九段新報

犯罪学オタク、新橋九段によるブログです。 日常の出来事から世間を騒がすニュースまで犯罪学のフィルターを通してみていきます。

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詳しくは以下の記事をご覧ください。
http://blog.livedoor.jp/kudan9/archives/55214570.html

なぜOKサインはヤバい表現になったのか:ヒトシンカwikiの出鱈目さの例として

Ee3X7qHUEAAQQd5

 この件です。

 まぁ大体、画像のコメントで話は終わってるんですが、記録のためにここにも書いておきましょう。

OKサインタブー化は反差別運動のせい?

 とりあえず現時点でのwikiの記述を全文引用しておきましょう。
 反差別運動の暴走現象によってタブー化した表現の一つ。
 日本でも広く知られる、親指と人差し指で輪を作り、残りの指をピンと伸ばして作る指の形のことである。輪がアルファベットのO、伸ばした3本の指がKを表現している。*1
 印刷物として最初に見られるのは1839年アメリカの新聞「ボストン・モーニング・ポスト」であるとされ、All Correct(全て正しい)の意味のスペルミス(Oll Korrect)から生じた流行語をハンドサインで表したもの。
 このようにかなり明瞭な歴史が判明しているOKサインであるが、2017年以降に英語圏の匿名掲示板「4Chan」*2で「白人至上主義者のサイン」であるというデマが流れたことで、急速にタブー化した。このデマによると伸ばした3本指はKではなくWを、輪っかはOではなくPを表しており、WP=White Powerの意であることになっている。
 米国最大のユダヤ人団体ADL(Anti-Defamation League:名誉毀損防止同盟)は2019年10月、「差別的なシンボルのデータベース」にOKサインを加えたと公表した。
 2019年には、米フロリダ州のテーマパーク、ユニバーサル・オーランド・リゾートで「怪盗グルー」の着ぐるみが、お客の児童との写真撮影時にOKサインをしていた(動画を見るかぎり筆者には「準備できたので撮ってOK」という意味に理解するのが自然なように思われる)。このことで家族が騒いだため、中に入っていたスタッフが解雇された。
 2020年、サンディエゴのトラック運転手の男性が、運転中にこのハンドサインをしたという苦情で解雇される事件が発生した。彼の仕草は白人至上主義とは何の関係もなかったばかりか、彼自身メキシコ系であった。そしてそもそもOKサインすらもしていなかった。彼は普段の癖で指を鳴らしていただけだったのである。
 【OKサイン】-表現規制用語集
 ここの記述だと、まるでOKサインが反差別運動という「正義の暴走」によってタブーとなり、ついには習慣的に使っていただけの人が解雇に追い込まれるというとんでもない事態になったかのようです。これは酷い!表現弾圧だ!

 ……というのはもちろん事実に反します。以下をご覧ください。
 反差別を掲げるユダヤ系団体、名誉毀損防止連盟(ADL)は、親指と人差し指で輪をつくる「OK」のサインを「ヘイト(憎悪)のシンボル」としてデータベースに追加した。
(中略)
 「OKサイン」がヘイトのシンボルとなったきっかけは、ネット上の匿名掲示板「4Chan」でオルタナ右翼たちが悪ノリで始めたキャンペーンだった。
 彼らは2017年に同掲示板で「オペレーションO-KKK」を立ち上げた。リベラル派やメディアに、ドナルド・トランプ大統領もよく演説中に使うこのOKサインが白人至上主義の「秘密の合図」だと思い込ませたのだ。親指と人差し指で輪をつくって残り3本の指を立てると「ホワイト・パワー」を意味する「WP」の文字に見えるから、白人至上主義者を自称するジェスチャーだという訳だ。

高校の卒業アルバムが台無し
 ADLが指摘したように、このでっち上げが大々的に広まり、遂には白人至上主義への支持表明のジェスチャーとして使われ始めた。ニュージーランドのクライストチャーチにあるモスクで銃を乱射し、51人を殺した罪に問われているオーストラリア人のブレントン・タラント被告は、初めて出廷した際に笑顔でOKサインのジェスチャーをしてみせた。
 「OK」のサインは白人至上主義のシンボルになったので、一般の方はご注意下さい-Newsweek日本版
 というように、OKサインは元々極右が「あいつらなんでも差別っていうからOKサインも差別ってことにしたら信じるんじゃねwwww」という悪ふざけから始まっています。この悪ふざけを皮肉なことに反差別ではなく極右が信じ込み、実際に差別的な意味を持つサインとして使用したため本当になってしまいました。

