九段新報

犯罪学オタク、新橋九段によるブログです。 日常の出来事から世間を騒がすニュースまで犯罪学のフィルターを通してみていきます。 (筆者は素人なのであまり内容は信用しないでください) 皆さんに少しでも話題を提供できたら幸い。

予言は予言者ではなく信者が作る

 イギリスのEU離脱に伴う財政危機で、安倍首相がそれを予言したと大はしゃぎしている人々が一部存在しています。が、これは典型的な「絶対にあたる予言のパターン」と言えるでしょう。

 危機と対策の同時提示
 安倍首相は、今までずっと「アベノミクス」という経済対策を示していました。そして先月のサミットで、リーマンショック級の不況が起こる可能性があると表明することで、危機も示しました。
 そして現在、その危機の表明が当たったと騒がれています。
 しかし実際のところ、これは新興宗教の予言にありがちなパターンです。つまり、不幸を提示し、それに対する対策を提示し、不幸を回避すればその対策のおかげということにして、回避できなければ対策が不十分であり予言が当たってしまったということにします。

 この方法がせこいところは、実際に対策がうまくいったと主張された時に、では対策を取らなければ不幸が訪れたのかということは検証できないということです。また、実際に不幸が来たとして、その原因は対策の不十分さとは限らないのですが、そういうことにしてしまうのもせせこましいと言えるでしょう。
 今回の事例に引きつけて考えれば、仮にEU離脱に伴う経済危機が訪れなかったとしたら、安倍首相とその支持者はアベノミクスのおかげということにするのでしょうが、アベノミクスがなくても危機なんて訪れなかった可能性があることは念頭に置かなければなりません。

 拡大される予言
 『「修造と気候」にみる予言成就条件の拡張』でも指摘したことですが、予言というものは往々にして信者により拡大解釈されます。ノストラダムスが「恐怖の大王が来る!」と予言し、実際にそんな人が来なくても、信者は好きに何かを恐怖の大王とすることで予言が当たったことにできるわけです。
 今回の事例では、安倍首相が語った「リーマン級の危機」の内実は新興国の経済リスクであり、イギリスに関することは何一つ言及されていない上に、リーマン級の下げ幅を見せたのは日本くらいなもので世界規模の危機ですらなかったともいえるので、厳密に言えば外れているわけですが、支持者にとっては「リーマン級の危機」の部分さえ当たっていればいいのでしょう。
 この分では、単なる経済政策の不手際で勝手に危機に陥っても「当たった当たった」と喜んでくれそうです。

 相反する情報のばらまき
 しかし、安倍首相が予言という行為をしたという解釈にもそもそも誤りがあります。
 また、サミットにおける世界経済議論に関し、安倍首相は「私がリーマンショック前の状況に似ているとの認識を示したとの報道があるが、まったくの誤りである」と発言。「中国など新興国経済をめぐるいくつかの重要な指標で、リーマンショック以来の落ち込みをみせているとの事実を説明した」と述べたという。
 安倍首相が消費増税の2年半延期を表明、自民役員会で異論出ず-ロイター
 とあるように、首相は発言を否定しているのです。
 また、首相は国内ではことあるごとに、アベノミクスのおかげて好景気になっているとすら発言していました。真正面から相反する発言をばらまくことで、どのような状態になっても予言を成就させるという戦法は、ある意味では新興宗教の教祖を越える画期的なアイデアでしょう。
 本来であれば、一貫しない発言は信者からの信頼を失いかねない行為ですが、安倍首相の場合様々なメディアで散発的に様々な発言をすることで信者ですらその発言の全容を把握することが出来なくなり、結果として信者がそれぞれ信じたい発言を引っ張ってこれる状況を作ったという高等テクでしょうか。
 とにかく予言を連発して、どれか1つでもあてにいくという意味では、古典的な予言者の手法ではありますが。

 予言できるならさぁ……
 ただ、予言者に向けられがちなツッコミである「予言できるなら自分でそれ使って金儲けしろよ」も、安倍首相には当てはまるようです。
 元々、日本政府は年金を株式で運用していたのですが、この度の経済危機で株に突っ込んだ年金は見事に消し飛びました。まあ、これに関してはこの件に関係なくひたすら損失を出していたのですが。
 消し飛んだ年金は海外の投資家や銀行の懐に入ることになるので、文字通り「売国」的な行為になってしまったわけです。
 予言者は投資で成功してはいけないというルールでもあるのでしょうか。 

