いやはや、私としては軽い冗談として昔のトンデモ話を出したつもりだったのですが、マジモンが引っ掛かりました。ネットは恐ろしいところですね。
 しかし改めて調べてみると、この「ラッスンゴレライ反日説」とでも言うべき言説は意外と手が込んでいます。なぜラッスンゴレライとそのネタを考案した8.6秒バズーカーが「反日」と呼ばれているか調べてみると、以下のようにまとめられます。
・「8.6」は原爆が投下された8月6日を意味する。
・ポーズが広島にある「原爆の子の像」にそっくり。
・ラッスンゴレライはアメリカが爆弾を投下する命令として使う「落寸号令雷」。
・ラッスンゴレライはLess than Gorilla(ゴリラ以下)とも聞こえる。
・キャビア、フォアグラ、トリュフ、スパイダー・フラッシュ・ローリングサンダーにも意味がある!
 などなど。1つ1つはこじつけ臭くても、これだけたくさんあるとつい信じてしまいそうな量です。よくも集めに集めたりという感じです。ほかにもいろいろありますがとりあえずラッスンゴレライに直に関係しそうなところだけまとめておきました。

 かなり無理やりなこじつけ
 まず、万が一このブログを読んで「やっぱりラッスンゴレライは反日やったんや!」と世界の真実に気付く人が出るという事故を防ぐために、まずこれらの説がでたらめであることを指摘しておきましょう。もっとも後述するように、あまりすっきり否定できない面もあるのですが。
 まあ、8割、9割・・・いや、100人いたら99人がネタだと思ってるこの「落寸号令雷」問題。
 僕は元ネタは、ゲームなんじゃないかと思ってます。
 昔、「落寸号令雷」でグーグル検索すると「雷帝戦の大号令」とか「雷軍神の大号令」というワードが検索候補としてひっかかってきました。
 なんでも「ブレイブフロンティア」というゲームがあって、そのゲームに出てくる技の名前みたいです。
 だから、そのゲームしてる人が「あ・・雷帝戦の大号令って、ラッスンゴレライに音が似てるな」と思って、「落寸号令雷」って漢字を当てたんじゃないですかね?
 それを、8.6秒がたまたま8月6日と数字が合ったんで、「やばい、これやっぱりそうだよ!!」って、みんなネタで言い出したことだと思うんですけどね。
 まあ、この騒動に呆れた人のひとりが「そもそも落寸号令雷なんて言葉ないから」というスレを立てたりもしてるんですが、その後もいろんな検証がされていて、まったく不毛という言葉以外、見つからない感じですが、ついでなんで紹介しておきます。
 落寸号令雷【ラッスンゴレライ】の真相をわりとマジメに考察する-鈴木太郎の思うこと
 まずラッスンゴレライ=落寸号令雷説ですが、そもそも落寸号令雷という言葉が存在しないのではないかという指摘をしている人がいます。そもそもなんでアメリカの命令が日本語やねんという話でもありますが。
 まぁ仮に、落寸号令雷(スンゴライ)とラッスンゴレライでは、赤字にしたところが被っているだけであり、仮に落寸号令雷の訛った言い方だったとしても不自然な変形であることは否めません。これでは「ラッスンゴレライにいくつかの音を足すと落寸号令雷になる。だからこれは反日の暗号だったんだよ!」ΩΩΩ<なっ、なんだってー!の世界です。

 ちなみに、ラッスンゴレライがLess than Gorillaに聞こえるというのは厚切りジェイソンが言い出したことらしいのですが、グーグルに喋らせると普通に「レスザンゴリラ」に聞こえます。アクセントの位置も全然違いますし。ここから派生して、ラッスンゴレライはListen Gorillaであり、これは韓国人が「聞けニホンザル!」と罵倒する言葉なのだという話も出てきますが、日本人を罵倒したいならゴリラではなくモンキーというべきところでしょう。
ラッスンゴレライ仮説集
仮説1→"Razz’ing God Light" 意味: 神の光だ、あざ笑ってやる
仮説2→"Less than gorilla" 意味: ゴリラ以下
仮説 3→"Lusting God laid light " 意味 : ヤハウェは渇望し、裁きの光を下した。 (旧約聖書19章) ちなみにこの言葉は当時の原爆投下の号令と一致。
仮説4→"Lesson gorilla"意味 : 聞け、猿
仮説5→"Lesson go ray of light"意味 : 日本人は学習しろ。原爆の光線を忘れるな!
仮説6→"Listen! go retry!"意味 : 同胞達よ!あの爆撃をもう一度!
仮説7→"Let soon go re light "(8.6 bazooka)意味 : 8月6日の爆撃をすぐにもう一度!
仮説8→"Rat soon go rewrite"意味 : ネズミは、すぐに書き替える。つまり、ネズミ(日本人)は歴史をすぐに捏造する。
仮説9→"Wrath of god led lightning "意味 : 神の怒りにより稲妻は導かれた。
仮説10→"Lesson! go retry!"意味 : エノラゲイが原爆投下をリトライ(エノラゲイは広島に8.6に原爆を投下した爆撃機の名前)
仮説11→"Let soon go relight "意味 : すぐに閃光(衝撃波)が来るぞ。
 落寸号令雷【ラッスンゴレライ】の真相をわりとマジメに考察する-鈴木太郎の思うこと
 なお上で引用したサイトによると、ラッスンゴレライにはほかにもこれだけの仮説があり、とにかく英語に聞こえることだけはよくわかったという感じです。
 キャビア、フォアグラ、トリュフ、スパイダー・フラッシュ・ローリングサンダー。 
 言い方とか聞いてるとなんか必殺技名っぽいこのセリフ。実は1つ1つに意味があったと言われてる。
 キャビア→→チョウザメの卵→→リトルボーイ
 フォアグラ→→太らせたアヒルの肝臓→→ファットマン
 トリュフ→→きのこ
 スパイダー→→蜘蛛→→雲
 フラッシュ→→閃光→→ピカ
 ローリングサンダー→→轟く雷鳴→→ドン
 8.6秒バズーカーの反日疑惑をまとめ、検証した結果。-TPAI
 キャビア、フォアグラ、トリュフ、スパイダー・フラッシュ・ローリングサンダーに関しては上にあるような意味があると主張されているのですが、やはり無理があります。キャビアとフォラグラのくだりに関してはよく考えたものだというべきですが、残念ながらマンでもボーイでもないという粗がありますから。あくまで卵と鳥の肝臓だ。