 要するにOKサインのタブーは「極右が作って極右が使った」ために出来上がったもので、反差別側には何ら非はありません。この用語集では極右や白人至上主義者の存在が透明化され、「反差別が云々した」というところだけ書かれているので、まるで反差別側のせいでOKサインがタブーになったかようになっています。これは現象の評価が違うのではなく、事実の認識が誤っているとみるべきでしょう。
 According to the Anti-Defamation League, the gesture -- made by forming a circle with the thumb and index finger, and extending and separating the other three fingers -- has been used in recent years by white supremacists to form the letters W and P, but has also long been used as a sign signifying "OK" or approval. Therefore it shouldn't be assumed to be a white supremacy symbol unless there is other evidence to support those claims, according to the ADL.
 (引用者訳:Anti-Defamation Leagueによると、親指と人差し指で円を形成し、他の3本の指を伸ばして離すジェスチャーは、近年、白人の至上主義者がWとPの文字を意味するために使用しています、しかし「OK」または承認を示す標識としても長い間使用されてきました。したがって、ADLによると、これらの主張を裏付ける他の証拠がない限り、それは白人至上主義のシンボルであるとみなすべきではありません。)
 SDG&E Worker Fired Over Alleged Racist Gesture Says He Was Cracking Knuckles-NBC 7 San Diego
 ちなみに、用語集が「正義の暴走」の事例っぽく取り上げているトラック運転手の事例ですが、その件を報じた記事では、OKサインを差別的であると認定しているADLの発言として、このサインを過度に白人至上主義と結びつけるべきではないと発信しています。つまり「正義の暴走」などという現象は起こっていません。

ヒトシンカって誰だ?

 ところで、この事実に反する用語集を書いたヒトシンカとは何者でしょうか。
 ぶっちゃけ興味ないという人は、とりあえず知名度のない青識亜論や白饅頭(テラケイ)だと思ってくれればいいです。

 私が自身の個人アカウントを不当に凍結されたとき、予防措置としてブロックしたアカウントのひとつであることからもわかるように、彼はいわゆる「不誠実で、嫌がらせのために虚偽の通報をしかねないミソジニスト/表現の自由戦士」の1人です。そんな彼を象徴するツイートはこれ。

 ちなみに、アカウント名には「文筆業」とあり、お仕事も募集中ですが、以下で指摘するように彼の文章力と読解力は極めてお粗末なものです。

それ、参考記事に書いてありますよ

 彼の読解力の低さを象徴するのは、やはり先ほど批判した「OKサイン」の記事でしょう。

 私はOKサインが差別的とみなされるようになった経緯を説明するために記事を引用しましたが、実はこの記事、用語集の「OKサイン」のページにも「参考リンク」として記載されていました。
スクリーンショット (86)

 こんな風に。さすがに予想外で、私は後で気づきましたが。
 つまり彼は、自分で引用した記事の内容をきちんと把握することすらできていないというわけです。あるいは読んでないだけかもしれませんが。

 ちなみに、さっき私が引用した英語の記事も参考リンクにあります。彼は全文をグーグル翻訳にでもぶち込めばわかることも把握できていないことが見て取れます。

 さらにいうと、女児にバナナを持たせて批判を浴びたアウディの広告を取り上げた『【アウディの広告】』では、ドイツ人が色にどんな意味を見出すかという話をするときの根拠として、3年も前から更新が止まっている、管理人のハンドルネームすら不明の個人サイトを引っ張ってきています。

 そして『【寛容のパラドックス】』では「何かの本」の写真を貼り付けてカール・ポパーはそんなこと言っていないと主張しているのですが、なぜ文章をじかに書かないのか意味不明ですし、そもそもその本のタイトルすら書かれていないのでマジで「何かの本」としか言いようがないという謎の状況が生まれています。あと画像が小さすぎて文が読めない。