自民党を支持するべきではない犯罪学的な理由

参議院選挙の候補者が開示され、早速TwitterのTLもその話題が増えだしています。やはり第1の話題は与党である自民党の趨勢でしょうか。とりわけ、改憲を発議できる3分の2の議席数の達するかは重大なポイントです。
 しかし私からすれば、イデオロギーに関わらず現在の自民党がこれほどまでに支持されている理由がさっぱりわからないというのが本音です。リベラルならそりゃ支持できないでしょうが、保守にしたって支持できるような状態に、今の自民党はないように思えますが。

 そこで今回は総集編と称して、今までのブログの中から自民党の所業をあげつらい、自民党を支持できない理由を明確にしておきたいと思います。正直な話、これだけの理由があるにもかかわらずそれでも支持するというのであれば、もうお手上げなので勝手にしてくれという感じです。私は御免ですが。
 ついでに、他の野党ならその支持できない理由を回避し、現状をよりマシにしてくれるだろうということも、できるだけ示しておきたいと思います。
 各政党のマニフェストを犯罪学の視点から比べてようかと思ったのですが、案外治安関係の記述が少なく、具体的な政策レベルでもないですし、なにより自民党は新しい判断をいつするかわからないので真面目に検討するのも馬鹿らしいためやめました。

 ヘイトスピーチ対策
 ヘイトスピーチ規制の理念法すらまともに作れないのかより
 ヘイトスピーチの定義に「日本以外の国または地域の出身者で適法に居住するもの」という余計な定義をつけてくれやがったのが自民党です。実はその法案が提出される前に、野党はもっとまともなヘイトスピーチ対策の法律を提出していましたが、後から与党が出しゃばってきたかたちです。
 ちなみに、野党は包括的な差別禁止法案の成立も目指していますが、やはり自民党の反対で達成できていないのが現状です。

 刑事訴訟法・通信傍受法・心神喪失者等医療観察法
 この法改正がヤバイ!2016 あるいはやましいことが無くてもプライバシー侵害に抗するべき理由
 【書評】狂気と犯罪 なぜ日本は世界一の精神病国家になったのかより
 最近の刑事訴訟法改正で、ごく一部の可視化を引き換えに、司法取引が可能になりました。冤罪防止を目的にした法改正であるはずなのに、結局検察が焼け太りした格好です。
 また、通信傍受が出来る範囲が拡大し、条件もゆるくなりました。
 これらの改正は閣法、つまり内閣の提出によるものですので、実質自民党のせいです。
 ちなみに、通信傍受法の始まりは地下鉄サリン事件直後に制定されたものですが、これも閣法であり当時の与党は自民党でした。
 また、心神喪失者の強制入院を可能にする心神喪失者等医療観察法の成立も閣法、与党は無論当時自民党でした。
 こうしてみると、問題として挙げられやすい法案は悉く自民党によって作り上げられていることがわかります。
 ちなみに民進党は、テロ対策名目で過度な監視を行うことを阻止すると公約に明記していますね。

 性教育への鈍感さ
 清く美しい家庭はどうか知らないが性犯罪者は待ってくれないよ?
 なでしこアクションよ、それじゃあ性暴力の予防は無理だより
 性犯罪の防止に役立つ対策の1つが、十分な性教育を子供に与えることです。子供自身が被害を自覚することが、事件の発覚に役立ちますし、性に関してむやみに隠すことが無ければ性犯罪に対する偏見を減らすことにも役立つでしょう。
 しかし、自民党を始めとする保守系の議員が性教育に鈍感なことは既に何度か取り上げています。この鈍感さが何に由来するかはわかりませんが、性犯罪予防にひたすら邪魔なことは事実です。
 特に国家公安委員長である山谷えり子氏の鈍感さは頭1つ抜けている感じがします。その点に関しては上掲記事で論じていますが。
 また、単に鈍感なだけではなく、むしろ積極的に性教育を潰していこうという姿勢が自民党にあります。その最たる例が七生養護学校事件というものです。これは七生養護学校が独自に開発した性教育プログラムで授業をしていたところ、東京都議が不当に介入し、関係した教師に処分を下したり教材を没収したりしたというものです。
 その後の裁判で、教員への処分の取り消しが認められ、損害賠償も認められたという経緯を辿るのですが、この学校に介入した都議3名のうち2名が、自民党でした。
 さらにこれだけではなく、国会では「過激な性教育・ジェンダーフリー教育実態調査プロジェクトチーム」が発足し、虚偽を含んだ報告をしたりしていたのですが、このチームの座長が安倍首相、事務局長が山谷氏でした。

