
 私、絶対にこの程度じゃ済まさないぜ?
 そのレイプ犯、その殺人鬼、裁判所なぞに任せませんぜ? 絶対に自分の手でヤるわ。そんなゴミクズ。
 【長谷川豊】「死刑反対」の人権派は「死刑」の根本的な意味を分かっていないんじゃないか?
 『長谷川豊なんかの発言をまともに聞いちゃだめだよ? 前編(死刑の話)』からです。
 死刑囚に対する発言です。この発言をした段階では彼はまだ単なる一私人でしたが、国政への進出を考える人間のものだとするとかなりうすら寒いものがあります。
 政治や法律の基本的な考え方ですが、警察機構の執行する逮捕や家宅捜索、あるいは司法による断罪と刑罰というのは多かれ少なかれ人権侵害行為です。故にその行使には極めて厳重な制約が課せられています。そしていかに残忍な犯罪者であるといえども人権はあるのです。そう簡単には殺せないのです。
 国会議員となり権力をふるう人間が、犯罪者は残忍に殺せということはどのようなことを意味するでしょうか。それは、ある理由があれば最低限の人権制限以上のことをしてしまえと主張しているということです。つまり彼は、それが正当化できると自分が考える理由さえあれば、人権なんか無視してこちらを殺しに来るということです。そしてこの「理由」というのは、いくらでも延長可能なものなのです。この辺の思想は彼のいう「透析患者は殺せ」によく表れています。
 なお彼はこの記事で「人権派弁護士」のような人々を指し「手ぇ、抜いてんじゃないよ」などと偉そうに語っていますが、どんな残虐な者、それこそ長谷川豊のような人でなしにすら人権があるという根源的矛盾に真正面から立ち向かわずに安易な回答に飛びつく彼こそ手を抜いていると非難されるべきでしょう。

 暴言その3 「人殺しは大嫌いだ、死ね!」
 「これから取り調べが進み、動機の解明が待たれます!」
 というリポート。
 う~ん。まぁ、そのリポート自体を否定するつもりはないのですが、私個人の感想では……この事件って……
 圧倒的な障がい者であるバカが普通の障がい者の方を殺害した事件
 と認識しています。本音ベースで言えば、皆さんもそうなのではないでしょうか?
(中略)
 私は「動機の解明」なんて待たないでいいと思っています。税金の無駄使いは辞めて、とっとと殺すべき。飯食わす金がもったいないです。
 【長谷川豊】相模原の一件は「動機」を考察する必要があるのだろうか?-教えてgoo!
 『長谷川豊なんかの発言をまともに聞いちゃだめだよ? 後編(相模原のやつ)』より。
 こんな短い記事で論理矛盾を起こすという偉業を成し遂げる長谷川豊の姿です。相模原の事件というのは、要するに恣意的な基準で生きるべきではないと判断した人物を殺して回ったというものなのですが、その事件に関する考察の結論が「こんな異常者殺してしまえ」では自分もその犯人と同類だと言っているようなものでしょう。
 まあ実際、上掲の死刑の話とか透析患者への発言を鑑みるに、マジで同類なのでしょう。方向が障碍者に向くか犯罪者や重病患者に向くかの違いでしかありません。
 なおこの記事は、これに続く彼の支離滅裂な弁明も見ものです。政治家になったら麻生ばりの失言王になるだろうことは想像に難くありません。

 暴言その4 道徳と法律の区別もできない
視点2 ~なんでこの被告の奥さんは罪に問われないんだ?~
 昨日明らかになったわけですが、この奥さん、そもそもかなりノリノリで不倫しています。記事にもあるように、コスプレプレイなども興じていたとのこと。それが、どの辺りだったのか……心境が変わったのか「私はセクハラされた」「肉体関係を持った」と告白しています。これは女性自身が自分から告白していることが明らかになりました。
(中略)
 この犯罪行為、局部を切り取られた被害者男性弁護士を同情する気はないですし、あまりにも過剰な凶行に及んだ被告男性を擁護する気もないですが……この被告男性の妻……彼女が全くお咎めなしって……
 どう考えても納得できない気がするんですが!
 【長谷川豊】局部切断事件~どうしてこの女は罪に問われないんだ?~-教えて!goo
 元ボクサーの男性が妻の不倫相手である男性の局部を切り落とすという事件がありました。それへの反応です。
 不倫した妻が罪に問われないのは、言うまでもなく別段不倫が犯罪ではないからです。明確な教唆でもなければ罪に問われないでしょう。こんな基本もわからない人間が政治家になれるんでしょうかね?
 刑法というのは「最低限の道徳」とも言われます。制限しないとまずい部分だけを制限し、いたずらに人々の自由を侵害しないように制定されるのが基本です。不倫は道徳的にはいけないことなのかもしれませんが、刑法で禁止するほどのことでもありません。
 あるいは、姦通罪の復活を目指しているのかもしれませんけど。