 証拠の採用基準
 このようなトンデモを、なぜ人は信じてしまうのでしょうか。
 ポイントは、証拠を採用する基準は人や状況によって恣意的にいくらでも変化しうるということです。例えば、刑事裁判では「疑わしきは被告人の利益に」という厳しい基準が用いられます。一方で大学が学生に行う処分では「50%を超える程度で確からしい」という優越で構わないという話を『』でしたと思います。
 これらはシステム上要請された基準ですが、それとは別に人は「この程度なら証拠として採用しよう」という基準のようなものがあると考えていいでしょう。ある人はネットに書いてあることをコロッと信じるし、別の人は新聞を複数読まないと簡単には信じないみたいなことです。

 そしてこれらの基準は、話題によっても変化すると考えるべきです。問題はそのことをなかなか自覚できないことなのですが。
 例えば証拠能力を100点満点で評価するとして、普段は60点くらいを基準にしているのに、自分の信じたい主張を裏付ける証拠には40点の基準にして、信じたくない証拠は90点を基準にするということは頻繁に起こります。
 「キャビア、フォアグラ、トリュフ、スパイダー・フラッシュ・ローリングサンダー」の解釈に関しては、よくできているので40点を与えるとしても、しかし普通に考えれば証拠として採用するにはあまりにも心もとないものでしかありません。しかしこの話題に関して最初から「30点くらいでいいや」と思っていれば問題なく自説を補強する証拠になるのです。
09150412

 ポーズが似ているという話に関しても、手を上に広げるポーズ自体さほど珍しいものではないのでこれを言い出すと結構な人が反日になってしまいます。グリコも反日でしょうか。また向かって右の人のポーズが長崎の平和の像に似ているという話もあるのですが、これは左手を横へ伸ばしている点が共通しているだけで、右手の形は全然違います。これも20点くらいの証拠能力でしょうが、しかし20点でいいと思っている人には立派な証拠です。

 肯定的検証方略と確証バイアス
 さて、心理学には肯定的検証方略だとか確証バイアスという言葉があります。これは要するに「人は仮説を検証しようとすると、その仮説を裏付ける証拠ばかり集めようとする」という傾向のことで、ラッスンゴレライに関してはまさにそれが機能しているというべきでしょう。

 上で、ラッスンゴレライには11もの仮説があるという話をしました。11もあったら1つくらいそれらしく聞こえるもので、信じたい人はそこから1つ都合のいいものを選んで、ほかのそれらしくないものは無視すればいいという使い方できます。本来、1つの言葉がここまで複数の英語を意味することはありえず、これだけ説が乱立すること自体がこの説のいい加減さを示しているのですが、そこは都合よく無視です。

 また確証バイアスには「否定的な証拠を無視する」という特徴もあり、これがラッスンゴレライに対するでたらめを助長しています。
 ラッスンゴレライのこじつけをすべて信じるとしても、それはあくまでネタのごく一部に対するものであり、彼らの言動のうち「反日的なもの」の割合はそうではないものよりもかなり少ないはずです。しかしながら確証バイアスに囚われてあらかじめ「ラッスンゴレライ反日説」を信じ込んだ状態になると、それ以外のものが見えなくなってしまいます。
 「韓国人による凶悪犯が!」と事例を羅列するけど、そのその側にある大量の日本人による犯罪が見えていない、みたいなことです。

 冷静に考えると、こんなくだらないデマに時間を割く必要性があったのが微妙になってくるのですが、改めて調べてみると8.6秒バズーカーはこの騒動でかなり被害を被っているみたいですし、騒動から3年もたってまだマジで信じている人がいることを考えるとやっぱり逐一指摘しておくのは大切なのでしょう。