 エビデンスの判断基準が滅茶苦茶です。大学でレポートの書き方を学ばなかったんでしょうか。

用語集なのにお気持ち大爆発

 ところで皆さんは、用語集というとどんなものを想像するでしょうか。一般に、辞書のように事実を中心に列挙したものだと考えるでしょう。しかし彼の伸びやかな文章力は、そんな常識をあっさり超えていきます。いくつか例を出しましょう。
 このように必死のいいわけを繰り返しながらも、アンチ宇崎ちゃんフェミニスト達は劣勢を自覚せざるを得なかった。特に「巨乳は奇形」「献血ボイコット」で論理性ばかりでなく道徳性すら皆無であることを暴かれてしまう。
(中略)
 ここに至って、宇崎ちゃん叩きのフェミニスト達は完全敗北したのである。
 【宇崎ちゃん献血ポスター事件】-表現規制用語集
 すなわち規制派側が、実際に有害性を示せない表現に対して「TPOをわきまえるべき」という不明瞭な排除命令を投げつけるためだけに発言するだけの言葉であり、実際には何の根拠もないのである。
(中略)
 しかし、日頃ポスターに描かれたアニメキャラクターの胸の大きさにまで「TPOを弁えろ!」と叫んでいたはずのフェミニスト達は、この時なんらTPOに対する意識を発揮せず、上野に快哉を叫んでしまったのである。
 彼女らにとって「男」たちが罵声を浴びせられたことの快感に比べれば、あれほど大事だと嘯いていたTPOなど一顧だにする価値のないものであったのだ。
 【TPO】-表現規制用語集
 うーんこの。アカウントで『表現規制用語集』編纂などと気取るならもうちょっと用語集っぽい文体を使えばいいと思うんですがね。

 皮肉なのは、彼らが普段からフェミニスト側の主張を「お気持ち」と馬鹿にする一方で、彼ら自身が「用語集」という極めて客観性の高い事実の列挙が期待される場において、極めて情緒的な記述をこらえることができずに大爆発してしまっているという点でしょう。「完全敗北」とか、よっぽど盛り上がっていないと使いませんね。

 この件から察せられるのは、彼らが普段他人の主張を「お気持ち」と嘲笑するのは、彼ら自身の考えが感情に基づいていることの裏返しだったのだろうということです。私がいつも言っている「自分がそうだからと言って他人もそうだと思い込むな」という言葉を送ります。

ガチ規制はスルー

 この用語集で最も注目すべきは、実は「書いてあること」ではなく「書いてないこと」です。
 用語集を見る限り、これはヒトシンカが一人で、7月下旬ごろからこつこつと書き始めたもののようです。ですから項目が網羅的ではないのは当然でしょう。

 しかし、「TPO」と「公共の場」というほぼ同じ意味の言葉の記事をわざわざ別で用意したり、「ラブジョイの法則」「ローマの慈愛」といったマイナーな用語を揃えるという仕事ぶりの割には、規制という側面から極めて重大な意味を持つイベントが書き落されているという不自然さがあります。

 そうです。「あいちトリエンナーレ」という、政府が展示に圧力を変え未だに問題の続く出来事への言及が皆無という点が非常に不自然です。この事例は余波として文化庁がほかの映画への補助金を打ち切ったり、広島の展示会で事前検閲が行われそうになったりと様々な問題が生じています。

 そのほかにも、自民党議員が電波停止に言及した事例、香川のゲーム規制、最近判決が確定したろくでなし子事件、ビラ配りの高校生が逮捕された事件等々、規制というならば100人中99人が規制だと同意しそうな内容が1つも書かれていません。

 もちろん用語集というたいそうな看板とは違い実質的には個人のブログですから、網羅するのは困難でしょう。しかしこれだけの事例があってたった1つもフォローされていないのは、意図的に書いていない、少なくとも5年以上前の事例である「駅乃みちか」や「それでもボクはやってない」よりも優先順位が低いとみなしている証拠でしょう。

 この用語集は、何がどう書いてあるかと同時に、何が書かれていないかという点においても、表現の自由戦士たちの脳内を可視化する資料として極めて貴重かもしれません。

「ポリコレのせいでアメコミが売れなくなっている」という説はどうしたら証明できるのか


 この件です。

どうすれば論証できるのか

 混乱が生じているのですが、ここでの主張の要点は、「ポリコレの嵐」という原因によって「アメコミ売り上げ低迷」という結果が起きている「因果関係」があるということです。つまり、この主張を論証するためには

①PCによる要求が年々強くなっており
②アメコミの売り上げが年々低下しており
③この2つの間に因果の関連がある
 という少なくとも3つの段階を示さなければいけません。

 まぁ、①は統計的なデータを示すのは困難ですし、多様性の要求が強くなっているのは様々な事例から自明であると考えてよいでしょう。よって検討すべきは②と③です。

アメコミの売り上げは?