 こんな感じで、長谷川豊というのは政治家としての資質を欠く男です。というか彼を政治家にするならオウムでも座らせておいたほうがましでしょう。少なくともマイナスになる行動はしないので。差別主義者、人権軽視、法律の知識も皆無……彼を政治家にできる理由が全く見当たりません。

【書評】男が痴漢になる理由

 今回は上掲の欲しいものリストから、読者の方に御恵投いただいた一冊を。著者が指摘するように、犯罪学の分野では痴漢は性犯罪の一種としてとらえられ、専門的な著作は皆無といえる状態でした。そもそも研究の難しい分野であることもあり、本書も具体的なデータという面では信頼性に乏しい面もありますが、貴重な仕事であることは間違いないでしょう。

 依存症としての痴漢
 とはいえ、痴漢の特徴は性犯罪者のものをなぞる場合が多いのも事実です。既婚者が少なくないことや四大卒の会社員であること、性欲だけに動機づけられないことが最たる例です。
 強姦のような性犯罪者に見られない特徴としては、性依存症の要素を兼ね備えていることがあげられるでしょう。いわばアルコール依存症やギャンブル依存症のように、痴漢の多くは痴漢行為に依存しやめられない状態となっています。ゆえに再犯率も高く、初犯の状態でもすでに数えきれないくらいの余罪があるという場合が大半です。
 そのような特徴のある痴漢ですので、その治療も依存症に対する方法が取り入れられています。一般的な性犯罪者の治療の場合は、レイプ神話に代表される認知の歪みをなくしていく認知行動療法が中心ですが、痴漢の場合はここに痴漢行為から離れるための種々の方法を加えることになるのです。
 痴漢の多くは満員電車で起こることから、電車を避けるという物理的な距離を置く方法、性欲を減退させる薬物療法などがあげられます。

 ただし病気として痴漢をとらえる際に、著者は「それで責任を回避できるわけではない」ことをことさら強調しています。認知の歪みを持つ人は「病気だから痴漢は許されるんだ」と解釈してしまうからです。常識的には考えられないことかもしれませんが、そもそも「今週は仕事頑張ったから痴漢していい」と考える人々なので、当然の帰結ともいえるでしょう。

 ちなみに、痴漢の再犯防止策にはインターネットの閲覧制限もあります。ネット上にある痴漢のAVに彼らは強く影響されるからです。むろんAVは作りものですし(まぁ中にはマジの動画もあるんでしょうけど)、彼らも少なかれわかっているはずなのですが、都合よくレイプ神話の根拠として利用し「自分もAVのようなことをやってみたい」と思って実行に移るのです。ポルノに悪影響がないというのは全く根拠のないことです。
 また掲示板には痴漢行為の自慢を書き込むものもあり、それにも影響を受けています。掲示板の書き込み全てが実話というわけではないのですが、しかし彼らにはそんなことは半ばどうでもよく、痴漢を実行し書き込むことで反応をもらうことが承認欲求を満たす手段になってしまっているのです。

 痴漢をなくすにはどうすればいいか
 痴漢は被害者が数えきれないくらいに存在し、それぞれに深刻な被害をもたらすにもかかわらず軽視され本気で解消に取り組まれていない問題でもあります。ではどうしたら、この問題を解決できるのでしょうか。
 著者はまず、痴漢の通報が被害者の勇気と決心に依存している今の状態を解消すべきだと訴えます。ただでさえ被害を受け苦しんでいるのに、通報の責任まで押し付けるのはおかしいからです。
 なので電車には通報ボタンのようなものを設置し、警察と連携して痴漢の居所を把握するような仕組みを構築すべきと著者は主張します。この通報ボタンの実効性は定かではありませんが、本来鉄道会社と警察が連携して取り組まなければならない問題であることはその通りです。
 ちなみに、監視カメラを電車内に設置するというアイデアもよく耳にしますが、著者が言うには痴漢を減らす効果はないだろうとのことです。依存症として痴漢を考える場合、状況が困難になるとかえって痴漢にのめりこむ人が出てくる可能性があるからです。もっとも、カメラがあれば痴漢の立証がスムーズに済むので被害者の負担を減らせるでしょうし無駄だとは思いませんが。

 本書はあくまで1つのクリニックに治療に来た人々から得られた経験則であり、その一般化可能性には一応の疑問が残ります。しかし痴漢が日常的に発生しているにもかかわらず、体系的な研究が日本でなされておらず、研究者ではない著者による半専門書のような本書が最先端の資料に「なってしまっている」状況は、喜ばしいものではありません。

 斎藤章佳 (2017). 男が痴漢になる理由 イースト・プレス
「え―き様の3分犯罪解説」「えーき様と罪人どものCoC」シリーズ投稿中です。http://t.co/5M9KbypdQP 自称アマチュア犯罪学者。ブログで犯罪学についてあれこれ書いております。TRPGだけやってる垢だと思ってると痛い目にあう。
E-mailアドレス
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