 性犯罪対策
 【書評】性と法律――変わったこと、変えたいこと
 「JKビジネス13%」と「痴漢防止バッチ」への反応が明後日すぎる
 続報・「JKビジネス13%」への反応がやっぱり明後日すぎるより
 上記と関連する問題として、自民党の性犯罪対策に対する鈍さもあげられるでしょう。例えば、最近話題になったJKビジネスは、実態把握すらできていない状態です。
 ちなみに旧民主党は、性犯罪等被害者支援法案を国会に提出したのかまだ目指しているのかは忘れましたが、ともかく動いてはいます。

 沖縄問題
 沖縄と米兵のレイプ
 沖縄・米兵の性犯罪もセカンドレイプの対象になる国
 沖縄・元米兵の殺人事件で同じ詭弁を繰り返す人々より
 沖縄問題もまた、自民党がによってこじれている問題の1つです。
 仮に沖縄に基地が必要だとすれば、なおさら地元住民の理解を得られるように、負担は少しでも減らせるように立ち回るのが政治家の役割だと思うのですが、自民党は何故かそれをしません。基地と地元住民の関係は良好であるにこしたことはないと思うのですが。
 この問題は基地反対派よりもむしろ、賛成派こそが自民党に真っ当な対応を求めてしかるべきです。地元住民の反対で基地移設が遅れたり、基地それ自体が潰されたりすれば、基地が必要だという考えからすれば大きなマイナスだからです。米軍基地に日本をきちんと守ってもらいたいのであれば、地元住民との齟齬を取り除くことを第一に求めてもいいはずでしょう。
 それに加えて、仮に基地が必要だとしても地位協定における刑事裁判権の規定まで必要である理由がわかりません。百歩譲って米兵の公務中に起きた事故に手出しが出来ないというのはわからないでもないですが、公務外に基地外で起きた事件すら裁けないというのは問題があります。

 憲法改正
 「行き過ぎた個人主義」とやらを犯罪で考える
 第25条の4 国は、犯罪被害者及びその家族の人権及び処遇に配慮しなければならない。より
 最大の懸案事項である憲法問題です。自民党の憲法観が中世とタメを張るような状態であることは既に指摘しています。
 上掲記事の内容も重要なのですが、今はとやかく言うのはやめておきましょう。
 なぜなら、自民党の憲法草案にある緊急事態条項の存在が、それらの議論をすべて無駄にするからです。
3 緊急事態の宣言が発せられた場合には、何人も、法律の定めるところにより、当該宣言に係る事態において国民の生命、身体及び財産を守るために行われる措置に関して発せられる国その他公の機関の指示に従わなければならない。この場合においても、第十四条、第十八条、第十九条、第二十一条その他の基本的人権に関する規定は、最大限に尊重されなければならない。 
 緊急事態の宣言が出された場合、人権の尊重は絶対的なものから単なる努力義務になり下がります。つまり、「最大限尊重したけどダメだったから制限するわ」が成立してしまうということです。
 このような条文が存在すれば、いくら一生懸命憲法に権利を規定しても、それを無視できるため意味がなくなります。裁判を受ける権利も事後でOKとなりかねませんし、逮捕令状が事後でいいくらいなら普通にやるでしょう。
 上掲記事では被害者の権利を取り上げていますが、これにしても「今はそんなことを言っている場合じゃない、我慢しろ」で終わる話です。意味がないのです。
 個人的には、今までの議論も一切意味がなく、この条文の存在だけで自民党を支持しない理由に十分なるはずだと考えています。

 ちなみに:表現規制に関して
 「オタクの表現規制反対論」に説得力がない理由より
 なんだか、TLで嫌というほど「山田太郎議員に投票しよう」というツイートが流れてきて鬱陶しいのですが、お勧めしません。
 上掲記事で触れているように、山田氏が表現の自由そのものを重視しているのかは甚だし疑問ですし、そもそも氏は改憲派です。緊急事態条項が成立すれば漫画の表現の自由程度なら吹き飛ぶでしょう。
 それと、漫画の表現というワンイシューで果たして当選するのかという疑問もあります。死に票にならなければいいのですが。
 無論氏のこれまでの功績は否定しませんが、やたら推されるのも違和感があるのです。
 私としては、民進党や共産党のような左派政党に入れておくのが無難だろうと思います。左派政党は概して表現の自由を重視しますし、仮に認識に誤りがあっても、人権問題であることを強調すれば説得は比較的容易でしょう。一方右派政党はまず人権が何たるかから始めないといけないので説得は困難です。 

