前回記事(ケルン集団暴行事件を考える)で紹介したブログに5つ目の記事が出ていました。今回の事件における、犯人のプロフィールに関する続報です。

 手段としての犯罪
 目立つのはモロッコ人とアルジェリア人の多さである。彼らは既に2011年から主にスリ、窃盗犯として警察からマークされる存在になっており、ドイツに不法滞在する者の中でもとりわけ高い犯罪率を示している。その理由として、彼らの多くが金を稼ぐために家族から送り出された若者であり、そのような若者がヨーロッパ各地からデュッセルドルフ・ケルン周辺に集まり仲間を難民収容所からリクルートしているという。
(中略)
 記事で引かれているWDRの放送では犯罪学者が、これまで発表された事実からして今回の犯行が性的な目的よりも物品を標的として行われており、被害者に触ることはそれで被害者の注意を引くための典型的な手口であるとコメントしており、警察のスリ担当班、モロッコ人コミュニティの人間も同様の見方をしているとして、内務省の性的な目的がメインの新しい現象であるという見解に疑義を呈している。
 ケルン集団暴行事件 日本の報道を検証する(5)-Fondriestのブログ
 記事と報道を読むと、事件が11時間という長い時間の中で行われたこと、そして、女性の体を触るといった性犯罪が窃盗の手段として利用されていることがわかります。
 性犯罪と聞くと、性欲に駆られた男性が……というイメージが強いかもしれませんが、単純に他の目的を果たすための攻撃の一形態として扱われる場合もあります。今回であれば、スリをするために被害者の気を引く必要があり、そのために体に触るなどしたのでしょう。背中に辛子をつけて……というのと発想は同じだと思います。
 また、記事では犯人の中にモロッコ人とアルジェリア人が多いことを指摘しています。彼らには難民認定を受けにくく、公的な援助も受けられないという背景があるようです。細かいことはわかりませんが、祖国での貧困が故に営利目的でドイツに渡って犯罪を犯しているという事情もあるのでしょう。だとすれば「彼らが性的犯罪を犯すという例は殆ど知られていない」という指摘も筋が通りますし、少なくとも彼らの民族性や文化を安易に性犯罪に結び付けて解決する問題でもないことは明らかです。
 また、モロッコやアルジェリアは北アフリカにあり、今問題となっている中東とは距離があります。私は国際政治に詳しくないですし、具体的な統計を見ない限り断言はできないのですが、モロッコ人やアルジェリア人の犯罪と中東問題とを結び付けて考えることにも意味はないかもしれません。

 性犯罪と移民の関係
 ところで、そのブログ筆者さんから前回の記事にこんなご質問をいただきました。
 新橋さんへ
 ブログ更新しました。容疑者のプロフィールについての分析の報道です。
 それと間違いなく私よりお詳しいと思うので教えていただきたいのですが、マーンだけでなく他のドイツ在住ジャーナリストのこの問題に関する記事でも、難民における男性の割合の高さをこの事件の直接ではないにしろ原因としてあげ、遅かれ早かれ起こるはずだった、というような記述を見るのですが、そのような見解を支持するような研究はあるのでしょうか。
 私の知る限り、性犯罪は単なる性欲が原因ではなく被害者を貶め権力を振るう事に目的があり、また集団レイプの場合には、それに参加する事で加害者間における「仲間意識」を強化する役割がある、ということだったと思うのですが。ドイツの報道でもエジプトの広場で起きた集団暴行(これの動画がケルンのものとして捏造され拡散されています)の説明として、女性にお前は価値がないのだということを知らしめるため、と説明されてました。
 移民における男性率の高さと性犯罪に関連があるかといえば、あると思います。というのも、性犯罪加害者の大多数は男性であり、人口が増えれば当然犯罪者の数が増えることを考えれば、移民として大量に男性が流入すれば性犯罪自体は増えるでしょう。
 しかしこれは、移民に限らずあらゆる人間で起こりうる現象です。ドイツ在住ジャーナリストがどのような意図でそのようなコメントしたかはわかりませんが、それに対しては「人が増えれば犯罪も増えるよそりゃぁ」と返せば十分でしょう。
 男性率の高さに注目するところから、移民がパートナーを見つけることが出来ずに欲求不満になり云々というストーリーを思い描いているのかもしれませんが、性犯罪が単に性欲だけでなく支配欲や、女性という総体への復讐心などに動機づけられることを考えればそこまで単純ではありません。性犯罪者には妻子持ちが少なくないことも犯罪学ではよく知られていることです。第一、パートナー不足が原因であればそれは移民に特有の問題でもないでしょうし。
 また、集団強姦の場合ですが、仲間意識の強化という機能もあると思います。無論これも移民に限らず起こり得る現象です。ちなみに、集団強姦の加害者はその集団から抜けさせるとほとんどの場合で再犯をしないと指摘する専門家もいます。
 もっとも、性犯罪の動機は想像以上に複雑で、加害者本人も自覚していない場合が少なくないことは念頭に置かなければなりません。
 少なくとも、特定の民族や人種、文化と性犯罪の多さや特異性などと結び付ける研究は私の知る限りありません。