 アメコミの売り上げについて調べてみると、以下のような記事がヒットします。
 2018年は世界的に電子書籍が大躍進の年であった。
(中略)
 アメリカでは、Marvel ComicsやDC Comicsに登場するキャラクターを扱った映画が国内外でヒットしたことにより、原作コミックが注目を集めたが、マンガ市場はほぼ横ばいに推移した1177億円という規模だった。
 本記事では、日本と比較する形で、電子コミックが盛んな中国、国内外で人気のアメコミを出版するアメリカの3か国のマンガ市場の比較記事を紹介する。
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 【市場比較コラム】日本・アメリカ・中国のマンガ市場比較-オタク産業通信
 つまり、売り上げは減っていません。以上です。

 まぁ冷静に考えれば、あれだけアメコミの大作映画が次々と公開されているのにコミックの売り上げが落ちるわけないんですよね。よって、こんな議論は少しでも論理的思考ができれば引っかかるはずのない与太です。

 ちなみに、売り上げ低迷の証拠としてシェア割合の話を引っ張り出す人がいますが、意味がありません。シェアの割合はアメコミの売り上げが変化せずとも、別のジャンルの売り上げが変われば変化するからです。「アメコミの」売り上げ低迷を意味することはありません。

 ②が虚偽であった以上、③を検証する必要もありませんね。

Mangaの躍進は反ポリコレのせいなのか

 こういうことを言うと、質の悪いオタクはすーぐゴールポストを動かします。代表例が「日本のMangaがアメリカでシェアを伸ばしているのはポリコレに支配されていないストーリーが面白いからだ」とか。

 もちろんエビデンスがないのでこの主張に意味はありません。以上です。

 個人的には、ポリコレ関係なく単に面白くて目新しいから受けてるだけじゃないかと思います。漫画を読むときいちいちポリコレかどうか気にするのは日本のミソオタとアメリカのコミックスゲートだけでしょう。

 アメコミは秘伝のタレかよってくらい同じキャラで何度も話を作るので、いい加減むこうのオタクも飽きている可能性もありますね。「またバットマンかよ!」みたいな。そこに長くてもせいぜい50巻までで終わる漫画が新しく来たらそっちに手が伸びるんじゃないでしょうか。50巻とか、戦前から続いているアメコミよりははるかに短いですからね。

 あと、日本の漫画が反ポリコレであるという前提がそもそも自明ではありません。確かに日本の漫画はときおり信じられないほど低レベルな炎上事件を起こしますが、だからと言ってすべての漫画がそうだというわけではありません。というか、アメコミにしたってすべてがポリコレなわけではなく、当然猥雑な漫画だってたくさんあるでしょうから(ネオナチに変身するコミックとかあったぞ)、売れてないのは単にポリコレ関係なく面白くないからってだけでは。

そもそもPCと面白さは一致しない

 そもそも、ミソオタたちはポリコレであることがイコールつまらないと考えているようですが、それも違います。そもそも面白さとPCは別の尺度なので、PC的だがクソつまらない作品もありますし、反PCでも面白い作品はあります。

 つまり、ある作品が面白くないとき、それはPC的だから面白くないのではなく、単にストーリーがクソだから面白くないのです。たぶんPC的で面白くない作品を作る人は反PCで作品を作ってもやっぱり面白くないと思います。

 もっとも、反PCであることそれ自体に価値を見出すような、評価軸が狂ったミソオタは話が別でしょうけど。そういう人は鍵十字の旗を背負って公道を練り歩いたら滅茶苦茶反PCで面白いはずなので漫画なんか読まずにそうすべきですね。社会的には終わると思いますが、文化の未来のためにはむしろ終わっておいてほしいですから。

 そして、アメリカが反PCな作品を絶対に認めずに消し去ってしまう社会かというと、これも違います。古典的名作などは今の視点から見ると滅茶苦茶反PCだったりしますが、きちんと補足を入れて子供が見たときに勘違いなどをしないように配慮したうえで公開しています。反PCであるというのは要するに「取扱注意」というだけで、反PCだからアウトというわけではありません。

 ただ、個人的には反PCであることはむしろ作品のつまらなさと相関すると考えています。というのも、安直に反ポリコレを売りにする創作者というのはたいてい腕が劣っているからです。つまらない芸人が過激な芸に走るようなもので、安直に走る人というのはたいてい腕がないからそうするのです。

