9日午後3時半ごろ、京都市東山区祇園町北側の八坂神社近くから、在日コリアン排斥などを主張するデモが出発し、抗議する大勢の人たちが「ヘイトデモの中止を」と訴えた。京都市役所前(中京区)までの道中も抗議が続き、京都府警の警察官が間に入った。観光客や買い物客が行き交う一帯は騒然とした。
 京都・祇園で在日排斥デモに抗議行動 観光地が騒然-京都新聞
 時間的に余裕があったので、ここで報じられているヘイトデモのカウンターに行ってきました。今回はその報告めいた記事です。

 「朝鮮学校襲撃」とは
 そもそも、このデモで祝われている朝鮮学校襲撃とは何でしょうか。
 それは2009年12月4日に起こった。京都市南区上鳥羽勧進橋町にあった京都朝鮮第一初級学校校門前で、「在日特権を許さない市民の会」(在特会)を名乗る男ら11人が「スパイ養成機関」「こらチョンコ」「叩き出せ」などの差別的な罵詈雑言を約1時間にわたってがなりたてた。グラウンドのない同校が、隣接する京都市の公園にサッカーゴールなどを設置して使用していることに因縁をつけた、言語道断の差別行為だった。
 初級学校は小学校にあたる。交流授業で来ていた滋賀朝鮮初級学校の生徒を含め、校内にいた子どもたちと教師150人ほどが、拡声器を使った怒号にさらされつづけた。
 駆けつけた警察は、暴言を止めさせようともせず、襲撃者たちがサッカーゴールを倒しても、スピーカーのコードを切っても傍観するのみ。目の前の犯罪行為を黙認し続けた。
 しかも、この悪夢は1度ですまなかった。翌年の1月14日には2度目の「街宣」が、3月28日には3度目の「街宣」が行われた。
 「3度目は学校から半径200メートル以内の街宣を禁止する仮処分決定(注1)が出た4日後でした。法的な手段をとってもなんの意味もないんじゃないかと思いました」と金志成さん。2度とも、人数、暴言ともにエスカレートするデモ隊に対して、警察は見ているだけだった。
 京都朝鮮学校襲撃事件と裁判がもたらしたもの (ジャーナリスト 中村 一成/京都朝鮮初級学校教員 金 志成)-一般社団法人市民セクター政策機構
 引用した記事が詳しいのですが、この事件は京都朝鮮第一初級学校がそばにあった勧進橋児童公園を運動場として利用していたことに差別主義者が「難癖」を付けたところから始まりました。これまで公園使用にはトラブルがなかったのですが、差別主義者はこれを「不法占拠」と断じ、設置してあったゴールポストを動かしたりスピーカーのコードを切るなどの不法行為を働き、さらに小学生にあたる年齢の児童の眼前で罵詈雑言をがなりたてるなどしました。この件に関しては参加者が侮辱罪や威力業務妨害罪などに問われて有罪判決が確定した、れっきとした犯罪行為です。

 今回のヘイトデモはそのような犯罪行為を「祝う」と銘打たれており、この時点で行動使用許可を出した京都市の姿勢が疑われます。

 ※追記
 すでに上掲ツイートでオチがついていますが、こういういちゃもんがあったので多少解説を加えておきます。
 まずカウンターはこれを禁じる法律がない以上違法ではありません。もちろん公道を許可なく占拠すれば道交法などに問われるでしょうが、それは別の話です。デモに届け出が必要だというのは警察行政による刷り込みです。

 襲撃事件に関して、朝鮮学校側も公園を不法占拠していたので非があるというのも誤りです。『京都の朝鮮学校が公園を50年間不法占拠していた?』に詳しいのですが簡単にまとめると、
・違法だと言われたのは2009年6月5日から同年12月4日の間、京都市の撤去要請に応じずに学校の設備を公園に設置していたこと。
・市の要請は工事によるもので、要請は着工の直前であり学校側の都合を一切無視したものだった。
・それ以前の公園利用には協定があり、違法ではない。
 の3点です。つまり違法とされた部分も市の一方的な都合によって作り上げられた状況だったということです。