精神科医が「火病」をスティグマに使うとは……。

 ここいらではっきりさせておかなければいけない風説が1つあります。それは「火病」と呼ばれる、精神疾患の一形態のことです。
 在日コリアンや韓国人に対するヘイトスピーチが蔓延するネット上において、「火病」は実に使い勝手のいいスティグマとなっています。彼ら曰く、「火病」というのはDSMにも記載のある韓国の民族的症候群であり、怒りで手が付けられなくなる、ヒステリーによく似た症状であるそうです。
 しかし実際には、後述するように火病はそのような症状ではありません。
 これだけならネトウヨの妄言として捨て置くことも可能なのですが、そうはいかない事態に陥っています。
 2015年4月号、8月号に続いて今回で3回目になるが、サンピエール病院・鶴田聡医師の病院朝礼の内容が興味深かったので、同君の許可を得て以下に掲載させてもらうことにする。
 インターネットで韓国、中国、インドのメンタルヘルス事情を調べてみました。
〈韓国〉
 韓国は、全国民の3割近くが生涯に一度は精神病を発症するというストレス社会でありながら、精神科への偏見は非常に強いと言われています。朝鮮民族にはDSM-Ⅳ認定の「火病」(ファビョン)という、怒りを抑えることができなくなって暴れまわるという精神病があり、この疾患に年間12万人(人口の0.3%)が罹患すると言われています。韓国には30万人の占い師・呪術師がいて、「精神病は先祖の悪行の祟り、一族の恥」とされるようで、セウォル号沈没事件の時に現場に政府の肝いりでメンタルヘルスの部署が設置されたにもかかわらず、相談に行った人は1人もいなかったということでした。韓国人には、自分の感情的な問題を他人に話すといった習慣がないため、うつ病になっても病気を否認し、誰にも相談せずに我慢する結果、自殺が多くなるようです。自殺は10万人当たり32人(日本は23人)で、ホームレス1万人のうち、60%が統合失調症だと言われています。精神科病院入院患者は4年前の10倍と急増中で、ベッド数は千人当たり1.58床(日本は2.8床)、そのうち90%が強制入院ということです。2人の親族と1人の専門医の同意で強制入院が可能で、しかも退院には家族の同意が必要です。たとえば、妻が夫と違う宗教に入ったから入院、息子が父にはむかって入院といった事例もあります。また、遺産相続問題で入院させられる人も少なくないと言われています。病院には無資格の「保護司」がいて、彼らの患者への日常的な暴力が問題になっています。最近、WHOが患者待遇改善勧告を行い、病院スタッフに患者の人権について1日のレクチャーを勧めましたが、勧告に従った病院はたったの3%でした。数年前、強姦された中学生が精神的トラウマ治療のために精神科病院に入院したところ、入院中の患者に強姦されて妊娠してしまったという事件がありましたが、院長は「スタッフが少ないからしょうがない」と反省する風もありませんでした。無認可の入所施設も多く、そこでは患者が鎖につながれていて、火事で毎年数十人が死亡するということです。
 アジアでこんなこと-日本精神科病院協会
 引用したのは日本精神科病院協会の協会誌巻頭言です。端的に言えば、精神疾患の専門家が自身の専門分野に関して、ネット上の風説を鵜呑みにし専門的な知見を軽視するという考え難い状況です。
 しかも、巻頭言自体が別の医師の朝礼を引いてきた形式なので、複数の専門家が同じ愚行を犯していることになります。

