前回の記事、松島みどり新法務大臣の発言を見るにおいては松島法相の過去の発言を取り上げました。今回は、初登庁後の記者会見から発言を引用し、見ていきたいと思います。法相の現在の考え方を確認する意味で前回の記事でも取り上げた部分をもう1度取り上げることが多いですがご容赦ください。なお引用は、特にことわらない限り法務省の松島法務大臣初登庁後記者会見の概要からです。

 犯罪被害者等基本法
 でもこの11年間で一番思いを残している,思い出に残っている仕事というのは,「犯罪被害者等基本法」を議員立法で作ったことです。それまで日本の憲法や法律の中で,加害者の人権がとても大事にうたわれているのに,一方で被害者や,あるいは不幸にして亡くなられた側の遺族の方々がほったらかしにされている。害を加えた人がいつ逮捕されたのか,逮捕されなかったのか,起訴されたのか,不起訴になったのか,そのことも全然知らされない。そしてまた,出所した男が「自分が強姦の罪で入ったのはあいつのせいだ」として,もう一度襲って次は死なせた,殺したという事件も私の記憶にあります。奥さんとお子さんを失った本村氏の魂の叫びも伺いました。
  松島法相にとっての一番の仕事はやはり犯罪被害者等基本法の成立であるようです。触れはしませんでしたが、前回の記事の時点でも記事録にそのような発言が確認できました。私としては、裁判の傍聴も優先されないような現状がある中でこの法律が出来、被害者へのサポートがあつくなったことには一定の意味があると考えています。一方で被害者遺族の裁判への参加には肯定的にはなれませんし、被害者と加害者の人権がトレードオフであるかのような誤解を解く努力が不足しているとも感じています。

 性犯罪への厳罰化
刑法の中で,物を盗るより女性,性犯罪の方が軽く扱われている。強姦致死傷。強姦してその後,死に至らしめたり怪我をさせたりしたときに,法定刑は懲役5年以上で,あるいは無期懲役。死刑が入っていないんです。無期懲役です。一方,強盗の場合の強盗致傷。怪我をさせただけで,強盗して,かつ死なせたのではなく怪我をさせた場合でも懲役6年以上又は無期懲役で,最低刑が重い。強盗致死の場合は死刑又は無期判決です。
  前回の記事でも触れました。私も強姦致死傷が強盗致傷より刑が軽い設定はおかしいと考えているのでこれには賛同できます。当然安易な厳罰化の流れに掉さすことがないように配慮する必要があるとは思いますが。

  法律を普通の感覚に
 もう一つは,これはどこまでできるかわかりませんが,民法で従業員のことを「使用人」といいます。かつて民法改正,私も関与しましたが,「使用人」と言うのですよね,従業員のことを。では会社法ですけれども,会社法で「社員」とは誰のことなのかと聞いたら株主のことだって言うんです。こんな普通の感覚と違う法律は何とかしたいとかつて思いましたし,今もそう思っています。
  確かにこの言葉の使い方は一般の感覚とかけ離れているとは思います。が法律の言葉は一般のものより厳密さが求められるはずなので、一般と乖離した言葉の使い方になるというのは仕方がない面があると思います。仮に直すとして、条文全てを点検する必要がありますし、条文の根幹にかかわる言葉がごそっと変わるというのは現実的ではないとは思います。もっとも、お役所言葉を使わないというのであれば賛成ですが。

 保護司を増やそう
どこに住むのか,元々の暴力団仲間と付き合わないようにさせるとか,しっかりと住む所を見つけてやるとか,あるいは仕事を探すとか,そういうのは保護司という全国4万8000人の,実質足が出るくらいのほとんどボランティアで地域の方々がやってらっしゃいます。こうした方たちが仕事をしやすい環境,例えば二人一組,三人一組でやるようにするとか,そしてまた,それは保護観察の公務員がもっと人数を増やさないととても対応できない。それもしっかりと取り組んでいきたいと思っています。
  保護司というのは罪を犯した少年の更生のために指導をしたりする人のことです。これはボランティアでもっている制度であり、保護司の不足や高齢化があって制度として限界を迎えつつあると思います。昔は地元の名士が名誉職としてやっていた例もあるらしく、そういうふうにもっていけば助かるのですが今時難しいでしょう。本来この仕事も報酬を払って人を雇うくらいの覚悟が法務省にあってしかるべきです。