 円山公園に集う
 予定では15時に八坂神社近くの円山公園に参加者が集うことになっていました。それに合わせてカウンターは早めに集合するとのことだったので、私は30分くらい前につこうかと思ったのですが公園が駅から遠く、意外と時間がかかってしまいました。
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 それでも到着。現場に着く前に赤いジャージを着た極右と思しき男性が警官に引っ立てられる姿を目にしました。
 まず目立ったのは警察の多さです。あまりにも警察が多いので通行人も何事かと怪訝な目で人込みを眺めていました。これだけ警備が多いので参加者もさぞ多いのかと身構えていたのですが……。

 いざ始まるが
 実際にふたを開けてみると、参加者はたったの4名というありさま。1人だけ拡声器をもって歩き、他は車に乗っていました。カウンターは少なくとも60名を超えるかという人数でした。警官に紛れてしまい参加者が見えない。
 それとデモが全然前に進みませんでした。カウンターが先回りしてルート上でシットインをしていたためです。
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 レイシストを囲んでの帰れコール。レイシストが何かを言うたびにカウンター数十人が罵倒するというありさまで、立場が逆なら心折れてるだろうなという状況でした。
 上の写真の奥にちらりと見えている赤い上着の男が、川東と呼ばれているレイシストらしいです。京都朝鮮学校襲撃事件の実行犯の一人で、執行猶予つきの有罪判決を受けた人物です。どういう活動であれ長年関わっていれば風格というか貫禄というものがたいてい出るものですが、彼には見かけにそのような印象がなかったのでTwitterで見るまではてっきり一山いくらのレイシストかと思っていました。

 ちなみに、現場にえらくいかついおじさんがいるなと思っていたらジャーナリストの安田浩一氏だったようです。
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 それでも15時半ごろにはシットインが排除され、デモがスタートしてしまいます。八坂神社のT字路は赤信号が長く、加えて街宣車がデモとは思えないスピードで走り去ってしまったこともあって。私はあっさり引き離されてしまいます。
 このあと、京都の町をふらふらと追っかけたのですが最後まで追いつけませんでした。足速い……逃げ足が速いというべきでしょうか。今後はあらかじめデモのルートを調べておく必要がありそうですね。

 警察による「官製ヘイト」
 さて、今回カウンターに参加しひしひしと感じたことは、まずレイシストとカウンターの人数差です。たった4人に下手すれば3桁単位の市民が圧をかけていたわけで、結局デモは行われてしまったとはいえ彼らは逃げるようにおざなりな街宣しかできませんでした。
 しかし話を聞くに、カウンター初期はこの人数差が逆だったわけでしょう。レイシストを圧倒するほどの勢力になるまで活動を形作ったカウンターの人々には頭が下がります。

 ですが、圧倒的人数差にもかかわらず、レイシストの側には余裕というか、自分が正しいと確信しているような自信が垣間見られ不気味な印象もありました。それには2つの原因があるのでしょう。
 1つは大量の警察官がレイシストを護衛していたということです。警察官は人種差別を公然と行うレイシストに背を向け、カウンターを押さえつけていました。まぁ護衛がなければリンチ待ったなしなのでやむを得ない面もあるのでしょうが、これでは警察官がヘイトデモの参加者のようです。

 上で引用した記事にもあるように、警察は従来より極右レイシストの犯罪行為を見逃すどころか積極的に黙認してきたきらいがあります。これではレイシストが自身の行いを公認されているとつけあがるのも当然です。京都市と京都の警察はヘイトスピーチ規制法にのっとって差別扇動が行われることが明白なデモに公道の使用許可を出さないといった対策が求められます。

 朝鮮学校差別をやめさせる
 もう1つの原因は、現在政府が行っている朝鮮学校ひいては在日コリアンに対する差別的な取り扱いです。とりわけ安倍政権は極右レイシストと親和性が高く、これがレイシストたちの「自信」につながってしまっているのは明らかです。

 『差別主義者は無限の証明を要求する』でも論じましたが、政府による補助金支給からの朝鮮学校の排除には正当性がありません。このような差別的な政策を公然と行うことがレイシストたちの朝鮮学校へのヘイトスピーチを正当化していることを政府はきちんと認識すべきです。また『度重なる在日コリアンへのヘイトクライムに政府は対処すべき』でも論じたように、在日コリアンへのヘイトクライムに対しても政府は差別が許されない旨を明確に表明すべきです。