 私も素人ながら作品を作る立場ですから、どうせなら困難を実現する方向で努力をしたいものですね。

大阪イソジンの会の研究が科学的に無茶苦茶な理由

 大阪府などは4日、新型コロナウイルスの軽症患者に、消毒剤の一種、ポビドンヨードを含んだうがい薬でうがいを続けてもらったところ、唾液を使ったPCR検査で陽性になる割合が、うがいをしなかった患者に比べて低かったとする「研究結果」を発表した。吉村洋文知事がうがい薬の使用を呼びかけ、各地の店頭からうがい薬が消えたが、専門家からは「使い方を間違えると害になりかねない。知事の勇み足だ」と懸念する声も上がっている。
 「研究」は、府立病院機構運営の大阪はびきの医療センター(羽曳野市)が唾液中のウイルスが減れば重症化を抑制できると想定して実施。6~7月に府内のホテルで宿泊療養している患者約40人を対象に1日4回うがいするグループと、しないグループに分け4日間調査。うがいをしないグループの唾液の陽性割合は56・3%だったが、したグループは21・0%だった。
 吉村知事や松井一郎・大阪市長と共に記者会見した松山晃文・同センター次世代創薬創生センター長は「うがいが唾液中のウイルスを減らす可能性がある」と述べたが、他人への感染抑制の実証については「これから」とした。体内にあるウイルスとの関係も不明だといい、検証が必要との考えを示した。
 会見場には市販のうがい薬が並べられ、吉村知事は「うそみたいな本当の話」と切り出し、「コロナに効くのではないかという研究結果が出た」と紹介。①発熱など風邪のような症状のある人やその家族②接待を伴う飲食店の従業員③医療従事者や介護従事者――を対象にうがいでの使用を呼びかけた。
 この呼びかけに対し、高鳥毛敏雄・関西大教授(公衆衛生学)は、「せきなど風邪症状がある人には有効かもしれない」とする一方で、「予防できると過信させるのは害になりかねない」と健康な人も含めて広く使用されることに警鐘を鳴らした。妊婦や甲状腺疾患がある人の使用にも注意が必要とされ、さらに「口の中や胃腸には(通常は問題のない)常在菌があり、そういったバランスを乱してしまう恐れもある」と述べた。「使い方を間違えると毒にもなる。アレルギーを持っている人も少なくない。対象をしっかり示して推奨する必要がある。呼びかけは知事の勇み足だと思う」と懸念を示した。【田畠広景、松本光樹】
 うがい薬でコロナ重症化抑制? 大阪知事が使用呼びかけ 専門家は懸念「害になりかねない」-毎日新聞
 この件です。
 私は医学に明るいわけではありませんが、それでもこの研究はだめだと言える点があまりにも大量にあるので、維新の会の愚行を記録するためにも書いておきましょう。 

うそ、私の研究N小さすぎ……?

 まず第一に注目したいのが、この研究が約40人の患者を2つの群に分けて行われたというものです。つまり1群20人というわけで、どう考えても少なすぎますね。

 なぜ実験参加者の人数が重要なのでしょうか。わかりやすくするためにこういう例を考えてください。ある病院では1日に5人の新生児が生まれます。別の病院では1日に100人生まれます。では、その日生まれる新生児の性別が男だけ、あるいは女だけになる可能性が高い病院はどちらでしょう。

 もちろん、前者の1日5人生まれる病院ですね。

 新生児の性別はおおむね五分五分です。ですから、その病院で生まれる子供の性別が一方に偏るというのは、確率的に極端な事例です。このような極端な事例は、人数が少なければ少ないほど生じやすくなります。前者の病院であれば確率の偏りが2,3人で発生すれば全員の性別が一方に偏りますが、後者の病院では50人もの人数でそれが起こらなければいけないからです。

 つまり、実験参加者が少なければ少ないほど、「なんや知らんけど偶然そうなっちゃった」という事態を招きかねません。イソジンが効かないのに効いたっぽい結果に偶然なった可能性があるわけです。
 心理学者の感覚であれば、このタイプの分析をする実験なら最低でも倍の80人は欲しいかなという気がします。卒論レベルならまぁいいかなぁ……という気もしますが。

対照群がない……だと……?