 受刑者の手に職を
 仕事を持っている人の再犯率は7.6パーセント。高いと言えば高いけれども,これに対して,無職の人は28.1パーセントと,4倍の開きがあります。これはやはり職を持ってもらうことが大事だと思います。今,自立更生センター,北海道の沼田町とか,北九州市,福島市,茨城県のひたちなか市,そういったところに自立更生センターを設けていますけれども,そういったことの充実とともに,刑務所で手に職を付ける。仕事ができるようにフォークリフトの運転だとか,例えば,女性だとネイリストだとか,そういう手に職を付けることで刑務所を出たときに仕事ができるようにするという努力をしています。これを更に,確実に就職できるような介護福祉士,介護福祉士は現場経験がないと資格を取れないのだけれども,実は刑務所に入っている人の70歳以上の人の割合というのは,約5.3パーセントです。結構いますので,そういった人たちの介護,つまり刑務所の中に入っている人も高齢者で要介護状況の人たちも居ますから,そういう人たちの面倒を見ることで介護福祉士の資格を得られるとか,そういったことを是非やっていって,刑務所から出たときに何とか仕事にありつける。そうすることによって,もう一度刑務所に戻らないですむ,そういう状況にしたいと思っています。
  前回の記事の時点で記事録に同様の発言が確認できました。経済畑出身ならではの発想かもしれません。前科がある人は仕事に中々つけず、結果として再犯に走るという悪循環が存在しています。それを解決するために手に職をつけるように、その職の幅を広げるようにするというのはいい策だと思います。特に介護福祉士の資格の案は受刑者の高齢化問題の解決も図れて一石二鳥でしょう。しかし現在の福祉関連の仕事の状況は厳しいものがあります。働いても対して稼げないのであれば結局再犯ということになりかねないので、受刑者がつくであろう仕事の待遇改善も必要でしょう。

 死刑にはやはり賛成だが
 そして,制度について申し上げますと,内閣府が5年に一度世論調査をしておりますけれども,その世論調査によっても死刑制度維持と考える人の割合が増えいて,現況で言いますと85.6パーセント,平成21年の結果なのでちょっと古いですね。今年は平成26年ですから,今年の秋から年末にかけてやるのかなと。やってもらいたいと思っていますが,平成21年12月の数字で,死刑存続が85.6パーセント,死刑廃止が5.7パーセント,分からないが8.6パーセントということになっています。国民の意思がそこにあるからには,この制度は正しいのだと思っています。
  前回の記事でも簡単に触れました。死刑というのは人権にかかわる問題で、国民の大多数が賛成だから正しいといった類のものではないのでこの発言には賛同できません。一方で死刑確定者が10年、20年と放置され拘禁症状が出ているといった問題にも注目しているようで、それらの解決に向かってくれることは期待していいかもしれません。

 ヘイトスピーチへの見識不足
 現実にヘイトスピーチというのは,どこかでがなり立てたらヘイトスピーチになるのか。あるいは,今特にインターネットの社会になって,子どものいじめというのも,これはヘイトスピーチとどう違うのか。汚い,寄るなというのとどう違うのか。よく分からないのですけれども,全ての場面で人権に関わることですし,これは絶対に許されない。
  この記事を書くきっかけになったのは松島法相「ヘイトスピーチの最たるものは子どものいじめ」不見識発言に非難殺到というまとめ記事が取り上げられたからです。非難殺到というタイトルは少々恣意的な気もしますが、動画を見る限り法務省の官僚としどろもどろになっていますし見識不足は事実でしょう。あまり法務省がこの問題にしっかり取り組んでいないことが露呈したともいえます。
 ヘイトスピーチ自体ははっきりとした定義が固まっていないようですが、大抵の場合出自やセクシャリティによる差別的な言論・発言だとされます。がなり立てるといった表現方法自体は関係がないでしょうし、子供のいじめは「ヘイトスピーチの要素があるものもある」といったところでしょうか。
 法務省自体は行政機関なので、立法以前に行政としてどう対応するか注目すべきでしょうね。なんにせよ、法相がヘイトスピーチへの見識不足を解消してくれることを期待します。

 以上、前回の記事よりもだいぶ好意的に評したと思います。まあ前回の記事は問題な発言を集めたからそうなったんですけどね。発言の全容を見る限り、きちんとした理解をもってくれればきちんとした仕事をしてくれる人なのかもしれません。あるいは他の自民議員にトンデモが多すぎて感覚が麻痺してるのかも……?