 火病とは何か
 では、実際の火病の症状はどのようなものなのでしょうか。これに関しては、風野春樹氏の私家版・精神医学用語辞典の解説がわかりやすいのでそこから引用することにします。
 まず、「ファビョン」は漢字で「火病」(hwa-byung)と書く。また、"wool-hwa-byung"ともいわれるが、これは漢字で書くと「鬱火病」。この場合の「鬱」とは、「憂鬱」などの意味ではなく、「鬱血」とか「鬱積」と同じで、「出口がふさがれてたまる」といった意味である。「火」とは五行説の「木火土金水」の五元素のうちの「火」のことであり、「火」が体内にたまって気のバランスが崩れた状態が「鬱火病」というわけである。韓国では「火」は怒りに結びつくので、怒りを抑え、体の中に溜め込んだ結果さまざまな症状が起きるのが「火病」ということになる。
 「火病」は、アメリカの精神疾患診断マニュアルであるDSM-IVの巻末付録「文化的定式化の概説と文化に結び付いた症候群の用語集」にも載っていて、こんなふうに書かれている(なお、この用語集には日本の「対人恐怖症」も記載されている)。
 hwa-byung(wool-hwa-byungとしても知られている):韓国の民俗的症候群で、英語には“anger syndrome”(憤怒症候群)」と文字どおりに訳されており、怒りの抑制によるとされている。症候としては、不眠、疲労、パニック、切迫した死への恐怖、不快感情、消化不良、食欲不振、呼吸困難、動悸、全身の疼痛、心窩部に塊がある感覚などを呈する。
 韓国で書かれた文献によると、患者は社会階層の低い中年女性に多いという。韓国で41歳から65歳までの女性2807人を調査したところ、ファビョンの有病率は4.95%であり、特に社会経済的に低い階層の人、地方在住者、離婚もしくは別居している人、喫煙者、飲酒者で高率だったという。また、韓国系アメリカ人109人の調査では、12%が自分はファビョンにかかったことがあると回答したという。
  ファビョン(火病) Hwa-Byung-私家版・精神医学用語辞典
 つまり、火病というのは怒りを堪えることが出来なくなるのではなく、その逆で怒りを堪えすぎたために身体の不調などのかたちをとってそれが現れる病気です。筆者が書いているように、ヒステリーというよりは不安障害に近い印象でしょうか。少なくとも、ネットスラングとしての「火病」とは全く違うことがわかります。

 精神疾患をスティグマとして扱うこと
 歴史上、精神疾患はスティグマとして扱われることが多くありました。火病ももちろんそうですし、ヒステリーもかつては女性の非論理性を表す現象と捉えられていました。また、昨今では統合失調症やパーソナリティ障害が同じような状態にあると言えるでしょう。
 精神科医であれば、そのような歴史を把握し、かつ現在の状況を理解しておくことは当然です。弁護士が法律の改正状況を把握するのと同じくらい、必要最小限の職責であるといえます。
 にもかかわらずこの医師たちは、それを怠るばかりか、DSMに一瞬目を通せばわかることも確認せずに、協会誌とネット上で誤りをばらまくという失態を演じました。しかも掲載から1月は経とうとしているのに、撤回も訂正もしない始末であり、医師個人の素質というよりは組織の体質を疑わざるを得ません。
 巻頭言では、他に中国とインドの例を引いてその国での精神疾患に対する偏見を嘆いていますが、自分自身で偏見をばらまいておいてどの口がそれを言うのだと言わざるを得ません。

 ベット数が多ければいいのか
 また、韓国の事例ではベット数が少ないこと、強制入院が多いことを指摘しています。
 しかし、ここでベット数が多ければいいのかという疑問が生じます。例えば北欧では、精神疾患患者の社会復帰を推し進めており、その都合上ベット数は少ないでしょう。受け入れることのできるベット数が多いということは裏を返せば病院から出ることのできない患者が多いことも意味します。
 ベット数の多寡は難しい問題なのでさておくとして、強制入院の件は日本も他人ごとではありません。日本にも池田小事件をきっかけに制定された心神喪失者等医療監察法は、本人の意志関係なく強制入院という措置を下せる法律です。

 日本に生れてよかった?
 最後に、日本に生れてよかったという一言で巻頭言は締めくくられていますが、これほど間抜けな発言もないでしょう。
 そこに至るまでに、3か国の精神病院の状況を虚偽を混ぜながら記述し、裏を返せば日本にはそのような状況がないことを主張するかのような流れですが、しかし日本の精神医学の発展は『【書評】狂気と犯罪 なぜ日本は世界一の精神病国家になったのか』で論じたように悲惨なものでした。
 そのことを踏まれば、少なくとも当時の精神医学の状況は韓国や中国と五十歩百歩でしたし、現在もその状況を抜け出したとは到底言えないでしょう。
 一番恐ろしいのは、専門家でしかもその組織のトップにある人物が、日本における精神医学の問題点を顧みることなく、他国との比較で少しばかりましだからと言って満足しているように見えることです。問題点を意識していれば改善の余地もありますが、そうでないのであれば精神医学の発展は絶望的でしょう。
「え―き様の3分犯罪解説」「えーき様と罪人どものCoC」シリーズ投稿中です。http://t.co/5M9KbypdQP 自称アマチュア犯罪学者。ブログで犯罪学についてあれこれ書いております。TRPGだけやってる垢だと思ってると痛い目にあう。
E-mailアドレス
kudan9newbridge@gmail.com
メッセージ

名前
メール
本文
記事検索
アクセスカウンター
  • 累計:

  • ライブドアブログ