 もう1つの問題は、対照群の設定が不十分であるという点です。
 この実験では、実験群がイソジンうがいをする群、対照群がただうがいをする群になっています。しかし、これではウイルスを除去できたのかイソジンのおかげなのかうがいのおかげなのかわかりません。

 この実験であれば、うがいすらしない対照群を設けるべきでした。そして、その対照群がただうがいをする群同様に陽性者が減るのであれば、確かにイソジンの効果であるということができるようになるでしょう。一方、この群の陽性者が減らないのであれば、単にうがいの効果であった可能性があります。

 しかし、この手の群設定というのはしっかりした研究者でもうっかり落とすことの多い点ではあるので、そのことは付言しておきます。

従属変数大混乱

 さらに問題は続きます。大阪首長ズは会見で「重症化」を防ぐと述べていますが、しかし不可解なことに、この研究には重症化するかどうかの指標がありません。あくまでPCR検査で陽性になるかどうかしか検討されていません。

 これは研究に明るくない素人がよくやる、従属変数の概念の混乱であろうと思われます。私のブログでも紹介したメンタリストとかの事例に顕著です。(『メンタリストDaiGo『今晩ヤれる相手の見抜き方』の大嘘』参照)

 彼らは抽象的な概念を精密に扱うことができないので、ある従属変数からちょっと似てるように感じられる別の概念を見出してしまい、いつの間にかその2つの区別ができなくなります。今回の事例でいえば、PCR検査の陰性がいつの間にか重症化を防ぐという話に取り違えられたのでしょう。両方とも病気にかかわることですが、全く違う概念であるはずなのですが……。

 しかも、感染云々に関しても他者への感染を防げるかどうかの検討はまだという体たらく。このような状態で発表した意味が理解できません。

それ、偶然以外の何かなの?

 最後です。会見では陽性者が少なくなったと割合を発表していますが、これは何の意味もありません。その差が有意かどうかわからないからです。

 統計的に有意というのは、要するにその差が偶然以外の何かによって生じているかどうかを判断する基準です。統計的に有意だといえなければ、その差に実質的な意味はありません。

 今回の会見からは、そのような情報が一切伝わってきません。まぁ、一般人向けの発表なので、いちいち言わないという話なのかもしれませんが、専門家にとっても突如として出現した「エビデンス」なわけで、その辺はやはり明確にしておくべきものであるといえましょう。

 一説によると、吉村知事が「ある意味減る」と会見で発言したのは、有意の意味が分からなかったからではないかと言われています。もしそうなのであれば、有意差という基本的概念すら理解しないまま会見を行った知事と、その程度のレクもしなかったセンター長の松山晃文氏の責任は大きいといえましょう。

政治家と医師の責任

 今回の混乱には、政治家と医師の両方に責任があります。

 まず、もちろんこの会見を主導した吉村知事と松井市長に重大な責任があります。不確かな研究成果に基づき、特定の民間企業の商品をアピールした結果市民に混乱を招きました。今回のような感染症の対応においては、ある医薬品の目的外の使用による健康被害、買い占めや転売などの混乱といったことは当然想定すべきであり、そのような事態を招いた責任は重いといえましょう。

 また、そもそも今回の発表によって商品の売り上げが一時的に増加する、製薬会社の株価が上昇するといった結果を招いたことには、別の疑念もあります。つまり、株価つり上げによる利益を狙ったインサイダー取引と、商品の売り上げを増加させることによる特定企業への利益誘導です。もちろんこれは疑惑にすぎませんが、このような疑念が生じる行動をとったという時点で、やはり責任は重いというべきです。

 そして大阪はびきの医療センターにも重大な責任があります。このような杜撰な研究を行い、かつ中途半端な結果を知事とともに公表することで社会を混乱させた責任です。百歩譲って、研究計画の杜撰さはレベルの低さであるとしても(にしたってひどすぎますが)、それを政治家とともに公表するという愚行は厳しく責められなければいけません。

 日本のコロナウイルス対応が他国と違うのは、こうした専門家が率先して滅茶苦茶を行い市民を混乱に陥れ、かえって感染症を広げているという点です。医学は科学ではないと誰かが言っていましたが、本当にその通りだなという実感があります。

 コロナウイルス対応は、やはり医者ではなく本当の科学者によって行われるべきなのでしょう。
犯罪心理学者(途上)、アマ小説家。カクヨム『アラフォー刑事と犯罪学者』『生徒会の相談役』『車椅子探偵とデスゲームな高校』犯罪学ブログ『九段新報』など。質問はhttps://t.co/jBpEHGhrd9へ
E-mailアドレス
kudan9newbridge@gmail.com
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