はい。また産経です。
 警察庁の白川靖浩官房審議官は21日の参院沖縄北方特別委員会で、沖縄県での米軍基地反対運動に関連して平成27年以降に沖縄県警が威力業務妨害などの容疑で41人を逮捕し、このうち4人が韓国籍だったと明らかにした。「逮捕した4人の国籍はいずれも韓国だ」と述べた。自民党の山田宏氏の質問に答えた。
 米軍基地反対運動をめぐっては、東村などの米軍北部訓練場や名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブ周辺での抗議活動参加者による威力業務妨害事件が相次いで発生している。
 沖縄の米軍基地反対運動 「逮捕者のうち4人は韓国籍」と警察庁-産経新聞
 なぜこの記事が産経及びその読者にとってニュースバリューがあるように見えたのか、いくつか可能性があります。
 ちなみに、「威力業務妨害事件が相次いで発生している」とありますが、『よろしい、では「極左暴力集団」の定義を教えてくれ』でも指摘したように社会運動の参加者を微罪逮捕するのは警察の常道なので、その結果本来存在しえない事件が相次いでいるように見えることは普通にあります。「抗議活動コワイ!」と思うのは警察発表なんかを真に受けるお人よしだけです。

 韓国籍4人逮捕=反対派は韓国人と思っているのかもしれない
 一番可能性のあるのがこの考え方です。沖縄の基地反対派は中韓の工作員だ!式のデマは人気がありますから。当然ながら、逮捕者の中に4人の韓国人がいることは、抗議活動の参加者にどのくらい外国人がいるかの情報にはなりません。この4人で全員である可能性だってあるわけですし。
 「外国人がなんで日本で政治活動を!」という反応も極めて典型的に見られるわけですが、外国人でも自分の住むところに基地があり、それを問題だと考えれば反対運動に参加することは当然あるでしょう。そして、それを阻む法的根拠は何もありません。

 質疑の発端はネトウヨ議員だった

 これが記事の大元になった質疑の動画のようです。冒頭で反基地運動を「極左暴力集団に主導されている」と発言するなど、それだけで議員の首が3回飛んでおつりがくるようなことになっていますが、圧巻はその後です。
 反基地運動でハングルの横断幕が見られたことから始まり、運動に韓国籍の人間が参加していることを「異様」と断じています。言及があるように韓国にも米軍基地があり、それに反対する人もいるわけですが、山田議員には「同じ問題を抱えた者同士が国境を越えて連帯する」ことを想像するだけの力がないのか、単にネトウヨ支持者向けにかまととをしているのか。どちらにせよ碌でもないことです。

 反対運動へのスティグマを止めろ
 反対運動を極左暴力集団だの外国人が主導しているだの言いたい放題言うことは、溜飲は下がるのでしょうが火に油を注ぐだけです。本当に基地を必要だと思うのであれば、反発する人々と対話し理解を得ることこそが重要であるにもかかわらず、やっていることはその真逆です。
 何より反対運動の背後に何らかの組織が関わっているという考え方こそ、自民党の沖縄への蔑視を明らかにしています。反対運動に黒幕を設定するということは、沖縄県民が自発的に運動を行うことはあり得ないと見下しているということだからです。